- 底本
- Aristophanes. Aristophanis Comoediae, Vol. 1. Hall, F. W. and Geldart, William M., editors. Oxford: Clarendon Press, 1906.
- 翻訳
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- 言語
- 日本語 · English · 简体中文 · 한국어
- CTS URN
- urn:cts:greekLit:tlg0019.tlg003.humanitext-grc2:869-966
- 出力
- Humanitext Reader · reader.humanitext.ai · 2026-10-27
ストレプシアデスが息子の教育をソクラテスに懇願した後、「優れた論理」と「劣った論理」が擬人化されて登場し、どちらがフェイディッピデスを教育するにふさわしいかを巡って激しい口論を繰り広げ、旧教育と新教育の対決が始まる。
καὶ τῶν κρεμαθρῶν οὔπω τρίβων τῶν ἐνθάδε.
(ソクラテス:)そして、ここの吊り籠にもまだ慣れておらん。
αὐτὸς τρίβων1 εἴης ἄν, εἰ κρέμαιό γε.
(フェイディッピデス:)もし吊るされるなら、あなた自身がすり傷だらけの衣になるでしょうがね。
οὐκ ἐς κόρακας; καταρᾷ σὺ τῷ διδασκάλῳ;
(ストレプシアデス:)地獄へ落ちろ!お前、先生を侮辱するのか?
ἰδοὺ κρέμαιʼ, ὡς ἠλίθιον ἐφθέγξατο
(ソクラテス:)「もし吊るされるなら」だって。なんと愚かな口の利き方をするのだ、
καὶ τοῖσι χείλεσιν διερρυηκόσιν.
だらしなく開いたその唇で。
πῶς ἂν μάθοι ποθʼ οὗτος ἀπόφυξιν δίκης
このような男が、どうして訴訟の無罪放免を、
ἢ κλῆσιν ἢ χαύνωσιν ἀναπειστηρίαν;
あるいは召喚や、相手を骨抜きにする説得術を学ぶことができようか?
καίτοι γε ταλάντου τοῦτʼ ἔμαθεν Ὑπέρβολος.
もっとも、ヒュペルボロスは1タラントンを払ってこれを学んだのだが。
ἀμέλει δίδασκε· θυμόσοφός ἐστιν φύσει·
(ストレプシアデス:)構いませんから、教えてやってください。この子は生まれつき頭が良いのです。
εὐθύς γέ τοι παιδάριον ὄν τυννουτονὶ
現に、ほんのこれっぽっちの子供だった頃から、
ἔπλαττεν ἔνδον οἰκίας ναῦς τʼ ἔγλυφεν,
家の中で粘土細工をし、泥舟を彫り、
ἁμαξίδας τε σκυτίνας ἠργάζετο,
革製の小さな車を作り、
κἀκ τῶν σιδίων βατράχους ἐποίει πῶς δοκεῖς.2
ザクロの皮でカエルを作っていたのですよ、信じられないほどに。
ὅπως δʼ ἐκείνω τὼ λόγω μαθήσεται,
だから、あの二つの論理を学べるようにしてください、
τὸν κρείττονʼ ὅστις ἐστὶ καὶ τὸν ἥττονα,
「優れた論理」と、それが何であれ、もう一つの「劣った論理」を。
ὃς τἄδικα λέγων ἀνατρέπει τὸν κρείττονα·
「劣った論理」は、不義を語って「優れた論理」を打ち負かすのです。
ἐὰν δὲ μή, τὸν γοῦν ἄδικον πάσῃ τέχνῃ.
それがだめなら、せめて不義の論理だけでも、どんな手を使ってでも学ばせてください。
αὐτὸς μαθήσεται παρʼ αὐτοῖν τοῖν λόγοιν.
(ソクラテス:)本人が二つの論理そのものから学ぶだろう。
ἐγὼ δʼ ἀπέσομαι.
私は席を外そう。
τοῦτό νυν μέμνησʼ, ὅπως
(ストレプシアデス:)では、次のことを覚えておいておくれ、
πρὸς πάντα τὰ δίκαιʼ ἀντιλέγειν δυνήσεται.
あらゆる正しいことに対して反論できるようにすることを。
χώρει δευρί, δεῖξον σαυτὸν
(優れた論理:)こちらへ来い。お前の姿を
τοῖσι θεαταῖς, καίπερ θρασὺς ὤν.
