テルトゥリアヌス · Tertullian
ウァレンティヌス派論駁
Against the Valentinians
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底本
Tertullian. Quinti Septimi Florentis Tertulliani opera, Pars III (Corpus Scriptorum Ecclesiasticorum Latinorum, Volume 47). Kroymann, Emil, editor. Prague, Vienna, Leipzig: F. Tempsky, G. Freytag, 1906.
原文データ出典
Open Greek and Latin · CC BY-SA 4.0
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要旨
本書は、キリスト教思想家テルトゥリアヌスが、当時台頭していたグノーシス主義の一派であるウァレンティノス派の教理を暴露し、辛辣な風刺とユーモアを交えて論駁した神学著作である。著者はまず彼らの秘密主義を批判し、キリスト教の単純な真理の優位性を宣言する。続いて、彼らの複雑な神話体系における「プレローマ(充満)」の構造や、神聖な諸存在(アイオーン)の生成プロセス、そして最年少のアイオーンであるソピア(知恵)の転落と救出のドラマを詳述する。さらに、プレローマの外部に追放されたアハモートの情念から物質世界が生まれ、不条理な創造神デミウルゴスによって宇宙や人間が形成される過程を皮肉交じりに暴き出す。後半では、人類の三つの区分(霊的、動物的、物質的)と彼らの終末的運命に関するウァレンティノス派の独自主張を解説する。最後に、様々な分派による解釈の差異や矛盾を提示することで、この異端の教えが空想的かつ無秩序なものであることを示して議論を締めくくる。
目次
13 チャンク
引用方式:section
- §1-2
ウァレンティノス派の秘密主義への批判
テルトゥリアヌスはウァレンティノス派異端の秘密主義をエレウシス秘儀になぞらえて批判し、キリスト教の単純さが異端の偽りの知恵に勝ることを主張する。
- §3-5
ウァレンティノス派の起源と反論の方針
著者は、秘密主義に陥るウァレンティノス派の複雑な神話を批判し、彼らの歴史的起源および派生した学説の変遷を辿った上で、先駆者たちの正統な著作に基づき、主要な異端の教師たちの原典に直接論駁することを宣言する。
- §6-7
用語の扱い方と始原の八連の形成
テルトゥリアヌスは、本書におけるギリシア語名の使用方針と、風刺やユーモアを交えた論駁の姿勢を表明した上で、ウァレンティノス派が主張する深淵(ビュトス)と沈黙(シゲ)からの知性(ヌース)や真理の誕生、およびそれに続く始原の八連(オグドアド)の形成プロセスを暴露する。
- §8-9
残るアイオーンの流出とソピアの情念
第2の四幅対から派生した10と12のアイオーンたちの名簿を修辞学者の退屈な自己顕示になぞらえて風刺し、最年少のアイオーンであるソピアが父の認識を切望して情念に陥り、ホロス(限界)によって救出される神話的破局を語る。
- §10-11
ソピアの回復とキリストおよび聖霊の流出
第10章では、ソピアが苦悩のなかで一方的に雌の子供を産み落としたこと、そしてホロスによって彼女が救われ不純な情念が排除されて回復したという異説が語られます。第11章では、プレローマの崩壊を防ぎ調和をもたらすために、ヌースが新たにキリストと聖霊のペアを創出し、彼らがアイオーンたちに父の認識や本質を教育したことが記述されます。
- §12-14
ソテールの共同産出と追放されたアハモートの受難
アイオーンたちが平等の姿と知識を与えられて一体化し、共同出資のようにイエス(ソテール)を組み立てる様子が描かれる。続いて、プレローマの内部から追放されたアハモート(エントゥメーシス)が、外なる空虚の中でホロスの介入を受け、形態を与えられつつも様々な情念に苛まれる苦難が語られる。
- §15-17
アハモートの情念からの物質生成と三つの種族
アハモートの情念や涙から、世界の様々な物質元素や驚異的な水源が生成されたプロセスを、ウァレンティノス派への諷刺を交えて叙述する。その後、キリストによって派遣されたイエス(ソテール)がアハモートの情念を秩序化して物質的な『素材』を形成し、彼女の霊的な受精によって物質、動物、霊という三つの存在種族が誕生したことを説明する。
- §18-20
アハモートによるデミウルゴスと世界の形成
アハモートは三つの種族の誕生によって得た自信から世界形成を企て、動物的性質から不条理なデミウルゴス(創造神)を造り出す。テルトゥリアヌスは、デミウルゴスがアハモートの傀儡であり、ウァレンティノス派の主張する各種イメージの対応や、デミウルゴスによる天界形成の記述がいかに滑稽であるかを辛辣に嘲笑する。
- §21-24
デミウルゴスの無知と宇宙秩序および人間創造
デミウルゴスの無知についての批判が続けられ、ウァレンティノス派における悪魔や世界構造(プレローマ、中間地帯、七重天)の配置、および人間創造の欺瞞的な物質論が皮肉交じりに暴露される。
- §25-27
霊的な種子の付与とキリストの複合的本性
デミウルゴスによる人間創造の過程で、アハモートが隠した「霊的な種」が伝い流されたこと、そして人間を構成する諸要素の終末的運命の相違と、ウァレンティノス派におけるキリストの多重的な本質の構成について論じられる。
- §28-30
救済者とデミウルゴスおよび人間の三重の本性
デミウルゴスが救済者と出会って自らの希望を知り世界の管理を続けること、ウァレンティノス派が人類を三つの本性(カイン・アベル・セト)に分類して霊的な者の無条件の救済を主張すること、そして彼らが倫理的義務や婚姻に関する教義を独自の解釈で正当化していることが論じられる。
- §31-33
終末における魂の行方とプトレマイオスの異説
ウァレンティノス派における物質の最終的な破滅と霊的・動物的魂のそれぞれの至る終末について語られ、後半ではプトレマイオスの追従者たちによるビュトスの二重の婚姻(思考と意志)に関する異説が紹介される。
- §34-39
ビュトスとオグドアスをめぐる分派の諸学説
著者はウァレンティノス派とその分派における多様な神統譜を扱い、ビュトスの性別やオグドアスの構成、および主イエスの起源に関する様々な学説を批判的に紹介している。
