デモステネス · Demosthenes
第三十六弁論 ポルミオン擁護
For Phormion
ギリシア語原文(原典)と日本語・英語・中国語・韓国語の対訳・語釈を、全文無料・登録不要で公開しています。
底本
Demosthenes. Orationes, Vol. II, Part 2. Rennie, W., editor. Oxford: Clarendon Press, 1921.
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA (Perseus の利用条件による)
Humanitext がクローン・再構成し、継続的に更新しています。
要旨
本作は、古代アテナイの著名な銀行家パシオンの解放奴隷であり、その事業を継いだフォルミオンを被告とし、パシオンの長男アポロドロスが起こした金銭請求訴訟に対する抗弁(パラグラペ)の弁論です。フォルミオン自身の弁論能力の不足を補うため、代理の弁論者が法廷で意見を述べます。弁論はまず、パシオンの死後に交わされた銀行や工場の賃貸契約、および遺言と財産分割の経緯を詳細に説明します。中盤では、原告アポロドロスが過去に一度フォルミオンと和解し、訴えを免除していた事実や、出訴期限法に違反していることを指摘し、彼の主張の法的な不当性を暴きます。さらに、アポロドロスがすでに莫大な遺産を受け取って浪費している一方で、フォルミオンが誠実に銀行を維持してきたことを証拠を挙げて対比します。結末では、自らの出自も奴隷であるアポロドロスがフォルミオンの出自を侮蔑する不条理さを批判し、陪審員に対して誠実なフォルミオンの無罪と救済を懇願して締めくくられます。
目次
8 チャンク
引用方式:section
- §1-8
パシオンの賃貸契約と遺言および財産分割
演者は被告フォルミオンの不十分な弁論能力に代わって弁護し、原告アポロドロスが起こした不当な訴訟に対抗するため、パシオンが生前に結んだ銀行と盾製造工場の賃貸契約、および死後に残された遺言と財産分割の経緯を説明する。
- §9-15
財産分割の選択とポルミオンへの債務免除
後見人たちによる財産分割においてアポロドロスが安全な盾製造工場を選択した経緯と、彼が母の死後に些細な要求でフォルミオンから和解金を受け取り、すべての訴えを二度にわたって免除した事実が語られます。
- §16-23
和解と免除の事実およびパシクレスの沈黙
アポロドロスが以前に和解し訴えを免除したにもかかわらず再び裁判を起こしたことに対し、彼が帳簿の紛失を口実にしていることの矛盾を指摘し、実弟パシクレスが何ら訴えを起こしていないことを挙げてフォルミオンの無実を主張する。
- §24-30
出訴期限法とパシオンによる婚姻手配の正当性
フォルミオン側は、アポロドロスが以前の免除の合意や出訴期限法を無視して無法な訴訟を起こしていることを非難し、またパシオンが自身の妻をフォルミオンに娶らせたのは当時の銀行家の慣行に沿った合理的な事業防衛策であったと主張する。
- §31-38
アポロドロスの遺産承認と受領額の暴露
アポロドロスの主張する告訴の不当性を暴くため、かつて彼自身が母親の遺産の分配を通じてパシオンの遺言と結婚を承認していた事実を突きつけ、彼の言動の矛盾を指摘する。さらに、彼がこれまで相続財産や銀行の賃料などから受け取ってきた膨大な金額を具体的に列挙し、彼が経済的に困窮しているという訴えが虚偽であることを証明する。
- §39-46
アポロドロスの浪費と信用という資本
弁護側はアポロドロスが多額の財産を浪費しながら国家奉仕を誇張していると非難し、パシオンの元主人であるアルケストラトスの困窮する息子アンティマコスと対比する。さらに、信用こそが最大の資本であることを説き、かつて奴隷であったパシオンの出自を持ち出すアポロドロスの論理の矛盾を突く。
- §47-53
パシオンの出自とアポロドロスの訴訟癖
弁論者は、アポロドロスが自分と両親を辱め、フォルミオンの奴隷出自を言い立てることで自らに不利な基準を招いている狂気を批判し、パシオンの出自の証言を提示します。さらに、フォルミオンこそが銀行を救い、遺言によって後見人に選ばれた誠実な男であることを強調し、アポロドロスの貪欲さと訴訟好きな性格を数々の過去の告訴事件を挙げて告発します。
- §54-62
ポルミオンの人柄と貢献および無罪の懇願
アポロドロスの不当な訴えを退け、フォルミオンの優れた人格と多大な貢献を強調して、彼の無罪と救済を裁判員に懇願する結びの弁論。
