底本
Euripides. Euripidis Fabulae, Vol. I. Murray, Gilbert, editor. Oxford: Clarendon Press, 1902.
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA 4.0
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要旨
本作は、夫アドメトスの身代わりとなって死ぬことを受け入れた高潔な妻アルケスティスをめぐる劇作品である。舞台はアドメトスの館の前であり、アポロンと死神タナトスの対話から劇が始まる。アルケスティスは夫や子供たちとの悲痛な別れの末に息を引き取り、館は深い喪に服す。その最中、英雄ヘラクレスが館を訪れ、アドメトスは悲しみを隠して彼を温かくもてなす。しかし、葬儀の場でのアドメトスと父フェレスとの醜い自己愛の応酬や、真実を知ったヘラクレスの行動により事態は一変する。ヘラクレスは自身の不作法を恥じ、死の神と戦ってアルケスティスを冥界から奪い返す。最後は、ベールに包まれた女性として妻を夫のもとへ連れ戻すことで、奇跡的な大団円を迎える。
目次
13 チャンク
引用方式:line
- §1-85
アポロンの口上とタナトスとの対決
アポロンがアドメトスの館の前に現れ、かつて彼に仕えた経緯と、その妻アルケスティスが本日夫の身代わりに死ぬ運命にあることを語る。そこへ死神タナトスが現れ、アポロンと激しい議論を交わした末、彼女の魂を連れ去るために館へと入っていく。
- §86-187
コーラスの不安とアルケスティスの最期を語る侍女
アルケスティスの死を控えて悲嘆に暮れながら兆候を探し求めるコーラスの前に、一人の侍女が涙を流して現れる。侍女は、アルケスティスが寝室や館の祭壇を巡り、自らの死と引き換えに家族の未来を祈りながら静かに最期の準備を整えた様子を詳しく報告する。
- §188-281
アルケスティスの登場とアドメトスへの別れの告解
アルケスティスとアドメトスの哀痛に満ちた別れが描かれる。臨終の間際にあるアルケスティスが夫に伴われて登場し、冥府の幻影を見ながら家族に最後の別れを告げる。
- §282-360
アルケスティスの懇願とアドメトスの誓い
アルケスティスは、夫アドメトスの代わりに自分が死ぬことを選んだ理由を語り、子供たちのために継母を娶らないでほしいと懇願する。アドメトスはこれを承諾し、一生彼女への喪に服し、彼女の像をベッドに横たえて愛し続けると誓う。
- §361-457
アルケスティスの死とアドメトスによる服喪の命令
アルケスティスは夫や子供たちに見守られながら静かに息を引き取り、子供たちは母の死を深く嘆き悲しむ。悲嘆に暮れるアドメトスは、国全体に喪に服することを命じ、歌隊は地下冥界へと去るアルケスティスの高潔な犠牲を称えて歌う。
- §458-540
アルケスティスの賛美とヘラクレスの来訪
歌隊はアルケスティスの気高さを称え、冥府への旅立ちを見送る。そこへヘラクレスが登場し、ディオメデスの馬を捕らえる労役の途上であることを告げ、喪中のアドメトスと対面する。
- §541-639
ヘラクレスへの歓待とフェレスの贈り物への拒絶
アドメトスはヘラクレスを引き留めて離れの客室に案内させ、悲しみの中にありながら客を歓迎する。そこへ父フェレスがアルケスティスへの贈り物を携えて現れるが、アドメトスはかつて自分のために死を拒んだ父を激しく非難し、贈り物を拒絶する。
- §640-717
アドメトスと父フェレスの激しい非難の応酬
アドメトスと父フェレスが、互いの自己愛と臆病さを激しく糾弾し合い、親子の関係が決裂する。
- §718-800
フェレスの退場とヘラクレスによる享楽の勧め
アドメトスとペレスは非難を浴びせ合いながら決別し、アルケスティスの葬列が出発する。その後、客人ヘラクレスの不謹慎な宴会に憤る使用人に対し、ヘラクレス自身が現れて人間の死すべき定めと現世享楽の重要性を説く。
- §801-888
ヘラクレスの奪還の決意とアドメトスの帰館の嘆き
ヘラクレスは召使との対話から亡くなったのがアドメトスの妻アルケスティスであることを知り、己の非礼を恥じるとともに、死の神タナトスと戦って彼女を取り戻す決意をする。その後、葬儀から戻ったアドメトスは妻のいない館を見て深い絶望に陥り、結婚し子供をもうけたことを激しく後悔する。
- §889-1001
アドメトスの後悔の嘆きと必然の女神への合唱
妻を失ったアドメトスが館に戻り、婚礼の日と現在の孤独な境遇との落差を嘆き、自らの生き恥を吐露する。コーラスは必然の女神(アナンケ)の不可避の力について歌い、亡き妻アルケスティスを神の如く崇めるよう慰める。
- §1002-1082
ヘラクレスの女の預託とアドメトスの拒絶
アルケスティスの墓に人々が祈りを捧げる中、ヘラクレスが女を伴って戻り、勝負の景品として得たこの女を預かってほしいとアドメトスに頼む。アドメトスは亡き妻への不敬や悲しみの再燃を恐れて断るが、女の姿がアルケスティスに酷似していることに動揺する。
- §1083-1163
アルケスティスの帰還と夫婦の再会
ヘラクレスはアドメトスに競技で得たという女性を力ずくで預けようとする。アドメトスがしぶしぶ手を取ると、それが冥府から連れ戻された妻アルケスティスであることが判明し、劇は奇跡的な大団円を迎える。
