サッルスティウス · Sallust
カティリナの陰謀
The Conspiracy of Catiline
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底本
Sallust. C. Sallusti Crispi Catilina, Iugurtha, orationes et epistulae excerptae de historiis. Ahlberg, Axel Wilhelm, editor. Leipzig: Teubner, 1919.
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA (Perseus の利用条件による)
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要旨
本書は、紀元前1世紀の共和政末期のローマで起きた「カティリーナの陰謀」の全貌を、歴史家サッルスティウスが描いた歴史書です。著者は、政治の腐敗から離れて歴史執筆を志した自らの経緯を述べつつ、主謀者カティリーナの邪悪で非凡な個性と、当時のローマ社会の倫理的没落を背景として描き出します。物語は、困窮した貴族や若者たちを集めて国家転覆を企むカティリーナと、それを阻止せんとする執政官キケロらの暗闘を中心に展開します。陰謀が暴かれ市内の共謀者たちが逮捕されると、元老院ではその処遇をめぐり、寛大な対処を求めるカエサルと即時の死刑を主張する小カトの間で、国家のあり方を問う雄弁な論戦が交わされます。最終的に共謀者たちは処刑され、退路を断たれたカティリーナも反乱軍を率いて決死の戦いの末に戦死します。一連の劇的な事件を通じて、共和政ローマの美徳の喪失と政治的混乱を鮮烈に活写した作品です。
目次
21 チャンク
引用方式:chapter
- §1-3
精神の優越と歴史執筆への転進
人間における精神の優越性を説き、国家への貢献方法として軍事や政治だけでなく、歴史の執筆活動もまた重要かつ困難な役割であることを主張し、著者が政治を志しながらもその腐敗から離れて執筆を志した経緯を述べる。
- §4-6
カティリーナの人柄と初期ローマ史の回顧
著者は政治から離れて歴史執筆を決意した経緯を述べ、カティリーナの邪悪で並外れた個性を描く。さらにローマの起源から、いかに王政が確立し、やがて執政官制へと移行したかという歴史を振り返る。
- §7-10
自由の獲得によるローマの隆盛と風俗の堕落
ローマ国家が自由を獲得した後の目覚ましい成長、市民たちの美徳と簡素な風俗がアテナイとの比較を交えて語られ、その後、対外征服の完了に伴う富と支配欲の増大がもたらした倫理的堕落への過程が語られる。
- §11-14
スッラ以後の風紀の頽廃とカティリーナの誘惑
スッラによる独裁とその兵士たちの堕落を契機として、ローマ社会において貪欲と奢侈が蔓延し、美徳が失われていった過程が描かれる。カティリーナはこのような退廃した環境を利用し、社会の爪弾き者や若者たちを自らの陣営に引き込んでいった。
- §15-18
カティリーナの重罪と第1次陰謀の企て
カティリーナの個人的な犯罪や悪辣な品行、若者たちへの悪影響、陰謀団の結成、そして第1次カティリーナ陰謀の背景と経緯が描かれる。
- §19-20
ピソの死と共謀者に対するカティリーナの演説
ピソのヒスパニア派遣とその死が語られた後、カティリーナが陰謀の参加者を秘密裏に集めて国家の現状を批判し、彼らを扇動して決起を促す演説を行う。
- §21-24
陰謀の誓約と漏洩およびキケロの執政官選出
カティリーナは困窮する同盟者たちに具体的な恩恵を約束して彼らを鼓舞し、極悪な誓いを立てさせて連帯を強めた。一方で、陰謀に加わっていたクリウスの放言から計画がフルウィアを通じて漏洩し、危機感を抱いた市民や貴族たちは新人であるキケロを執政官に選出したが、カティリーナはなおも各地で挙兵の準備を進めた。
- §25-29
センプローニアの人物像と元老院最終勧告
