ディオゲネス・ラエルティオス

ギリシア哲学者列伝

§2.5.36-2.5.41

クサンティッペへの機知と告発および裁判の経緯

ソクラテスがクサンティッペとの同居や世評への受け答えを通じて泰然とした態度を示す一方、デルポイの神託と自負心の強い者への論駁がアニュトスらの怨嗟を買い、不敬と青年腐敗の罪で告発・有罪判決を受ける経緯が記される。

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στρέψαντος δὲ Ἀντισθένους τὸ διερρωγὸς τοῦ τρίβωνος εἰς τοὐμφανές, ὁρῶ σου, ἔφη, διὰ τοῦ τρίβωνος τὴν κενοδοξίαν. πρὸς τὸν εἰπόντα, οὐ σοὶ λοιδορεῖται δεῖνα; οὐχί, ἔφη· ἐμοὶ γὰρ οὐ πρόσεστι ταῦτα. ἔλεγε δὲ τοῖς κωμικοῖς δεῖν ἐπίτηδες ἑαυτὸν διδόναι· εἰ μὲν γάρ τι τῶν προσόντων λέξειαν, διορθώσονται1· εἰ δʼ οὔ, οὐδὲν πρὸς ἡμᾶς. πρὸς Ξανθίππην πρότερον μὲν λοιδοροῦσαν, ὕστερον δὲ καὶ περιχέασαν αὐτῷ, οὐκ ἔλεγον, εἶπεν, ὅτι Ξανθίππη βροντῶσα καὶ ὕδωρ ποιήσει; πρὸς Ἀλκιβιάδην εἰπόντα ὡς οὐκ ἀνεκτὴ Ξανθίππη λοιδοροῦσα, ἀλλʼ ἔγωγʼ, ἔφη, συνείθισμαι, καθαπερεὶ καὶ τροχιλίας ἀκούων συνεχές.

アンティステネスがぼろ外套の破れ目を人目につくように表へ向けたとき、 「私はお前の外套の裂け目を通して、 と彼は言った、 お前の虚栄心を見通しているぞ。」 「某があなたの悪口を言っているのではないですか」と言った者に対しては、 「そんなことはない、 と彼は言った、 なぜなら私にはそうした性質は備わっていないのだから。」 また彼は、喜劇詩人たちには故意に身をさらすべきだと語っていた。なぜなら、もし彼らが自分にある実情を述べるなら欠点が正されるであろうし、もしそうでないなら自分たちには何の関係もないからである。最初は彼を罵り、後には上から水を浴びせかけたクサンティッペに対して、 「私は言わなかったかね、 と彼は言った、 クサンティッペが雷鳴を轟かせれば、雨をも降らせるだろうと。」 アルキビアデスが、クサンティッペの罵詈雑言は耐えがたいと言った際、 「だが私自身は、 と彼は言った、 滑車のきしむ音を絶えず聞いているのと同じように、もう慣れっこになっているのだ。

καὶ σὺ μέν, εἶπε, χηνῶν βοώντων ἀνέχῃ. τοῦ δὲ εἰπόντος, ἀλλά μοι ᾠὰ καὶ νεοττοὺς τίκτουσι, κἀμοί, φησί, Ξανθίππη παιδία γεννᾷ. ποτὲ αὐτῆς ἐν ἀγορᾷ καὶ θοἰμάτιον περιελομένης συνεβούλευον οἱ γνώριμοι χερσὶν ἀμύνασθαι, νὴ Δίʼ, εἶπεν, ἵνʼ ἡμῶν πυκτευόντων ἕκαστος ὑμῶν λέγῃ, εὖ Σώκρατες, εὖ Ξανθίππη. ἔλεγε συνεῖναι τραχείᾳ γυναικὶ καθάπερ οἱ ἱππικοὶ θυμοειδέσιν ἵπποις. ἀλλʼ ὡς ἐκεῖνοι, φησί, τούτων κρατήσαντες ῥᾳδίως τῶν ἄλλων περιγίνονται, οὕτω κἀγὼ Ξανθίππῃ χρώμενος τοῖς ἄλλοις ἀνθρώποις συμπεριενεχθήσομαι. Ταῦτα δὴ καὶ τοιαῦτα λέγων καὶ πράττων πρὸς τῆς Πυθίας ἐμαρτυρήθη, Χαιρεφῶντι ἀνελούσης ἐκεῖνο δὴ τὸ περιφερόμενον, "ἀνδρῶν ἁπάντων Σωκράτης σοφώτατος."

