- 底本
- Euripides. Euripidis Fabulae, Vol. I. Murray, Gilbert, editor. Oxford: Clarendon Press, 1902.
- 翻訳
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- 言語
- 日本語 · English · 简体中文 · 한국어
- CTS URN
- urn:cts:greekLit:tlg0006.tlg001.humanitext-grc2:269-352
- 出力
- Humanitext Reader · reader.humanitext.ai · 2026-10-27
シレノスの嘘をコーラスが暴いたものの、キュクロプスはシレノスを信じてオデュッセウス一行に敵意を向ける。オデュッセウスは神々の掟や過去の恩義を訴えて哀願するが、キュクロプスは独自の神無き快楽主義を主張して彼らを食べることを宣言し、オデュッセウスはパラス・アテナに救いを求める。
οἱ παῖδες ἀπόλοινθ’, οὓς μάλιστ’ ἐγὼ φιλῶ.
【シレノス】私が最も愛する我が子らが滅びるように(私が嘘をついているなら)。
αὐτὸς ἔχ’.1 ἔγωγε τοῖς ξένοις τὰ χρήματα
【コーラス】そこまでだ!私はお前が異邦人たちに財物を
περνάντα σ’ εἶδον· εἰ δ’ ἐγὼ ψευδῆ λέγω,
売っているのをこの目で見たのだ。もし私が嘘を言っているなら、
ἀπόλοιθ’ ὁ πατήρ μου· τοὺς ξένους δὲ μὴ ἀδίκει.
私の父が滅びるように。だが、異邦人たちを不当に扱ってはならぬ。
ψεύδεσθ’· ἔγωγε τῷδε τοῦ Ῥαδαμάνθυος
【キュクロプス】お前たちは嘘をついている。私はラダマンテュスよりもこの男を
μᾶλλον πέποιθα καὶ δικαιότερον λέγω.
信頼しているし、彼の言うことの方が正しいと私は言う。
θέλω δ’ ἐρέσθαι· πόθεν ἐπλεύσατ’, ὦ ξένοι;
だが、尋ねたい。異邦人よ、お前たちはどこから航海してきたのだ?
ποδαποί; τίς ὑμᾶς ἐξεπαίδευσεν πόλις;
どこの国の人だ?いかなる都市がお前たちを育てたのだ?
Ἰθακήσιοι μὲν τὸ γένος, Ἰλίου δ’ ἄπο,
【オデュッセウス】生まれはイタカの者、イリオンから、
πέρσαντες ἄστυ, πνεύμασιν θαλασσίοις
市を滅ぼしたのち、海の風によって
σὴν γαῖαν ἐξωσθέντες ἥκομεν, Κύκλωψ.
あなたの土地に流されて参りました、キュクロプスよ。
ἦ τῆς κακίστης οἳ μετήλθεθ’ ἁρπαγὰς
【キュクロプス】お前たちがあの最も邪悪なヘレネーの略奪を追って、
Ἑλένης Σκαμάνδρου γείτον’ Ἰλίου πόλιν;
スカマンドロスに隣接するイリオンの市へと赴いた者たちなのか?
οὗτοι, πόνον τὸν δεινὸν ἐξηντληκότες.
【オデュッセウス】その通り、あの恐ろしい労苦を耐え抜いた者たちだ。
αἰσχρὸν στράτευμά γ’, οἵτινες μιᾶς χάριν
【キュクロプス】恥ずべき軍勢だな、たった一人の女のために
γυναικὸς ἐξεπλεύσατ’ ἐς γαῖαν Φρυγῶν.
フリュギア人の土地へと船出したとは。
θεοῦ τὸ πρᾶγμα· μηδέν’ αἰτιῶ βροτῶν.
