- 底本
- Aeschyli Tragoediae. Sidgwick, Arthur, editor. Oxford: Clarendon Press, 1902.
- 翻訳
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- 言語
- 日本語 · English · 简体中文 · 한국어
- CTS URN
- urn:cts:greekLit:tlg0085.tlg003.humanitext-grc1:569-656
- 出力
- Humanitext Reader · reader.humanitext.ai · 2026-10-27
牛の姿に変えられ、死せるアルゴスの亡霊と虻に追われ彷徨うイオが、岩に囚われたプロメテウスの前に現れ、自らの狂気と苦難を嘆く。彼女はプロメテウスに彼の正体と自身の未来を尋ね、請われるままにゼウスから愛されヘーラーの怒りを買った発端を語り始める。
τὸν μυριωπὸν εἰσορῶσα βούταν.
万の眼を持つ牛飼いが私を見つめているのを。
ὁ δὲ πορεύεται δόλιον ὄμμ᾽ ἔχων,
彼は狡猾な眼差しを向けながら進み、
ὃν οὐδὲ κατθανόντα γαῖα κεύθει.
死してなお大地は彼を隠しはしない。
ἀλλ᾽ ἐμὲ τὰν τάλαιναν
それどころか、哀れな私を
ἐξ ἐνέρων περῶν κυναγεῖ, πλανᾷ
冥府から現れて追い回し、彷徨わせるのだ、
τε νῆστιν ἀνὰ τὰν παραλίαν ψάμμαν.
飢えたまま、海辺の砂地の上を。
ὑπὸ δὲ κηρόπλαστος ὀτοβεῖ δόναξ
足元では、蝋で固めた葦笛が
ἀχέτας ὑπνοδόταν νόμον: ἰὼ ἰὼ πόποι,
眠りを誘う音色を響かせている。ああ、ああ、神々よ、
ποῖ μ᾽ ἄγουσ᾽ <ὦ πόποι> τηλέπλανοι πλάναι;
遥かな彷徨の旅は、私をどこへ連れてゆくのか。
τί ποτέ μ᾽, ὦ Κρόνιε παῖ, τί ποτε
クロノスの子よ、なぜ、いったいなぜ
ταῖσδ᾽ ἐνέζευξας εὑρὼν ἁμαρτοῦσαν ἐν
私が過ちを犯したというのか、このような苦難の枷に
πημοσύναις, ἐή,
繋ぎ止めたのですか、ああ、
οἰστρηλάτῳ δὲ δείματι δειλαίαν
虻に追われる恐怖で、この哀れな、
παράκοπον ὧδε τείρεις;
狂い狂った者を、このように苦しめるのですか。
πυρί <με> φλέξον, ἢ χθονὶ κάλυψον, ἢ ποντίοις
私を火で焼き尽くすか、土の中に隠すか、あるいは海の
δάκεσι δὸς βοράν,
怪物たちに餌として与えてください。
μηδέ μοι φθονήσῃς
王よ、私の祈りを
εὐγμάτων,1 ἄναξ.
拒まないでください。
ἄδην με πολύπλανοι πλάναι
遥かな彷徨の旅は、私を十分に
γεγυμνάκασιν, οὐδ᾽ ἔχω μαθεῖν ὅπα
疲れ果てさせました。どのようにすれば
πημονὰς ἀλύξω.
この苦難から逃れられるのか、知ることもできません。
κλύεις φθέγμα τᾶς βούκερω παρθένου;
角を持つ乙女の声を、あなたには聞こえますか。
πῶς δ᾽ οὐ κλύω τῆς οἰστροδινήτου κόρης,
プロメテウス:虻に追われて狂う乙女の声が、どうして聞こえぬことがあろうか、
τῆς Ἰναχείας; ἣ Διὸς θάλπει κέαρ
イーナコスの娘の。彼女はゼウスの心を
ἔρωτι, καὶ νῦν τοὺς ὑπερμήκεις δρόμους
愛で燃え立たせ、いまやヘーラーに憎まれて
Ἥρᾳ στυγητὸς πρὸς βίαν γυμνάζεται.
無理やり、果てしない走りへと駆り立てられているのだ。
πόθεν ἐμοῦ σὺ πατρὸς ὄνομ᾽ ἀπύεις;
イオ:なぜあなたは、私の父の名を呼ぶのですか。
εἰπέ μοι τᾷ μογερᾷ τίς ὤν, τίς ἄρα μ᾽, ὦ τάλας,
哀れな私に、答えておくれ。苦しむ人よ、あなたはいったい誰で、
τὰν ταλαίπωρον ὧδ᾽ ἔτυμα προσθροεῖς:
これほど辛い運命にある私に、どうして真実を語りかけるのか。
θεόσυτόν τε νόσον ὠνόμασας,
あなたは神から送られた病の名を挙げた、
ἃ μαραίνει με χρίουσα κέντροις, ἰώ,
私を刺し、衰弱させるあの狂気の刺を、ああ、
φοιταλέοις, ἐή.
