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アルケスティス

§458-540

アルケスティスの賛美とヘラクレスの来訪

歌隊はアルケスティスの気高さを称え、冥府への旅立ちを見送る。そこへヘラクレスが登場し、ディオメデスの馬を捕らえる労役の途上であることを告げ、喪中のアドメトスと対面する。

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458

καὶ Κωκυτοῖο ῥεέθρων

そしてコキュトスの流れから、

ποταμίᾳ νερτέρᾳ τε κώπᾳ.

冥界の川の櫂によって(お前を連れ戻すことができたなら)。

460

σὺ γὰρ ὤ, μόνα, ὦ φίλα γυναικῶν,

なぜなら、ただ一人、ああ、女たちの中で最も愛する人よ、

σὺ τὸν αὑτᾶς

あなたは自分の

ἔτλας πόσιν ἀντὶ σᾶς ἀμεῖψαι

命の代わりに、夫をハデスから引き換えて救うことをあえてしたのだから。あなたの上に

ψυχᾶς ἐξ Ἅιδα. κούφα σοι

土が軽やかに降りかからんことを、妻よ。もし何か

χθὼν ἐπάνωθε πέσοι, γύναι. εἰ δέ τι

新しい妻を夫が選ぶようなことがあれば、本当に私にとっても、

καινὸν ἕλοιτο πόσις λέχος, ἦ μάλ’ ἂν ἔμοιγ’ ἂν εἴηστυγηθεὶς τέκνοις τε τοῖς σοῖς.

そしてあなたの子供たちにとっても、彼は憎むべき者となるでしょう。

ματέρος οὐ θελούσας

子供のためにその体を土に隠すことを

πρὸ παιδὸς χθονὶ κρύψαι

望まなかった母親も、老いた父親も、

δέμας, οὐδὲ πατρὸς γεραιοῦ,

自分が生んだ子を救う勇気がなかった。

ὃν ἔτεκον δʼ, οὐκ ἔτλαν ῥύεσθαι,

白髪の頭を持っていながら、

470

σχετλίω,1 πολιὰν ἔχοντε χαίταν.

無情な二人よ。

σὺ δ’ ἐν ἥβᾳ

だがあなたは若い

νέᾳ προθανοῦσα φωτὸς οἴχῃ.

青春のうちに、身代わりに死んで、光から去って行く。

τοιαύτας εἴη μοι κῦρσαι

私にもそのような愛する伴侶に

συνδυάδος φιλίας· τοῦτο γὰρ

出会う幸運がありますように。これは

ἐν βιότῳ σπάνιον μέρος· ἦ γὰρ ἂν ἔμοιγ’ ἄλυπος

人生において稀な恵みなのだから。そのような妻ならば、一生を

475

δι’ αἰῶνος ἂν ξυνείη.

苦しみなくともに過ごしてくれるだろうに。

ξένοι, Φεραίας τῆσδε κωμῆται χθονός,

(ヘラクレス)異邦人たちよ、このフェライの土地の村人たちよ、

Ἄδμητον ἐν δόμοισιν ἆρα κιγχάνω;

アドメトスを館の中に見つけることができるだろうか。

ἔστ’ ἐν δόμοισι παῖς Φέρητος, Ἡράκλεις.

(歌隊長)フェレスの子は館におられます、ヘラクレスよ。

ἀλλ’ εἰπὲ χρεία τίς σε Θεσσαλῶν χθόνα

だが、どのような必要があなたをテッサリアの地へと

480

πέμπει, Φεραῖον ἄστυ προσβῆναι τόδε.

送り、このフェライの町へと来させたのか、話してください。

Τιρυνθίῳ πράσσω τιν’ Εὐρυσθεῖ πόνον.

(ヘラクレス)ティリュンスのエウリュステウスのために、ある労役を遂行しているのだ。

καὶ ποῖ πορεύῃ; τῷ προσέζευξαι πλάνῳ;

(歌隊長)そしてどこへ行かれるのですか。どのような旅に繋がれているのですか。

Θρῃκὸς τέτρωρον ἅρμα Διομήδους μέτα.

