プルタルコス · Plutarch
アポロニオスへの慰めの手紙
Letter of Condolence to Apollonius
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底本
Plutarch. Plutarchi Chaeronensis Moralia, Vol I. Vernardakēs, Grēgorios N, editor. Leipzig: Teubner, 1888.
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA (Perseus の利用条件による)
元ファイル: urn:cts:greekLit:tlg0007.tlg076.perseus-grc2
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翻訳と校閲
翻訳:Gemini 3.5 Flash(2026-05-22 公開)
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最終更新:2026-10-10・変更履歴の一覧
要旨
本作は、若くして息子を亡くしたアポロニオスに対し、過度の悲哀を抑制し、理知的に死を受け入れるよう説く書簡形式の慰問書です。著者は、悲しみを適度に抑える「メトリオパテイア」の重要性を説き、運命の無常さと人生の苦難の不可避性を論じます。議論の過程で、ソクラテスやプラトンらの哲学、ホメロスなどの詩、そして古代の歴史的逸話が数多く引用され、死は生からの解放や魂の救済であり、決して悪ではないことが多角的に示されます。後半では、息子の死に毅然と耐えた先賢たちの高潔な姿を紹介し、亡き息子の美徳と死後の魂の幸福を保証します。最終的に著者は、無益な嘆きを捨てて自然の理に従い、心身の健康を取り戻すようアポロニオスに強く促して結んでいます。
目次
18 チャンク
引用方式:section
- §1-3
息子の死への同情と悲しみの節制の勧め
著者はアポロニオスに対し、早すぎる息子の死に同情を示しつつ、過度の悲しみは有害であり、悲しみを適度に抑えること(メトリオパテイア)が必要であると説く。
- §4-5
不幸における中庸と運命の配分の受容
不幸に対して過度にならず中庸を保ち、運命の配分に従うことが思慮ある者の義務であることを、悲劇詩や喜劇詩の引用を交えて論じ、運命の無常さを自覚して傲慢さを退けるよう促す。
- §6
人間の死すべき宿命と理性による備え
人生の諸変化に対する最善の薬は理性であり、人間が死すべき存在で運命に支配されていることを、ホメロスやピンダロス、シモニデス、フィリッポスらの言葉や逸話を引用して示す。
- §7-9
苦難の不可避性と他者の不幸による慰め
アキレウスやヘシオドスの詩を通じて人生の苦難の不可避性が論じられ、他者の同等以上の不幸を知ることが悲しみを和らげる有効な手段であることが劇や歴史的先例を用いて示されます。
- §10-11
自然の摂理としての死と生の苦難からの解放
死を恐れる人々に対し、詩人や哲学者たちの言葉を引用しながら、死は生と不可分な自然の循環であり、かつ人生の多難さを考慮すれば、死による解放は嘆くべきではなくむしろ祝福すべきことであると説く。
- §12-13
死が悪ではなく魂の解放であることの証明
ソクラテスやプラトンの議論を引きつつ、死は眠りや旅路のようなものであって悪ではなく、むしろ肉体の束縛から魂が解放されて真理に到達できる善いものであると論じる。
- §14
死が最善の恩恵である神話的証拠とクレオビスらの逸話
死が神々から贈られる最善のものであることの証拠として、クレオビスとビトン、アガメデスとトロポニオス、ピンダロス、そしてエウテュノオスの死に関する神話的・歴史的逸話が紹介される。
- §15
完全な消滅としての死も苦痛なき状態であること
死が完全な虚無であるとしてもそれは生まれる前の無感覚な状態と同じであり、いかなる苦痛も伴わない悪ではないことを、ソクラテス、アルケシラオス、エピカルモス、エウリピデスらの引用とともに多角的に解説する。
- §16-18
夭折の慰めと人生の価値は長さではないこと
夭折もまた詩人たちによって慰められうるものであること、および人生の価値は長さではなく美徳や適時性によって測られるべきであることを、自然や短命な虫の例を用いて論じる。
- §19-21
悲哀の克服と災難に対する事前の心構え
悲しみの克服が利己心や死者の状態を理知的に反省すること、また悲哀の神話によって容易であることを説き、災難はあらかじめ予期して備えるべきであると促す。
- §22-23
静穏の保持と早すぎる死という観念の誤謬
著者は、不幸に際しては静穏を保つべきであるというプラトンの教えや女装を命じたリュキアの立法者の例を引き、嘆き悲しむことの愚かしさを指摘した上で、時ならぬ死を特別に悲しむ人々の誤った前提を、人間の寿命が相対的なものであるという議論から論破する。
- §24-25
プリアモスの悲運と哀悼における節度
トロイア戦争のプリアモス王の悲劇を引き合いに出し、長命が常に幸福とは限らず、時ならぬ死も十分慰められうることを示す。また、哀悼は死者のためではなく、生きている者が自然や運命の法則を受け入れ中庸を保つことこそが肝要であると論じる。
- §26-27
過度な嘆きの害悪と死が生に勝るという思想
節度を超えた嘆きがもたらす害悪を警告し、時間が悲しみを和らげることを示す。また、クラントルの言葉やアリストテレスが伝えるシレノスの逸話を引き、人間にとっては生まれないことが最善であり、死は生に勝るという思想を提示する。
- §28-29
生の預託金という比喩とデルポイの格言
若くして死ぬ人々を過度に悼むべきではない理由を、生を神々からの預託金に例えて説明し、デルポイの格言「汝自身を知れ」と「何事も過度にするな」などの知恵を用いて人生の苦難に耐えるよう促す。
- §30-32
大衆の死への非難と運命の受容
大衆が死を非難して生じる無益な嘆きに対し、若死にを含めたあらゆる死を必然的な運命として受け入れるべき教養を説き、ヘクトルの慰めなどを胸に、喪に暮れず余生を愉快に過ごすよう促す。
- §33
子の死に気高く耐えた古代の偉人たちの例
アナクサゴラスやペリクレス、クセノポンなど、息子の死に対しても理性を保ち、高潔に振る舞った古代の偉人たちの逸話を紹介し、悲しみに暮れることの無益さを説く。
- §34-35
早逝した徳高き者たちと敬虔な者の死後
徳において優れた若者が若くして死ぬことの意味を論じ、アポロニオスの亡き息子の美徳を称えるとともに、ピンダロスの詩を引用してハデスにおける敬虔な者たちの幸福な死後を記述する。
- §36-37
死後の裁判とアポロニオスへの結びの勧告
プラトンが『ゴルギアス』などで描いた死後の裁判の神話を引きつつ、死とは魂と身体の分離に他ならないことを説明する。最後にアポロニオスに対し、亡き息子の冥福を祈りつつ、無益な悲しみを改めて元通りの健康な生活に戻るよう切に勧告する。
