底本
Platonis Opera, Tomus II: Tetralogia III-IV. Burnet, John, editor. Oxford: Clarendon Press, 1910.
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA (Perseus の利用条件による)
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要旨
本作は、プラトンのイデア論(形相論)への自己批判と、「一」と「多」を巡る深遠な論理的探究をテーマとする対話篇です。物語は、若きソクラテスがアテナイを訪れたエレア派の哲学者パルメニデスとゼノンに出会い、議論を交わす回想として始まります。前半では、ソクラテスが提示する形相(イデア)の概念に対し、パルメニデスが無限後退や認識不可能性といった鋭い難問を突きつけます。後半では、これに対する知的訓練として、パルメニデス自身が若きアリストテレスを相手に、「一が存在するならば」および「一が存在しないならば」という仮定から導かれる帰結を徹底的に検証します。この厳密な論理展開を通じて、一と他なるものの関係が、存在、運動、時間、数などの多角的な視点から吟味されます。最終的に、一があってもなくても、一自身も他なるものも、すべてが存在すると同時に存在しないという壮大なパラドックスに達して作品は締めくくられます。
目次
36 チャンク
引用方式:section
- §126-127
ケファロスによる導入とアンティポンの回想の開始
ケファロス一行がアテナイでアデイマントスらに出会い、ゼノンの議論を記憶しているアンティポンを訪ねる。アンティポンは、かつて若きソクラテスがパルメニデスとゼノンを訪ね、ゼノンの書物の朗読を聴いたのちに「多」の存在をめぐって議論を交わした回想を語り始める。
- §128-129
ゼノンの意図とソクラテスによる形相の混合の提起
ゼノンは、自らの著作が若き日の対抗心からパルメニデスの「一なるもの」の教説を擁護するために書かれたものであると明かす。これに対してソクラテスは、形相そのものが相反する性質を被ることを示すのでなければ、個々の事物が同時に相反する性質を持つことは驚くべきことではないと反論し、形相間の混合や分離を証明することこそが重要であると指摘する。
- §130
パルメニデスの問いと形相の適用範囲
ソクラテスが形相の探究の重要性を強調すると、パルメニデスは彼の熱意を称賛しつつ、いかなるものに形相が存在するのか(正義や美、人間や火、さらには髪や泥などの卑俗なものまで)を問い正す。ソクラテスは卑俗なものの形相を認めることに躊躇するが、パルメニデスは彼がまだ若く、人の評判を気にしているためだと指摘する。
- §131-132
形相への分有の困難と無限後退の指摘
パルメニデスは、形相が全体または部分としてあずかられる場合の不条理を示し、さらに「大きさ」の無限後退を提示して、ソクラテスの形相論を厳しく批判する。
- §133
類似説の破綻と形相の不可知性という困難
パルメニデスは、形相と参加者の関係を類似性とするモデルが無限後退に陥ることを示し、別のあずかり方を模索すべきだと結論づける。さらに、形相が独立して存在するなら我々の内には存在できず、結果として形相と我々の世界はそれぞれ独立した相関関係の中に閉じ込められ、形相は我々にとって不可知になるという最大の困難を提示する。
- §134-135
神と人間の知の断絶と弁証術における形相の必要性
パルメニデスは、形相が独立して存在するならば、神の知識は人間の事柄に及ばず人間の知識も神に及ばないという断絶を導く一方で、思索や弁証の前提として形相は不可欠であるとし、ソクラテスに十分な哲学的訓練を積むよう促す。
- §136
対立する仮定を吟味する訓練法と実演の受諾
パルメニデスは、「あるものが存在する」という仮定からだけでなく、「存在しない」という逆の仮定からもあらゆる帰結を徹底的に検討する訓練方法を提示し、ソクラテスやゼノンらの懇願を受けて自らその実演を行うことを承諾する。
- §137
一の探究の開始と部分も全体も持たない一
パルメニデスは老いた競走馬に己を擬して議論の困難さを恐れつつも、若きアリストテレスを応答者に選び、「一」についての探究を開始する。まず、「一が一つであるなら、それは部分も全体も持たず、無限であり、形も持たない」という帰結が導かれる。
