底本
Isocrates, Vol. 3. Van Hook, Larue, editor. Cambridge, MA, Harvard University Press; London, William Heinemann Ltd., 1945 (printing).
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA (Perseus の利用条件による)
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要旨
本作は、アテナイの著名な両替商パシオン(Pasion)を相手取り、預託した金の返還を求める法廷弁論である。原告は、黒海沿岸のボスポロス王国からアテナイにやってきた若い異邦人であり、本国での政治的危機から財産を隠匿するために、パシオンの銀行に資金を預けた。しかし、パシオンは原告の窮地を利用して預託金の存在を否定し、その金を横領しようとした。弁論の中で原告は、パシオンが事件の真相を知る奴隷の拷問(糾問)を頑なに拒否したことや、預託に関する合意契約書を改ざんしたことなど、彼の悪質な欺瞞と矛盾を次々と暴いていく。様々な証言や間接的証拠を提示しながら、原告はパシオンの不誠実さを論証し、最後にアテナイの裁判員に対して公正な判決を下すよう懇願する。
目次
7 チャンク
引用方式:section
- §1-8
裁判の重大性とパシオンによる預金横領の発端
告訴人は、多額の財産と自身の名誉がかかった本裁判の重要性と、相手である両替商パシオンと争うことの困難さを述べる。続けて、ボスポロス王サテュロスからの迫害を避けるために財産を隠匿した経緯と、パシオンがその状況を利用して財産を横領しようとしたことを説明する。
- §9-16
パシオンの横領と奴隷キトスの引き渡し拒否
パシオンは、主人公が窮地にあるのを見越して預託金の存在を否定し、さらにそれを知る奴隷のキトスを隠して主人公たちに冤罪をかけました。その後、彼は一度は奴隷の拷問(糾問)に同意するものの、真実が暴露されるのを避けるために様々な口実を設けて身柄の引き渡しを拒みました。
- §17-23
パシオンの返済合意と預託契約書の改ざん
パシオンは周囲から非難されて罪を認め、ポントスでの返済合意と不履行時の条件を定めた契約書を第三者に預けました。しかし、パシオンは保管人の奴隷を抱き込んで契約書を改ざんし、一転して無罪放免の合意があると言い張って返済を拒否しました。
- §24-32
パシオンの主張の矛盾とアギュリオスの証言
筆者は、もしパシオンがすでに告発から解放されていたならば和解不成立時に契約書をサテュロスに渡す指示をするはずがないことなどを挙げて、パシオンの主張の矛盾を論証する。そして、パシオンが契約書改ざん前にその破棄を求めていた証拠としてアギュリオスを証人として喚問する。
- §33-40
仲間の不正行為と原告の資金保有の証明
契約書の改ざんを裏付けるパシオンの仲間の悪行を挙げ、原告がアテナイに資金を持っていなかったというパシオンの主張を、ストラトクレスとの取引や証人の存在を根拠に反論する。
- §41-48
パシオンの身元保証と横領の蓋然性の論証
原告は、自らの多額の資産がパシオンの銀行にあった客観的証拠として、かつてパシオンが多額の保証人を引き受けてくれた歴史的事実を挙げ、双方の当時の政治的・経済的窮状を考慮すればパシオンの横領行為こそが真実であることを論じます。
- §49-58
奴隷の拷問拒否と結びの公正な判決の要求
パシオンが奴隷の拷問を頑なに拒否した事実を挙げ、それが自身の無罪とパシオンの横領を証明する最大の証拠であると主張し、サテュロス王らの支援を背景に公正な判決を求めます。
