底本
Platonis Opera Tomus IV: Tetralogia VIII. Burnet, John, editor. Oxford: Clarendon Press, 1905.
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA (Perseus の利用条件による)
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要旨
本作は、哲学家ソクラテスと、天文学や政治に精通したティマイオス、クリティアス、ヘルモクラテスとの対話を通じ、宇宙の起源と人間の本質を壮大なスケールで描き出した哲学・自然学の対話篇です。冒頭では、理想国家のあり方や、古代アテナイと失われた大国アトランティスとの戦いという歴史的伝承が語られます。続いてティマイオスが主言論を引き継ぎ、造物主であるデミウルゴスが混沌に秩序を与え、魂と身体を備えた生きた知的生命体として宇宙を構築した過程を説きます。彼は宇宙を構成する四元素を幾何学的多面体として数学的に解き明かし、さらに人間の身体構造、感覚や呼吸のメカニズム、心身の病とその治療法までを網羅的に論じます。最後は、魂のあり方に応じた動物たちへの転生のプロセスが語られ、可視的な神としての宇宙の完成をもって言論は締めくくられます。
目次
41 チャンク
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- §17-18
前日の理想国家論と守護者制度の振り返り
ソクラテス、ティマイオス、エルモクラテス、クリティアスが再会し、前日にソクラテスが語った理想国家の制度(守護者の役割、教育、財産の不保持、女性や子供の共有、婚姻の選別など)について手短な振り返りが行われる。
- §19-20
理想国家の活動の描写を求めるソクラテス
ソクラテスは、昨日構想した理想国家が実際に他国と戦争を交え、活動する姿を記述してほしいと語り、詩人やソフィストにはそれが不可能だが、哲学的素養と政治的経験を兼ね備えたティマイオス、クリティアス、ヘルモクラテスなら可能であると称賛する。これを受けて彼らはソクラテスへの返礼の言論として、古い伝承に基づく話を語る準備があることを示す。
- §21
ソロンが伝えた古代アテナイの偉業に関する伝承
クリティアスは、かつて自身の祖父クリティアスが老齢の時に語った、アテナイの失われた偉大な歴史に関するソロンの伝承を思い起こす。その歴史は、ソロンがエジプトのサイスを訪れた際、現地の神官たちから聞いた、アテナイがかつて成し遂げた最大の偉業についての物語である。
- §22-23
エジプトの神官がソロンに語る人類の破滅と忘却
ソロンがエジプトのサイスを訪れ、老神官からギリシア人が歴史の破滅を繰り返して記憶を失っていること、かつてアテネにはエジプトよりも古く優れた都市文明が存在していたことを告げられます。
- §24-25
古代アテナイの体制とアトランティス撃退の偉業
クリティアスは、かつて女神アテナがアテネを創設した際に授けた社会体制について語り、その古代アテネがかつてアトランティスからの傲慢な侵略軍を打ち破って地中海世界を解放したという偉業を紹介する。
- §26-27
対話の計画とティマイオスおよびクリティアスの登壇順序
クリティアスは、ソクラテスが昨日語った理想の市民を古代アテナイの歴史的市民に重ね合わせる計画を提案し、ティマイオスが宇宙と人間の生成を語った後に自身が人間社会の歴史を引き継ぐという「言論の饗宴」の順序を定める。
- §28-29
存在と生成の区別および宇宙論の限界
ティマイオスは宇宙の生成について語り始めるにあたり、存在と生成の根本的区分、宇宙が生成された原因、そして人間の語る宇宙論が持ち得る「尤もらしさ」という限界について前提を説明します。
- §30-31
知的生命体としての宇宙の創造と身体の結合
デミウルゴスが混沌に秩序を与え、宇宙を知性、魂、身体を備えた生きた知的生命体として構築したこと、そして宇宙が唯一のものである理由と、その身体を構成する要素(火と地)を結合する比例関係について説明される。
- §32-33
四元素の幾何学的結合と球体としての宇宙の身体
神が宇宙の身体を火、土、水、空気の四元素から幾何学的比率によって調和的に構築し、外部のいかなる影響からも自足した、唯一無二の、球形をした完全な生き物として完成させたことを説明しています。
- §34-36
宇宙の回転運動と世界霊魂の混合および調和
宇宙の身体に適した円運動と自足的な構造が説明され、続いて魂の創造が身体に先立つものであること、そして魂が「同一」「異なる」「実在」の混合と数学的比率によって構築されたことが語られる。
- §37-38
宇宙霊魂の認識作用と時間の創造
