- 底本
- Euripides. Euripidis Fabulae, Vol. I. Murray, Gilbert, editor. Oxford: Clarendon Press, 1902.
- 翻訳
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- 言語
- 日本語 · English · 简体中文 · 한국어
- CTS URN
- urn:cts:greekLit:tlg0006.tlg004.humanitext-grc2:560-642
- 出力
- Humanitext Reader · reader.humanitext.ai · 2026-10-27
マカリアはイオラオスや兄弟たちに最後の別れを告げ、自ら進んで犠牲の祭壇へと向かう。残されたイオラオスが悲嘆に暮れる中、コーラスは運命の無常を歌い、そこへヒュロスの従者が吉報を携えて現れる。
ἕπου δέ, πρέσβυ· σῇ γὰρ ἐνθανεῖν χερὶθέλω· πέπλοις δὲ σῶμʼ ἐμὸν κρύψον παρών·ἐπεὶ σφαγῆς γε πρὸς τὸ δεινὸν εἶμʼ ἐγώ,εἴπερ πέφυκα πατρὸς οὗπερ εὔχομαι.
[マカリア] そして、老人よ、ついてきてください。私はあなたの手の中で死にたいのです。その場にいて、私の体を衣で覆ってください。 というのも、私は屠られるという恐ろしいことへと向かうのです、もし私が、本当に自分が自負するあの父から生まれた者であるならば。
οὐκ ἂν δυναίμην σῷ παρεστάναι μόρῳ.
[イオラオス] 私はお前の死に立ち会うことはできない。
σὺ δʼ ἀλλὰ1 τοῦδε χρῇζε, μή μʼ ἐν ἀρσένων,ἀλλʼ ἐν γυναικῶν, χερσὶν ἐκπνεῦσαι βίον.
[マカリア] それなら、せめてこれをお願いしてください。私が男たちの手の中でではなく、女たちの手の中で息を引き取ることができるように、と。
ἔσται τάδʼ, ὦ τάλαινα παρθένων, ἐπεὶκἀμοὶ τόδʼ αἰσχρόν, μή σε κοσμεῖσθαι καλῶς,πολλῶν ἕκατι, τῆς τε σῆς εὐψυχίαςκαὶ τοῦ δικαίου· τλημονεστάτην δὲ σὲπασῶν γυναικῶν εἶδον ὀφθαλμοῖς ἐγώ.
[イオラオス] そうしよう、処女たちのうちで最も不憫な子よ。お前が美しく整えられないことは、私にとっても恥ずべきことだからだ。 多くの理由、特にお前の勇気と正義のために。私は、すべての女たちのうちで、お前を最も耐え忍び強い者としてこの目で見たのだ。
ἀλλʼ, εἴ τι βούλῃ, τούσδε τὸν γέροντά τεχώρει προσειποῦσʼ ὑστάτοις προσφθέγμασιν.
だが、もし望むなら、この者たちとこの老人に最後の言葉を告げて、歩みを進めなさい。
ὦ χαῖρε, πρέσβυ, χαῖρε καὶ δίδασκέ μοιτοιούσδε τούσδε παῖδας, ἐς τὸ πᾶν σοφούς,ὥσπερ σύ, μηδὲν μᾶλλον· ἀρκέσουσι γάρ.
[マカリア] おお、健やかであれ、老人よ。健やかであれ、そして私のために、この子供たちを、あなたのように、あらゆる点で賢くなるよう教え育ててください。 それ以上ではなく、それで十分だからです。
πειρῶ δὲ σῶσαι μὴ θανεῖν,2 πρόθυμος ὤν·σοὶ παῖδές ἐσμεν, σαῖν χεροῖν τεθράμμεθα.
そして熱意を持って、彼らが死なずに済むよう、救うことに努めてください。 私たちはあなたにとって子供であり、あなたの両手によって育てられたのです。
ὁρᾷς δὲ κἀμὲ τὴν ἐμὴν ὥραν γάμουδιδοῦσαν ἀντὶ τῶνδε κατθανουμένην.
そして、あなたは私をも見ている、自分の結婚の時期を、彼らの代わりに死ぬために捧げているのを。
ὑμεῖς τʼ, ἀδελφῶν ἡ παροῦσʼ ὁμιλία,εὐδαιμονοῖτε, καὶ γένοιθʼ ὑμῖν ὅσωνἡμὴ πάροιθε καρδία σφαγήσεται.
