底本
Aristophanes. Aristophanis Comoediae, Vol. 1. Hall, F. W. and Geldart, William M., editors. Oxford: Clarendon Press, 1906.
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA 4.0
Humanitext がクローン・再構成し、継続的に更新しています。
要旨
アテナイとスパルタの長期にわたる戦争で疲弊したギリシャを舞台に、平和を取り戻そうとする一人の農夫の奇想天外な冒険を描いた喜劇です。主人公である農夫トリュガイオスは、巨大なフンコロガシに乗って天界のゼウスに直接平和を嘆願するために飛び立ちます。天界に到着した彼は、神々がギリシャ人を見捨てて去ってしまい、戦神ポレモスが平和の女神エイレネを洞窟に閉じ込めたという事実を知ります。トリュガイオスはヘルメス神を味方に引き入れ、ギリシャ全土の農民や民衆と力を合わせて、ついに女神を救い出します。地上に帰還した彼は、人々とともに平和の到来を祝福し、戦争で利益を得ていた武器商人たちをユーモラスにからかって追い払います。作品は、平和の象徴である女神の侍女と挙げる賑やかな婚礼の宴とともに、喜びの中で幕を閉じます。
目次
16 チャンク
引用方式:line
- §1-78
フンコロガシの世話とトリュガイオスの狂気
二人の家来が主人トリュガイオスの飼う巨大なフンコロガシに糞を供えながら不満を語り、主人が天のゼウスのもとへ行くためにそのフンコロガシをペガサスに見立てて乗ろうとしている奇妙な狂気を観客に説明する。
- §79-166
トリュガイオスのフンコロガシでの天への飛翔
トリュガイオスが巨大なフンコロガシに乗ってゼウスに和平を直談判するために天へと飛び立つ。奴隷や娘たちが必死に引き止めるが、彼は決意を変えず、地上の人々に警告を残して空へと昇っていく。
- §167-247
天界への到着とヘルメスによる神々の不在の告知
トリガイオスは天界のゼウスの家に到達し、留守番のヘルメスから、神々がギリシア人の戦争に怒って避難し、戦争の神ポレモスが平和の女神を幽閉したことを聞く。そこへポレモスが巨大なすり鉢を持って現れ、ギリシアの都市をすり潰そうとする。
- §248-325
すりこぎの喪失と平和救出への全ギリシアの招集
ポレモスがギリシアの諸都市を研鉢で潰そうと目論む中、障害となるアテナイとスパルタの主導者たち(すりこぎ)の死が報じられる。これを聞いたトリガイオスはギリシアの諸階層の民を呼び集め、洞窟に幽閉された女神『平和』の救出へ向けて団結を促し、コーラスも歓喜の踊りで応じる。
- §326-409b
ヘルメスの威嚇とトリュガイオスらの説得
トリュガイオスはコーラスの激しい踊りをなだめ、平和の女神の救出後の喜びを夢想する。そこへヘルメスが現れ、ゼウスの禁忌を犯して女神を掘り出そうとする者を死罪に処すと告げるが、トリュガイオスらは命乞いをし、天界の神々に対する月と太陽の陰謀を明かしてヘルメスの関心を引こうとする。
- §410-506
ヘルメスの協力を得た平和の救出作業の難航
トリガイオスは黄金の杯を贈ることでヘルメスを味方に引き入れ、平和の女神を救い出すための祈りと献酒を捧げる。一同は綱を引いて平和を掘り起こそうとするが、各ポリスの思惑が乱れて息が合わず、遅々として作業が進まない。
- §507-596
農民たちの手による平和の女神の救出と歓喜
農業を営む人々が力を合わせることでついに平和の女神が引き出され、人々は戦争の道具を捨てて田舎へと帰る準備を始め、平和の恩恵を熱望する。
- §597-671
平和喪失の経緯についてのヘルメスの説明
ヘルメスが、ペリクレスの政治的策略やクレオンなどの扇動政治家の強欲さが原因で平和が失われた歴史を説明し、さらにアテナイの民衆がかつて平和の提案を拒絶したことに対する女神の不満を伝える。
- §672-745
アテナイの現状に関する問答と地上への帰還の準備
ヘルメスとトリガイオスは、アテナイの好意的な人物クレオーニュモスや、現在の指導者ヒュペルボロス、さらに詩人たちの現状について、平和の女神からの質問を通して語り合う。その後、トリガイオスはオポーラーを妻として受け取り、地上へと戻る準備を始め、コーラスによるパラバシスが始まる。
- §746-845
詩人の功績の称賛とトリュガイオスの地上帰還
コリュパイオスは、かつて下俗な喜劇を排して大いなる劇を作り上げ、怪物クレオンに立ち向かったアリストパネスの功績を称えて観客に勝利への協力を呼びかけ、さらにライバルたちの不恰好な踊りや下手な歌を批判する。その後、天上から帰還したトリュガイオスが召使と再会し、天上の様子や人が死ぬと星になるという噂について語った後、連れ帰ったオポーラーとの結婚の準備を指示する。
- §846-930b
テオーリアーの引渡しと平和の女神への生贄の検討
トリュガイオスはテオーリアーを評議会に引き渡し、彼女を伴った祝祭や性的な競技の比喩を交えて平和の到来を祝福する。その後、平和の女神を祀るための適切な生贄について議論が交わされる。
- §930c-1026
平和の女神への祈願と生贄の儀式の準備
トリュガイオスと従者は平和の女神を祀るための祭壇を整え、観客に大麦の粒を撒いて儀式の準備をする。彼らは女神エイレーネーに戦争の終結と市場の繁栄を祈願し、血を好まない女神のために羊の屠殺を屋内で行うことにして、外では薪の準備を進める。
- §1027-1103
神託占い師ヒエロクレスの邪魔とトリュガイオスの反論
トリュガイオスと下僕が平和の女神への犠牲を準備する中、オレオスから来た神託占い師ヒエロクレスが邪魔をしに現れる。ヒエロクレスは偽の神託を持ち出して和平に反対するが、トリュガイオスは彼の強欲さを嘲笑し、ホメロスを引用して論破する。
- §1104-1186
ヒエロクレスの追放と田舎の平和な暮らしの賛美
トリュガイオスたちは、生贄の分け前を執拗に要求するヒエロクレスを追い払う。その後、コロスが戦争の装備や苦難から解放されたことを喜び、田舎での平和な日常の楽しみを、臆病な歩兵隊長たちの醜態と対比させながら歌う。
- §1187-1267
農具商人の感謝と武器商人たちへの嘲弄
トリュガイオスが結婚の宴会の準備を進める中、平和によって利益を得た農具商人が感謝の贈り物を携えて現れる。一方で、平和のせいで商売あがったりとなった武器商人たちが次々と現れ、使い道のなくなった武具をトリュガイオスに買い取ってもらおうとするが、彼はことごとく武具を滑稽な日用品に代用することを提案してからかう。
- §1268-1357
婚礼での少年たちの歌と祝婚歌による大団円
トリュガイオスの婚礼の席で、ラマコスとクレオーニュモスの息子たちがそれぞれ異なる傾向の詩を歌い、平和への態度が対比された後、一同は結婚を祝う歌を歌いながら退場する。
