底本
Seneca, Lucius Annaeus. Tragoediae. Peiper, Rudolf; Richter, Gustav, editors. Leipzig: Teubner, 1921.
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA (Perseus の利用条件による)
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要旨
本作は、ギリシア神話に材を取り、不義の愛に身を焦がす王妃フェードラの悲劇を描いた劇作品です。アテナイの王テセウスの不在中、王妃フェードラは義理の息子である若き狩人ヒッポリュトスへの抑えきれない情熱に苦悩します。乳母の説得も虚しく、彼女はついに告白に踏み切りますが、女性を嫌悪し純潔を重んじるヒッポリュトスは激怒して彼女を拒絶します。罪の露見を恐れたフェードラ側は、逆にヒッポリュトスから襲われたと嘘の告発を行い、冥界から帰還したテセウスはこれを信じて海の神に息子の滅亡を祈ります。呪いによって引き起こされた海獣によりヒッポリュトスは非業の死を遂げ、真実を知ったフェードラもまた自らの偽りを告白して自殺を遂げます。最後に残されたテセウスが、引き裂かれた息子の遺体を前に深い絶望と自責の念に沈むところで物語は幕を閉じます。
目次
14 チャンク
引用方式:line
- §1-109
ヒッポリュトスの狩りの祈りとパエドラの嘆き
ヒッポリュトスがアテナイの若者たちに犬や網を携えて狩りに出るよう命じ、女神ダイアナに加護を祈る。続いてフェードラが登場し、不在の夫テセウスの不実を嘆き、胸の内に燃え盛る激しい情熱(ヒッポリュトスへの恋)による苦悩を告白する。
- §110-196
パエドラの禁断の恋と乳母による諌め
フェドラは自らの情熱を母パシパエの宿命的な愛になぞらえて嘆き、乳母はテセウスや神々の目を恐れて罪を避けるよう説得するが、フェドラは愛の神の抗いがたい力を訴え、乳母はそれを欲望の自己弁護であると退ける。
- §197-285
パエドラの死の決意と乳母の仲介の約束
乳母はパエドラに対して、不義の愛を戒め、身分の高い者にふさわしい理性を保つよう説得する。しかしパエドラの決意は固く、死をもって不名誉を免れようとするため、乳母は最終的に彼女を救うためにヒッポリュトスの心を動かす役割を引き受ける。
- §286-387
愛の全能の力と錯乱したパエドラの登場
コーラスは、神々や英雄、あらゆる獣に至るまで全宇宙を支配するクピードー(愛)の抗いがたい威力を歌い上げる。その後、乳母が合唱長にパエドラの極限状態の狂乱と衰弱を告げ、錯乱したパエドラ自身が姿を現す。
- §388-469
パエドラの出立の決意と乳母によるヒッポリュトスへの説得
パイドラは王妃としての贅を捨てて森へ赴く決意をし、乳母は彼女の恋を成就させるため女神ディアナに祈る。その後、乳母は現れたヒッポリュトスに対し、若さを楽しんで愛を受け入れるよう説得する。
- §470-561
ヒッポリュトスによる森の生活の称賛と女性への嫌悪
乳母は自然に従い都市での生活を勧めるが、ヒッポリュトスはこれを拒み、森の中での罪なき簡素な生活の美徳を称賛する。彼はさらに、黄金時代の終焉と人類の道徳的退廃、そしてその元凶たる女性の害悪を語る。
- §562-648
パエドラの失神とヒッポリュトスへの恋心の暗示
ヒッポリュトスが女性への絶対的な嫌悪を語る中、絶望したパエドラが失神する。息を吹き返したパエドラは、ヒッポリュトスに「母」ではなく「侍女」として従うと懇願し、かつての若き日のテセウスの面影を彼に重ねることで自身の恋心を暗示する。
- §649-730
パエドラの告白と拒絶による乳母の偽証の企て
パエドラはヒッポリュトスに対して、かつてクレータ島で姉アリアドネを魅了したテセウスに彼が酷似していると語り、自身の狂おしい愛を告白する。しかし、それを聞いたヒッポリュトスは激怒し、天に雷電を求め、彼女に剣を向ける。その後、罪の露見を恐れた乳母は、逆にヒッポリュトスから襲われたと虚偽の告発を仕組む。
- §731-832
美の儚さを歌う合唱隊とテセウスの帰還
乳母はフェードラを落ち着かせつつヒッポリュトスから襲撃されたという偽の証拠を仕立て上げ、それに対して合唱隊はヒッポリュトスの類まれな美しさと美の普遍的な儚さを歌い上げる中、テセウスらしき人物が冥界から戻ってくる姿が目撃される。
- §833-917
パエドラの告発と息子の剣を見たテセウスの激怒
冥界から地上へと帰還したテセウスは、死を決意して自らの名誉を語ろうとしないフェードラに直面します。ついに彼女が差し出したヒッポリュトスの剣を見たテセウスは、息子が妻に乱暴を働いたと確信し、その不道徳な血筋を激しく呪います。
- §918-1013
テセウスの呪いとヒッポリュトスの死を告げる使者
テセウスは我が子ヒッポリュトスに対して激しい呪いの言葉を投げかけ、海の神ポセイドンに彼の滅亡を乞い願う。歌隊が自然界の厳格な秩序と人間界の不条理な不道徳さを対比させて嘆くなか、使者が現れてヒッポリュトスが都を去る際の異変と非業の死を告げ始める。
- §1014-1101
海の怪物とヒッポリュトスの無残な最期の報告
使者はテセウスに対し、海から現れた怪物(牡牛)の姿と、それによってパニックに陥った馬たちがヒッポリュトスの戦車を暴走させ、彼を無残に引きずり殺した顛末を詳しく語る。
- §1102-1198
パエドラの虚偽の告白と自刃
馬たちによって無惨に引き裂かれたヒッポリュトスの遺体を前にテセウスが嘆き、パエドラが現れて自らの告発が偽りであったことを告白したのち、剣に身を投じて自殺します。
- §1199-1280
テセウスの自責とヒッポリュトスの遺体の収集
パエドラはテセウスに自らの不義を認めて自害を促したのち絶命する。テセウスは冥府の刑罰を望みながら自責の念にかられ、ヒッポリュトスの無惨に散らばった遺体を一つに組み立てて葬儀を指示する。
