ルキアノス · Lucian
二重に訴えられて
The Double Indictment or Trials by Jury
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底本
Lucian, Vol. 3. Harmon, Austin Morris, editor. London: William Heinemann, Ltd.; Cambridge, MA: Harvard University Press, 1921.
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA 4.0
Humanitext がクローン・再構成し、継続的に更新しています。
要旨
本作は、天上と地上のアテナイを舞台に、神々が滞った裁判を処理するために開催した法廷劇を通じて、当時の哲学諸派や言語芸術の欺瞞を鋭く風刺する対話篇です。物語は、神々の労苦を嘆くゼウスが、正義の女神ディケ(Dike)とヘルメスをアテナイのアレイオス・パゴスに派遣し、様々な訴訟を裁かせることから始まります。開廷された法廷では、「酩酊」対「アカデメイア」、「ストア」対「快楽(ヘドネ)」など、擬人化された学派や概念たちが滑稽かつ弁証法的な告発と弁論を繰り広げます。最後に、かつて「弁論術」を修めながらもそれを捨てて「対話(ダイアロゴス)」へと転向した「シリア人」(作者自身を投影した人物)が被告として登場します。シリア人は、難解で退屈だった「対話」を天上の崇高な哲学から引きずり下ろし、喜劇やユーモアを融合させて大衆に親しみやすい形に変貌させたのだと自らの正当性を主張します。この自己擁護の弁論が圧倒的な支持を得て勝利することで、作品は作者自身の創作活動のあり方を肯定しつつ幕を閉じます。
目次
12 チャンク
引用方式:section
- §1-2
神々の多忙と苦労についてのゼウスの不満
ゼウスが、神々は幸福であるという哲学者たちの主張を否定し、いかに自分を含む神々が人間のために日々多忙を極め、労苦しているかを訴える。
- §3-7
裁判期日の決定と正義の女神ディケの派遣
ゼウスとヘルメスは滞っている裁判を解決するために裁判期日を設けることを決定し、正義の女神ディケを裁判の配分役として地上に送る。ディケは地上の哲学者たちの不誠実さを懸念するが、ゼウスは彼女を鼓舞して送り出す。
- §8-10
アッティカへの到着と牧神パンとの対話
ヘルメスとディケは地上に降り、道中で哲学者たちの現状や知恵(ソフィア)による影響について語り合う。彼らはアテナイに到着し、アクロポリスの近くで居留外国人のように暮らす神パンに出会い、挨拶を交わす。
- §11-12
哲学者たちへのパンの批判と裁判の開廷宣言
パンは、アテナイの哲学者たちが引き起こす騒がしく不毛な議論の様子をディケに批判的に説明する。その後、ヘルメスの布告によって裁判の開会が宣言されると、人々はアレイオス・パゴスへと殺到し、パンは自身の洞窟へと引き返す。
- §13-15
学派裁判の開始と酩酊対アカデメイアの審理
ディケとエルメスが各学派や概念間の訴訟手続きを開始し、最初の「酩酊」対「アカデメイア」の裁判では、酩酊が酔いつぶれて話せないため、両論を扱う訓練を積んだアカデメイアが双方の代弁を引き受ける。
- §16-17
ポレモンをめぐる酩酊の訴えとアカデメイアの自己弁護
アカデメイアは「酩酊」の代理人としてポレモン誘拐の不正を主張した後に、今度は自身の弁論として、ポレモンが放蕩から徳へと自発的に更生した経緯を語る。
- §18-20
ディオニュシオスをめぐるストアと快楽の訴訟
「アカデメイア」対「酩酊」の裁判はアカデメイアの勝利に終わり、続いて「ストア」と「快楽」が愛人ディオニュシオスを巡る裁判を開始する。ストアは、快楽が人々を禁欲から遠ざけ堕落させていると激しく非難する。
- §21
快楽を擁護するエピクロスの弁論
エピクロスは「快楽」を擁護する弁論を行い、ディオニュシオスがストアの教えを捨てて快楽を選んだのは人間として自然な判断であり、ストア派の偽善を暴露するものであると主張する。
- §22-25
快楽の勝訴と諸学派の裁判の進展
エピクロスとストアの裁判は快楽の勝訴に終わるが、ストアはゼウスに上訴する。その後、他宗派の裁判が延期や原告の逃亡、欠席によって処理され、最後にシリア人に対する弁論術の裁判が始まろうとする。
- §26-28
シリア人の背信に対する弁論術の告発
弁論術は、かつて自分が無名で貧しかったシリア人(ルキアノス)を救い、市民にして富と名声を与えて育て上げた恩人であることを熱弁する。しかし、その彼が今や自分を捨てて「対話(ダイアロゴス)」という男に溺れ、大いなる弁論の自由を捨てて細切れの問答に執着していると不満を訴える。
- §29-32
弁論術の告発に対するシリア人の反論
弁論術はシリア人の配偶者虐待と不貞を訴え、対話を用いた抗弁を拒む。これに対しシリア人は、弁論術の不品行を理由に彼女を去り、哲学的な対話へ転向したことの正当性を主張する。
- §33-35
対話による告発とシリア人の勝訴
正義の女神は「対話」に弁明を促す。「対話」は、シリア人が自分を天上の崇高な哲学から引きずり下ろし、喜劇や犬儒主義と混ぜ合わせたため、中途半端な怪物になったと告発する。対してシリア人は、難解で退屈だった「対話」にユーモアを加えて大衆に親しみやすくしたのだと反論し、圧倒的多数の票で勝利する。