「それに君だって、 と彼は言った、 ガチョウがやかましく鳴きたてるのを耐えているではないか。」 これに対してアルキビアデスが、「ですが、あいつらは私に卵や雛を産んでくれますから」と言うと、 「私のところでも、 とソクラテスは言った、 クサンティッペが子供たちを産んでくれるのだ。」 かつて彼女が広場で彼の外套までも剥ぎ取った際、友人たちは手を使って防戦するよう勧めたが、 「とんでもない、 と彼は言った、 我々が殴り合っているところで、お前たち一人ひとりが『ソクラテス、がんばれ、クサンティッペ、がんばれ』と囃し立てるためか。」 また彼は、気性の荒い馬に乗る騎手たちのように、扱いにくい妻と暮らしているのだと語っていた。 「だが彼らが、 と彼は言った、 そうした馬を御することによって他の馬を容易に制するように、私もまたクサンティッペと接することによって、他の人間たちとも巧みにつき合っていくことができるのだ。」 こうしたことやこれに類することを語り、かつ行っていたために、彼はピュティアの託宣によって証しされることとなった。カイレポンが託宣を求めた際、かの世に知られた神託が下されたのである。 「すべての人間の中でソクラテスが最も知恵恵まれている。

ἀφʼ οὗ δὴ καὶ ἐφθονήθη μάλιστα· καὶ δὴ καὶ ὅτι διήλεγχε τοὺς μέγα φρονοῦντας ἐφʼ ἑαυτοῖς ὡς ἀνοήτους, καθάπερ ἀμέλει καὶ τὸν Ἄνυτον, ὡς καὶ ἐν τῷ Πλάτωνός ἐστι Μένωνι. οὗτος γὰρ οὐ φέρων τὸν ὑπὸ Σωκράτους χλευασμὸν πρῶτον μὲν ἐπήλειψεν αὐτῷ τοὺς περὶ Ἀριστοφάνην, ἔπειτα καὶ Μέλητον συνέπεισεν ἀπενέγκασθαι κατʼ αὐτοῦ γραφὴν ἀσεβείας καὶ τῶν νέων διαφθορᾶς. Ἀπηνέγκατο μὲν οὖν τὴν γραφὴν Μέλητος, εἶπε δὲ τὴν δίκην Πολύευκτος, ὥς φησι Φαβωρῖνος ἐν Παντοδαπῇ ἱστορίᾳ· συνέγραψε δὲ τὸν λόγον Πολυκράτης σοφιστής, ὥς φησιν Ἕρμιππος, Ἄνυτος, ὥς τινες· προητοίμασε δὲ πάντα Λύκων δημαγωγός.

まさにこのことから彼はとりわけ嫉視されるようにもなった。さらにまた、自惚れている者たちを分別のない者として論駁したことによっても同様であった。例えば案の定アニュトスに対してもそうであり、プラトンの『メノン』にも描かれている通りである。このアニュトスはソクラテスによる嘲弄に耐えかね、まずアリストパネスの仲間たちを唆して彼を攻撃させ、次いでメレトスをも説得して、敬神を欠く罪と若者を腐敗させた罪で彼に対する公訴を提起させた。 こうしてメレトスが公訴状を提出し、パボリノスが『雑史』で述べるようにポリュエウクトスが訴訟の弁論を行った。またソフィストのポリュクラテスが(ヘルミッポスが言うように)、あるいは一部の人々が言うようにアニュトスがその演説原稿を執筆し、民衆扇動家のリュコンが万事の手配を整えた。