- §138
一の場所の不在と静止および運動の否定
パルメニデスは、部分を持たない一はどこにも存在し得ず(他のものの中にも自身の中にもない)、また静止も運動(質的変化、円運動、場所の移動、および他の中に入っていくこと)もできないことを論証する。
- §139
一における静止の否定と同一性と差異性の否定
一がいかなる運動もせず、またどこにも存在しないために静止(留まること)もしていないことを示し、さらに一が自分自身や他者と同一でも異なってもいないことを論じる。
- §140
一における相似・均等・時間的関係の否定
パルメニデスは、「一」が他のものや自分自身と「相似・不相似」の関係にも「等・不等(大小)」の関係にもなり得ないことを論じ、さらに「時間的同一性(同齢・年長・年少)」も持たないことを指摘し始める。
- §141
一の時間への不関与と存在の否定
パルメニデスは、一が時間の中にあるかどうかを吟味し、時間において「年長」や「年少」となる論理的矛盾を指摘した上で、一は時間の中にも存在せず、結果として存在(実在)そのものにもあずからないため、「一は存在しない」と結論づける。
- §142
第一仮定の結論と第二仮定における一と存在
第一仮定の結論として、一は一でも存在もせず認識不可能であることを確認した後、第二仮定「一が存在するならば」を開始する。一が存在する場合、一とその存在(本質)は異なるため、存在する一は全体であり「一」と「存在」という部分を持つことが示される。
- §143
一と存在の無限分割と数の体系の発生
一と存在の各部分が無限に分裂することを示し、さらに「他なるもの」を加えた関係から、奇数・偶数や掛け算といった数の体系がどのように発生するかを論じる。
- §144
数の無限性と存在による一の無制限な分割
偶数と奇数の様々な倍数関係から数の無限性が導かれ、存在もまた無限に分割される。分割された存在の各部分には常に「一」が伴うため、「一」それ自体も存在によって無限に細分化されていることが議論される。
- §145
一の限界と形状および自己と他者の中の所在
パルメニデスは、「一」が全体であると同時に部分であることから、それが限界と特定の形状(直線や円など)を持つこと、そしてそれ自身のうちにあると同時に他のもののうちにも存在することを論証する。
- §146
一の静止と運動および同一性と差異性
「一」が静止と運動の双方を必然的に有することを論じた後、「一」がそれ自体および他のものと同一であり、かつ異なるものであることの証明を始める。
- §147
一と他者の同一性および差異の共有
「一ではないもの」が「一」の部分でも全体でもなく、互いに異なるものでもないため、「一」と「一ではないもの」は同一であると論じられ、「一」が他のものやそれ自体と同一かつ異なることが示される。さらに、名前の使用に関する分析を通じて、異なるものが互いに同じ性質を被っていることが説明され始める。
- §148
一と他者の類似と非類似および接触の条件
一と他のものが互いに「異なる」という関係から「似ている」とされ、「同一である」という関係から「似ていない」とされる逆説を示し、続いて、一がそれ自体や他のものと「接触する/しない」ための空間的な配置条件を検討し始める。
- §149
一の接触の不可能性と大小平等の関係
一が自他に接触するかどうかを検証し、接触が生じるには少なくとも二つの数(境界)が必要であることを示し、さらに一と他のものとの間の大小・平等の関係についての議論を開始する。
- §150
大小の形相の否定と一の等しさの論証
一のなかに「小ささ」や「大きさ」の形相が部分としても全体としても入り込みえないことを示し、結果として一が他のものに対しても自己に対しても等しくなることを論証する。
- §151
一と他者の大きさおよび数の比較
「一」が自己の中、および他のものの中にあることから生じる、サイズ(大小・等しさ)および数(多寡・等しさ)の比較について議論される。一は自己および他のものよりも大きく、小さく、また等しく、それに応じて部分や数の上でも多く、少なく、また等しくなることが示される。
- §152
時間と「今」における一の生成と存在
一が「今」という瞬間に直面するとき、変化の過程(なること)を停止して実在(あること)へと移行するメカニズムを分析し、一が自己に対してより若くもありより年老いてもおり、かつそのどちらでもないという矛盾した時間的性格を論証する。
