底本
Platonis Opera, Tomus V: Tetralogia VIII. Burnet, John, editor. Oxford: Clarendon Press, 1914.
原文データ出典
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要旨
本作は、哲学者プラトンがシケリア(シュラクサイ)の支配者ディオニュシオス2世やその盟友ディオン、および各地の知己へと宛てた13通の書簡からなる作品です。主な内容は、著者自身の若き日の政治的失望から哲学への傾倒、そしてシュラクサイにおける哲人政治実践の試みと、それに伴う政治的動乱や挫折の回想です。特に、ディオンの暗殺や自身の軟禁といった危機のなかで、真の政治的助言とは何か、また法に基づく正義の支配がいかに実現されるべきかが熱烈に語られます。さらに、書面による哲学伝達の限界を指摘し、対話と探求のなかで魂に灯る光のように得られる真の認識(認識の五段階)について説く哲学的な弁明も展開されます。混迷を極めるシケリアの状況に対し、勝者も敗者も平等に服従すべき法の支配を勧告し、権力と哲学が正義のもとで結びつくことの重要性を説いて締めくくられます。
目次
34 チャンク
引用方式:letter.section
- §1.309-1.310
ディオニュシオスへの抗議と黄金の返還
プラトンがディオニュシオスに宛てて、彼の支配への多大な貢献と、不当な追放に対する抗議を伝え、贈られた金の返還を告げつつ、真の友の重要性を説いて僭主の孤独を警告する。
- §2.310-2.311
ディオニュシオスとの関係と知恵と権力の結合
プラトンは、自分とディオニュシオスの関係が後世に語り継がれるものであることを強調し、過去の過ちを互いに正すべきだと解く。また、知恵と大いなる権力が結びつくことの自然さと、その評判が不滅であることを歴史的・神話的な詩の例を挙げて語る。
- §2.312-2.313
過去の不和の原因と三つの原理に関する謎
プラトンはシラクサでのディオニュシオスとの関係におけるかつての不和の原因を分析し、両者の本来あるべき関係性を示す。また、宇宙の三つの原理に関する謎を提示し、アルケデモスを介して真理への探求と吟味を深めるよう促す。
- §2.314-2.315
教説の口外への警告と著作の危険性
プラトンは秘儀的教えの漏洩を強く警告し、書かれた著作の危険性を指摘した上で、自身とアテナイおよびシケリアの知識人たちとの近況や交友関係について述べる。
- §3.315-3.316
挨拶の言葉の意味と都市再建妨害の嫌疑への弁明
プラトンはディオニュシオスに対し、挨拶の言葉に込められた哲学的な意味の違いを説いた後、かつて彼がディオニュシオスの都市再建計画を妨害したという噂を否定し、ディオン追放後の自身の政治的態度について弁明を始める。
- §3.317
合意の破綻と二度目のシュラクサイ行きの背景
プラトンは、自身とディオニュシオスの間で結ばれた合意が破られた経緯と、周囲の説得によって再びシュラクサイを訪れるに至った背景を説明し、自身の和解への助言が最善の道であったと主張する。
- §3.318-3.319
ディオンの財産処分への抗議と都市再建への助言
プラトンは、ディオニュシオスがディオンの財産売却や親族の扱いについて約束を違えた不当性を告発する。また、ギリシア都市再建や国制改革の勧告をめぐる過去の対話を引き合いに出し、自身がそれらを妨げたとする中傷を退ける。
- §4.320-4.321
ディオンへの徳の追求と人望獲得の忠告
プラトンはディオンに対し、シュラクサイの政変が成功しつつある今こそ真実と正義において卓越した指導者になるべきだと促し、周囲の懸念を払拭して人望を集めるよう忠告する。
- §5.321-5.322
ペルディッカスへの政体の助言とエウプライオスの推薦
プラトンはマケドニア王ペルディッカスに対し、各政体に応じた独自の政治的原則を理解することの重要性を説き、その助言者としてエウプライオスを用いるよう勧める。また、かつて自分がアテナイの民会で発言しなかった理由を釈明する。
