ヒポクラテス · Hippocrates
古来の医術について
On Ancient Medicine
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底本
Hippocrates. Oeuvres complètes d'Hippocrate, Vol. 1. Littré, Émile, editor. Paris: Baillière, 1839.
原文データ出典
A Digital Corpus for Graeco-Arabic Studies · CC BY-SA 4.0
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要旨
『古い医術について』は、熱や冷といった少数の抽象的な「仮説」に基づいて病因を説明しようとする新しい医学的アプローチを批判し、長年の経験と観察に基づく従来の医術の有効性を擁護する医学論説です。著者はまず、医術の起源が、健康な人と病気の人とで食事を区別し、適切な調理法を開発してきた歴史にあることを示します。そして、熱や冷といった単純な性質を重視する治療論を退け、人間の身体を害するのは抽象的な冷熱ではなく、食物の過不足や、体液(ユーモル)の不調和、その力(デュナミス)であることを論じます。さらに、哲学的な手法による人間本性の抽象的議論を排除し、個々の生活習慣や食物が具体的な体質に与える影響を経験的に追究することこそが本物の医術であると主張します。最終盤では、身体を構成する器官の形状や構造、および体液の性質の変化が病態に与える影響について具体的に論じ、詳細な身体観察に基づく医療の重要性を説いて締めくくります。
目次
11 チャンク
引用方式:chapter
- §1-2
恣意的な仮説の批判と本来の医術の性格
著者は、一部の病因(熱や冷など)を恣意的に仮説として設定する新しい医学的アプローチを批判し、医術は本来、長い年月をかけて蓄積された経験と方法に基づく実在する技術であるべきだと主張する。
- §3-4
食事法の改善と医術の起源
人間にとっての医術の起源が、健康な人と病気の人とで同じ食事をとることの有害性と、そこからの改善の必要性(料理法の発明)にあったことを説明し、それが本質的に医学と同じ探求の道であることを論じる。
- §5-8
病人用の食事の発見と医術の原理
第5章から第8章において、著者は病人のために生み出された専門的な医術も、人類がかつて野蛮な食事から現在の文明的な食事を発見したのと本質的に同一の探求の原理に基づいていることを論じる。
- §9-10
食事の適度な基準と空腹や習慣変化の害
9章では適度な量の判断基準が身体の感覚以外にないことや、医師の技術の優劣が重病の治療において露呈することを説明し、10章では食事の習慣を変えることが健康な人にもたらす深刻な苦痛を具体的に描写して、空腹が過食に劣らず身体を害することを示している。
- §11-13
食習慣の変化の原因と熱冷仮説の批判
習慣と異なる食生活が及ぼす悪影響の原因を、未消化や飢えの観点から分析し、推論に基づく古代医術の有効性を擁護する。また、熱・冷といった単純な仮説(四大元素説など)に基づく治療論を、日常の主食であるパンなどの複雑な調理工程を例に挙げて批判する。
- §14-15
食物の調合と性質および仮説派の矛盾
食物の多様な調理法やその性質の違いが身体に与える大きな影響を指摘し、医術の起源は抽象的な熱や冷ではなく、人間の本性を超える強すぎる体液を排除することにあったと論じる。また、仮説に基づく治療者が既知の具体的な食物に頼らざるを得ない矛盾を批判する。
- §16-17
熱と冷の限定的な影響と他の性質との結合
著者は、熱と冷が身体に及ぼす影響は最も小さく、それらは自動的に相殺し合うものであることを様々な具体例から論じ、重病における熱は単一の「熱」ではなく他の様々な有害な性質(苦、酸、塩など)が結合した結果であると説く。
- §18-19
体液の刺激と病因およびその成熟と調和
著者は、鼻のカタルや眼の炎症、黄胆汁や酸性の体液による様々な疾患を例に挙げ、病因の本質が「冷熱」ではなく、体液の「鋭さ」や「不調和」にあり、その成熟と混合によって治癒がもたらされることを論証する。
- §20-21
哲学的自然論の批判と個別的探究の必要性
筆者は、人間本性を抽象的に論じる哲学的なアプローチを排し、個別の食物や生活習慣が特定の体質に与える影響を経験的に追究することこそが真の医術であると主張する。
- §22
器官の形状と体液の力が病態に及ぼす影響
身体を構成する器官の「力(体液の強度)」と「形状(中空、扁平、海綿状など)」が病態に与える影響について論じ、吸引やガス貯留、痛みの発生における各形状の力学的特性を、身近な物理現象や臓器の例を挙げて説明する。
- §23-24
身体の諸形状と体液の変質に基づく食物の選定
身体の内外にある多様な形状の違いを把握することの重要性を説き、次いで体液(ユーモル)の性質、特に甘い体液が変質して酸性に変化する過程から、最適および不適な食物を選択する基準を論じる。