お前たち、ここにいる兄弟たちの仲間よ、お前たちが幸せになりますように。そして、私の心がその前に屠られるであろうそれらすべてのものが、お前たちのものとなりますように。
καὶ τὸν γέροντα τήν τʼ ἔσω γραῖαν δόμωντιμᾶτε πατρὸς μητέρʼ Ἀλκμήνην ἐμοῦξένους τε τούσδε. κἂν ἀπαλλαγὴ πόνωνκαὶ νόστος ὑμῖν εὑρεθῇ ποτʼ ἐκ θεῶν,μέμνησθε τὴν σώτειραν ὡς θάψαι χρεών.3
そしてこの老人と、邸の内にいる老女、私の父の母アルクメネを敬いなさい。 そしてここにいる異邦人たちをも。そしてもし、神々からいつか苦難からの解放と帰国が与えられたなら、救い手を葬るべきであることを忘れないでください。
κάλλιστά τοι δίκαιον· οὐ γὰρ ἐνδεὴςὑμῖν παρέστην, ἀλλὰ προύθανον γένους.
それこそが最も美しく、正しいことです。私はお前たちに尽くすことに欠けることなく寄り添い、むしろ一族のために先んじて死ぬのですから。
τάδʼ ἀντὶ παίδων ἐστί μοι κειμήλιακαὶ παρθενείας, εἴ τι δὴ κάτω χθονός·εἴη γε μέντοι μηδέν. εἰ γὰρ ἕξομενκἀκεῖ μερίμνας οἱ θανούμενοι βροτῶν,οὐκ οἶδ’ ὅποι τις τρέψεται· τὸ γὰρ θανεῖνκακῶν μέγιστον φάρμακον νομίζεται.
これが、子供たちや処女性の代わりとなる、私の宝です、もし地の下に何かがあるならば。 しかし、何もありませんように。なぜなら、もし死にゆく人間が、あちらでも心配事を抱えることになるならば、人はどこへ向かえばよいのか私は知らない。死ぬことこそ、災いに対する最大の薬と見なされているのだから。
ἀλλʼ, ὦ μέγιστον ἐκπρέπουσʼ εὐψυχίᾳπασῶν γυναικῶν, ἴσθι, τιμιωτάτηκαὶ ζῶσʼ ὑφʼ ἡμῶν καὶ θανοῦσʼ ἔσῃ πολύ·
[コーラス] しかし、おお、すべての女たちのうちで勇気において最も際立っている人よ、知るがよい、お前は生きていても死んでいても、私たちからこの上なく尊ばれるであろうことを。
καὶ χαῖρε· δυσφημεῖν γὰρ ἅζομαι θεάν,ᾗ σὸν κατῆρκται σῶμα, Δήμητρος κόρην.
そして健やかであれ。私は、お前の体が捧げられた女神、デメテルの娘に対して、不吉な言葉を口にすることを畏れるからだ。
ὦ παῖδες, οἰχόμεσθα· λύεται μέληλύπῃ· λάβεσθε κεἰς ἕδραν μʼ ἐρείσατεαὐτοῦ πέπλοισι τοῖσδε κρύψαντες, τέκνα.
[イオラオス] おお、子供たちよ、私はもうだめだ。悲しみで手足の力が抜けていく。 子供たちよ、私を支えて、この場で座席に横たわらせ、この衣で覆っておくれ。
ὡς οὔτε τούτοις ἥδόμαι πεπραγμένοις,χρησμοῦ τε μὴ κρανθέντος οὐ βιώσιμον·μείζων γὰρ ἄτη· συμφορὰ δὲ καὶ τάδε.
なぜなら、私はこの行われたことを喜ばず、また神託が成就されなければ生きることはできないからだ。 より大きな破滅が待っているからだ。だが、この出来事もまた災難なのだ。
οὔτινά φημι θεῶν ἄτερ ὄλβιον, οὐ βαρύποτμον,ἄνδρα γενέσθαι·
[コーラス] 神々の意志なしには、幸福になる人も、過酷な運命をたどる人もいない、と私は言う。
οὐδὲ τὸν αὐτὸν ἀεὶ βεβάναι δόμονεὐτυχίᾳ· παρὰ δʼ ἄλλαν ἄλλαμοῖρα διώκει.
また、同じ家が常に幸運のうちに歩み続けることもない。 異なる運命が次から次へと追いかけてくるのだ。
τὸν μὲν ἀφʼ ὑψηλῶν βραχὺν ᾤκισε,τὸν δʼ ἀλέταν εὐδαίμονα τεύχει.
ある者をば高い地位から低くし、別のある放浪者を幸福にする。
μόρσιμα δʼ οὔτι φυγεῖν θέμις, οὐ σοφί-ᾳ τις ἀπώσεται, ἀλλὰ μάταν ὁ πρό-θυμος ἀεὶ πόνον ἕξει.
