デモステネス · Demosthenes
第二十九弁論 アポボスへの抗弁
Against Aphobus III
ギリシア語原文(原典)と日本語・英語・中国語・韓国語の対訳・語釈を、全文無料・登録不要で公開しています。
底本
Demosthenes. Orationes, Vol. II, Part 2. Rennie, W., editor. Oxford: Clarendon Press, 1921.
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA (Perseus の利用条件による)
Humanitext がクローン・再構成し、継続的に更新しています。
要旨
本作は、古代アテナイの弁論家デモステネスが、自身の遺産を横領した元後見人アポボス(Aphobus)による偽証の訴えに立ち向かうために自ら行った法廷弁論です。デモステネスは、アポボスが財産を隠匿して逃亡を企てる中、鍵となる人物ミリャス(Milyas)が奴隷ではなく自由人であることを立証し、相手方の主張を切り崩そうとします。弁論の中で彼は、アポボス側が真実の究明に必要な奴隷の拷問による検証や厳粛な宣誓を再三拒否してきた矛盾を鋭く追及します。さらに、亡父の遺言や実母の持参金、工房の資産に関する詳細な証拠を提示し、アポボスによる明白な横領の数々を暴き出します。最終的にデモステネスは、相手方が過去のあらゆる調停や裁判において敗訴してきた事実と、自身の妥協案すら拒否した不誠実さを強調し、科された多額の賠償金の正当性を法廷に訴えかけます。
目次
8 チャンク
引用方式:section
- §1-6
訴訟の背景とアポボスの不正および弁論方針
デモステネスがアポボスを相手にした訴訟の背景を説明し、アポボスが財産を隠匿してメガラへ逃亡したこと、そしてミリャスが自由人であることの証明と相手の偽証を暴く方針を法廷で宣言する。
- §7-14
アポボスによる選択的告発と奴隷拷問の拒否
弁論者は、対立相手が複数の証言の中から一部の回答にのみ偽証訴訟を起こした意図を暴き、自らが証言の真正性を奴隷の拷問による検証で証明しようとしたにもかかわらず、相手がそれを拒否した矛盾を糾弾している。
- §15-22
アイシオスらの証言と奴隷拷問の拒否
アポボスの兄弟であるアイシオスや、叔父のデーモンが過去に本件について証言した事実、およびアポボスらが奴隷の拷問による検証を頑なに拒否した経緯を明かし、相手方の起訴がいかに根拠を欠くものであるかを主張する。
- §23-30
証人の信憑性と過去の敗訴の原因
弁論者は、自身の証人たちが偽証をする動機(派閥、敵意、貧困)を持たないことを示し、母親による厳粛な宣誓の申し出などからミュリアスが自由人であることを補強します。さらに、アポボスが過去の後見裁判で敗訴したのは、ミュリアスに関する事柄ではなく、彼自身の明白な横領の事実によるものであると主張します。
- §31-38
母の持参金や遺産の横領と拷問要求の不当性
デモステネスは、アポボスが実母の持参金である八十ミナを不当に所持している件について、関係者の証言や自身の母親が誓いを立てる意志があったことを挙げて証明します。さらに、家産の貸し出し、ベッド職人、象牙や鉄などの各資産に関するアポボスの横領と不正を暴き、ミュリアスへの拷問が不要であった理由を論じます。
- §39-45
ミュリアス拷問要求の不当性と父の遺言
デモステネスは、アポボスが自由人ミュリアスの拷問を要求した不当性を重ねて批判し、さらに父の遺言に記された遺産総額の多さを論じて、アポボスらの横領を暴く。
- §46-53
金銭隠匿の虚偽と和解提案の拒否
デモステネスは、アポボスが金銭の隠匿に関して展開している虚偽の主張を、父の遺言の内容とアポボスの婚姻の経緯を対比させることで論破する。さらに、かつて自身がアポボスに対しておこなった、賠償額の減額を伴う妥協の挑戦(プロクレーシス)を拒否された事実を明かし、アポボスの不誠実さを強調する。
- §54-60
誓いや拷問の拒否とアポボスの度重なる敗訴
アポボスが証言の真実性を確認するための誓いや奴隷の拷問を拒否したことを暴き、彼が私的調停、公的仲裁、さらには法廷判決のすべてにおいて敗訴してきた事実を指摘して、十タラントンの賠償が科された正当な理由を説明する。
