デモステネス · Demosthenes
第五十弁論 ポリュクレスへの抗弁
Against Polycles
ギリシア語原文(原典)と日本語・英語・中国語・韓国語の対訳・語釈を、全文無料・登録不要で公開しています。
底本
Demosthenes. Orationes, Vol. III. Rennie, W., editor. Oxford: Clarendon Press, 1931.
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA (Perseus の利用条件による)
元ファイル: urn:cts:greekLit:tlg0014.tlg050.perseus-grc2
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翻訳と校閲
翻訳:Gemini 3.5 Flash(2026-05-22 公開)
AI校閲 2026-09-22:検出 Gemini 3.8 Flash/判定 Gemini 3.8 Flash・GPT-6 Astra — 日本語訳 8 件を修正
AI校閲 2026-10-12:検出 Gemini 3.8 Flash/判定 Claude Opus 5.5 — 日本語訳 1 件を修正
反映した修正(日本語訳と原文):AI校閲 9 件・表記の統一 1 件
最終更新:2026-10-12・変更履歴の一覧
要旨
本作は、古典期アテナイにおける三段櫂船の装備(トリアラキア)の費用と任務の引き継ぎをめぐる、アポロドロスによる法廷弁論である。原告アポロドロスは、国家の危機に際して多大な私財を投じて船隊を維持し、自身の任期終了後も、後任であるポリュクレスが引き継ぎを頑なに拒否したため、やむなく自費で任務を継続したと主張する。弁論の中で、アポロドロスは過酷な航海や資金繰りの苦難、さらには将軍ティモマコスとポリュクレスの癒着や、不当な命令への抗議など、自身を取り巻いた政治的・財政的な窮状を克明に暴露していく。個人の困窮や家族の不幸を顧みず公務を優先した自らの忠誠心を強調しながら、彼は裁判員に対して、義務を怠った被告への非難と、未払い費用の回収を訴えかける。国家への奉仕制度が抱える現実的な摩擦と、当時の政治的対立が生々しく描かれた作品である。
目次
9 チャンク
引用方式:section
- §1-7
アテナイの危機と三段櫂船装備の準備
原告は本訴訟が国家的な重要性を持つことを説明した後、アテネを襲った危機(領土の喪失や食料危機)とそれに対応するための三段櫂船派遣決議、そして自ら多大な私財を投じて速やかに船隊を準備した自らの功績を主張する。
- §8-14
多額の出費と私財による三段櫂船の維持
訴訟人は、自身が多額の三段櫂船装備費だけでなく特別財産税の前納金も負担したこと、また水兵の脱走を防ぎ任務を完遂するために私財を投げ打って給与や前渡金を支払い国から称賛されたことを述べ、ポリュクレスが引き継ぎを頑なに拒んだ背景を説明します。
- §15-21
任期満了後の自費による任務遂行と航海
話し手は、任期が満了したにもかかわらず後任者が現れない窮地において、自ら資金を融通して新たな水兵を雇い、穀物輸送の護送任務や引き続く困難な航海義務を果たした経緯を詳述する。
- §22-28
マロネイア沖の苦境とポリュクレスの交代拒否
アテナイ艦隊がマロネイアで嵐と敵に直面した過酷な状況を述べ、被告ポリュクレスに速やかな交代を促した友人たちの説得と、彼の冷淡な態度を告発する。
- §29-36
タソスでの艦船引渡しと費用精算の要求
アポロドロスは後任のポリュクレスに対して、超過した活動費用の精算と三段櫂船の正式な引き渡しを幾度も要求するが、ポリュクレスは難色を示し、アポロドロスの贅沢な運営方針を非難して拒否し続ける。
- §37-45
ポリュクレスの引継拒否の口実と将軍の癒着
アポロドロスは、ポリュクレスが共同三段櫂船装備者の不在を口実にして船の引き継ぎを頑なに拒否したこと、そして彼と類似した前例としてのムネシロコスの適法な対応を比較・提示しつつ、将軍ティモマコスがポリュクレスに義務履行を強制しなかった背後にある腐敗した関係(金銭の貸借など)を暴露する。
- §46-52
カリストラトス移送の拒否と将軍の策略
原告は、アテナイから二度の死刑判決を受けた亡命者カリストラトスの移送命令を、法に反するとして拒否した経緯を語り、そのためにティモマコス将軍から不当な恨みを買ったこと、さらに将軍が別の三段櫂船を他人に又貸しして法を回避した策略を暴露する。
- §53-60
テネドスでの引渡拒否と帰還後の母の死
アポロドロスは帰国途上のテネドスでポリュクレスに船の引き継ぎと超過費用の支払いを求めたが、拒否された。彼は借金をして水夫を養い帰還したが、病床の母は彼の帰国直後に息を引き取った。
- §61-68
家庭の困窮とポリュクレスの前例の告発
原告は家族の窮状や個人の苦難にもかかわらず公務を優先したことを述べ、裁判員に配慮と費用の回収を求めるとともに、被告が過去にも同様に任務を引き継がなかった例を挙げて非難する。