宇宙の魂が自らの構成要素(同一なるもの、異なるもの、実在)を用いていかに認識と判断を行い、理性や知識をもたらすかが説明される。また、創造神は永遠なる手本に倣って、天の運行とともに規則正しく流れる「時間」と、その単位を測るための天体(太陽、月、惑星)を創造する。
- §39-40
惑星の運動と天体および四種の生きものの創造
ティマイオスは、天体がそれぞれの軌道を得て惑星運動と時間が完成したこと、さらに宇宙を完成させるために火から恒星などの神的な天体を造り、地球を自転させ、四大要素に対応する四種の生きものを配置したことを語り、続いて伝統的な神々の系譜について触れる。
- §41
デミウルゴスの神々への命令と不死なる魂の調合
デミウルゴスは誕生した神々に対し、宇宙を完全にするために残りの死すべき生きものたちを製作するよう命じ、その不死なる魂の部分を自ら作って星々に配分し、彼女たちに運命の法を告げる。
- §42-43
魂の肉体への受肉と感覚による動揺
デミウルゴスは魂が肉体に宿った際の感覚や感情の発生、および輪廻転生の法則を定めて自らの座へと退き、若い神々が人間の肉体を形成する。肉体に宿った魂は、物質の激しい流出入や外部からの衝撃による「感覚」の嵐に晒され、魂の調和に満ちた循環が激しく乱される。
- §44-45
魂の理性の回復と頭部および視覚の構造
魂の循環が外部の刺激によって乱され理性を失うが、教育や成長によって正常な状態を回復することを論じ、神々が最も神聖な頭とその乗り物である体を造り、視覚の仕組みを設けたことを説明する。
- §46-47
鏡の反射と視覚および聴覚の真の目的
鏡における像形成や反転の仕組みを光の結合によって説明し、これらが神の最善の創造のための補助原因にすぎないことを示す。その上で、神が人類に視覚、聴覚、声を授けた真の目的は、天の知性的循環を模倣して魂の乱れた循環を秩序づけるため、すなわち哲学のためであることを主張する。
- §48-49
必然の介入と第三の種としての受容者
知性と必然の共同作用による宇宙の構築を確認したティマイオスは、第三の種(生成の受け皿、乳母)を導入する。そして、物質が流転して相互に変化し続ける事実に基づき、それらを固定的な指示詞ではなく「そのような性質のもの」と呼ぶべきであると主張する。
- §50
受容者の無形性と金の比喩および母の例え
ティマイオスは、生成変化する事物を受け入れる恒常的な「受け皿」(コーラ)の性質を、金から様々な形を形作る比喩を用いて説明し、それは受容するものとして無形であるべきだと論じ、これを「母」、原型を「父」、生成物を「子」に例える。
- §51-52
形相と感覚対象と場による三元的存在論
知性と真なる意見の相違から、永遠不変の「形相」、生成変化する「感覚対象」、そして生成の受容者である「場」(コーラー)の三元的な存在論を確定し、宇宙の生成以前における混沌とした状態を説明する。
- §53
混沌における元素の分離と三角形による秩序づけ
ティマイオスは、宇宙形成以前のカオスにおける四元素の分離運動を説明し、神が幾何学的な三角形の原理を用いて四元素を最も美しく秩序づけたことを論じる。
- §54-55
二種の三角形による正多面体と四元素の構成
直角二等辺三角形と直角不等辺三角形からそれぞれ正方形と正三角形が組み立てられ、これらを基礎として火、空気、水、地の四つの立体元素が構成される。また、五番目の立体が宇宙の装飾に用いられたこと、地には最も安定した立方体が割り当てられることが説明される。
- §56-57
四元素への立体の配分と元素の相互変換
ティマイオスは四つの基本立体を火、空気、水、地に割り当て、幾何学的性質に基づく相互変換の機構を説明する。さらに、構成三角形のサイズの違いから元素の変種が生じること、および不均一性を前提とする運動と静止の原理を論じる。
- §58-59
宇宙の収縮による運動の持続と諸元素の変種の生成
宇宙の球形構造による収縮力が微細な元素を空隙に押し込むことで、不均一さと運動が絶え間なく継続する仕組みを解説し、さらに火、空気、水の様々な変種や、金・青銅などの金属、雹・氷・雪・霜などの生成メカニズムを説明する。
- §60
植物の汁の諸類と土から生じる固形物の特性
植物を通じて濾過された「汁」の様々な類(ワイン、油、蜂蜜など)と、水や火の作用によって地から形成される様々な固形物(石、陶器、ソーダ、塩など)の生成プロセス、およびそれらの溶解特性について説明される。
- §61-62
物質の融解と凝固の原理および身体的感覚の生起
地と水、空気の凝固や溶解の仕組み、および混合物の分類を粒子の観点から説明し、続いて温・冷、硬・軟、重・軽などの感覚が生じる原因を、球体宇宙の構造(絶対的な上下の不在)を前提に明らかにする。
- §63-64
上下の相対性と感覚における快と苦の原理
宇宙における「上」と「下」が相対的な概念であることを、元素がその同族へ向かって運動する法則に基づいて説明し、続いて快と苦、および感覚の伝達システムについて論じる。