観客たちに見せてやれ、ずうずうしい奴め。
ἴθʼ ὅποι χρῄζεις. πολὺ γὰρ μᾶλλόν ʼς
(劣った論理:)お前の行きたいところへどこへでも行くがいい。大勢の前で
ἐν τοῖς πολλοῖσι λέγων ἀπολῶ.
お前に反論して、お前をやり込めてやる方が、ずっと楽しいからな。
ἀπολεῖς σύ; τίς ὤν;
(優れた論理:)やり込めるだと、お前が?お前は何者だ?
λόγος.
(劣った論理:)「論理」だ。
ἥττων γʼ ὤν.
(優れた論理:)「劣った論理」のくせに。
ἀλλά σε νικῶ τὸν ἐμοῦ κρείττω
(劣った論理:)だが、私はお前を打ち負かす。お前は自分の方が優れていると
φάσκοντʼ εἶναι.
主張しているが。
τί σοφὸν ποιῶν;
(優れた論理:)どんな知恵を使ってだ?
γνώμας καινὰς ἐξευρίσκων.
(劣った論理:)新しい考えを編み出すことによってだ。
ταῦτα γὰρ ἀνθεῖ διὰ τουτουσὶ
(優れた論理:)そういうものがもてはやされるのは、ここの
τοὺς ἀνοήτους.
愚か者どものおかげだ。
οὔκ, ἀλλὰ σοφούς.
(劣った論理:)いや、賢者たちのおかげだ。
ἀπολῶ σε κακῶς.
(優れた論理:)お前をひどい目に合わせて破滅させてやる。
εἰπὲ τί ποιῶν;
(劣った論理:)言ってみろ、どうやって?
τὰ δίκαια λέγων.
(優れた論理:)正しいことを語ることによってだ。
ἀλλʼ ἀνατρέψω γʼ αὔτʼ ἀντιλέγων·
(劣った論理:)だが、私はそれに反対を唱えてひっくり返してやる。
οὐδὲ γὰρ εἶναι πάνυ φημὶ δίκην.
そもそも、正義などというものは全く存在しないと私は主張する。
οὐκ εἶναι φῄς;
(優れた論理:)存在しないと言うのか?
φέρε γὰρ ποῦ ʼστιν;
(劣った論理:)では、それはどこにあるのだ?
παρὰ τοῖσι θεοῖς.
(優れた論理:)神々のもとだ。
πῶς δῆτα δίκης οὔσης3 ὁ Ζεὺς
(劣った論理:)もし正義が存在するなら、どうしてゼウスは
οὐκ ἀπόλωλεν τὸν πατέρʼ αὑτοῦ
自分の父親を縛り上げたのに、
δήσας;
滅ぼされなかったのだ?
αἰβοῖ τουτὶ καὶ δὴ
(優れた論理:)うへえ、またしても
χωρεῖ τὸ κακόν· δότε μοι λεκάνην.
不快なものがこみ上げてきた。洗面器をくれ。
τυφογέρων εἶ κἀνάρμοστος.
(劣った論理:)お前は、ぼけた老人で、時代遅れだ。
καταπύγων εἶ κἀναίσχυντος.
(優れた論理:)お前は、男色家で、恥知らずだ。
ῥόδα μʼ εἴρηκας.
(劣った論理:)お前は私をバラだと言った(褒め言葉だ)。
καὶ βωμολόχος.
(優れた論理:)そして、下品な道化だ。
κρίνεσι στεφανοῖς.
(劣った論理:)百合の花冠で私を飾ってくれるな。
καὶ πατραλοίας.
(優れた論理:)そして、親不孝者だ。
χρυσῷ πάττων μʼ οὐ γιγνώσκεις.
(劣った論理:)お前は私に黄金を振りかけていることに気づいていない。
οὐ δῆτα πρὸ τοῦ γʼ, ἀλλὰ μολύβδῳ.
(優れた論理:)昔なら、そんなものは鉛だったが、今は違うな。
νῦν δέ γε κόσμος τοῦτʼ ἐστὶν ἐμοί.
(劣った論理:)だが、今や私にとってそれは名誉の飾りだ。
θρασὺς εἶ πολλοῦ.
(優れた論理:)お前は極めて不届き者だ。
σὺ δέ γʼ ἀρχαῖος.