定められた運命を逃れることはできず、知恵によってそれを退けることもできない。ただ熱心な者が常に無駄な労苦を重ねるだけだ。
ἀλλὰ σὺ μὴ προπίτνων τὰ θεῶν φέρε, μηδʼ ὑπεράλγειφροντίδα λύπᾳ·
だが、お前は崩れ落ちることなく、神々の与えるものを受け入れ、悲しみによって心を過度に痛めてはならない。
εὐδόκιμον γὰρ ἔχει θανάτου μέροςἁ μελέα πρό τʼ ἀδελφῶν καὶ γᾶς·
あの哀れな娘は、兄弟たちとこの土地のために、誉れ高い死の分を担っているのだから。
οὐδʼ ἀκλεής νινδόξα πρὸς ἀνθρώπων ὑποδέξεται·ἁ δʼ ἀρετὰ βαίνει διὰ μόχθων.
人々からの不名誉ならぬ栄誉が彼女を迎えるだろう。 徳は苦難を通って進むものなのだから。
ἄξια μὲν πατρός, ἄξια δʼ εὐγενί-ας τάδε γίγνεται· εἰ δὲ σέβεις θανά-τους ἀγαθῶν, μετέχω σοι.
これらは父親にふさわしく、また高貴な生まれにふさわしい。もしお前が高潔な人々の死を尊ぶなら、私はお前と共感しよう。
ὦ τέκνα, χαίρετʼ· Ἰόλεως δὲ ποῦ γέρων;μήτηρ τε πατρὸς τῆσδʼ ἕδρας ἀποστατεῖ;
[従者] おお、子供たちよ、健やかであれ。しかし、老イオラオスはどこにいるのか。 そして、わが父の母はこの席にいないのか。
πάρεσμεν, οἵα δή γʼ ἐμοῦ παρουσία.4
[イオラオス] 私はここにいる、およそ私の存在がどのようなものであれ。
τί χρῆμα κεῖσαι καὶ κατηφὲς ὄμμʼ ἔχεις;
[従者] なぜお前は横たわり、うつむいた目をしているのか。
φροντίς τις ἦλθʼ οἰκεῖος, ᾗ συνειχόμην.
[イオラオス] 身内の心配事が訪れ、それに私は囚われていたのだ。
ἔπαιρέ νυν σεαυτόν, ὄρθωσον κάρα.
[従者] それでは、体を起こし、頭を上げなさい。
γέροντές ἐσμεν κοὐδαμῶς ἐρρώμεθα.
[イオラオス] 私たちは老人であり、全く力がないのだ。
ἥκω γε μέντοι χάρμα σοι φέρων μέγα.
[従者] しかし、私はお前に大きな喜びをもたらしに来たのだ。
τίς δʼ εἶ σύ; ποῦ σοι συντυχὼν ἀμνημονῶ;
[イオラオス] お前は誰だ。どこでお前に会ったのか、私は思い出せない。
Ὕλλου πενέστης· οὔ με γιγνώσκεις ὁρῶν;
[従者] ヒュロスの従者です。見て、私だとわからないのですか。
ὦ φίλταθʼ, ἥκεις ἆρα σωτὴρ νῷν βλάβης;
[イオラオス] おお、最愛の者よ、お前は私たちのために災いからの救い手として来たのか。
μάλιστα· καὶ πρός γʼ εὐτυχεῖς τὰ νῦν τάδε.
[従者] その通りです。そしてさらに、今のところ、これらの状況は幸運なものです。
ὦ μῆτερ ἐσθλοῦ παιδός, Ἀλκμήνην λέγω,
おお、高潔な息子の母よ、アルクメネのことであるが、
- 565σὺ δʼ ἀλλὰ
条件節や前の文脈を受けて、「せめて」という意味の限定的な譲歩・要望を表す小辞 ἀλλά の用法。マカリアが死に立ち会うことを拒むイオラオスに対し、せめて「女たちの手の中で死なせてほしい」とデモポンら(あるいはイオラオス自身)に頼んでほしいと懇請している。
- 577σῶσαι μὴ θανεῖν
動詞 σῴζω(救う、防ぐ)に続く不定詞句で、否定の μή が重複して用いられている(過剰否定・重複否定)。「死なないように救う」という否定的なニュアンスを強調する古典ギリシア語の標準的な構文である。
- 588τὴν σώτειραν ὡς θάψαι χρεών
従属節(ὡς 節)の主語となるべき語(τὴν σώτειραν)が、主節の動詞 μέμνησθε の直接目的語(対格)として文頭に引き出されている「先取り(プロレプシス)」の構文。直訳すると「救い手を、埋葬せねばならぬことを覚えておけ」となる。
- 632οἵα δή γʼ ἐμοῦ παρουσία
関係代名詞 οἷος が表す性質を用いて、自己の現在の哀れな・不十分な状態を謙遜・自嘲気味に表現する慣用的表現。気力が尽き、横たわった状態のイオラオスが「力なき身ではあるが、一応ここにいる」というニュアンスで答えている。