彷徨う刺を、ああ。
σκιρτημάτων δὲ νήστισιν αἰκίαις
飢えと苦痛に飛び跳ねながら、
λαβρόσυτος ἦλθον, <Ἥρασ>
荒々しく突進して私はやって来た、ヘーラーの
ἐπικότοισι μήδεσι δαμεῖσα. δυσδαιμόνων
怒りに満ちた企てに屈服させられて。不幸な者たちのうちで、
δὲ τίνες οἵ, ἐή,
いったい誰が、ああ、
οἷ᾽ ἐγὼ μογοῦσιν;
私のような苦しみを味わっているというのか。
ἀλλά μοι τορῶς
だが、私に明快に
τέκμηρον ὅ τι μ᾽ ἐπαμμένει
示しておくれ、どのような苦難が私を待ち受けているのかを。
παθεῖν, τί μῆχαρ, ἢ τί φάρμακον νόσου,
どのような救いがあるのか、あるいはこの病のどのような薬があるのか、
δεῖξον, εἴπερ οἶσθα:
もし知っているなら、示しておくれ。
θρόει, φράζε τᾷ δυσπλάνῳ παρθένῳ.
語り、この彷徨う乙女に告げておくれ。
λέξω τορῶς σοι πᾶν ὅπερ χρῄζεις μαθεῖν,
プロメテウス:あなたが知りたいと願うすべてのことを、私は明快に語ろう、
οὐκ ἐμπλέκων αἰνίγματ᾽, ἀλλ᾽ ἁπλῷ λόγῳ,
謎を絡めることなく、ただ率直な言葉で。
ὥσπερ δίκαιον πρὸς φίλους οἴγειν στόμα.
友に対して口を開くのが当然であるように。
πυρὸς βροτοῖς δοτῆρ᾽ ὁρᾷς Προμηθέα.
人間に火を与えたプロメテウスがここにいる。
ὦ κοινὸν ὠφέλημα θνητοῖσιν φανείς,
イオ:おお、人間たちの共通の恩人として現れた、
τλῆμον Προμηθεῦ, τοῦ δίκην πάσχεις τάδε;
耐え忍ぶプロメテウスよ、何の罪の報いでこのような苦しみを受けているのですか。
ἁρμοῖ πέπαυμαι τοὺς ἐμοὺς θρηνῶν πόνους.
プロメテウス:私自身の苦難を嘆くことは、つい先ほど終えたばかりだ。
οὔκουν πόροις ἂν τήνδε δωρεὰν ἐμοί;
イオ:ならば、私にこの恵みを与えてはくれませんか。
λέγ᾽ ἥντιν᾽ αἰτεῖ: πᾶν γὰρ ἂν πύθοιό μου.
プロメテウス:求めるものを言いなさい。私からすべてを学べるのだから。
σήμηνον ὅστις ἐν φάραγγί σ᾽ ὤχμασε.
イオ:誰があなたをこの谷間に縛り付けたのか、教えてください。
βούλευμα μὲν τὸ Δῖον, Ἡφαίστου δὲ χείρ.
プロメテウス:企てたのはゼウスの意志、手を下したのはヘーパイストスだ。
ποίων δὲ ποινὰς ἀμπλακημάτων τίνεις;
イオ:そして、どのような過ちの報いをあなたは償っているのですか。
τοσοῦτον ἀρκῶ σοι σαφηνίσας μόνον.
プロメテウス:これだけを明らかにすれば、あなたには十分だろう。
καὶ πρός γε τούτοις τέρμα τῆς ἐμῆς πλάνης
イオ:それに加えて、私の彷徨の終わりを、
δεῖξον τίς ἔσται τῇ ταλαιπώρῳ χρόνος.
哀れな私に、いつその時が来るのかを示してください。
τὸ μὴ μαθεῖν σοι κρεῖσσον ἢ μαθεῖν τάδε.
プロメテウス:それを学ばないことの方が、あなたには学ぶことよりも勝っているのだ。
μήτοι με κρύψῃς τοῦθ᾽ ὅπερ μέλλω παθεῖν.
イオ:私がこれから受ける苦難を、私に隠さないでください。
ἀλλ᾽ οὐ μεγαίρω τοῦδέ σοι δωρήματος.
プロメテウス:いや、私はあなたへのその贈り物を惜しんでいるわけではない。
τί δῆτα μέλλεις μὴ οὐ γεγωνίσκειν2 τὸ πᾶν;
イオ:ならば、なぜすべてを語るのをためらうのですか。
φθόνος μὲν οὐδείς, σὰς δ᾽ ὀκνῶ θρᾶξαι φρένας.
プロメテウス:惜しんではいない。ただ、あなたの心を動揺させるのが怖いのだ。
μή μου προκήδου μᾶσσον ὧν ἐμοὶ γλυκύ.
イオ:私にとって心地よいこと以上に、私のことを気遣わないでください。
ἐπεὶ προθυμεῖ, χρὴ λέγειν: ἄκουε δή.
プロメテウス:あなたがそれほど望むなら、語らねばなるまい。よく聞きなさい。
μήπω γε: μοῖραν δ᾽ ἡδονῆς κἀμοὶ πόρε.
