底本
Platonis Opera, Tomus I: Tetralogia I-II. Burnet, John, 1863-1928, editor. Oxford: Clarendon Press, 1905.
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA (Perseus の利用条件による)
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要旨
本作は、アテナイの法廷に立たされた哲学者ソクラテスが、国家の神々を信じず若者を堕落させたという容疑に対して行った弁明の記録である。ソクラテスは、自身に向けられた長年の偏見の源泉が「自分は何も知らない」という自覚(無知の知)にあることを明かし、デルポイの神託の謎を解くために知者を吟味してきた歩みを語る。さらに、自身を告発したメレトスと問答を交わして告発の矛盾を暴き、自らの活動は国家に資するために神から与えられた使命であることを力説する。有罪判決が下された後も、彼は死を恐れることなく、魂の配慮と徳の追求の重要性を訴え続ける。最後には死刑が確定するが、死は恐るべきものではなくむしろ新たな探求の始まりであると語り、生と死のどちらが最善かは神のみが知るという言葉で弁明を締めくくる。
目次
19 チャンク
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- §17-18
真実を語る宣言と古い告発者たちへの弁明の着手
ソクラテスは告発者たちの偽りの説得力を非難し、自身は飾らない真実のみを語ることを宣言するとともに、法廷という不慣れな場での発言態度への寛容を求め、自らに対する古い偏見に基づく最初の告発者たちと最近の告発者たちを区別して前者から弁明を始める意図を示す。
- §19
古い中傷の内容と自然探究や報酬の否定
ソクラテスは、古くからの偏見を短時間で晴らすことの困難さを認めつつ、彼らの架空の告訴状(自然探求と詭弁)を提示し、それらが事実無根であること、また教育の報酬を得ているという噂も誤りであることを主張する。
- §20
教育者としての知恵の否定と人間的な知恵
ソクラテスはカリアスとの対話を引き合いに出し、ソフィストたちの高額な教育費に対して自分にはそのような知識がないことを述べる。そして、世間の疑問に答える形で、自分に偏見をもたらした「人間的な知恵」について語り始め、神託の証人としてデルポイの神を挙げる。
- §21
デルポイの神託の吟味と政治家たちの無知の暴露
ソクラテスは、友人カイレポンが受け取った「ソクラテスより知恵のある者はいない」というデルポイの神託の謎を解くために、知者とされる政治家たちを訪ね、彼らが実際は無知であるにもかかわらず知者であると自負していることを暴いた経験を語る。
- §22-23
詩人と職人の吟味とソクラテスへの反感の起源
ソクラテスは、政治家に続いて詩人や職人たちを吟味したが、彼らも自らの専門分野の知識から他の重大な事柄までも知っているとうぬぼれていることを見出し、知恵の欠如を自覚する自身の優位性を再確認する。この吟味活動が多くの憎悪と「知者」という偏見を生み、彼を弁護する者への言いがかりへと繋がっていったことを説明する。
- §24
新たな告発者たちとメレトスへの反対尋問の開始
ソクラテスに対する主な告発者たちが挙げられ、後半の新しい告発(若者の堕落、不敬神)に対して、ソクラテスとメレトスによる法廷での直接の問答が開始される。
- §25
調馬師の比喩と青年の堕落に関するメレトスへの論駁
ソクラテスはメレトスに対し、アテナイ人全員が若者を教育し自分一人だけが堕落させているという主張の荒唐無稽さを、馬の調教師の比喩を用いて暴く。さらに、自己に害が及ぶことを避けるため誰も故意に他人を悪くすることはないと述べ、故意に堕落させたとする告訴の矛盾を突く。
- §26
青年の無意図的な堕落と無神論の告発への反駁