- §6.322-6.323
ヘルメイアスら三者への協調の勧めと誓いの指示
プラトンがアタルネウスの支配者ヘルメイアスと、アカデメイア出身の哲学者エラストス、コリスコスの三名に宛て、互いの資質を補い合って強固な共同関係を結ぶよう勧告し、この書簡を神聖な誓いとともに定期的に回読することを命じる。
- §7.323-7.325
ディオンの同志への返書と青年期の政治的幻滅
プラトンはディオンの親族や同志たちに宛てて手紙を書き、彼らの志がディオンのものと同じであれば協力すると伝える。その上で、かつて自身が若い頃に正義の政治を志しながらも、三十人政権やその後の民主政下でのソクラテスの死刑判決などの現実を目の当たりにし、最終的に政治の混迷に失望した経緯を振り返る。
- §7.326-7.327
哲人統治の確信とシケリア初訪でのディオンとの出会い
現実政治に失望したプラトンは、哲学のみが正義をもたらすという確信に至り、シケリアを初めて訪れました。そこで彼は美徳を志す若きディオンと出会い、彼を通じて国制改革の希望を抱き始めます。
- §7.328-7.329
シュラクサイ再訪の決意とディオンの追放
ディオンからの度重なる熱心な懇請を受け、また自身の哲学が空論に終わることを恥じた著者は、シュラクサイへの出発を決意する。しかし現地に到着すると、シュラクサイは党争に満ちており、ディオンは追放され、著者自身もアクロポリスに軟禁されることとなる。
- §7.330-7.331
ディオニュシオスの執着と助言者としての原則
ディオニュシオスがプラトンに抱いた歪んだ執着と最初の滞在の結末を語り、個人や国家に対する「助言」の基本原則として、相手に従う意思がない限り決して暴力や強制を用いるべきではないという思慮ある者の態度を論じる。
- §7.332-7.333
信頼できる友の必要性とディオニュシオスへの助言
プラトンは、ディオニュシオス1世が信頼できる協力者を欠いて国制を樹立できなかった失敗を、ダレイオスやアテナイの事例と対比させつつ、かつて自分がディオニュシオス2世に与えた、自己支配と相互の信頼に基づく国制再建の助言を振り返り、さらにディオンの追放とシュラクサイでの中傷による悲劇的な展開を説明する。
- §7.334-7.335
ディオン暗殺の非難と法律の支配の重要性
カリッポスらによるディオン暗殺の不義を非難し、人間ではなく法律に支配を委ねるべきという自らの根本思想を繰り返す。魂の不死と死後の審判を根拠に、真の幸福は権力と哲学が正義のもとで結合したときにのみ達成されると説く。
- §7.336-7.337
ディオンの志向と共通の法による内紛終息の助言
プラトンは、ディオンが権力を握っていた場合に目指したであろう高潔な国造りを説明し、シケリアの友人たちに対して、勝者も敗者も平等に服従すべき共通の法律を制定することによって内紛を終息させるよう具体的に助言する。
- §7.338-7.339
帰国とディオニュシオス2世からの再度の招聘
プラトンが最初のシケリア滞在を終えて帰国した経緯と、その後ディオニュシオス2世が哲学に関心を持ち始めたという噂、そしてアルキュタスらの仲介やディオンの処遇を人質に取った長い手紙による三度目の招聘の過程を語る。
- §7.340-7.341
ディオニュシオスの試問と哲学的認識の本質
プラトンは三度目のシケリア行に際して、ディオニュシオスの哲学への真剣さを試す試験方法とその有効性を説明し、真の哲学的認識は言葉や書物では表現し尽くせず、魂の交わりの中で突然灯る光のようなものであると主張する。
- §7.342-7.343
認識の五段階と真の実在に至る困難
プラトンは言葉や文字による哲学の伝達の困難さを指摘し、知識に至るための五つの段階(名前、定義、模像、知識、そして実在自体)を円の例を用いて説明する。そして、前の四つの段階が持つ本質的な不完全さが認識の妨げとなる理由を論じる。
- §7.344-7.345
真理の認識への資質とシケリア退去の決意
プラトンは、魂に優れた素質のない者は真理を学び得ないことを強調し、ディオニュシオスが哲学の究極について著述したことを虚栄心の現れとして非難します。そして、ディオンの財産が完全に没収されたことを機に、自身がシケリアを去る決意を固めた経緯を述べています。
