底本
Plutarch. Plutarchi Chaeronensis Moralia, Vol. III. Vernardakēs, Grēgorios N., editor. Leipzig: Teubner, 1891.
原文データ出典
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要旨
本作は、プラトン哲学の枠組みに基づき、運命(ヘイマルメネー)の本質と、それが人間の自由意志や偶然とどのように両立するかを追究した哲学論考です。著者が友人ペイソンに宛てた書簡の形式をとり、運命には「活動」と「実質」の二重の意味があると定義することから議論が始まります。運命は国法のような条件付きの法則であり、すべての出来事をあらかじめ必然化するものではないと論じられます。さらに、アリストテレス的なカテゴリーも交えながら、「可能」「偶然」「幸運」、そして「我々に依存すること(自由選択)」が運命の秩序内でいかに調和するかを体系的に分析します。後半では、三つの階層からなる神の配慮(プロノイア)と運命の関係が、プラトンの『ティマイオス』などの引用とともに整理されます。最終的に本作は、すべてを縛る決定論を否定し、神的な秩序のもとで人間の自由や偶然の余地を残す調和的な世界観を提示して結ばれます。
目次
6 チャンク
引用方式:section
- §0-3
活動と実体としての運命の定義と本質
著者は友人ペイソンに対し、運命(ヘイマルメネ)についての自身の解釈を書き送る。運命には「活動」と「実質」の二重の意味があり、前者は魂の秩序や法則を指し、後者は世界魂の三分割と各運命の女神の役割に関わる。さらに「活動としての運命」が、生起する事象の無限性に対し、天上の周期運動を通じてどのように有限の円環として機能するかを論じる。
- §4-5
国法への類比による個別的運命の規定
活動としての個別的な運命が仮定(条件)を伴う国法に類比されることを論じ、運命は普遍的な事柄を第一義的に規定し、先行する原因そのものではなくその随伴する結果を必然化するものであることを明らかにする。
- §6
可能と偶然および我々に依存することの規定
著者は、「我々に依存すること」「幸運」「可能」「偶然」といった概念がどのようにして運命の因果秩序の中で両立し得るかを分析し、特にアリストテレス的カテゴリーに基づく「可能」と「偶然」の定義、および「我々に依存すること」と人間の衝動・選択の関係性を体系的に論じる。
- §7-8
幸運と偶発の定義および運命との関係
幸運と偶発(自発)の定義とその相違点について議論し、幸運を選択に伴う付随的原因と定め、さらに『パイドン』の事例を通して諸原因の合流を解説する。また、運命の内包する諸要素が必ずしも運命に従って必然的に起こるわけではないことを示す。
- §9
三種の配慮の階層と運命との関係
著者はプロノイア(配慮)の三つの階層(第一の神、天界の神々、大地のダイモーン)を定義し、それらと運命(ヘイマルメネー)との階層的関係を『ティマイオス』と『法律』を引用して論じる。
- §10-11
三重の配慮と運命の包摂関係および決定論との差異
プラトンの対話篇などを引用しつつ、三重のプロノイア(神防)と運命(ヘイマルメネー)の包摂関係を整理する。続いて、すべての存在が運命に拘束されるとする決定論的立場と、人間の自由や偶然を余地として残す自己の立場との主要な相違点を比較・列挙する。