- §153
一と他者の生成の順序と年齢の二重性
パルメニデスは、一と他のものどもの先後関係について、数が少ないものほど先に生じるため一が最初であるという観点と、一が部分と終わりを伴う全体として完成するのは最後であるという観点の双方から、一が他のものより年老いていると同時に若いことを論じる。
- §154
時間経過による年齢差の変動と一と他者の関係
一が他のすべてのものと同時に生じたという観点からすれば、両者は同年齢であり互いに老いても若くもないが、年齢差の比率が時間経過とともに縮小するという観点からすれば、一と他は互いに対してより若く、またより老いていくことになるという逆説を論じる。
- §155
一のあらゆる規定への参与と時間的移行の開始
一と他のものどもが互いに年老いていき若くなっていく変化を分析し、一は時間や存在、知識などあらゆる規定にあずかることを示す。さらに第三の探究を開始し、一の実在への参与と非参与の時間的移行について問い始める。
- §156
一の生成消滅と非時間的な移行である突如
一が実在を獲得・喪失する過程(生成と消滅)、および一が静止と運動の間で移行する、いかなる時間にも属さない非時間的な移行状態としての「突如」(瞬間)が提示される。
- §157
他の諸変化と一以外のものたちの全体への参与
一における変化の議論を他の諸変化に適用し、さらに「一が存在する」という前提のもとで「一以外の他のものたち」がどのようにして部分をもつ全体として一にあずかるかを論じる。
- §158
一にあずかる他のものたちの限定と無限性
一以外の他のものたちにおいて、個々の「部分」もまた一にあずかって一となることを論じる。一にあずかる以前の他のものたちの本性はそれ自体としては無限の多数であるが、一と結合することによって限定(限界)を得るため、他のものたちは無限であると同時に有限(限定的)であり、似ていると同時に似ていないという性質をもつ。
- §159
一と分離した他のものたちが一切の性質を欠くこと
一以外の他なるものがあらゆる相反する性質を帯びる仕組みを解説し、その後、もし一が他なるものから完全に分離していると仮定した場合、他なるものは一に全く与らないため、一でも多でもなく、いかなる性質も持ち得ないという逆の帰結を導き出す。
- §160
一が存在しない場合の仮定と非存在の一の認知
一が存在する場合、一はすべてでありかつ何ものでもないという矛盾が総括される。続いて「もし一が存在しないなら」という新たな仮定が導入され、その前提のもとでも、存在しない一は認識可能であり他と区別される性質を持つことが議論される。
- §161
非存在の一が持つ類似と大小および存在の分有
存在しない一を仮定した議論において、その一が他の多くのものに関与し、他のものに対する不似性や自分自身に対する類似性を持つこと、さらには不等性を通じて大きさと小ささ、そして等しさや実在(存在)さえも分有しなければならないことが論証される。
- §162
非存在の一における存在の結合と運動および静止
非存在の一が「存在しないこと」を維持するために「存在すること」をも分有しなければならないというパラドックスを提示し、そこから一が運動と静止の両方の属性を持つことを示す。
- §163
非存在の一における生成消滅と絶対的非存在の帰結
存在しない一が運動するならば変質し、したがって生成・消滅もすることになるが、運動しないならそうではないという矛盾が示される。そこで議論を最初に戻し、「存在しない」を「全く何らの形でも実在しない」と定義し直すと、存在しない一は生成・消滅も変質もせず、運動も静止もしないという結論に至る。
- §164
一の完全な無と他のものたちの無限の塊
存在しない一には、存在するもののいかなる関係や属性も、認識の対象となる手段も一切属さないことが確認される。次いで、一が存在しない場合に「他のものたち」がどのような状態になるかが検討され、それらは一としてではなく、無限に細分化される「塊」として、お互いに対して異なるものとして現れることが論じられる。
- §165-166
一の非存在における他のものの虚像と全体の結論
一が存在しないという仮定のもとで、他のものが一なき「塊」としてどのように矛盾的に現れるかが論じられ、最終的には、一が全く存在しないならば他のものも存在せず思われもしないこと(一がなければすべては無であること)が示されて、対話篇全体の包括的な結論が提示される。
