底本
Lucian, Vol. 7. Macleod, Matthew Donald, editor. London: William Heinemann, Ltd.; Cambridge, MA: Harvard University Press, 1961 (unrenewed copyright).
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA 4.0
Humanitext がクローン・再構成し、継続的に更新しています。
要旨
本作は、ギリシア神話に登場するオリンポスの神々を主人公に、彼らの極めて世俗的で人間味あふれる日常を描いたユーモラスな対話集です。天上や冥界、地上を舞台に、ゼウスやヘルメス、ヘラ、アポロン、アプロディテといったおなじみの神々が、互いの不満や恋の駆け引きを繰り広げます。物語は、ゼウスの権力に対するアレスの陰口や、多忙な雑務に追われるヘルメスの嘆きから始まります。中盤では、ヘラの激しい嫉妬を買いながらも繰り広げられるゼウスの様々な不倫劇や、神々の風変わりな誕生秘話、神同士の醜い格付け争いが滑稽に描かれます。終盤では、愛の神エロスの強力な力に対する神々の嘆きや、神々が引き起こした騒動の顛末が次々と明かされます。全編を通じて神々の威厳は剥ぎ取られ、嫉妬や虚栄、愚痴に満ちたその姿が、軽妙な会話劇の中に生き生きと映し出されています。
目次
25 チャンク
引用方式:book.section
- §1.1-1.2
ゼウスの豪語へのアレスの嘲笑とヘルメスの制止
アレスはゼウスが全能を誇示して神々を脅したことについて、かつてゼウスが他の神々に縛られそうになった臆病な過去を持ち出し、その不遜な大口をヘルメスに対して嘲笑するが、ヘルメスは災いを恐れて彼を制止する。
- §2.1-2.4
ヘルメスに父としての認知を求めるパン
山羊の姿をしたパンがヘルメスを父親と呼んで近づき、自らの出生の秘密や音楽・武功などの多才さを誇る。ヘルメスは呆れ果てつつも、人前で自分のことを父親と呼ばないことを条件に、パンとの関係を認める。
- §3.1-3.2
アプロディテの三人の息子の差異とプリアポス
アポロンとディオニュソスは、アプロディテを同じ母に持ちながら全く異なる容姿・性質をした三兄弟について語り合い、ディオニュソスはプリアポスから迫られた滑稽な実体験を暴露する。
- §4.1-4.2
多忙な職務へのヘルメスの不満とマイアの戒め
ヘルメスは、天上と冥界の両方で昼夜を問わず課される無数の雑務や、ゼウスの愛人たちの様子を探る使い走りに疲れ果て、母マイアに自分の不遇を訴えるが、マイアは彼をなだめ、ゼウスの怒りを買わないよう次の任務へ急がせる。
- §5.1-5.2
プロメテウスの予言とゼウスによる解放
プロメテウスは鎖からの解放をゼウスに求め、その代償としてゼウスの破滅を防ぐ予言を提供する。彼は、ゼウスがテティスと交われば、生まれてくる息子が父親を王座から追放することになると警告し、これを聞いたゼウスはヘパイストスにプロメテウスの解放を命じる。
- §6.1-6.2
変身を強いるエロスへのゼウスの叱責と放免
エロスは自分を許すよう懇願するが、ゼウスは自身を動物などに変身させて翻弄したエロスの悪戯を非難する。エロスは女性に愛されるための優雅な装いを提案するが、ゼウスは拒絶し、より容易に恋を成就させることを条件に彼を放免する。
- §7.1
アルゴス殺害とイオの救出を命じるゼウス
ゼウスはヘルメスに対し、ヘラの嫉妬で雌牛に変えられアルゴスに監視されているイオを救うため、アルゴスを殺害して彼女をエジプトへ連れて行き、現地の女神イシスとするよう命じる。
- §8.1-8.5
ガニュメデスを巡るヘラの嫉妬とゼウスの弁護
ヘラはゼウスがガニュメデスを誘拐し寵愛することに激しい嫉妬をぶつけ、ゼウスはヘパイストスと比較してガニュメデスを擁護する。
- §9.1-9.5
イクシオンの求愛と雲の幻影による欺き
ヘラは、人間イクシオンが自分に執着し無礼なアプローチをしてきたとゼウスに抗議する。ゼウスは、雲で作ったヘラの幻影(ネペレ)で彼を騙すことを提案し、もし彼が自慢するなら冥界で車輪の刑に処すと言い添える。
- §10.1-10.5
ゼウスによるガニュメデスの説得と少年の無邪気さ
ゼウスは拉致した少年ガニュメデスに自身の正体を明かし、天上での不老不死の生活と引き換えに酌取りや夜の伽を務めるよう求める。しかし少年はまだ素朴であり、地上の父親や羊の群れのことを心配し続けている。