- §65-66
舌が感知する味覚と鼻が感知する嗅覚の原理
身体の部分的な受苦として舌が感じる諸々の味覚(渋味、酸味、苦味、塩味、辛味、酸味、甘味)の物理的なメカニズムが説明され、次いで鼻が感知する嗅覚(香り)の特質とその発生原因が論じられる。
- §67-68
聴覚の性質と視覚における色彩の混合原理
嗅覚の補足としての呼吸による検証と、快・不快の性質について述べた後、聴覚(声、高低、強弱など)および視覚と色(色の発生原因、基本色や各種混合色の仕組み)を解説する。そして、混合色の実証的検証を拒絶し、神の全能と人間の認識の限界を説く。
- §69-70
死すべき魂の構造と情動を宿す器官の配置
神的な原因と必然的な原因の区別の重要性を説き、デミウルゴスの子供たちが死すべき魂とその諸情動を肉体へいかに配置したか、特に気概と欲望の座である心臓、肺、腹部の身体的構造とその機能を説明する。
- §71-72
肝臓による神託の受容と脾臓の機能
ティマイオスは、理性を欠いた欲望の魂が真理に触れられるよう、神がその住処に肝臓を配して睡眠中に神託(予言)を得る仕組みを整えたこと、および神憑りの神託を解釈する預言者の役割、そして肝臓を浄化する脾臓の働きを説明する。
- §73-74
腸の形成と魂を宿す骨髄および骨や肉の構造
大食から身体を守るための下腹と腸の形成に続き、魂を宿す中心部分である「髄」の生成、および、それを保護する骨・肉・腱(神経)の構成プロセスが説明される。
- §75-76
肉の配分と皮膚や頭髪および爪の生成
ティマイオスは、魂がわずかな部位に多くの肉が配され、知性を有する頭部が感覚を保つためにあえて肉を削ぎ落として脆弱に作られた理由を述べ、皮膚、毛髪、爪の物理的な生成プロセスとその目的について論じる。
- §77-78
食物としての植物の創造と血管および呼吸の網
神々は、死すべき身体の衰退を防ぐために受動的な魂と感覚のみを持つ植物を人間の食物として創造した。さらに、身体に栄養と息を行き渡らせるために血管を開通させ、空気と火で構成された精妙な呼吸のための網状の機構を配置した。
- §79
呼吸の力学的原理と体内における消化の働き
呼吸が体内の火を動かして消化と血管への栄養補給を行う仕組みを説明し、さらに空虚が存在しないことによる「還流」の原理に基づき、体内の熱の移動によって吸気と呼気が生じる呼吸の力学的メカニズムを解説する。
- §80-81
円環的置換による運動と成長および死の過程
ティマイオスは、吸引、嚥下、投射物の運動、音響の調和など、世に言う「引力」とされる現象が、実際には空虚の不在と押し合い(円環的置換)によって説明されることを論じる。さらに、体内における血液による栄養の分配、生物の成長、老い、そして魂の肉体からの穏やかな解放(死)を、元素を構成する三角形の結合と劣化のプロセスとして解き明かす。
- §82-83
四元素の不均衡と組織の逆行による病気の原因
四元素の不均衡や本来の場所からの移動が病気の主要な原因であることを示し、さらに二次組織(肉、腱、骨、骨髄、血液)の生成プロセスが逆行することで多様な胆汁や粘液、漿液が形成され、身体を蝕む仕組みを詳細に解説する。
- §84-85
深部組織の崩壊と体液異常による病気
肉や骨、骨髄などの二次組織が逆行的に崩壊して血液に流入することで発生する、深刻な病気のプロセスを説明する。続いて、呼吸、粘液、胆汁を原因とする第三の病気の分類を挙げ、破傷風、てんかん(神聖病)、血液中の繊維と胆汁の作用による悪寒などの発症メカニズムを解説する。
- §86
熱病の分類と身体的欠陥に起因する魂の病
胆汁の挙動による病理と元素の過剰による熱病の分類を論じ、さらに魂の病気は無知(狂気と無学)であり、肉体的な不健全さや不適切な環境から生じるため、悪人は自発的に悪人になるのではないと主張する。
- §87-88
魂の病の原因と心身の調和のための養生法
魂の病が身体の不調や不適切な教育、劣悪な国制から生じることを説明し、心身の調和(対称性)を保つために、知的な活動と身体的な運動(体育や文芸)を均衡よく行うべきことを説く。
- §89-90
身体運動の序列と神聖な魂の宇宙的調和
第89〜90節において、ティマイオスは身体の健康維持における諸運動の優先順位(自主的運動、受動的運動、薬物療法)を論じ、さらに人間の頭部にある神聖な魂の部位(ダイモーン)を宇宙の運行に調和させることによって、人間が神々から授かった最善の生を達成すべきであることを説きます。他の生き物の誕生を扱う次の部分の要約をご希望ですか?
- §91-92
女性と諸動物への転生および宇宙論の結び
臆病な男たちが女性に生まれ変わり、情欲のメカニズムが体内の構造によって生じたことが語られる。さらに、愚かさや無知の度合いに応じて、鳥類、陸生の四足・多足生物、這うもの、そして水生生物へと人間が転生していく過程が描かれ、宇宙全体の議論が完結する。