(ヘラクレス)トラキアのディオメデスの四頭立ての戦車を求めてだ。

πῶς οὖν δυνήσῃ; μῶν ἄπειρος εἶ ξένου;

(歌隊長)では、どうやって手に入れるつもりですか。まさか、そのもてなす主のことを知らないのではないですか。

485

ἄπειρος· οὔπω Βιστόνων ἦλθον χθόνα.

(ヘラクレス)知らない。まだビストネス人の土地へは行ったことがない。

οὐκ ἔστιν ἵππων δεσπόσαι σ’ ἄνευ μάχης.

(歌隊長)戦いなしにその馬たちを手に入れることは不可能です。

ἀλλ’ οὐδ’ ἀπειπεῖν μὴν πόνους οἷόν τ’ ἐμοί.

(ヘラクレス)だが、私にとって労役を断ることもまた不可能なのだ。

κτανὼν ἄρ’ ἥξεις ἢ θανὼν αὐτοῦ μενεῖς.

(歌隊長)では、彼を殺して戻るか、あるいは死んでそこにとどまるかのどちらかですね。

οὐ τόνδ’ ἀγῶνα πρῶτον ἂν δράμοιμ’2 ἐγώ.

(ヘラクレス)そのような闘いを経験するのは、これが初めてではない。

490

τί δ’ ἂν κρατήσας δεσπότην πλέον λάβοις;

(歌隊長)では、その主人に勝ったとして、ほかに何を得るのですか。

πώλους ἀπάξω κοιράνῳ Τιρυνθίῳ.

(ヘラクレス)馬たちをティリュンスの支配者のもとへ連れ帰るのだ。

οὐκ εὐμαρὲς χαλινὸν ἐμβαλεῖν γνάθοις.

(歌隊長)彼らの顎に轡をはめるのは容易ではありません。

εἰ μή γε πῦρ πνέουσι μυκτήρων ἄπο.

(ヘラクレス)鼻の穴から火を吹き出しているのでなければな。

ἀλλ’ ἄνδρας ἀρταμοῦσι λαιψηραῖς γνάθοις.

(歌隊長)いや、彼らは素早い顎で人間を引き裂き貪り食うのです。

495

θηρῶν ὀρείων χόρτον, οὐχ ἵππων, λέγεις.

(ヘラクレス)お前が言っているのは山の野獣の餌だ、馬のそれではない。

φάτνας ἴδοις ἂν αἵμασιν πεφυρμένας.

(歌隊長)血にまみれた飼い葉桶を目にすることになるでしょう。

τίνος δ’ ὁ θρέψας παῖς πατρὸς κομπάζεται;

(ヘラクレス)彼らを育てた主は、誰の息子だと誇っているのか。

Ἄρεος, ζαχρύσου Θρῃκίας πέλτης ἄναξ.

(歌隊長)アレス(の息子)です。黄金に富むトラキアの盾の君主です。

καὶ τόνδε τοὐμοῦ δαίμονος πόνον λέγεις·

(ヘラクレス)それもまた、私の運命が課す労役を言っているのだな。

500

σκληρὸς γὰρ αἰεὶ καὶ πρὸς αἶπος ἔρχεται·

常に過酷で、険しい坂を登るようだ。

εἰ χρή με παισὶν οἷς Ἄρης ἐγείνατο

もし私がアレスが生み出した子たちと

μάχην συνάψαι, πρῶτα μὲν Λυκάονι,

戦わねばならぬなら、まずはリュカオン、

αὖθις δὲ Κύκνῳ, τόνδε δ’ ἔρχομαι τρίτον

次にはククノス、そして今度は三度目の

ἀγῶνα πώλοις δεσπότῃ τε συμβαλῶν.

闘いとして、馬たちとその主人に立ち向かうために行くのだ。

505

ἀλλ’ οὔτις ἔστιν ὃς τὸν Ἀλκμήνης γόνον

だが、アルクメネの息子が

τρέσαντα χεῖρα πολεμίαν ποτ’ ὄψεται.

敵の前に手を震わせるのを見る者は、一人としていないだろう。

καὶ μὴν ὅδ’ αὐτὸς τῆσδε κοίρανος χθονὸς

(歌隊長)おや、この土地の支配者である

Ἄδμητος ἔξω δωμάτων πορεύεται.