コーラス:まだお話しにならないでください。私にも喜びの分け前をください。
τὴν τῆσδε πρῶτον ἱστορήσωμεν νόσον,
まず、この娘の病について尋ねることにしましょう、
αὐτῆς λεγούσης τὰς πολυφθόρους τύχας:
彼女自身にその破滅的な運命を語らせて。
τὰ λοιπὰ δ᾽ ἄθλων σοῦ διδαχθήτω πάρα.
そして残りの苦難については、あなたから教えていただくのです。
σὸν ἔργον, Ἰοῖ, ταῖσδ᾽ ὑπουργῆσαι χάριν,
プロメテウス:イオよ、彼女たちにこの好意を施すのはあなたの務めだ、
ἄλλως τε πάντως καὶ κασιγνήταις πατρός.
何よりも、彼女たちはあなたの父の姉妹なのだから。
ὡς τἀποκλαῦσαι3 κἀποδύρασθαι τύχας
自らの運命を嘆き、泣き暮らすことは、
ἐνταῦθ᾽, ὅπου μέλλοι τις οἴσεσθαι δάκρυ
聞く者たちから涙を誘うことのできる
πρὸς τῶν κλυόντων, ἀξίαν τριβὴν ἔχει.
この場所においては、時間を費やすに値することなのだ。
οὐκ οἶδ᾽ ὅπως ὑμῖν <γ᾽> ἀπιστῆσαί με χρή,
イオ:あなたがたを信じないわけにはまいりません。
σαφεῖ δὲ μύθῳ πᾶν ὅπερ προσχρῄζετε
あなたがたが求めるすべてのことを、明快な言葉で
πεύσεσθε: καίτοι καὶ λέγουσ᾽ ὀδύρομαι
知ることになるでしょう。しかし、語るだけでも、私は
θεόσσυτον χειμῶνα καὶ διαφθορὰν
神から送られた嵐と、姿の破滅を
μορφῆς, ὅθεν μοι σχετλίᾳ προσέπτατο.
嘆かざるを得ないのです、それがどのように哀れな私に襲いかかったかを。
ἀεὶ γὰρ ὄψεις ἔννυχοι πωλεύμεναι
常に、夜ごとの幻影が私の
ἐς παρθενῶνας τοὺς ἐμοὺς παρηγόρουν
乙女の部屋に忍び込んでは、心地よい言葉で
λείοισι μύθοις “ὦ μέγ᾽ εὔδαιμον κόρη,
私を慰めていました。『おお、この上なく幸せな乙女よ、』
τί παρθενεύει δαρόν, ἐξόν4 σοι γάμου
『最高の婚礼を挙げることができるというのに、なぜ長く乙女のままでいるのか。』
τυχεῖν μεγίστου; Ζεὺς γὰρ ἱμέρου βέλει
『ゼウスがあなたのせいで愛の矢に焼かれ、』
πρὸς σοῦ τέθαλπται καὶ συναίρεσθαι Κύπριν
『愛を交わすことを望んでいるのだ。そなたよ、』
θέλει: σὺ δ᾽, ὦ παῖ, μὴ ᾽πολακτίσῃς λέχος
『ゼウスの褥を拒むことなく、レルネーの深い』
τὸ Ζηνός, ἀλλ᾽ ἔξελθε πρὸς Λέρνης βαθὺν
『牧草地へ、』
λειμῶνα, ποίμνας βουστάσεις τε πρὸς πατρός,
『父の羊の群れと牛舎のもとへと行きなさい、』
ὡς ἂν τὸ Δῖον ὄμμα λωφήσῃ πόθου.”
『ゼウスの眼が切望から和らぐように。』と。
τοιοῖσδε πάσας εὐφρόνας ὀνείρασι
このような夢に、哀れな私は夜ごと
συνειχόμην δύστηνος, ἔς τε δὴ πατρὶ
苦しめられていました。ついに父に
- 584μηδέ μοι φθονήσῃς εὐγμάτων
動詞 φθονέω(惜しむ、拒む)は、与格(人 μοι)と属格(拒まれるもの εὐγμάτων)をとる。ここでは「私の祈りを拒まないでください」の意。
- 627μὴ οὐ γεγωνίσκειν
否定を伴う表現、あるいは疑念を呈する疑問文(ここでは τί μέλλεις;「なぜ躊躇するのか」という事実上の否定表現)の後に続く不定詞には、二重否定の μὴ οὐ が添えられる。
- 637ὡς τἀποκλαῦσαι
ὡς は理由を説明する接続詞。名詞化不定詞 τἀποκλαῦσαι κἀποδύρασθαι(自分の運命を泣き嘆くこと)が主語であり、ἔχει(持つ)が主動詞、ἀξίαν τριβὴν(価値ある時間の消費)が目的語である。
- 648ἐξόν
非人称動詞 ἔξεστι(可能である、許されている)の分詞中性単数対格で、対格絶対(accusative absolute)として用いられ、ひいては「〜できるのに、〜が許されているのに」という譲歩・条件の意味を表す。
翻訳:Gemini 3.5 Flash(2026-05-22 公開)・修正履歴(1 件・最終 2026-09-21)
- 2026-09-21 AI校閲 — 訳文 1 件