- §7.346-7.347
ディオニュシオスの懐柔策とディオンの財産売却
ディオニュシオスはプラトンを引き留めるためにディオンの財産返還に関する妥協案を提示し、プラトンは罠を疑いつつも留まることに同意するが、船が出発するとディオニュシオスは一方的にディオンの全財産を売却し始める。
- §7.348-7.349
ヘラクレイデス追放とプラトンの城外退去
ディオニュシオスが傭兵の給与削減をめぐって紛争を招き、その容疑をかけられたヘラクレイデスの処分についてテオドテスとプラトンが調停を試みる。しかしディオニュシオスは合意を翻してヘラクレイデスを追放し、プラトンとの対立を深めて彼をアクロポリスから退去させる。
- §7.350-7.352
プラトンの帰国とディオンの真意の擁護
プラトンはタラスの助けを得てシケリアを脱出し、オリンピアでディオンと再会するが、ディオニュシオスへの復讐計画への協力を拒否する。続いて、正しい国家運営を目指したディオンの真意を擁護し、彼の不慮の死を嵐に遭遇した優れた船長に例えて追悼する。
- §8.352-8.353
シラクサの内乱終結への助言と歴史的教訓
プラトンはディオンの親族やシラクサ市民、さらには敵に対しても有益な和解の勧告を提示しようとし、かつてカルタゴの脅威に対して樹立されたシケリアの共同支配の歴史を振り返る。
- §8.354-8.355
僭主政から法による王政への移行の勧告
筆者はシラクサの僭主側と民衆側の双方に対し、僭主政から法が支配する王政への移行を提言し、過度な自由と隷属の危険性を警告する。さらに、魂の徳を重んじる法体系の確立と、両派による中道的な政治的合意を求める。
- §8.356-8.357
シラクサにおける三王制の提案と実現性
ディオンの代弁として、シラクサに三人の王を立てる具体的な国制案を提示し、これが空想ではなく実現可能なものであると説いて一致団結を促す。
- §9.357-9.358
アルキュタスへの公務奉仕と祖国への義務の勧告
アルキッポスらからアルキュタスの公務による多忙を聞いたプラトンは、人は自分自身のためだけに生まれたのではないと説き、最善の動機を持たない悪人に国政を譲らぬよう諭す。
- §10.358
アリストドロスへの忠実さと真の哲学の称賛
プラトンがアリストドロスに対し、彼がディオンの忠実な友であり、哲学において最も賢明な性格を示していることを称賛し、現在の優れた品性を保ち続けるよう励ます。
- §11.358-11.359
ラオダマスへの助言と国制確立の困難
プラトンはラオダマスに対し、ソクラテスの病気や自身の高齢などを理由に、そちらへ赴くことが困難であると告げる。さらに、単なる法律の制定だけでは国家は存続し得ず、日々の生活を監督する優れた指導者と教育の必要性、そしてそれらを実現する困難さについて助言を贈る。
- §12.359
アルキュタスへの草稿受領の感謝と自身の原稿の送付
プラトンからタラスのアルキュタスへの手紙。アルキュタスから送られた草稿を賞賛し、自身の未完成の草稿を彼に送付したことを伝える。
- §13.360-13.361
ディオニュシオスへの進物と金銭管理についての報告
プラトンがシラクサの僭主ディオニュシオスに宛てて、推薦人ヘリコンの紹介や様々な贈り物の送付を知らせるとともに、アテナイにおけるディオニュシオスの資産と、プラトン自身の姪たちの結婚費用などの財政的事情を説明する。
- §13.362
旅費の負担原則とアテナイでの出費に関する助言
プラトンはシラクサ訪問に伴う費用負担の原則を説明し、アテナイでの財政状況や調達の困難について報告した上で、ディオニュシオスに対して出費を把握し出し渋りの悪評を避けるよう忠告し、さらにディオンの様子を伝えている。
- §13.363
友人への贈り物と真意を伝える手紙の合言葉
筆者はディオニュシオス2世に対し、友人への贈り物やケベスの家族への品物を手配するよう求め、自筆の手紙の真偽を見極めるための秘密の合言葉を伝えた上で、レプティネスへの返金を含む実務的な指示を出す。
