底本
Hippocrates. Oeuvres complètes d'Hippocrate, Vol. 2. Littré, Émile, editor. Paris: Baillière, 1840
原文データ出典
A Digital Corpus for Graeco-Arabic Studies · CC BY-SA 4.0
Humanitext がクローン・再構成し、継続的に更新しています。
要旨
本作は、古代医学における医師の最も重要な能力の一つである「予後(プログノーシス)」の意義と、そのための実践的な診断技術を説く医学論考です。著者は、病気(特に急性疾患)の今後の経過や生死を正確に予測することが、治療の成功と医師への信頼に不可欠であると主張します。論述は、患者の顔貌(「ヒポクラテス顔貌」)や目の表情、寝姿勢といった外見的特徴の観察から始まります。さらに、呼吸、発汗、排泄物(尿・痰など)、体内の化膿、熱病における「危期(クリシス)」の周期的規則性など、全身の多様な兆候から予後を判定する基準が極めて具体的に示されます。結末では、医師は目の前の個別の兆候に留まらず、季節や流行病の傾向を含めた包括的な視野を持って病のゆくえを正確に予見すべきであることが強調されます。
目次
10 チャンク
引用方式:chapter
- §1-2
予後の重要性と顔貌による死期予測
医師にとっての予後(予見)の重要性を説き、急性の病気における診断の基準として、病人の顔貌(いわゆるヒポクラテス顔貌)や目の諸症状を詳細に観察して死期を予測する手法を説明する。
- §3-6
臥位と動作および呼吸と発汗による予後判定
病人の横たわる姿勢や動作(歯ぎしり、不随意の手の動き)から死や精神錯乱の兆候を読み解く方法を説明し、さらに呼吸の速さや発汗の性質が予後に与える影響について論じている。
- §7-8
季肋部と腹部の腫れおよび急性水腫の予後
季肋部や腹部の腫れの硬さや痛み、およびそれに伴う化膿や鼻出血などの予後判定基準が示され、続いて急性疾患から引き起こされる水腫の発生部位と不吉な症状が詳述される。
- §9-11
体温と四肢の状態および睡眠と排泄物の予兆
体温と動作、四肢の壊死に関連する予後(9)、自然な睡眠の重要性(10)、および排泄物、ガス、腹鳴の状態が持つ予兆的意味(11)について論じる。
- §12-14
尿と嘔吐物および痰の性状による予後判定
第12章から第14章にかけて、尿、嘔吐物、および痰のそれぞれの特徴と状態から、病気の今後の経過や治癒の可能性、あるいは差し迫った生命の危険を予測するための様々な指標が詳述されている。
- §15-16
胸部の化膿と膿胸の徴候および予後
胸部の疼痛が種々の治療でも改善しない場合の化膿の予後について述べ、現れる兆候に基づいて患者の生存・死亡日数を予測する。また、化膿の開始時期の特定法や、片側性膿瘍を診断するための物理的観察方法を解説する。
- §17-18
体内化膿患者の症状経過と肺炎に伴う転移の予後
体内化膿(膿胸)を伴う患者の一般・個別症状および経過予測と、肺炎から生じる転移(化膿・瘻管形成)の予後について記述されている。
- §19-20
膀胱疾患の予後と熱病における危期の周期性
腰から横隔膜への痛みの転移および膀胱疾患の予後(19章)、ならびに急性・慢性熱病における危期(クリシス)の周期的規則性と初期の識別方法(20章)について解説する。
- §21-23
頭痛と耳痛および咽喉疾患の予後
著者は熱を伴う頭痛、耳痛、咽頭の疾患および咽頭炎(クナンケー)の予後について詳述し、患者の年齢差による病態の推移や口蓋垂の切除術の安全な時期を説明している。
- §24-25
熱病の経過と転移および予後予測の総括
熱病の予後判断において、解熱の兆候を伴わない解熱による再発、熱の長期化に伴う関節への転移や四日熱への移行、および年齢ごとの症状と小児の痙攣を説明する。最終的に、医師は普遍的な兆候、季節や流行病の傾向を包括的に把握し、死生と病期を正確に予測すべきであることを説く。
