底本
Demosthenes. Orationes, Vol. III. Rennie, W., editor. Oxford: Clarendon Press, 1931.
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA (Perseus の利用条件による)
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要旨
本作は、古典期アテナイの弁論家デモステネスが、主に自身の亡命期に祖国のアテナイ市民や個人に向けて執筆したとされる書簡集です。全6通の書簡を通じて、祖国の政治的危機の克服、自身の冤罪の証明、そして帰国への懇願が強く訴えられます。第1書簡では、ギリシアの解放と一致協力を市民に促し、旧体制派への寛容を求めます。続く第2書簡から第4書簡では、自身の無実と過去の功績を詳細に回顧しつつ、政敵による中傷を退け、正当な帰還を認めさせるための弁明が繰り広げられます。また第3書簡では、亡き同志リクウルゴスの遺児の不当な扱いに対する怒りも表明されます。これら一連の書簡は、困難な亡命生活にあっても変わらぬ祖国への好意と忠誠、そして市民の良識に語りかける熱烈な自己弁護の記録となっています。
目次
14 チャンク
引用方式:Letter.Section
- §1.1-1.7
アテナイ市民の和合と連帯の勧め
デモステネスは神々に祈りを捧げた後、アテナイ市民に向けて書簡を送る。彼は自身の帰国問題ではなく現在の危機に対する助言が目的であると述べ、市民に一致協力と、過去に現体制に協力した人々への寛大さを訴える。
- §1.8-1.16
過去への寛容とギリシア解放への決議
デモステネスはアテネ市民に対し、過去の体制に関わった者への寛容と融和を求め、指導者の選定と実行力の伴う決議を通じて、神々の導きのもとギリシアの解放へ乗り出すよう呼びかけている。
- §2.1-2.9
冤罪の晴明と過去の献身に基づく救済の請願
デモステネスはアテナイの評議会と民会に対して、自らへの虚偽の嫌疑を晴らし、他の人々と同じく救済を施すよう求めます。彼は、フィリッポスの外交的懐柔や金銭的誘惑に決して屈しなかった自身の最大の功績と、長年にわたる無私の国政への献身を回顧し、アテナイ市民の賢明な判断に訴えます。
- §2.10-2.18
ピュトンへの反駁などの功績と和解の懇請
デモステネスは、ピュトンに対する弁論や国への多大な財政的貢献など、自らの過去の功績を主張する。また、現在の不当な境遇を嘆きつつ、ハルパロス事件の冤罪と亡命の正当性を訴えて市民に和解を求める。
- §2.19-2.26
亡命生活の境遇と帰還決議の懇願
デモステネスはトロイゼンとカラウレイアの神殿からの亡命生活を語り、自身の無実と祖国への愛を強調しながら、アテナイ市民に帰還のための和解の決議を懇願する。また、自身を不当に非難する敵対者たちへの対処と、市民たちの支援を要請して手紙を締めくくる。
- §3.1-3.8
リクウルゴスの遺児の不当な投獄と公正な処遇の要請
デモステネスはアテナイの評議会と民会へ向けて流刑地から第二の手紙を送り、かつて民主政のために多大な貢献をしたリクウルゴスの子供たちが現在不当に投獄され、アテナイが外部から悪評を得ていることについて、公正な審議を求めて抗議しています。
- §3.9-3.17
アテナイ人の忘恩への非難とリクウルゴスの遺児の釈放要求
デモステネスは、アテナイ人がリクウルゴスの生前のみ彼を称賛し、その死後にその子供たちを不当に投獄して罰金を科している現状を「下劣な人間の行い」であると激しく非難し、マケドニアのフィリッポスの寛大な態度と比較してその不条理さを訴える。さらに、モイロクレスの言い逃れを過去の事例を持ち出して論破し、民衆に仕える者の悲惨な境遇を警告して子供たちの釈放を強く求める。
- §3.18-3.27
過去の報恩の先例とリクウルゴスの遺児の救済
著者はリクウルゴスの遺児の投獄を不名誉かつ不利益なことと批判し、かつて他の功労者に報いた先例や、外部の要請等で救済された者たちの実例(ラケス、ムネシブロス)を挙げ、民衆に尽くす者を阻害しないよう促している。
- §3.28-3.36
ピュテアスの背信の批判と遺児への憐憫の懇願
著者はアテナイ人に対し、嫉妬や外部の友好関係よりも民衆への忠誠と報恩を重んじるべきだと説き、ピュテアスの背信的な事例や民主派の衰退を挙げながら、亡きリクウルゴスの子供たちへの憐れみと自身のアテナイへの不変の好意を強調する。
- §3.37-3.45
アリストゲイトン無罪への抗議と帰国の願い
デモステネスは自分を追放しながらアリストゲイトンを無罪としたアテナイ市民の不条理を告発しつつ、安全な帰国の保証を求め、市民への不変の愛と忠誠を表明する。
- §4.1-4.6
テラメネスの中傷への反論と自らの政策の幸運
デモステネスは評議会と民会宛ての書簡で、自分を中傷するテラメネスを批判し、自らの政治活動がアテナイに幸運をもたらしたことを神託と事実によって証明しようとする。
- §4.7-4.12
他国との比較によるアテナイの幸運とテラメネスの私行糾弾
デモステネスは、アテナイの状況をスパルタやペルシア、フィリッポスと同盟した諸国と比較し、アテナイが最も名誉ある幸運な立場にあると説く。さらに敵対者テラメネスの私生活における恥ずべき悪徳を暴露し、彼の言葉がいかに不当な中傷であるかを暴く。
- §5.1-5.6
ヘラクレオドロスへのエピティモス救済の懇願
デモステネスはヘラクレオドロスに対し、エピティモスを窮地から救うよう懇願し、プラトンのもとで学んだ者としての正義の行動を期待するとともに、自身の立場を弁護しつつ合意の履行を求める。
- §6.1-6.2
アテナイへの戦況報告の使者の派遣
デモステネスがアテナイの評議会と民衆に対し、戦場から重要な報せを持ってきた使者を送ることを報告し、戦況について彼から詳しく聞いて安心するよう促す。
