プルタルコス · Plutarch
冷の原理について
On the Principle of Cold
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底本
Plutarch. Plutarchi Chaeronensis Moralia, Vol V. Vernardakēs, Grēgorios N., editor. Leipzig: Teubner, 1893.
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA (Perseus の利用条件による)
元ファイル: urn:cts:greekLit:tlg0007.tlg127.perseus-grc3
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翻訳と校閲
翻訳:Gemini 3.5 Flash(2026-05-22 公開)
AI校閲 2026-09-22:検出 Gemini 3.8 Flash/判定 Gemini 3.8 Flash・GPT-6 Astra — 日本語訳 4 件・原文 5 件を修正
反映した修正(日本語訳と原文):AI校閲 9 件・表記の統一 7 件
最終更新:2026-10-10・変更履歴の一覧
要旨
本書は、自然界における「冷たさ」の本質と、その第一の源泉がどの元素にあるのかを探究する哲学・科学的論考である。著者はまず、冷たさが単なる熱の欠如ではなく、独自の能動的な能力(デュナミス)であることを、感覚や身体に及ぼす影響を根拠に論じる。続いて、四つの基本元素のうち、どれが冷たさの第一原理(アルケー)であるかをめぐり、空気を第一とする説、水を第一とする説、そして地を第一とする説を順に検討していく。議論の中では、エンペドクレスなどの詩や先行する哲学者の説、また井戸水の冷たさや凍結などの具体的な物理現象が数多く引用される。最終的に著者は、冷たさは重さや固さ、凝縮をもたらす地の性質と結びついていることを示す。しかし、一つの結論を急いで決定するのではなく、対話相手であるファボリノスに対し、慎重に判断を保留(エポケー)することを促して本作を締めくくる。
目次
10 チャンク
引用方式:section
- §1-3
冷たさが熱の欠如か固有の能力かという問い
冷たさが熱の単なる欠如にすぎないのか、それとも固有の能力と本質を備えた能動的な存在であるのかという問いを提起し、冷たさがもたらす具体的な作用や性質の強弱(度合いの差)から、それが独立した対立能力であることを論じる。
- §4-6
冷たさが感覚される実体であることの論証
§4-6において、著者は冷たさが単なる熱の欠如ではなく独自の能力(本質)であることを、冷たさが感覚されることや、身体に具体的な差異(快楽や害、熱との葛藤)を引き起こすことを根拠に論じる。
- §7-8
四大元素と四性質の対応および哲学者の探究
四つの基本元素に対応する四つの性質の対称性を主張し、直接原因のみを追究する技術者と、万物の実体や極小の幾何学的・知性的原理にまで遡る哲学者の探究の姿勢の差を説明する。
- §9-11
空気を第一の冷とするストア派の説の検討
第9章から第11章において、著者は感覚される四大元素のうちどれが第一に冷たいものであるかを検討し、まず空気を第一の冷たいものとするストア派の説を、空気の暗さや冷たさ、火の死から空気への変化、水が凍る際の空気の働きといった論拠から考察する。
- §12-13
空気説の論証と水を冷の原理とする説の提示
空気が冷たさの第一原理であることを示すいくつかの現象や実験例を挙げた後、対立する説として、水こそが冷たさと暗さ(黒さ)の本質を担う第一原理であるとする立場を、エンペドクレスの詩句や色彩の変化、油の透明度やその中での焼き入れなどの具体例から論じる。
- §14
空気の暗冷説への反論と凍結の非関与
著者は、空気が暗さゆえに冷たいという説を批判し、重さや静止こそが冷たさと結びつくものであると論じる。さらに、消滅の理論や、空気自体が凍らないという事実から、水が凍るのは空気によるものではないことを示す。
- §15-16
水の凍結現象と冷の根源としての水の本性
大きな川の深部が凍らない理由や、冷たさの本源が空気ではなく水であることを、物理的現象やポセイドニオス、ホメロスの言葉を引いて論じる。さらに、テオフラストスの説を批判し、水が根源的に冷たい性質を持つことを、エンペドクレスの詩を交えながら主張する。
- §17
大地の暗さと冷の根源としての地説の提示
著者は、暗いものは根源的に冷たいというクリュシッポスの前提を用い、空気よりも地こそが万物の中で最も暗く、それゆえ根源的に冷たい実体であることを、光を遮断する大地の性質や物理的現象を挙げて論証する。
- §18-20
地の固さと凍結現象から見る冷の根源
冷たさは暗さではなく重さや固さと関連しており、凍結作用を通じて地が根源的に冷たいものであることを論じる。さらに、季節ごとの生活習慣や、井戸水・ステュクスの水の極端な冷たさを例に挙げ、地の冷たさが水や空気に伝わることを示す。
- §21-23
地の凝縮力とファボリノスへの判断保留の勧め
地の元素が安定的であり、その力である冷たさが凝縮をもたらす性質を有すること、また古代の賢者たちもその特有の性質に基づいて地上のものと天上のものを切り離したことを説明し、最後にファボリノスに対し、拙速な同意を避け判断保留(エポケー)に徹するよう促す。
