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雲

§1197-1278

詭弁による債権者パシアスとアミュニアスの撃退

ストレプシアデスは、返済を迫る債権者パシアスに対し、ソクラテス流の新しい弁論術と性別文法を持ち出して返済を拒否し、追い払う。さらに馬車から転落して怪我をしたもう一人の債権者アミュニアスが現れるが、同様にからかって退ける。

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1197

ἁρχαὶ τὰ πρυτανεῖʼ, ἀλλʼ ἕνῃ τε καὶ νέᾳ;1

役人たちはなぜ保証金を受け取るのだ、新月ではなく、古くて新しい日に?

ὅπερ οἱ προτένθαι γὰρ δοκοῦσί μοι ποιεῖν·

私に言わせれば、彼らは先食いする者たちがするのと同じことをしているのだ。

ὅπως τάχιστα τὰ πρυτανεῖʼ ὑφελοίατο,

できるだけ早く保証金をかすめ取るために、

1200

διὰ τοῦτο προὐτένθευσαν ἡμέρᾳ μιᾷ.

そのために彼らは一日早く先食いするのだ。

εὖ γʼ· ὦ κακοδαίμονες, τί κάθησθʼ ἀβέλτεροι,

見事だ!おお、不運な愚か者どもよ、なぜお前たちはまぬけに座っているのだ、

ἡμέτερα κέρδη τῶν σοφῶν ὄντες, λίθοι,

我々賢者の利益であるのに、ただの石ころ、

ἀριθμός, πρόβατʼ ἄλλως, ἀμφορῆς νενησμένοι;

数合わせ、無駄な羊ども、積み上げられたアンフォラめ!

ὥστʼ εἰς ἐμαυτὸν καὶ τὸν υἱὸν τουτονὶ

だから私自身とこの息子のために、

1205

ἐπʼ εὐτυχίαισιν ᾀστέον μοὐγκώμιον.

幸運を祝して讃歌を歌わねばならん。

μάκαρ ὦ Στρεψίαδες,

「おお、幸福なるかな、ストレプシアデスよ、

αὐτός τʼ ἔφυς ὡς σοφὸς

お前自身もこれほど賢く生まれ、

χοἶον τὸν υἱὸν τρέφεις ,

何という息子を育てていることか!」と、

φήσουσι δή μʼ οἱ φίλοι

私の友人たちや、

1210

χοἰ δημόται

同郷人たちは言うだろう、

ζηλοῦντες ἡνίκʼ ἂν σὺ νικᾷς λέγων τὰς δίκας.

お前が弁論で裁判に勝つときに、羨ましがりながら。

ἀλλʼ εἰσάγων σε βούλομαι πρῶτον ἑστιᾶσαι.

さあ、お前を中に入れて、まずはもてなしたい。

εἶτʼ ἄνδρα τῶν αὑτοῦ τι χρὴ προϊέναι;

パシアス:それから、人は自分の財産を少しでも諦めるべきだろうか?

1215

οὐδέποτέ γʼ, ἀλλὰ κρεῖττον εὐθὺς ἦν τότε

決してそんなことはない。むしろ、当時すぐに

ἀπερυθριᾶσαι μᾶλλον ἢ σχεῖν πράγματα,

恥をしのんで断っておくべきだった、面倒なことになるよりも。

ὅτε τῶν ἐμαυτοῦ γʼ ἕνεκα νυνὶ χρημάτων

今になって私の財産のために、

ἕλκω σε κλητεύσοντα, καὶ γενήσομαι

お前を証人として引っ張り出し、さらに

ἐχθρὸς ἔτι πρὸς τούτοισιν ἀνδρὶ δημότῃ.

同郷の男と敵対することになるよりも。

1220

ἀτὰρ οὐδέποτέ γε τὴν πατρίδα καταισχυνῶ

だが、生きている限り私は決して祖国を辱めない。

ζῶν, ἀλλὰ καλοῦμαι Στρεψιάδην —

だから私はストレプシアデスを告発する ――

τίς οὑτοσί;

ストレプシアデス:誰だ、これは?