Ἀντισθένης δʼ ἐν ταῖς τῶν φιλοσόφων Διαδοχαῖς καὶ Πλάτων ἐν Ἀπολογίᾳ τρεῖς αὐτοῦ κατηγορῆσαί φασιν, Ἄνυτον καὶ Λύκωνα καὶ Μέλητον· τὸν μὲν Ἄνυτον ὡς ὑπὲρ τῶν δημιουργῶν καὶ τῶν πολιτικῶν ὀργιζόμενον· τὸν δὲ Λύκωνα ὑπὲρ τῶν ῥητόρων· καὶ τὸν Μέλητον ὑπὲρ τῶν ποιητῶν, οὓς ἅπαντας Σωκράτης διέσυρε. Φαβωρῖνος δέ φησιν ἐν τῷ πρώτῳ τῶν Ἀπομνημονευμάτων μὴ εἶναι ἀληθῆ τὸν λόγον τὸν Πολυκράτους κατὰ Σωκράτους· ἐν αὐτῷ γάρ, φησί, μνημονεύει τῶν ὑπὸ Κόνωνος τειχῶν ἀνασταθέντων, γέγονεν ἔτεσιν ἓξ τῆς τοῦ Σωκράτους τελευτῆς ὕστερον. καὶ ἔστιν οὕτως ἔχον.

だがアンティステネスは『哲学者たちの継承』の中で、またプラトンは『弁明』の中で、アニュトス、リュコン、メレトスの三名が彼を告発したと述べている。アニュトスは職人たちと政治家たちのために、リュコンは弁論家たちのために、メレトスは詩人たちのために憤慨したというのであるが、これらすべての人々をソクラテスは酷評していた。一方パボリノスは『覚書』の第一巻の中で、ポリュクラテスのソクラテス弾劾演説は本物ではないと述べている。その中でコノンによって再建された城壁への言及があるが、それはソクラテスの死後六年になって生じた出来事だからである、と彼は言う。そして事実その通りなのである。

δʼ ἀντωμοσία2 τῆς δίκης τοῦτον εἶχε τὸν τρόπον· ἀνάκειται γὰρ ἔτι καὶ νῦν, φησὶ Φαβωρῖνος, ἐν τῷ Μητρῴῳ· τάδε ἐγράψατο καὶ ἀντωμόσατο Μέλητος Μελήτου Πιτθεὺς Σωκράτει Σωφρονίσκου Ἀλωπεκῆθεν· ἀδικεῖ Σωκράτης, οὓς μὲν πόλις νομίζει θεοὺς οὐ νομίζων, ἕτερα δὲ καινὰ δαιμόνια εἰσηγούμενος· ἀδικεῖ δὲ καὶ τοὺς νέους διαφθείρων. τίμημα θάνατος. δʼ οὖν φιλόσοφος, Λυσίου γράψαντος ἀπολογίαν αὐτῷ, διαναγνοὺς ἔφη, καλὸς μὲν λόγος, Λυσία, οὐ μὴν ἁρμόττων γʼ ἐμοί. δηλαδὴ γὰρ ἦν τὸ πλέον δικανικὸς ἐμφιλόσοφος.

この裁判の宣誓告発書は次のような文面であった。なぜならパボリノスによれば、それは今なおメトロオン神殿に奉納されて残っているからである。 「メレトスの子、ピトス区のメレトスが、アロペケ区のソプロニスコスの子ソクラテスに対し、以下の告発を宣誓して提起した。ソクラテスは、ポリスの認める神々を認めず、他の新たな神霊的存在を導入することによって不義を働いている。また若者たちを腐敗させることによっても不義を働いている。求刑は死刑。」 そこでかの哲学者は、リュシアスが彼のために弁護演説を起草した際、それを読み通してこう言った。 「見事な演説だ、リュシアスよ。だが、けっして私には相応しくない。」 実際、それは哲学的というよりは、はるかに法廷弁論の性格を帯びていたからである。