- §11.1-11.4
生まれたばかりのヘルメスの盗みと多才さ
ヘパイストスとアポロンが、生まれたばかりのヘルメスの恐るべき盗みの才能と、竪琴の発明や冥界への往来といった多才さについて語り合う。
- §12.1-12.2
ゼウスの太腿からのディオニュソス出産
ポセイドンがゼウスを訪問しようとするが、ヘルメスはゼウスが太腿からディオニュソスを出産した直後で面会できないと告げる。ヘルメスは、ヘラの嫉妬によってセメレが焼死したこと、そしてゼウスがその未熟児を太腿に入れて育て、無事出産した経緯を説明する。
- §13.1
ゼウスの頭からのアテナ誕生とヘパイストス
アテナ誕生の産みの苦しみに悶えるゼウスは、ヘパイストスに命じて斧で自分の頭を割らせる。そこから武装したアテナが飛び出し、ヘパイストスは彼女を妻に望むが、ゼウスは彼女の永遠の処女性を告げる。
- §14.1-14.2
アルクメネのために夜を延ばすゼウスの命令
ゼウスがアルクメネと交わりヘラクレスを授かるために、ヘルメスを介してヘリオスに三日間の長い夜を作るよう命じる。ヘリオスは文句を言いつつもこれに従う。
- §15.1-15.2
宴席の上座を争うヘラクレスとアスクレピオス
天上の宴席でアスクレピオスとヘラクレスがどちらが上座に座るべきかを巡って互いの過去の不名誉や出自を非難し合い、最終的にゼウスが仲裁に入ってアスクレピオスが先に死んだことを理由に彼を上座とする判定を下す。
- §16.1-16.2
アポロンによるヒュアキントスの死の嘆き
アポロンがヒュアキントスの死を悲しんでいるのを見てヘルメスが理由を尋ね、アポロンは嫉妬した西風ゼピュロスが原因で事故が起きた経緯を語る。
- §17.1-17.3
ヘパイストスの幸運と自らの不遇を嘆くアポロンとヘルメス
アポロンとヘルメスは、不格好な職人ヘパイストスが美貌の女神らを妻に持つ幸運と、自らの恋愛の不運を対比しつつ、ヘパイストスをめぐる神々の情事について語る。
- §18.1-18.2
子供たちの優劣をめぐるヘラとレトの口論
ヘラとレトが互いの子供の優劣について言い争い、ヘラがアポロンとアルテミスの欠点を酷評する一方で、レトはゼウスの不倫に対するヘラの不満を突いて反論する。
- §19.1-19.2
眠れるエンデュミオンへの恋を語るセレネ
アプロディテはセレネが人間エンデュミオンに恋をして夜な夜な地上へ降りているという噂を問い質し、セレネはそれがアプロディテの息子エロスの仕業であると答える。アプロディテがエロスの悪戯への不満を語った後、セレネはエンデュミオンの美しい寝顔と彼への深い恋情を吐露する。
- §20.1-20.2
神々の狂気の恋をめぐるアプロディテとエロスの対話
アプロディテはエロスが神々に対して引き起こした様々な恋の狂気を咎め、特に狂乱したレアから危害を加えられる危険を警告するが、エロスは自らの力を誇り、愛を求める神々のあり方を指摘して反論する。
- §21.1-21.2
アレスとアプロディテの密通捕縛を語る対話
アポロンとヘルメスが、ヘパイストスによって密通の現場を押さえられ、目に見えない網で捕らえられたアレスとアプロディテの滑稽な姿について愉快そうに語り合う。
- §22.1-22.2
ディオニュソスを非難するヘラと弁護するゼウス
ヘラはディオニュソスの女性らしさと酒への溺れぶりを非難するが、ゼウスは彼の軍功や神罰の威力を挙げ、飲酒の過失は節度を欠く人間にあると反論する。
- §23.1-23.2
アテナや処女神たちを射ない理由を語るエロス
アプロディテがエロスに、なぜアテナやムーサ、アルテミスだけは彼の恋の矢の標的にならないのかを尋ねる。エロスは、彼女たちがそれぞれ持つ恐ろしさや気高さ、狩猟への熱中を理由として説明する。
- §24.1-24.3
パエトンに戦車を貸したヘリオスを叱責するゼウス
ゼウスはヘリオスが息子パエトンに太陽の戦車を任せて地上を混乱に陥れたことを厳しく叱責し、ヘリオスは涙ながらの嘆願に負けた経緯を釈明する。ゼウスは厳重に警告しつつも今回に限りヘリオスを許し、破損した戦車を修理して再び馬を走らせるよう命じる。
- §25.1-25.2
カストルとポリュデウケスをめぐる対話
アポロンとヘルメスが、瓜二つの双子神カストルとポリュデウケスの見分け方や、彼らが一日おきにあの世とこの世を行き来する理由、そして海難救助という彼らの役割について語り合う。
