プルタルコス · Plutarch
ピュティアは今日では詩のかたちで神託を降ろさないことについて
Oracles at Delphi no longer Given in Verse
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底本
Plutarch. Plutarchi Chaeronensis Moralia, Vol II. Vernardakēs, Grēgorios N., editor. Leipzig: Teubner, 1891.
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA (Perseus の利用条件による)
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要旨
本作は、デルポイの巫女(ピュティア)による神託が、かつての格式高い韻文から平易な散文へと変化した理由をめぐり、デルポイを訪れた知識人たちが交わす対話篇である。テオンやサラピオン、ボエトスといった対話者たちは、神殿の奉納品や青銅像の美しさをめぐる議論から出発し、やがて「神託の質の変化」という核心的な主題へと移行する。彼らは、神が予言の霊感のみを与え、その表現は人間の魂という不完全な媒体に委ねられているという構造を明らかにする。かつて複雑な政治状況下で曖昧な暗示(詩)が必要だった時代と異なり、平和で安定した現代においては、明瞭で簡潔な散文こそが神託の真実性と信頼性を高めるものであると主張される。対話を通じて、神託の文体変化は信仰の衰退ではなく、人間社会の変遷に寄り添った神の配慮であることが示され、デルポイの永続的な復興が肯定される。
目次
14 チャンク
引用方式:section
- §1-2
デルポイの青銅像の色彩とコリントス青銅
バシロクレスとフィリノスが、ディオゲニアノスの息子である異邦人の優れた人柄と、彼を案内した際の活発な議論について語り合う。その後、彼らはデルポイの青銅像の独特な色彩の謎と、コリントス青銅の起源に関する俗説について議論を交わす。
- §3-4
デルポイの空気の性質と青銅の変色原因
テオンがブロンズの着色の原因としてデルポイの空気の関与を挙げ、アリストテレスの説を参照しつつ、空気の「微細さ」と「稠密さ」という二つの属性が金属に与える物理的影響について議論が展開される。
- §5-7
神託の詩の拙劣さと神の霊感についての議論
ディオゲニアノスがデルポイの神託における詩の質の低さを指摘し、神が著者であるかについてボエトスとサラピオンが議論を交わす。テオンは神が与えるのは霊感(イメージ)のみであり、表現は人間の預言者によるものであると提案し、神託が詩を用いるのをやめた理由を後で議論しようと促す。
- §8-9
奉納物の前兆と神の摂理およびシビュラの予言
テオンは神像をめぐる奇跡的な連動から、偶然の支配を説くエピクロス派を批判し、神の摂理と万物への遍在を論じ、続いてシビュラの予言の永続性と自然災害の的中例について対話を行う。
- §10-11
予言の的中は偶然の一致か神の予知かの議論
ボエトスは、予言が的中するのは言葉を乱発した中での偶然の一致(数撃てば当たる)にすぎないと主張する。これに対しサラピオンは、時と状況や順序が精緻に指定された予言は偶然では説明できず、神の予知の証拠であると反論する。
- §12-13
コリントスの青銅椰子樹の意匠と宝庫の歴史
コリントスの宝庫の青銅の椰子の木に描かれた蛙などの意匠をめぐり、サラピオンのストア派的な自然学解釈を語り手が批判する。また、宝庫の名称変更に関する歴史的背景が語られる。
- §14-16
神殿の奉納品と戦利品の是非をめぐる対話
ディオゲニアノスたちがロドピスの奉納品を巡ってデルポイの矛盾を非難したのに対し、テオンはギリシアの都市国家が戦争の略奪品を奉納している不名誉を指摘し、また案内人はクロいソスやオプース人らの美しい奉納の由緒を紹介する。
- §17-18
散文への移行と学芸における文体の変遷
異邦人はピュティアの神託が散文になった原因を議論するよう求め、一行は神殿の南側に座る。テオンとサラピオンは、韻律の使用停止は哲学や天文学における散文への移行と同様に技術の衰退ではなく自然な変化であると論じる。
- §19-20
古代における散文の神託例と信憑性の維持
テオンは、古代の主要な神託の多くがすでに散文で下されていたことを多くの歴史的事例を挙げて論証し、ピュティアが韻律を用いなくなったことは神託の信頼性を損なうものではないと主張する。
- §21
神の道具としての魂と神託における人間性の混交
著者は魂を神の道具と位置づけ、神託がピュティアの肉体や魂という媒体を通じて下されるため、純粋な神の意図が人間の性質と混ざり合って表現されることを、月光や物体の螺旋運動を例に説明する。
- §22-23
道具としての適性と古代の詩的資質
神は各々の能力に応じた方法で人々を道具として用いることをホメロスなどの例から論じ、未経験なピュティアであっても神が彼女の資質を用いて神託を告げることを説明する。また、かつてのピュティアが詩で託宣を告げたのは当時の人々が詩的資質に富んでいたためであり、神託は個人の持つ本性に基づいて引き出されると述べる。
- §24-25
散文への移行による明瞭さと韻律衰退の理由
散文への移行が歴史や哲学、そしてデルポイの神託における明瞭さと信頼をもたらした歴史的経緯を説明し、韻律の衰退が詩の悪用による信頼失墜と関連していることを指摘する。
- §26-28
古代の曖昧な神託の必要性と平易な現代の神託
かつての強大な国家や王による困難な政治的決断のために、神託が暗示や多義性を帯びていた理由を釈明し、平和になった現代の平易な問答を歓迎しつつ、真実を尊ぶピュティアの姿勢を強調する。
- §29-30
簡潔な神託の擁護とデルフォイの復興
神託が飾り気のない簡潔な言葉に変化したことを擁護し、デルフォイの復興は神の臨在の証拠であると説く。さらに、神託の単純さを非難する人々の幼稚な心理を批判する。