εἰπόντος δὲ τοῦ Λυσίου, πῶς, εἰ καλός ἐστιν λόγος, οὐκ ἄν σοι ἁρμόττοι; ἔφη, οὐ γὰρ καὶ ἱμάτια καλὰ καὶ ὑποδήματα εἴη ἂν ἐμοὶ ἀνάρμοστα; Κρινομένου δʼ αὐτοῦ φησιν Ἰοῦστος Τιβεριεὺς ἐν τῷ Στέμματι Πλάτωνα ἀναβῆναι ἐπὶ τὸ βῆμα καὶ εἰπεῖν, νεώτατος ὤν, ἄνδρες Ἀθηναῖοι, τῶν ἐπὶ τὸ βῆμα ἀναβάντων· τοὺς δὲ δικαστὰς ἐκβοῆσαι, Κατάβα, κατάβα [τουτέστι κατάβηθι]. ὅτʼ οὖν καὶ κατεδικάσθη διακοσίαις ὀγδοήκοντα μιᾷ πλείοσι ψήφοις τῶν ἀπολυουσῶν3· καὶ τιμωμένων τῶν δικαστῶν τί χρὴ παθεῖν αὐτὸν ἀποτῖσαι, πέντε καὶ εἴκοσιν ἔφη δραχμὰς ἀποτίσειν. Εὐβουλίδης μὲν γάρ φησιν ἑκατὸν ὁμολογῆσαι·

リュシアスが、「立派な演説であるならば、どうしてあなたに相応しくないことがありましょうか」と言うと、彼はこう言った。 「美しい外套や履物であっても、私には不相応なものがあるではないか。」 彼が裁かれていた際、ティベリアスのユストスが『系譜』の中で述べることには、プラトンが演壇に登り、「アテナイの市民の皆さん、私は演壇に登った者たちの中で最年少ではありますが……」 と言いかけると、裁判人たちが「降りろ、降りろ(すなわち降りてしまえ)」と叫び立てたという。こうして彼は、無罪票よりも二百八十一票多い票数で有罪判決を下された。そして裁判人たちがどのような刑罰を受けるべきか、あるいはどのような科料を支払うべきかを査定した際、彼は二十五ドラクマを支払うと言った。もっともエウブリデスによれば、彼は百ドラクマを支払うことに同意したという。

構文注3 件
  1. 2.5.36διορθώσονται

    動詞 διορθόω の未来中称形。ここでは受動の意味(「正されるであろう」)あるいは再帰的・自動詞的意味(「自らを正すであろう」)のいずれにも解釈しうるが、文脈上「指摘された側の者(ソクラテス自身や一般人)が欠点を正す」または「欠点自体が正される」のいずれを主語とするかによって訳出が分かれる。ここでは前節の εἰ μέν τι τῶν προσόντων λέξειαν(彼らが実情を述べるなら)を受け、喜劇作家に揶揄された欠点が正される(受動)か、あるいは人々が身を正すという含意で読める。

  2. 2.5.40ἀντωμοσία

    アテナイの法廷手続において、原告および被告が自らの主張・答弁の真実性を宣誓した上で提出する「宣誓供述書・起訴状」。ここではメレトスが宣誓の下で提出した公式起訴状の正文を指している。

  3. 2.5.41διακοσίαις ὀγδοήκοντα μιᾷ πλείοσι ψήφοις τῶν ἀπολυουσῶν

    比較級 πλείοσι に対し、διακοσίαις ὀγδοήκοντα μιᾷ は差の度合いを示す与格(dative of degree of difference)であり、τῶν ἀπολυουσῶν は比較の属格(genitive of comparison)。文字通りには「無罪票よりも281票多い票によって」となる。プラトンの『ソクラテスの弁明』(36a)では「30票が動いていれば無罪となっていた(有罪票と無罪票の差はわずか)」と記述されているのに対し、ディオゲネス・ラエルティオスが引用する伝承では票差が極めて大きなものとして提示されている点が構文・文脈上の注目点である。

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