プルタルコス · Plutarch
お喋りについて
On Talkativeness
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底本
Plutarch. Plutarchi Chaeronensis Moralia, Vol IΙI. Vernardakēs, Grēgorios N., editor. Leipzig: Teubner, 1891.
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA (Perseus の利用条件による)
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要旨
本作は、おしゃべり(多弁)がもたらす害悪を明らかにし、それを克服するための実践的な治療法を提示する哲学的な道徳論です。前半では、他人の話を聞かず周囲から敬遠されるおしゃべりな人々の実態が、ユーモラスな逸話を交えて描かれます。さらに、秘密を守れないことが招いた歴史的な災厄や個人の悲劇など、多弁がいかに人間関係や社会において致命的な破滅をもたらすかが、数々の具体例とともに論じられます。これに対して著者は、賢者たちの沈黙の美徳を称え、沈黙がいかに言葉より優れているかを説きます。後半では、この根深い病癖を治療するための具体的な訓練法が提案されます。他人の質問を横取りしないことや、回答の前に間を置くこと、自身の得意な話題を自制することなどが推奨され、最終的には自己反省と日々の訓練によって沈黙の価値を体得することを目指します。
目次
13 チャンク
引用方式:section
- §1-2
多言の治療の困難と人の話を聞かない性質
哲学がおしゃべりを治療することの困難さを論じ、おしゃべりな人々は他人の話を聞かず、また自身も周囲から煙たがられて聞き手を得られないという実態をユーモラスな逸話を交えて描写する。
- §3-4
多言による信用の喪失と沈黙の美徳
自然が歯という障壁で舌を囲んだ理由を述べ、おしゃべりな人がいかに信用を失うかを説明する。また、泥酔とおしゃべりの共通点や、賢者たちの沈黙の美徳を対比させる。
- §5-7
多言が生む退屈と歴史上の破滅の実例
弁論の代筆者リシアスの機知や、ホメロスが「飽き」を避けた工夫に言及しつつ、おしゃべりがもたらす人間関係の破滅や歴史的な災厄を具体例を挙げて語る。
- §8
沈黙を守り抜いた英雄たちと寡黙の尊さ
ゼノンやレアイナの沈黙の美徳を称え、さらにオデュッセウスとその家族、その仲間たちの沈黙の忍耐を紹介し、言葉よりも沈黙がいかに優れているかを、ピッタコスの逸話を用いて説明する。
- §9-10
秘密保持の重要性と拡散する言葉の危険
沈黙と秘密保持の重要性について、エウリピデスの悲劇の登場人物や、アンティゴノス王、メテッルス、エウメネスらの歴史的逸話を引いて説明し、言葉が一度口から出ると噂や危険となって拡散していく性質を論じる。
- §11
妻への秘密の漏洩とフルウィウスの破滅
秘密を守れない妻を騙してその多弁さを証明したローマの夫の逸話と、アウグストゥスの秘密を妻に漏らして破滅を招いたフルウィウスの悲劇を通じて、沈黙の重要性が説かれる。
- §12-13
秘密を知る危険と軽率な発言が招く悲劇
喜劇詩人ピリッピデースやセレウコス王の逸話を通して、沈黙を守れなかった者が招く悲劇を描く。さらに、不用意な発言で処刑された床屋や、シケリア敗戦の噂を真っ先に広めて拷問された床屋の例を挙げ、お喋りという克服しがたい習慣の恐ろしさを論じる。
- §14-15
秘密の自己暴露とお喋りという自発的な裏切り
神殿荒らしやイビュコス殺害者の逮捕劇を例に挙げ、お喋りが自ずと真実を漏洩させて身を滅ぼす悪徳であることを説き、お喋りな人間を報酬もなしに秘密を売り渡す「自発的な裏切り者」として非難する。
- §16-17
お喋りの害悪の認識と沈黙の効能による治療法
お喋りの害悪を理性で理解することによる治療法と、沈黙や簡潔な言葉が持つ力や価値を伝える歴史的な警句や逸話による第二の治療法が提示される。
- §18-19
ピーソーの奴隷の逸話と沈黙の訓練
プーピウス・ピーソーの奴隷の逸話を挙げて意志のコントロールの大切さを示し、お喋りの病癖を克服するための第一歩として、他者の質問に対して回答を横取りせず沈黙を守る訓練を説く。
- §20-21
応答前の沈黙と質問に対する三つの回答類型
お喋りな者が回答の際にとるべき第二の訓練(沈黙と間隔の確保)と、質問に対する三つの回答タイプ(必要最小限、親切、過剰)について、比喩や歴史的逸話を用いて説明する。
- §22
得意な話題への執着と話の蒸し返しに対する自制
お喋りな者が自制すべき得意な話題や偏った執着を論じ、他者から学ぶ機会を台無しにしてまで同じ古い話を繰り返す愚行を指摘する。
- §23
学問への誘導や執筆と交際による多弁の矯正法
著者は、学問的・文学的な話題にお喋りをそらすことや、書くことや年長者と交際することを習慣づける治療法を提案する。また、お喋りを始める前に注意深く自己反省すること、および沈黙と訓練の重要性を説く。