ソクラテスは、メレトスの「意図的な若者への害毒」という主張が論理的に矛盾していること(無意図的な過失には法的な処罰ではなく合理的な教育が社会に利益をもたらすこと)を説き、またメレトスが主張する無神論の告発内容が、実際にはアラクサゴラスの自然哲学の混同に過ぎないことを明らかにする。
- §27
メレトスの告訴の自己矛盾とダイモーンへの信仰の論証
ソクラテスはメレトスの告訴状が『ソクラテスは神を信じていないが、信じている』という矛盾を含んだなぞなぞであると指摘し、彼が霊的な事柄を信じると主張する以上、その前提となるダイモーンや神々を信じているはずだと論証する。
- §28
大衆の偏見と死を恐れぬ神的使命の遂行
ソクラテスは、自分への偏見と嫉妬こそが有罪をもたらす真の原因であると語り、死を恐れて哲学の探求という神的使命から逃れることは、アキレウスなどの半神たちの誇り高い生き方に反すると主張する。
- §29
死を恐れる無知と哲学の継続の決意
ソクラテスは、死を恐れることは自分が知らないことを知っていると思う無知であると主張し、神の命令に従って哲学の探求を続ける決意を表明する。
- §30
魂への配慮の促しと国家のアブとしての使命
ソクラテスは、市民に対して徳を追求し魂を配慮するよう促す自らの活動が神命によるものであり、国家にとって最大の善益であることを強調する。また、自身を眠れる巨大な馬(国家)を呼び起こすアブに例え、自らを死刑に処すことはアテネ市民自身に多大な害をもたらすことになると警告する。
- §31-32
ダイモーンの合図と政治活動を避けた理由
ソクラテスは自身が神から遣わされた存在であることを強調し、公的な政治活動から距離を置き個人的な対話に専念してきた理由を、彼に臨む「ダイモーンの声」と、公の場では正義を守りながら生き残ることは不可能であるという現実を交えて説明する。さらに、かつて民主制および三十人僭主政の下で、死を恐れずに不法な命令に反対した自身の具体的な活動を証拠として挙げる。
- §33
教師ではない立場と青年たちの親族による支持
ソクラテスは、自身が生涯を通じて正義に反して誰とも妥協せず、誰に対しても報酬の有無を問わず対話を開いてきたこと、特定の教師になったことはないことを主張する。さらに、彼によって若者が堕落させられたという告発の虚偽を証明するため、法廷に傍聴に来ている若者たちの父親や兄弟など、多くの親族の具体名を挙げて、彼らが誰も自分を非難していないことを示す。
- §34-35
感情に訴える哀願の拒否と法廷の尊厳
ソクラテスは、親族たちが彼を弁護している事実を示しつつ、法廷で涙ながらに哀願したり子供たちを壇上に登らせたりする見苦しい行為を拒否する理由を、自己と国家の名誉、および裁判官の職責の観点から説明する。
- §36-37
対抗刑としてのプリュタネイオンでの食事の提案
有罪判決を受けたソクラテスは、僅差の投票結果に驚きを述べつつ、自身への対抗刑として国賓待遇であるプリュタネイオンでの食事提供を堂々と提案する。さらに、追放や罰金などの刑罰を自ら選ぶこと、あるいは他国で沈黙して生きることの不可能性を語る。
- §38-39
罰金刑の対抗提案と死刑宣告後の予言
ソクラテスは、沈黙して生きることは神への不服従であり不可能だと述べ、友人たちの支援を得て30ミナの罰金刑を最終提案する。死刑判決の後、彼は自身に有罪を投票した者たちへは過酷な報復を予告し、無罪を投票した者たちへは死を前にした対話を呼びかける。
- §40
神の合図の沈黙と死についての二つの解釈
ソクラテスは無罪を宣告した陪審員たちに向けて、自らの「神的な声」が一度も自分を静止しなかったことを挙げ、今回の死刑判決が善いものであるという確信を述べる。そして、死が完全な無(眠り)であるか、あるいは魂の移住であるかの二者択一であり、いずれにしても恐るべきものではないことを論じる。
- §41-42
冥府における対話への期待と結びの言葉
ソクラテスは、死が冥府への旅立ちであるならば、真の裁判官や古代の賢者・英雄たちと対話し、彼らを吟味できるため、極めて素晴らしい幸運であると論じ、死への希望を語ります。そして、陪審員たちに自分の息子たちが成長した際に美徳を追求するよう厳しく導くことを頼み、生と死のどちらが善いものかは神のみぞ知るという言葉で弁明を締めくくります。