ἐς τὴν ἕνην τε καὶ νέαν.

パシアス:古くて新しい日に出頭せよと。

μαρτύρομαι,

ストレプシアデス:お前たちが証人だ、

ὅτι ἐς δύʼ εἶπεν ἡμέρας. τοῦ χρήματος;2

彼が二日間と言ったのを。何についての用かね?

τῶν δώδεκα μνῶν, ἃς ἔλαβες ὠνούμενος

パシアス:12ミナだ。お前が葦毛の馬を

1225

τὸν ψαρὸν ἵππον.

買うために受け取った金だ。

ἵππον; οὐκ ἀκούετε;

ストレプシアデス:馬だって?お前たち、聞こえるか?

ὃν πάντες ὑμεῖς ἴστε μισοῦνθʼ ἱππικήν.

お前たち全員が、私が乗馬を嫌っていると知っているのに。

καὶ νὴ Δίʼ ἀποδώσειν γʼ ἐπώμνυς τοὺς θεούς.

パシアス:そして、ゼウスにかけて、神々に誓って返済すると誓ったではないか。

μὰ τὸν Δίʼ οὐ γάρ πω τότʼ ἐξηπίστατο

ストレプシアデス:誓うものか、ゼウスにかけて。なぜなら、そのときはまだ

Φειδιππίδης μοι τὸν ἀκατάβλητον λόγον.

フェイディッピデスが、あの不敗の論理を完全に習得していなかったからな。

1230

νῦν δὲ διὰ τοῦτʼ ἔξαρνος εἶναι διανοεῖ;

パシアス:それで今、そのために返済を否定するつもりなのか?

τί γὰρ ἄλλʼ ἂν ἀπολαύσαιμι τοῦ μαθήματος;

ストレプシアデス:さもなければ、その学習から何の得があるというのだ?

καὶ ταῦτʼ ἐθελήσεις ἀπομόσαι μοι τοὺς θεοὺς

パシアス:ならば、お前は私が命じる神々にかけて、

ἵνʼ ἂν κελεύσω ʼγώ σε;

それを私に誓う気があるか?

τοὺς ποίους θεούς;

ストレプシアデス:どの神々かね?

τὸν Δία, τὸν Ἑρμῆν, τὸν Ποσειδῶ.

パシアス:ゼウス、ヘルメス、ポセイドンだ。

νὴ Δία

ストレプシアデス:ゼウスにかけて、

1235

κἂν προσκαταθείην γʼ ὥστʼ ὀμόσαι τριώβολον.

その誓いをするためなら、3オボロス余分に支払ってもいいくらいだ。

ἀπόλοιο τοίνυν ἕνεκʼ ἀναιδείας ἔτι.

パシアス:それほど厚顔無恥なら、くたばってしまえ。

ἁλσὶν διασμηχθεὶς ὄναιτʼ ἂν3 οὑτοσί.

ストレプシアデス:この男は塩をすり込んで磨けば、役に立つかもしれないな。

οἴμʼ ὡς καταγελᾷς.

パシアス:おのれ、馬鹿にしおって!

ἓξ χοᾶς χωρήσεται.

ストレプシアデス:6コアスは入るな。

οὔ τοι μὰ τὸν Δία τὸν μέγαν καὶ τοὺς θεοὺς

パシアス:大いなるゼウスと神々にかけて、

1240

ἐμοῦ καταπροίξει.

お前が私をただで踏みにじることはできないぞ。

θαυμασίως ἥσθην θεοῖς,

ストレプシアデス:神々とは、実におかしなものだ。

καὶ Ζεὺς γέλοιος ὀμνύμενος τοῖς εἰδόσιν.

知っている者にとって、ゼウスにかけて誓うなど笑止千万だ。

ἦ μὴν σὺ τούτων τῷ χρόνῳ δώσεις δίκην.

パシアス:本当に、お前はいずれこれの罰を支払うことになるぞ。

ἀλλʼ εἴτʼ ἀποδώσεις μοι τὰ χρήματʼ εἴτε μή,

だが、金を返すのか返さないのか、

ἀπόπεμψον ἀποκρινάμενος.

