底本
Aristotle. Aristoteles De anima. Ross, W.D., editor. Oxford: Clarendon, 1956.
原文データ出典
Open Greek and Latin · CC BY-SA 4.0
元ファイル: urn:cts:greekLit:tlg0086.tlg052.1st1K-grc1
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翻訳と校閲
翻訳:Gemini 3.5 Flash(2026-05-22 公開)
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最終更新:2026-10-10・変更履歴の一覧
要旨
本作は、生命の本質としての「魂(プシュケー)」の定義と、その具体的な現れである諸能力の解明を試みる哲学・自然学の論考である。導入部では、実体の区分や可能態と現実活動態の区別を用いて魂の一般的定義が模索され、魂が身体の「実体」「目的」「運動の源泉」という三つの意味での原因であることが示される。続いて、生命活動の基本である栄養摂取と生殖が、個体が永遠性に関与する手段として論じられた後、嗅覚、味覚、触覚といった個別感覚の探究へと議論が移行する。特に、触覚が人間の知的卓越性の基盤であることや、感覚器官が対象を受け入れる「中庸」としての性質を持つことが詳細に分析される。最終的に、あらゆる感覚とは「物質を伴わずに形相を受け入れること」であると一般化され、感覚を持つ生命体とそれを持たない植物や無生物との境界が明らかにされていく。
目次
7 チャンク
引用方式:chapter
- §1
魂の定義の探求と実体の区分
アリストテレス『魂について』第二巻冒頭の異読断片。先行する研究の検討を終え、魂の定義に向けて議論を新たに開始し、実体の区分および可能態と現実活動態の区別を導入する。
- §2#1
魂の能力の階層と探究の方法
図形の例えを用いて魂の様々な能力の階層関係を論じ、個々の魂に固有の定義を求める重要性を説く。さらに、能力の探究に先立ち、その活動や対応する対象(食物など)から考察を始めるべきであるとする方法論的方針を示す。
- §2#2
栄養摂取・生殖と身体の原因としての魂
栄養摂取と生殖が、個々の生命体が神的な永遠性に関与するための手段であることを論じ、魂が「実体」「目的」「運動の源泉」として身体の原因である仕組みを解き明かす。また、植物の成長メカニズムを元素の自然運動に帰したエンペドクレスの説を批判する。
- §3#1
嗅覚の性質と触覚の卓越性および呼吸の難題
人間の嗅覚の不正確さと、嗅覚と味覚(触覚)の類比関係を論じ、特に人間の知的卓越性の基盤としての触覚の重要性を指摘するとともに、水生動物と人間の嗅覚における呼吸の役割の違いに関するアポリアを提示している。
- §3#2
無呼吸動物の嗅覚と触覚としての味覚
呼吸しない動物の嗅覚の仕組みを目の構造との類比で説明し、次に味覚が触覚の一種であり、中間媒体を介さずに湿り気を通じて感知されることを論じる。
- §4#1
触覚の媒体としての肉と器官の中庸性
アリストテレスは触覚のメカニズムを論じ、肉や舌が他の感覚における空気や水のような中間媒体として機能することを明らかにする。また、触覚器官は可能的に触覚対象と同等の性質を備えうる中庸(中間)であり、この基準によって対立する感覚対象を判定すると説明する。
- §4#2
感覚の一般的定義と物質なき形相の受容
あらゆる感覚について、物質を伴わずに形相を受け入れるものであるという一般的定義を提示し、感覚器官とその本質(感覚能力)の区別を論じる。また、植物や無生物が感覚を持たず物質とともに受動作用を受ける原因、および非触覚的対象が無生(無魂)の物体に直接作用を及ぼさない理由を説明する。
