底本
Galen. Claudii Galeni Opera Omnia, Volume 7. Kühn, Karl Gottlob, editor. Leipzig: Knobloch, 1824.
原文データ出典
A Digital Corpus for Graeco-Arabic Studies · CC BY-SA 4.0
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要旨
本作は、古代の医師ガレノスが、医学の祖ヒポクラテスの著作に登場する「コーマ(昏睡)」という用語の真意を、文献学的ならびに医学的な観点から探究した論考です。ガレノスは、当時の注釈者たちがコーマを単なる「眠り」や「嗜眠」と混同していることを批判し、患者の症例に基づいた正確な解釈を試みます。彼は『流行病』などの著作から多くの症例を引用し、コーマには眠気を伴うものだけでなく、不眠を伴う特異な状態が存在することを論証します。さらに、狂躁病患者の感覚や運動の反応性を分析し、コーマとカタポラ(昏沈)という病態の分類を提示します。最後には、テキストの文法的な精査を通じて、初期の病状が嗜眠病や狂躁病へ移行するプロセスを説明し、自説を補強します。本書は、厳密な文献批評と臨床観察を融合させ、ヒポクラテス医学の正確な理解を目指す一書です。
目次
6 チャンク
引用方式:chapter
- §1
ヒポクラテスにおけるコーマの定義と従来の解釈批判
ガレノスは、ヒポクラテスにおける「コーマ」という言葉の解釈について論じ、従来の注釈者が提唱した眠りや嗜眠といった説を批判し、ヒポクラテスの実際の症例記述に基づけばそれが不眠を伴う特異な状態であること、および著者の本意に即した註釈の重要性を論証する。
- §2#1
流行病におけるコーマと不眠の対比と症例の検討
ガレノスは、ヒポクラテスが不眠とコーマ(昏睡)を常に対比していることを示すため、『流行病』から数多くの症例を引用し、コーマが特定の対立状態を意味していることを立証する。また、通常ならば必然的に伴うはずの症状が例外的に現れなかったことをあえて特記するという、ヒポクラテス独自の表現様式を分析する。
- §2#2
嗜眠性と不眠性のコーマおよびカタポラの分類
ヒポクラテスの記述におけるコーマとカタポラ(昏睡・昏沉)の意味を分析し、それが眠気を伴うものと不眠を伴うものの二種類に大別されること、そして両者に共通する病態としての意味合いを説明する。
- §3#1
狂躁病における不眠性コーマの分類と嗜眠病との相違
筆者は狂躁病患者に見られる不眠性の昏睡(コーマ)を二つのタイプに区別し、嗜眠病との違いを感覚や運動の反応性から解説する。さらにヒポクラテスの『予後論』から不眠性コーマと狂躁病の関係についての問いを引用する。
- §3#2
文法と用例に基づく疑問詞アラ・ゲの語義の検討
ガレノスは、ヒポクラテスのテキストにおける「ἆρά γε」という言葉が推論(それゆえ)ではなく疑問(はたして)を意味していることを、文法的な語順の規則やヒポクラテスの他の著作における使用例から実証する。
- §4
初期の未消化物と嗜眠病および狂躁病への移行
著者は自説が議論を困難にする点を認めつつ、ヒポクラテスの「初期に」という言葉を手がかりに、初期症状の未消化物が嗜眠病や狂躁病へ移行するプロセスを説明し、疑問接続詞説を弁護する。
