底本
Galen. Claudii Galeni Opera Omnia, Volume 4. Kühn, Karl Gottlob, editor. Leipzig: Knobloch, 1822.
原文データ出典
A Digital Corpus for Graeco-Arabic Studies · CC BY-SA 4.0
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要旨
本書は、生命の維持に不可欠な呼吸の役割と目的について、医学者ガレノスが探究した医学・哲学書です。著者はまず、呼吸の有用性をめぐる過去の諸説を整理し、呼吸される空気の本質を問います。エラシストラトス派やアスクレピアデスといった他学派の説を、息止め時の実験的観察などを用いて批判的に検証します。続いて、呼吸の目的が「冷却」か「生来の熱(シンピュトス・テルモテース)」の維持であるかという対立を、物理的な炎の燃焼アナロジーを用いて調停します。さらに、浴場での疲弊や病気の事例、動物実験などを通じて、呼吸が熱の保存、冷却、そして老廃物たる煙の排出のために不可欠であることを実証します。最終的に、脳や心臓の実験を通じて、呼吸の最大の役割が生来の熱の維持・調節にあり、第二の役割が脳の「精神プネウマ」の養育であると結論づけます。
目次
11 チャンク
引用方式:chapter
- §1
呼吸の有用性と過去の諸説の検証
呼吸が生命の維持に不可欠であることを確認した上で、呼吸の有用性に関する過去の諸説(魂の生成、生来の熱の冷却や保存、動脈の充填など)を整理し、呼吸される空気の「本質」と「性質」のどちらが必要とされているのかを検証しようとする。
- §2#1
息止め時の心臓と胸郭をめぐる論争
呼吸停止時の心臓と胸郭の運動に関するエラシストラトスの否定的な見解と、それに対する批判者たちの反論、さらには双方の派閥による理論的応酬が記述されている。
- §2#2
息止め時の動脈運動と窒息の原因の検証
ガレノスは息止め時の動脈運動に関するエラシストラトス派の解釈を批判し、自らの3つの明確な根拠(息止め時にも心臓は空気を引き込むこと、吸入量が多いほど窒息が早まること、呼気こそが治療法であること)を提示して、窒息が空気の不足ではなく他の原因によるものであることを証明する。
- §2#3
息止め時の脈拍変化とプネウマ説の批判
呼吸を止めている間の動動脈の運動が二倍の頻度になるはずだという議論や、プネウマの排出に関する矛盾を指摘し、アスクレピアデスなどの精神的プネウマに関する説を反駁する。
- §3#1
呼吸の冷却説と煽火説の対立および炎の観察
呼吸の目的が「冷却」であるとする説と「煽火(熱の維持)」であるとする説の対立を整理し、その解決の糸口として、空気を遮断された炎の消滅と増大に関する物理的な観察へと議論を移行させる。
- §3#2
炎の維持と生まれつきの熱に対する呼吸の役割
著者は、炎が維持されるための二重の運動(外向と内向)と適度な空気の必要性を論じ、それを動物の生まれつきの熱(心臓)と呼吸(肺)の関係にアナロジーとして適用する。そして、呼吸は生まれつきの熱の維持や排煙のために不可欠であり、この説が魂の滋養や生成を呼吸の目的とする他説よりも合理的であることを証明する。
- §4#1
熱の保存と浴場における疲弊の検証
ガレノスは、呼吸の目的が生まれつきの熱の保存にあるという説を立証するため、浴場での疲弊や病人の発汗、温熱療法の事例を挙げて検証し、体表および呼吸器を通じた熱的変化が致命的要因であると論じ、空気の希薄さを原因とするエラシストラトスの説を批判する。
- §4#2
エラシストラトス説の反論と呼吸の冷却機能の証明
シビレエイの麻痺の力が道具を通じて伝わる現象を例に引き、性質や力の存在を認めさせた上で、呼吸の有用性に関するエラシストラトスの説を論破し、年齢、健康状態、環境要因による呼吸の変化が、自身の提唱する熱の保存と冷却の理論と完全に一致することを説明する。
- §5#1
精神のプネウマの源泉と吸入による維持
精神のプネウマの源泉を検証し、頸動脈結紮や呼吸遮断の実験を通じて、脳や動脈が心臓や外部空気から直接受ける影響は極めて限定的であり、プネウマは主に鼻からの吸入によって養われることを論じる。
- §5#2
適度な温熱の役割と主要器官の呼吸要求
適度な温熱(体温)が精神のプネウマの移動や血液の蒸散において果たす重要な役割を説明し、主要な生命器官における呼吸の必要性と温熱の維持の相関関係を論じる。
- §5#3
呼吸の主目的である生得の温熱の維持と結論
著者は脳と心臓を生命の主要器官として位置づけ、死が温熱の不適度(過度)によって生じることを論証し、呼吸の最大の役割が生得の温熱の維持、第二の役割が精神プネウマの栄養補給であることを結論づける。