【オデュッセウス】神の御業なのだ。凡庸な人間の誰をも責めないでくれ。
ἡμεῖς δέ σ’, ὦ θεοῦ ποντίου γενναῖε παῖ,
私たちはあなたに、海の神の気高い子よ、
ἱκετεύομέν τε καὶ λέγομεν ἐλευθέρως·
懇願し、率直に申し上げます。
μὴ τλῇς πρὸς ἄντρα σοι ἐσαφιγμένους φίλους
あなたの洞窟にやって来た友人たちを
κτανεῖν βοράν τε δυσσεβῆ θέσθαι γνάθοις·
殺し、その肉を不信心な食べ物としてあなたの顎に供するようなことを、どうか耐え忍ばないでください。
οἳ τὸν σόν, ὦναξ, πατέρ’ ἔχειν νεῶν ἕδρας2
私たちは、王よ、あなたの父の神殿の座が船に奪われぬよう、
ἐρρυσάμεσθα γῆς ἐν Ἑλλάδος μυχοῖς.
ギリシアの地の奥深くで守り抜いたのです。
ἱερεύς τ’ ἄθραυστος Ταινάρου μένει λιμὴν
壊されざるタイナロンの港、
Μαλέας τ’ ἄκροι κευθμῶνες ἥ τε Σουνίου
マレアの尖った隠れ家、そして陽に映える、神聖なアテナの
δίας Ἀθάνας σῶς ὑπάργυρος πέτρα
銀を秘めたスニオンの岩、
Γεραίστιοί τε καταφυγαί· τὰ θ’ Ἑλλάδος
ゲライストスの避難所も今なお健在です。私たちはギリシアの
δύσφρον’ ὀνείδη Φρυξὶν οὐκ ἐδώκαμεν·
痛心すべき不名誉をフリュギア人たちに与えはしなかったのです。
ὧν καὶ σὺ κοινοῖ· γῆς γὰρ Ἑλλάδος μυχοὺς
これにはあなたも与っています。なぜなら、あなたはギリシアの地の片隅、
οἰκεῖς ὑπ’ Αἴτνῃ, τῇ πυριστάκτῳ πέτρᾳ.
火を噴く岩山エトナの麓に住んでいるのですから。
νόμος δὲ θνητοῖς, εἰ λόγους ἀποστρέφῃ,
たとえあなたが私の言葉に耳を背けようとも、死を免れぬ人間たちには掟があるのです。
ἱκέτας δέχεσθαι ποντίους ἐφθαρμένους
海で難破した志願者を迎え、
ξένιά τε δοῦναι καὶ πέπλοις ἐπαρκέσαι,
もてなしの贈り物をし、衣類を恵むこと。
οὐκ ἀμφὶ βουπόροισι πηχθέντας μέλη
牛を突き刺す串に手足が貫かれ、
ὀβελοῖσι νηδὺν καὶ γνάθον πλῆσαι σέθεν.
あなたの腹と顎をいっぱいにすることではないのです。
ἅλις δὲ Πριάμου γαῖ’ ἐχήρωσ’ Ἑλλάδα,
プリアモスの地はギリシアを十分に未亡人にし、
πολλῶν νεκρῶν πιοῦσα δοριπετῆ φόνον,
多くの死者の槍による殺戮の血をすすり、
ἀλόχους τ’ ἀνάνδρους γραῦς τ’ ἄπαιδας ὤλεσεν
夫を失った妻たち、子を失った白髪の老母たち、
πολιούς τε πατέρας. εἰ δὲ τοὺς λελειμμένους
そして白髪の父親たちを滅ぼしました。もし生き残った彼らまでも、
σὺ συμπυρώσας δαῖτ’ ἀναλώσεις πικράν,
あなたが焼き尽くして悲惨なご馳走として消費してしまうなら、
ποῖ τρέψεταί τις; ἀλλ’ ἐμοὶ πιθοῦ, Κύκλωψ·
人はどこへ向かえばよいのですか?ですから、キュクロプスよ、私の言葉に従ってください。
πάρες τὸ μάργον σῆς γνάθου, τὸ δ’ εὐσεβὲς
あなたの顎の貪欲さを捨て、不信心の代わりに
τῆς δυσσεβείας ἀνθελοῦ· πολλοῖσι γὰρ
信心を選んでください。多くの者にとって、
κέρδη πονηρὰ ζημίαν ἠμείψατο.
