底本
Aristotle. Aristotelis Opera, Volume 3. Bekker, Immanuel, editor. Oxford: Oxford University Press, 1837.
原文データ出典
A Digital Corpus for Graeco-Arabic Studies · CC BY-SA 4.0
Humanitext がクローン・再構成し、継続的に更新しています。
要旨
本作は、アリストテレスが記憶と想起の性質とそのメカニズムを、魂と身体の働きから解き明かそうとした哲学・科学的論考である。前半では、記憶が過去の事物を対象とすることに着目し、時間感覚の必要性を指摘した上で、記憶の成立を「心像(ファンタスマ)」という肖像画のような内的イメージの働きによって説明する。後半では、能動的なプロセスである「想起」を取り上げ、類似・反対・隣接による運動の連鎖を通じて、記憶が探求され思い起こされる仕組みを提示する。さらに想起は単なる記憶の保持とは異なり、身体的なプロセスを伴う推論の一種であることを明らかにする。最後に、これらのメカニズムを通じて、記憶力や想起力に個人差や年齢による違いが生じる身体的要因を究明して締めくくられる。
目次
5 チャンク
引用方式:chapter
- §1#1
記憶と想起の定義と時間感覚
アリストテレスが記憶と想起の定義、その対象、およびそれらが属する魂の能力(特に感覚能力と心像)について追究し、時間感覚の必要性を論じている。
- §1#2
板絵の比喩と不在の対象の記憶
記憶を形成しにくくする要因として肉体的流動性や器官の硬さを挙げた上で、心像自体を観照することと、それを他者の肖像(イメージ)として観照することの区別を「板絵」の二重性を例に挙げつつ論じ、不在の対象が記憶されうる仕組みを明らかにする。
- §2#1
想起の本質と観念連合の規則
本チャンクでは、想起(思い出すこと)の本質が論じられ、記憶の獲得とは異なる、内的出発点からの主体的プロセスであることが示される。さらに、想起が過去の感覚運動の習慣的かつ連続的なつながり(類似、反対、近接)を利用して行われる具体的メカニズムが説明される。
- §2#2
想起における探索運動と時間知覚の比率
想起の探索が出発点や中間点からの運動の連鎖を通じて行われるメカニズムを、習慣が自然を形成する性質や、幾何学的比率モデルを用いた心内での時間・距離の認識プロセスと共に解説する。
- §2#3
想起の推論的本質と身体的メカニズム
想起(想起すること)が記憶と異なり、一種の探究や身体的プロセスを伴う推論であることを示し、その身体的メカニズムや、記憶力の個人差・年齢差について論じる。