(劣った論理:)そしてお前は古臭い。
διὰ σὲ δὲ φοιτᾶν
(優れた論理:)お前のせいで、若者たちの誰も
οὐδεὶς ἐθέλει τῶν μειρακίων·
学校へ通いたがらない。
καὶ γνωσθήσει ποτʼ Ἀθηναίοις
そして、アテナイ人たちもいつか思い知るだろう、
οἶα διδάσκεις τοὺς ἀνοήτους.
お前がその愚か者どもに何を教えているかを。
αὐχμεῖς αἰσχρῶς.
(劣った論理:)お前はみすぼらしく汚れている。
σὺ δέ γʼ εὖ πράττεις.
(優れた論理:)それに対してお前は贅沢に暮らしているな。
καίτοι πρότερόν γʼ ἐπτώχευες,
もっとも、お前は以前は乞食同然だったがな。
Τήλεφος εἶναι Μυσὸς φάσκων,
ミュシアのテレポスだと名乗って、
ἐκ πηριδίου
頭陀袋から、
γνώμας τρώγων Πανδελετείους.
パンデレトスの小理屈をかじりながらな。
ὤμοι σοφίας —
(劣った論理:)ああ、なんという知恵か。
ὤμοι μανίας —
(優れた論理:)ああ、なんという狂気か。
ἧς ἐμνήσθης —
(劣った論理:)お前が言及した(昔の知恵のこと)。
τῆς σῆς, πόλεώς θʼ ἥτις σε τρέφει
(優れた論理:)お前の狂気のことだ。そしてお前を養っているこの国家の狂気だ、
λυμαινόμενον τοῖς μειρακίοις.
お前が若者たちを台無しにしているというのに。
οὐχὶ διδάξεις τοῦτον Κρόνος ὤν.
(劣った論理:)お前は、クロノス(の化身)のような古臭い奴だから、この子を教育することはできない。
εἴπερ γʼ αὐτὸν σωθῆναι χρὴ
(優れた論理:)もしこの子が救われなければならず、
καὶ μὴ λαλιὰν μόνον ἀσκῆσαι.
ただのおしゃべりだけを訓練するのではないなら、私が教える。
δεῦρʼ ἴθι, τοῦτον δʼ ἔα μαίνεσθαι.
(劣った論理:)こちらへ来い。この男は勝手に狂わせておけ。
κλαύσει, τὴν χεῖρʼ ἢν ἐπιβάλλῃς.
(優れた論理:)手を出してみろ、痛い目を見るぞ。
παύσασθε μάχης καὶ λοιδορίας.
(コーラス:)争いと罵り合いをやめなさい。
ἀλλʼ ἐπίδειξαι σύ τε τοὺς προτέρους
むしろ、あなた方は、一方は昔の人々に
ἅττʼ ἐδίδασκες, σύ τε τὴν καινὴν
何を教えていたかを示し、もう一方は新しい
παίδευσιν, ὅπως ἂν ἀκούσας σφῷν
教育を示しなさい。そうすればこの子は、あなた方二人が
ἀντιλεγόντοιν4 κρίνας φοιτᾷ.
互いに反論し合うのを聞いて、判断した上で学校へ通うでしょう。
δρᾶν ταῦτʼ ἐθέλω.
(優れた論理:)そうすることに同意しよう。
κἄγωγʼ ἐθέλω.
(劣った論理:)私も同意する。
φέρε δὴ πότερος λέξει πρότερος;
(コーラス:)さあ、どちらが先に話すかね?
τούτῳ δώσω·
(優れた論理:)この者に譲ろう。
κᾆτʼ ἐκ τούτων ὧν ἂν λέξῃ
そして、こいつが語るであろうその言葉から、
ῥηματίοισιν καινοῖς αὐτὸν
新しい文句と
καὶ διανοίαις κατατοξεύσω.
思想で、こいつを射抜いてやる。
τὸ τελευταῖον δʼ, ἢν ἀναγρύζῃ,
そして最後に、もしこいつが少しでもつぶやけば、
τὸ πρόσωπον ἅπαν καὶ τὠφθαλμὼ
顔全体と両目を、
κεντούμενος ὥσπερ ὑπʼ ἀνθρηνῶν
スズメバチに刺されるかのように、
ὑπὸ τῶν γνωμῶν ἀπολεῖται.