不正な利益は損失に取って代わられたのですから。
παραινέσαι σοι βούλομαι· τῶν γὰρ κρεῶν3
【シレノス】お前に助言したい。この男の肉は
μηδὲν λίπῃς τοῦδ’, ἤν τε τὴν γλῶσσαν δάκῃς,
一切れも残さず食べるのだ。そしてもしお前がその舌を噛めば、
κομψὸς γενήσῃ καὶ λαλίστατος, Κύκλωψ.
キュクロプスよ、お前は利口で、最高におしゃべりになれるだろう。
ὁ πλοῦτος, ἀνθρωπίσκε, τοῖς σοφοῖς θεός,
【キュクロプス】ちっぽけな人間よ、富こそが賢者にとっての神なのだ。
τὰ δ’ ἄλλα κόμποι καὶ λόγων εὐμορφίαι.
他のものはすべて自慢話や言葉の虚飾にすぎぬ。
ἄκρας δ’ ἐναλίας ἃς καθίδρυται πατὴρ
我が父が祀られている、海に突き出た岬の聖域など、
χαίρειν κελεύω· τί τάδε προυστήσω λόγῳ;
私は知ったことではない。なぜそのようなことをお前の弁論の盾にするのだ?
Ζηνὸς δ’ ἐγὼ κεραυνὸν οὐ φρίσσω, ξένε,
私はゼウスの雷電など恐れぬ、異邦人よ。
οὐδ’ οἶδ’ ὅ τι Ζεύς ἐστ’ ἐμοῦ κρείσσων θεός.
ゼウスが私より優れた神であることも知らぬ。
οὔ μοι μέλει τὸ λοιπόν· ὡς δ’ οὔ μοι μέλει,
私にはどうでもよいことだ。なぜどうでもよいのか、
ἄκουσον. ὅταν ἄνωθεν ὄμβρον ἐκχέῃ,
聞くがよい。ゼウスが天上から雨を注ぐとき、
ἐν τῇδε πέτρᾳ στέγν’ ἔχων σκηνώματα,
私はこの岩の中に雨露をしのぐ宿を持ち、
ἢ μόσχον ὀπτὸν ἤ τι θήρειον δάκος
子牛のローストや野生の獣を
δαινύμενος, εὖ τέγγων τε γαστέρ’ ὑπτίαν,
平らげ、仰向けにした腹をよく潤し、
ἐπεκπιὼν γάλακτος ἀμφορέα, πέπλον
牛乳のアンフォラを飲み干した上で、ペプロスを
κρούω, Διὸς βρονταῖσιν εἰς ἔριν κτυπῶν.
叩き、ゼウスの雷鳴に対抗して音を響かせるのだ。
ὅταν δὲ βορέας χιόνα Θρῄκιος χέῃ,
トラキアの北風が雪を降らせるときは、
δοραῖσι θηρῶν σῶμα περιβαλὼν ἐμὸν
獣の毛皮を体にまとい、
καὶ πῦρ ἀναίθων—χιόνος οὐδέν μοι μέλει.
火を燃え立たせる。雪など私にはどうでもよいのだ。
ἡ γῆ δ’ ἀνάγκῃ, κἂν θέλῃ κἂν μὴ θέλῃ,
大地は、望むと望まざるとにかかわらず、必然的に
τίκτουσα ποίαν τἀμὰ πιαίνει βοτά.
草を生やして、私の家畜を太らせる。
ἁγὼ οὔτινι θύω πλὴν ἐμοί, θεοῖσι δ’ οὔ,
私はそれらを自分自身以外の誰にも、神々にも捧げない。
καὶ τῇ μεγίστῃ, γαστρὶ τῇδε, δαιμόνων.