はっきりと答えてから私を追い払え。

ἔχε νυν ἥσυχος.

ストレプシアデス:まあ落ち着け。

1245

ἐγὼ γὰρ αὐτίκʼ ἀποκρινοῦμαί σοι σαφῶς.

今すぐはっきりと答えてやるから。

τί σοι δοκεῖ δράσειν;

パシアス:彼はどうすると思う?

ἀποδώσειν μοι δοκεῖ.

証人:返すつもりだと思いますよ。

ποῦ ʼσθʼ οὗτος ἁπαιτῶν με τἀργύριον; λέγε

ストレプシアデス:私に金を返せと要求しているのはどいつだ?言ってみろ、

τουτὶ τί ἔστι;

これは何か?

τοῦθʼ ὅ τι ἐστί; κάρδοπος.

パシアス:それが何かだって?捏ね桶だ。

ἔπειτʼ ἀπαιτεῖς τἀργύριον τοιοῦτος ὤν;

ストレプシアデス:それなのに、そんな有様で金を要求するのか?

1250

οὐκ ἂν ἀποδοίην οὐδʼ ἂν ὀβολὸν οὐδενί,

私は一オボロスだって誰にも返すつもりはない、

ὅστις καλέσειε4 κάρδοπον τὴν καρδόπην.

捏ね桶を男性形の変化で呼ぶような者には。

οὐκ ἄρʼ ἀποδώσεις;

パシアス:では返さないのか?

οὐχ ὅσον γέ μʼ εἰδέναι.

ストレプシアデス:私の知る限りでは、絶対に返さんな。

οὔκουν ἀνύσας τι θᾶττον ἀπολιταργιεῖς

だから、とっとと私の戸口から失せやがれ!

ἀπὸ τῆς θύρας;​b ἄπειμι, καὶ τοῦτʼ ἴσθʼ ὅτι

パシアス:立ち去ろう。だが、私が保証金を

1255

θήσω πρυτανεῖʼ ἢ μηκέτι ζῴην ἐγώ.

供託するか、さもなければ私が死ぬことになるぞ、これだけは覚えておけ。

καὶ προσαπολεῖς ἄρʼ αὐτὰ πρὸς ταῖς δώδεκα.

ストレプシアデス:それならお前は、その 12 ミナに加えて、その保証金も失うことになるぞ。

καίτοι σε τοῦτό γʼ οὐχὶ βούλομαι παθεῖν,

もっとも、お前が愛嬌たっぷりに「捏ね桶」と言ったからには、

ὁτιὴ ʼκάλεσας εὐηθικῶς τὴν κάρδοπον.

お前にそんな目に遭ってほしくはないのだがな。

ἰώ μοί μοι.

アミュニアス:おお、哀れな私よ、悲しいかな!

1260

ἔα.

ストレプシアデス:おや。

τίς οὑτοσί ποτʼ ἔσθʼ ὁ θρηνῶν; οὔτι που

あそこで嘆いているのは誰だ?まさか、

τῶν Καρκίνου τις δαιμόνων ἐφθέγξατο;

カルキノスの神々のうちの誰かが声を上げたわけではあるまいに?

τί δʼ ὅστις εἰμὶ τοῦτο βούλεσθʼ εἰδέναι;

アミュニアス:私が誰であるかなど、なぜ知りたいのだ?

ἀνὴρ κακοδαίμων.

哀れな男だ。

κατὰ σεαυτόν νυν τρέπου.

ストレプシアデス:それなら自分の道を歩むがよい。

ὦ σκληρὲ δαῖμον, ὦ τύχαι θραυσάντυγες

アミュニアス:おお、過酷な運命よ、おお、我が馬車の車輪を砕いた

1265

ἵππων ἐμῶν, ὦ Παλλὰς ὥς μʼ ἀπώλεσας.

不運よ!おお、パラスよ、あなたは私を破滅させた!

τί δαί σε Τληπόλεμός ποτʼ εἴργασται κακόν;

ストレプシアデス:それなら、トレポレモスがお前にどんな悪事を働いたというのだ?