アドメトス自身が、館の外へ出てこられます。

χαῖρʼ, ὦ Διὸς παῖ Περσέως τ’ ἀφ’ αἵματος.

(アドメトス)お健やかに、ゼウスの子よ、そしてペルセウスの血を引くお方よ。

510

Ἄδμητε, καὶ σὺ χαῖρε, Θεσσαλῶν ἄναξ.

(ヘラクレス)アドメトスよ、あなたもお健やかに、テッサリア人の王よ。

θέλοιμ’ ἄν· εὔνουν δ’ ὄντα σ’ ἐξεπίσταμαι.

(アドメトス)そうありたいものだ。あなたが私に好意を寄せてくれていることはよく知っている。

τί χρῆμα κουρᾷ τῇδε πενθίμῳ πρέπεις;

(ヘラクレス)どうしてそのような喪の刈り込みをしているのですか。

θάπτειν τιν’ ἐν τῇδ’ ἡμέρᾳ μέλλω νεκρόν.

(アドメトス)今日、ある死者を葬ることになっているのだ。

ἀπ’ οὖν τέκνων σῶν πημονὴν εἴργοι θεός.

(ヘラクレス)では、神があなたの子供たちから災いを遠ざけてくださるように。

515

ζῶσιν κατ’ οἴκους παῖδες οὓς ἔφυσ’ ἐγώ.

(アドメトス)私がもうけた子供たちは、館で生きておる。

πατήρ γε μὴν ὡραῖος, εἴπερ οἴχεται.

(ヘラクレス)では父親か。もし亡くなったのなら、十分にその時を迎えたのだろうが。

κἀκεῖνος ἔστι χἡ τεκοῦσά μʼ, Ἡράκλεις.

(アドメトス)父も、私を産んだ母も生きておる、ヘラクレスよ。

οὐ μὴν γυνή γ’ ὄλωλεν Ἄλκηστις σέθεν;

(ヘラクレス)まさか、あなたの妻アルケスティスが亡くなったのではないだろうね。

διπλοῦς ἐπ’ αὐτῇ μῦθος ἔστι μοι λέγειν.3

(アドメトス)彼女については、二通りの言い方ができるのだ。

520

πότερα θανούσης εἶπας ἢ ζώσης ἔτι;

(ヘラクレス)亡くなったと言うのか、それともまだ生きていると言うのか。

ἔστιν τε κοὐκέτ’ ἔστιν, ἀλγύνει δ’ ἐμέ.

(アドメトス)生きており、かつ、もう生きてはいない。それが私を苦しめる。

οὐδέν τι μᾶλλον οἶδʼ· ἄσημα γὰρ λέγεις.

(ヘラクレス)さっぱりわからない。あなたの言うことは不明瞭だ。

οὐκ οἶσθα μοίρας ἧς τυχεῖν αὐτὴν χρεών;

(アドメトス)彼女がどのような運命に遭わねばならぬか、知らないのか。

οἶδʼ, ἀντὶ σοῦ γε κατθανεῖν ὑφειμένην.

(ヘラクレス)知っている。あなたの身代わりに死ぬことを引き受けたことを。

525

πῶς οὖν ἔτ’ ἔστιν, εἴπερ ᾔνεσεν τάδε;

(ヘラクレス)それなら、どうしてまだ生きていると言うのか、彼女がそれを承諾したのなら。

ἆ, μὴ πρόκλαι’ ἄκοιτιν, ἐς τότ’ ἀμβαλοῦ.

(アドメトス)ああ、妻をあらかじめ泣いてくれるな、その時まで待ってくれ。

τέθνηχ’ ὁ μέλλων,4 κοὐκέτ’ ἔσθ’ ὁ κατθανών.

(アドメトス)死ぬことが定められている者は死んだも同然であり、死んだ者はもはや存在しない。

χωρὶς τό τ’ εἶναι καὶ τὸ μὴ νομίζεται.

