デモステネス · Demosthenes
第十弁論 ピリッポス弾劾 第四演説
The Fourth Philippic
ギリシア語原文(原典)と日本語・英語・中国語・韓国語の対訳・語釈を、全文無料・登録不要で公開しています。
底本
Demosthenes. Orationes, Vol. I. Butcher, S. H., editor. Oxford: Clarendon Press, 1903.
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA (Perseus の利用条件による)
Humanitext がクローン・再構成し、継続的に更新しています。
要旨
デモステネスによる本作は、マケドニア王フィリッポス2世の軍事的脅威が迫るなか、アテナイ市民に決断と行動を促す政治演説である。演者は、フィリッポスが和約を無視して各地で侵略を続け、アテナイの民主制そのものの破壊を目論んでいる現状を警告する。そのうえで、場当たり的な対応を排し、常備軍の組織やペルシアとの同盟交渉、財政・軍事体制の厳格な管理といった具体的対抗策を提示する。また、国内を分断している観劇手当(テオーリコン)をめぐる貧富の対立を解消し、市民が一丸となって国難に当たるべきだと説く。さらに、平和を口実に不作為を推奨し、敵に買収されて国家を危機に陥れる親マケドニア派政治家の欺瞞を厳しく告発する。市民が甘言に耳を貸すのをやめ、主体的かつ現実的な防衛行動を起こすことを強く求めて演説を結ぶ。
目次
9 チャンク
引用方式:section
- §1-7
アテナイ市民の怠慢とフィリッポスの脅威
演者はアテナイ市民の怠惰と国政への無関心を批判し、正義を語るだけでは行動するフィリッポスに対抗できないと警告する。また、各地の都市が彼の介入により民主制を失いつつある現状を指摘し、危機感を促す。
- §8-15
フィリッポスの侵略の具体例と民主制への敵意
デモステネスは、フィリッポスが和約後も各地で侵略を続けている具体例(セッリオン、ポルトモス、メガラ等)を挙げ、アテナイ市民に、彼がアテナイの民主制の破壊を最終目標とする和解不可能な敵であることを認識するよう促す。
- §16-25
アテナイへの脅威と常備軍創設の提案
デモステネスは、フィリッポスがアテナイそのものを標的にしていることを警告し、その場しのぎの救援策をやめ、常備軍の組織と厳格な財政・軍事管理を行うよう具体策を提示する。
- §26-34
市民の怠慢への叱責とペルシア王との提携策
デモステネスは、フィリッポスの脅威が迫る中で平穏な時期の審議を怠ってきたアテナイ市民の姿勢を厳しく非難し、ペルシア王との同盟交渉および対決のための資金調達という現実的な対抗策を提示する。
- §35-44
観劇手当をめぐる対立の解消と市民の融和
話者は、城邦を分裂させている観劇手当(テオーリコン)をめぐる不当な非難と恐怖を取り除くべきだと主張し、貧困層と富裕層の双方が互いに敬意を払い、各自の義務を果たすべきだと説く。
- §45-51
貧富の調和と城邦の真の力についての提言
デモステネスは、貧富の調和による国政の維持を訴え、アテナイ市民の怠慢がフィリッポスの台頭を招いたと指摘し、城邦の真の評価基準は市場の繁栄ではなく同盟関係や軍事力にあると強調する。
- §52-59
諸国の孤立と親ピリッポス派による不作為の欺瞞
ギリシア諸国が不和と不信によって孤立している現状と、アテナイの国政が麻痺している原因を告発する。また、平和の維持や財産の保護を口実にして不作為を推奨し、危機を訴える者を戦争誘発者として非難する親フィリッポス派政治家たちの欺瞞を暴く。
- §60-68
ピリッポスの偽りの平和と買収された弁論家の危険
デモステネスは、フィリッポスが実際には戦争行為を進めているにもかかわらずそれを否定する欺瞞の手口を、オレオスやオリントスなどの例を引いて暴きます。そして、アテナイにおいてのみ親フィリッポス派が安全に買収されて敵を利する発言を行い、ポリスを滅亡の危機に陥れている現状を強く告発します。
- §69-76
アリストメデスへの糾弾とポリスの真の富
アテナイの衰退とフィリッポスの台頭を対比させ、政治家アリストメデスを名指しして私生活の安寧と公的活動の危険を説く。アテナイの市民がなすべき防衛を行わず、敵におもねる甘言に耳を傾けている現状を痛烈に批判する。