神々のうちで最も偉大な、この腹に捧げるのだ。
ὡς τοὐμπιεῖν γε4 κὰμφαγεῖν τοὐφ’ ἡμέραν
日々、飲んで食うこと、
Ζεὺς οὗτος ἀνθρώποισι τοῖσι σώφροσιν,
これこそが、分をわきまえた人間にとってのゼウスであり、
λυπεῖν δὲ μηδὲν αὑτόν. οἳ δὲ τοὺς νόμους
自分を苦しめないことなのだ。人間の生を複雑にして法律を作ったような
ἔθεντο ποικίλλοντες ἀνθρώπων βίον,
連中には、
κλαίειν ἄνωγα·5 τὴν δ’ ἐμὴν ψυχὴν ἐγὼ
泣きを見るがいいと言ってやる。私は自分の魂に
οὐ παύσομαι δρῶν εὖ—κατεσθίων τε σέ.
良いことをするの、すなわちお前を食い尽くすことをやめはしない。
ξένιά τε λήψῃ τοιάδ’, ὡς ἄμεμπτος ὦ,
お前はこのようなもてなしの品を受け取るだろう、私が非難されぬように。
πῦρ καὶ πατρῷον τόνδε λέβητά γ’, ὃς ζέσας
火と、我が父の大釜だ。それは煮えたぎって、
σὴν σάρκα διαφόρητον ἀμφέξει καλῶς.
お前の切り刻まれた肉を快く包み込むだろう。
ἀλλ’ ἕρπετ’ εἴσω, τῷ κατ’ αὔλιον θεῷ
さあ、中へ入れ。洞窟の神の周りに立ち、
ἵν’ ἀμφὶ βωμὸν στάντες εὐωχῆτέ με.
私のためにご馳走となるのだ。
αἰαῖ, πόνους μὲν Τρωικοὺς ὑπεξέδυν
【オデュッセウス】ああ、私はトロイアの労苦からも、
θαλασσίους τε, νῦν δ’ ἐς ἀνδρὸς ἀνοσίου
海の労苦からも逃れたというのに、今は不信心な男の
γνώμην κατέσχον ἀλίμενόν τε καρδίαν.
心、港なき心に入り込んでしまったのか。
ὦ Παλλάς, ὦ δέσποινα Διογενὲς θεά,
パラスよ、主なるゼウスから生まれし女神よ、
νῦν νῦν ἄρηξον· κρείσσονας γὰρ Ἰλίου
今こそ、今こそ助けたまえ。私はトロイアよりも過酷な
πόνους ἀφῖγμαι κἀπὶ κινδύνου βάθρα.
労苦、危険の深淵に至ったのだから。
- 270αὐτὸς ἔχ’
「それまでだ」「おっと待て」などの間投詞的表現。コーラスがシレノスの見え透いた嘘を遮って、彼の不実を糾弾する場面で用いられている。
- 290νεῶν ἕδρας
「船の座(船殿)」、すなわち港の近くに建立された海の神ポセイドンの神殿聖域を指す。対格。動詞 ἐρρυσάμεσθα(§291)の目的語として機能している。
- 313τῶν γὰρ κρεῶν
部分属格(partitive genitive)。§314にある否定の代名詞 μηδέν に係り、「彼の肉をいささかも(残すな)」という意味構造を形作っている。
- 336ὡς τοὐμπιεῖν γε
冠詞付き不定詞の縮約(toùmpieîn < τὸ ἐμπιεῖν, kàmphageîn < καὶ ἀμφαγεῖν)が主語となっており、これらが「賢者にとってのゼウス」(Ζεὺς οὗτος)であるという大胆な同格関係を構築している。
- 340κλαίειν ἄνωγα
直訳は「泣くことを命じる」だが、ここでは「勝手に泣くが良い」「知ったことか」という、規範や法を制定する人々に対する慣用的な強い侮蔑・拒絶の表現として機能している。
翻訳:Gemini 3.5 Flash(2026-05-22 公開)・修正履歴(1 件・最終 2026-09-21)
- 2026-09-21 AI校閲 — 訳文 1 件