μὴ σκῶπτέ μʼ ὦ τᾶν, ἀλλά μοι τὰ χρήματα

アミュニアス:お前さん、私をからかわないでくれ。それより私の金を、

τὸν υἱὸν ἀποδοῦναι κέλευσον ἅλαβεν,

お前の息子が受け取った金を返すように命じてくれ。

ἄλλως τε μέντοι καὶ κακῶς πεπραγότι.

とりわけ私は今、悲惨な状態にあるのだから。

1270

τὰ ποῖα ταῦτα χρήμαθʼ;

ストレプシアデス:その金とは何のことだ?

ἁδανείσατο.

アミュニアス:彼が借りた金だ。

κακῶς ἄρʼ ὄντως εἶχες, ὥς γʼ ἐμοὶ δοκεῖς.

ストレプシアデス:それなら、本当に悲惨な状態にあるのだな、私が見る限り。

ἵππους ἐλαύνων ἐξέπεσον νὴ τοὺς θεούς.

アミュニアス:馬を御していて、転落したのだ、神々にかけて。

τί δῆτα ληρεῖς ὥσπερ ἀπʼ ὄνου καταπεσών;5

ストレプシアデス:なぜお前は、まるでロバから落ちたかのように、たわごとを言っているのだ?

ληρῶ, τὰ χρήματʼ ἀπολαβεῖν εἰ βούλομαι;

アミュニアス:自分の金を取り戻したいと思うことが、たわごとを言っていることになるのか?

1275

οὐκ ἔσθʼ ὅπως σύ γʼ αὐτὸς ὑγιαίνεις.

ストレプシアデス:お前が正気であるはずがない。

τί δαί;

アミュニアス:何だって?

τὸν ἐγκέφαλον ὥσπερ σεσεῖσθαί μοι δοκεῖς.

ストレプシアデス:脳震盪でも起こしているように私には思えるぞ。

σὺ δὲ νὴ τὸν Ἑρμῆν προσκεκλήσεσθαί γέ μοι,

アミュニアス:ヘルメスにかけて、お前を訴えてやるぞ、

εἰ μὴ ʼποδώσεις τἀργύριον.

もし金を返さないならな。

構文注5 件
  1. 1197ἁρχαὶ τὰ πρυτανεῖʼ, ἀλλʼ ἕνῃ τε καὶ νέᾳ

    主語 ἁρχαί(官吏たち)と目的語 τὰ πρυτανεῖα(保証金)に対し、直前の文 §1196 の動詞 δέχονται(受け取る)が省略されている。「なぜ官吏たちは保証金を新月ではなく、古くて新しい日に受け取るのか」という疑問文を形成する。

  2. 1223τοῦ χρήματος;

    関連または原因を示す独立した属格(genitive of cause/relation)。「何の金のことでか?」「何についての請求か?」という驚きや問いかけを表現する。

  3. 1237ὄναιτʼ ἂν

    動詞 ὀνίνημι(中動相で「恩恵を被る、役立つ」)の第2アオリスト中動相希求法 ὄναιτο に 小辞 ἄν が伴い、潜在の希求法(potential optative)を形成する。「この男は(塩をすり込まれれば)役に立つだろう」という緩やかな主張や推量を表す。

  4. 1251ὅτις καλέσειε

    関係代名詞 ὅστις に希求法 καλέσειε が続く。定動詞節での一般的条件(general condition)または主観的な前提を伴う潜在的な表現であり、「~するような者に対しては(私は一オボロスも返さない)」という意志・条件を示す。

  5. 1273ὥσπερ ἀπʼ ὄνου καταπεσών

    接続詞 ὥσπερ に分詞 καταπεσών が続く比較表現。ギリシア語の慣用表現「ロバから落ちた(=極めて愚かな、的外れなことを言う)」に基づき、実際に馬(ἵππος)から落ちたアミュニアスに対して、ストレプシアデスがロバ(ὄνος)に格下げして愚弄する二重の意味が込められている。

翻訳:Gemini 3.5 Flash(2026-05-22 公開)urn:cts:greekLit:tlg0019.tlg003.humanitext-grc2:1197-1278