エウリピデス · Euripides
トロイアの女たち
The Trojan Women
ギリシア語原文(原典)と日本語・英語・中国語・韓国語の対訳・語釈を、全文無料・登録不要で公開しています。
底本
Euripides. Euripidis Fabulae, Vol. II. Murray, Gilbert, editor. Oxford: Clarendon Press, 1913. (Reprinted 1921-1962)
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA 4.0
元ファイル: urn:cts:greekLit:tlg0006.tlg011.perseus-grc2
Humanitext がクローン・再構成し、継続的に更新しています。
翻訳と校閲
翻訳:Gemini 3.5 Flash(2026-05-22 公開)
AI校閲 2026-09-22:検出 Gemini 3.8 Flash/判定 Gemini 3.8 Flash・GPT-6 Astra — 日本語訳 7 件・原文 1 件を修正
反映した修正(日本語訳と原文):AI校閲 8 件・表記の統一 3 件
最終更新:2026-10-10・変更履歴の一覧
要旨
本作は、トロイア戦争の終結直後、敗北したトロイアの女性たちが辿る悲惨な運命を描いた悲劇です。舞台は陥落し灰燼に帰したトロイアの海岸であり、元王妃ヘカベを中心に、カサンドラやアンドロマケといった女性たちが、ギリシア軍の奴隷として分配されていく過酷な現実が描かれます。冒頭では、神々がギリシア軍の非道に対して復讐を誓いますが、地上の人間たちは神の介入を知らぬまま絶望の淵に立たされます。物語が進むにつれ、カサンドラの不吉な予言や、アンドロマケの幼子アスティアナクスの非情な処刑など、容赦ない悲劇が次々と女たちを襲います。戦争の原因となったヘレネをめぐる裁判的な対話を経て、最終的にアスティアナクスの遺骸を盾に載せて埋葬したヘカベたちは、炎上する祖国に最後の別れを告げ、奴隷としての船出へと連れ去られていきます。
目次
14 チャンク
引用方式:line
- §1-84
ポセイドンの嘆きとアテナとの復讐の盟約
ポセイドンがトロイアの滅亡と神々の去り行くさま、そしてヘカベやカサンドラらの悲惨な境遇を嘆き語る中、アテナが現れてかつての敵意を解き、ギリシア軍の帰路に嵐をもって共同で復讐することを提案する。
- §85-200
ヘカベと捕虜のトロイアの女たちの嘆き
アテナとポセイドンがギリシア軍への報復を取り決めて立ち去った後、絶望したヘカベが地面から立ち上がり、捕虜となったトロイアの女たちとともに自分たちの過酷な運命を嘆き悲しむ。
- §201-307
タルテュビオスによる捕虜の割り当ての告知
ヘカベとトロイアの女たちが配属先の不吉な土地を嘆き予想するなか、伝令タリュビオスが現れ、カサンドラ、ポリクセネ、アンドロマケ、そしてヘカベ自身のそれぞれのくじ引きの結果を告げる。ポリクセネの死が婉曲的に示唆され、アガメムノンの天幕で火が目撃されると、カサンドラの登場が告げられる。
- §308-401
カサンドラの祝婚歌とアガメムノンの破滅の予言
カサンドラは松明を掲げて自身の婚礼を祝う狂乱の歌を歌い、母ヘカベに悲しみを捨てて共に踊るよう促す。その後、彼女は正気を取り戻したかのように、この婚礼がアガメムノンに破滅をもたらすこと、そして敗者であるトロイアの方が勝者アカイアよりも実際には幸福であることを理路整然と論じる。
- §402-479
カサンドラの連行と倒れ伏したヘカベの嘆き
カッサンドラは、アガメムノンを婚礼によって破滅に導き、さらにオデュッセウスを待ち受ける十年の苦難に満ちた放浪の旅を予言し、自らも死を覚悟して船へと連れ去られる。残されたヘカベは絶望のあまり崩れ落ち、自らの過去の栄光と現在の没落を嘆き始める。
- §480-597
トロイア陥落の追悼とアンドロマケの連行
ヘカベは自らの過酷な没落と今後の屈辱的な奴隷としての運命を嘆き、倒れ伏す。その後、合唱がトロイア陥落の夜の悲劇的な出来事を回想し、続いて捕虜となったアンドロマケが幼いアスティアナクスとともに連行され、ヘカベと二人の哀歌を交わす。
- §598-680
ポリュクセネの死の嘆きとアンドロマケの絶望
ヘカベとアンドロマケが互いの身の上に重なる不幸を嘆き合い、ポリュクセネの死が確定したことについて対話する。アンドロマケは、生きながら奴隷とされる自らの過酷な運命に比べれば、死んだポリュクセネの方がまだ幸福であると主張し、かつてヘクトルの妻として守り抜いた操節が仇となってギリシアの捕虜に選ばれた不条理を詳しく語る。
- §681-761
アスティアナクスの処刑宣告とアンドロマケの別れ
アンドロマケは自らの希望を失った境遇を嘆き、ヘカベは運命に身を任せる重要性を説く。そこへタルテュビオスが現れ、ギリシア軍の決定により幼いアスティアナクスがトロイアの塔から投げ落とされて殺される予定であることを告げ、アンドロマケは息子との非情な別れを嘆く。
- §762-873
神に見放されたトロイアの哀歌とメネラオスの登場
アンドロマケがアスティアナクスを奪われ、ヘレネへの怨嗟を遺して連れ去られた後、合唱はかつてのトロイアの栄光と神々の寵愛が虚しく消え去った悲劇を歌う。その後、メネラオスが登場し、ヘレネに復讐して連行する決意を宣言する。
- §874-954
メネラオスの処刑宣告とヘレネの弁明の始まり
メネラオスはヘレネをギリシアで処刑する決定を下し、彼女を連行しようとする。ヘレネは自己弁護の機会を求め、自らの行動は神々(アプロディテ)の力によるものであり、自らには罪がないと弁明を始める。
- §955-1038
ヘレネの自己弁護とヘカベによる反論
ヘレネは自分が力ずくで連れ去られ、脱出を試みたと主張して自己弁護を行うが、ヘカベは彼女が自身の欲望と虚栄心のために自発的に従ったのだと反論し、メネラオスに刑の執行を促す。
- §1039-1146
ヘレネの連行とアスティアナクスの遺体の返還
メネラオスはヘレネに死罪を宣告し、自身の船に同乗させないことを承諾する。その後、コーラスが神々に見捨てられたトロイアの滅亡を悲しみ、伝令タルテュビオスはヘカベのもとへアスティアナクスの亡骸を運んで、ヘクトルの盾を用いて埋葬するよう伝える。
- §1147-1232
アスティアナクスの遺骸の埋葬準備とヘカベの嘆き
タルテュビオスが墓を掘りに行く間、ヘカベはアスティアナクスの遺骸をヘクトルの盾の上に横たえ、ギリシア人の残酷さを非難し、子供の短い生涯を深く悼み、現有する衣服や花冠で彼を埋葬するために装い整える。
- §1233-1332
トロイアの炎上とヘカベたちの出立
ヘカベとコーラスがアストュアナクスの死を悼む中、タルテュビオスが現れてトロイアの街を焼き払うよう兵士に命じ、ヘカベたち捕虜を出航のために連行する。ヘカベは燃え盛る祖国の崩壊を前に最後の哀歌を歌いながら、奴隷としての未来へ歩みを進める。