(ヘラクレス)存在することと、存在しないことは、別々のことと考えられているが。

σὺ τῇδε κρίνεις, Ἡράκλεις, κείνῃ δ’ ἐγώ.

(アドメトス)ヘラクレスよ、お前はそのように判断し、私はあのように判断するのだ。

530

τί δῆτα κλαίεις; τίς φίλων ὁ κατθανών;

(ヘラクレス)では、なぜ泣くのだ。親しい者のうち、誰が亡くなったのだ。

γυνή· γυναικὸς ἀρτίως μεμνήμεθα.

(アドメトス)一人の女だ。さきほどその女のことを話題にしていたのだ。

ὀθνεῖος ἢ σοὶ συγγενὴς γεγῶσά τις;

(ヘラクレス)他国の人か、それともあなたの親族の者か。

ὀθνεῖος, ἄλλως δ’ ἦν ἀναγκαία δόμοις.

(アドメトス)他国の人だ。だが、別の意味でこの館には不可欠な者だった。

πῶς οὖν ἐν οἴκοις σοῖσιν ὤλεσεν βίον;

(ヘラクレス)では、どうしてあなたの館で命を落としたのだ。

535

πατρὸς θανόντος ἐνθάδ’ ὠρφανεύετο.

(アドメトス)父親が亡くなったため、ここで孤児として育てられていたのだ。

φεῦ.

(ヘラクレス)ああ。

εἴθ’ ηὕρομέν σʼ, Ἄδμητε, μὴ λυπούμενον.

(ヘラクレス)アドメトスよ、あなたが悲しんでいない時にあなたを見出せていたらよかったのだが。

ὡς δὴ τί δράσων τόνδ’ ὑπορράπτεις λόγον;

(アドメトス)一体何をしようとして、そのような言葉を織り交ぜるのか。

ξένων πρὸς ἄλλων ἑστίαν πορεύσομαι.

(ヘラクレス)私は他のもてなし主の炉端へ行くとしよう。

οὐκ ἔστιν, ὦναξ· μὴ τοσόνδ’ ἔλθοι κακόν.

(アドメトス)とんでもない、王よ。そのような不吉なことが起こりませんように。

540

λυπουμένοις ὀχληρός, εἰ μόλοι, ξένος.

(ヘラクレス)悲しんでいる人々にとって、客が訪れるのは煩わしいことだ。

構文注4 件
  1. 470σχετλίω

    属格絶対における分詞句 ματέρος οὐ θελούσας... と οὐδὲ πατρὸς... によって導入された「母親」と「父親」を先行詞とする、主格双数形の形容詞 σχετλίω と分詞 ἔχοντε。文法的には彼らを感嘆的に修飾しており、「白髪がありながら(わが子を救うのを拒んだ)無情な二人」を指す。

  2. 489ἂν δράμοιμʼ

    小辞 ἄν を伴う希求法(潜在希求法)で、未来の可能性や確信を示す(「〜することはないだろう」)。また、ἀγῶνα(競争、闘い)は動詞 τρέχω(走る)の過去形 ἔδραμον(ここでは希求法 δράμοιμι)と同族対格の関係にあり、「闘いに挑む」という比喩的な表現を構成している。

  3. 519ἔστι μοι λέγειν

    非人称的に使われる ἔστι(「〜することが可能である」)に与格 μοι と不定詞 λέγειν が続く構文。アドメトスはアルケスティスの状態(肉体はまだ生きているが、死が決定しているため死んでいるも同然であること)を曖昧に表現するために、この「二通りの解釈ができる(διπλοῦς... μῦθος)語り方が可能である」という言い回しを用いている。

  4. 527ὁ μέλλων

    形容詞的に使われる現在分詞 ὁ μέλλων は、文脈上「(死ぬことが)定められている者」を意味し、本来は ὁ μέλλων θανεῖσθαι の略。動詞 τέθνηκ’(完了形:死んでいる)の主語となり、「死ぬ運命にある者は死んだも同然である」というアドメトスの逆説的な論理を示している。

翻訳:Gemini 3.5 Flash(2026-05-22 公開)・修正履歴(1 件・最終 2026-09-21)
  • 2026-09-21 AI校閲 — 訳文 1 件
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