私の数々の考えによって刺し貫かれ、滅びるだろう。
νῦν δείξετον τὼ πισύνω τοῖς περιδεξίοισι
(コーラス:)今や、機知に富んだ論理と、
λόγοισι καὶ φροντίσι καὶ γνωμοτύποις μερίμναις,
思索と、思想を創り出す配慮に自信を持つお二人が、示す時だ、
ὁπότερος αὐτοῖν λέγων ἀμείνων φανήσεται.
どちらが語るにおいて、より優れていると現れるかを。
νῦν γὰρ ἅπας ἐνθάδε κίνδυνος ἀνεῖται σοφίας,
今や、ここに知恵のすべての危急が解き放たれており、
ἧς πέρι τοῖς ἐμοῖς φίλοις ἐστὶν ἀγὼν μέγιστος.
それについて私の友人たちにとって、最大の戦いがあるのだから。
ἀλλʼ ὦ πολλοῖς τοὺς πρεσβυτέρους ἤθεσι χρηστοῖς στεφανώσας,
(コーラス:)さあ、昔の人々を多くの優れた品性で飾ってきた方よ、
ῥῆξον φωνὴν ᾗτινι χαίρεις, καὶ τὴν σαυτοῦ φύσιν εἰπέ.
あなたの好む声を響かせ、あなたの本来の性質を語りなさい。
λέξω τοίνυν τὴν ἀρχαίαν παιδείαν ὡς διέκειτο,
(優れた論理:)それでは、かつての教育がいかなる状態にあったかを語ろう、
ὅτʼ ἐγὼ τὰ δίκαια λέγων ἤνθουν καὶ σωφροσύνη ʼνενόμιστο.
私が正しいことを語って栄え、節制が重んじられていたあの頃に。
πρῶτον μὲν ἔδει παιδὸς φωνὴν γρύξαντος μηδὲν ἀκοῦσαι·5
まず第一に、子供が少しでも声を立てるのを聞いてはならなかった。
εἶτα βαδίζειν ἐν ταῖσιν ὁδοῖς εὐτάκτως ἐς κιθαριστοῦ
それから、通りの上を、キタラ奏者の家へと規律正しく歩いて行ったものだ、
τοὺς κωμήτας γυμνοὺς ἁθρόους, κεἰ κριμνώδη κατανείφοι.
同じ町内の者たちが、マントをつけずに群れをなして、たとえ大雪が降ろうとも。
εἶτʼ αὖ προμαθεῖν ᾆσμʼ ἐδίδασκεν τὼ μηρὼ μὴ ξυνέχοντας,
さらにまた、彼らは腿を閉じずに歌をあらかじめ学ぶよう教えられた、
- 870τρίβων
名詞「すり切れたマント(衣服)」と、形容詞「熟練した、経験のある」のダブル・ミーニング。直前のソクラテスの「τρίβων」(空中ブランコに「慣れていない」)を受けて、フェイディッピデスが「もし吊るされたら、お前自身が擦り傷だらけの衣服(または痛めつけられた者)になるだろう」と皮肉っている。
- 881πῶς δοκεῖς
直訳すると「あなたはどう思うか」であるが、ここでは疑問文ではなく、口語的な挿入句として「信じられないほどに」「どれほどひどく」といった強調の意味を表している。
- 904aδίκης οὔσης
分詞 ὤν の属格単数女性形 οὔσης が δίκης に係っている。これは「もし正義が存在するなら」という仮定(条件)を表す分詞の絶対属格構文(genitive absolute)として解釈される。
- 937ἀκούσας σφῷν ἀντιλεγόντοιν
分詞 ἀκούσας(〜を聞いて)は主格・単数・男性・アオリスト。その直後の σφῷν ἀντιλεγόντοιν(あなた方二人が反論し合うのを)は対格ではなく属格(両数形)であり、知覚動詞 ἀκούω(聞く)が「人の声を聞く」際にとる属格支配に基づいている。
- 963ἔδει παιδὸς φωνὴν γρύξαντος μηδὲν ἀκοῦσαι
非人称動詞 ἔδει(〜せねばならなかった)の主格不定詞節。不定詞 ἀκοῦσαι(聞くこと)の直接目的語は対格 φωνὴν(声を)であり、その所有者として属格 παιδὸς φωνὴν γρύξαντος(少しでも声を立てた子供の)が係っている。全体として「子供が少しでも不満や声を漏らすのを聞くことは許されなかった」という意味になる。