カティリーナの陰謀の加担者であった野心的な女性センプローニアの人物像が描かれ、続いて、執政官選挙で再び落選したカティリーナが武力蜂起を決意する。キケロ暗殺の計画が事前に密告によって阻止されると、カティリーナのイタリア各地での不穏な動きに対し、元老院は「元老院最終勧告」を決議して執政官に最高権限を与える。
- §30-32
マンリウスの蜂起とカティリーナのローマ脱出
エトルリアでのマンリウスの武装蜂起の報告を受けてローマ市内で防衛策が講じられる中、カティリーナは元老院での糾弾を避けてローマを脱出し、軍営へと向かう。
- §33-36
マンリウスの嘆願とカティリーナ陣営の国家の敵宣言
マンリウスはマルキウス・レクスに不当な借金からの救済を求める嘆願を送るが、元老院側は武装解除を要求する。カティリーナはカトゥルスに弁明の手紙を送った後、マンリウスの陣営に合流し、元老院は彼らを国家の敵と宣言する。
- §37-39
民衆の不満と陰謀を支えたローマの国内情勢
カティリーナの陰謀を支持したローマ市民たちの背景(社会的不満や過去の勝利の記憶など)が分析され、ポンペイウスの不在によって少数者の支配が強化されていた国内情勢が語られる。
- §40-43
アッロブロゲス族の密告とレントゥルスの計画
レントゥルスはウムブレヌスを通じてアッロブロゲス族の使節たちを陰謀に引き込もうとするが、使節たちは思案の末、パトロンを通じてキケロにすべてを密告する。一方、ローマ各地での性急な不穏な動きが鎮圧される中で、レントゥルスらはキケロ暗殺や放火を含む具体的な実行計画を企てる。
- §44-47
ミルウィウス橋の逮捕劇とレントゥルスらの軟禁
アッロブロゲス族の使節たちは、キケロの指示通りに陰謀の首謀者たちから誓約書を入手した後にミルウィウス橋で捕らえられる。元老院で証拠が提示された結果、レントゥルスをはじめとする共謀者たちは逮捕され、有力政界人のもとに軟禁される。
- §48-50
民衆の変心とクラッススやカエサルへの告発
陰謀の暴露により民衆がカティリーナを呪いキケロを称える中、クラッススやカエサルを陰謀に巻き込もうとする画策や告発が起き、元老院では拘留者たちの処遇を巡って議論が始まる。
- §51#1
カエサルの演説と死刑に対する慎重論
カエサルは元老院に対し、怒りや憐れみなどの感情を排して客観的に審議するよう求め、先祖の寛大な先例を引く。また、シラヌスらが主張する極刑(死刑)はかえって法の逸脱となり、死そのものは苦痛の救済にすぎないと論じて、違法な厳罰化を戒める。
- §51#2
悪しき先例への警告とカエサルの対案
カエサルは、叛徒に対する超法規的処刑が将来の濫用を招く危険な先例となることを歴史的実例(アテナイの三十人政権やスッラの粛清)から警告し、代わりに財産没収と各自治市での永久拘留を提案する。
- §52#1
小カトの演説と厳罰の要求
カエサルの演説の後、小カトが発言に立ち、陰謀者たちの危険性と彼らに対する断固たる処罰の必要性を訴え、カエサルの寛大な提案を批判する。
- §52#2
先祖の美徳の称賛と陰謀者の即時処刑の提議
カトは、先祖の偉大さは武力ではなく内政の勤勉と公正な支配にあったとし、元老院の怠惰を厳しく非難する。そして、国家転覆を企てた陰謀者たちには一切容赦せず、先祖の慣行に従って直ちに処刑を執行すべきだと提議する。
- §53-56
カエサルとカトの比較と陰謀者の処刑
カトの演説によって元老院は死刑を議決する。著者は当時のローマを支えたカトとカエサルの二人の卓越した人物の天性と徳を比較し、続いて、逮捕された陰謀者たちの処刑と、カティリーナによる軍勢の編成および奴隷の拒絶について述べる。
- §57-58
カティリーナの退路遮断と決戦前の演説
カティリーナはローマでの陰謀発覚を知ってガリアへの逃亡を試みるが、メテッルスとアントニウスの軍に退路を断たれ決戦を決意する。彼は兵士たちを前に、決死の覚悟で戦うよう呼びかける演説を行う。
- §59-61
ピストリアの決戦とカティリーナの戦死
カティリーナとペトレイウスはそれぞれ布陣を整え、決戦の火蓋が切られる。カティリーナは自ら最前線で奮戦するも大勢が決し、敵陣へ突撃して戦死する。
