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騎士

§1-82

パフラゴニア人の悪行と召使いたちの嘆き

二人の召使いたち(デモステネスとニキアス)が、家に新しく入り込んで主人のデモス(民衆)を巧みに操るパフラゴニア人(クレオン)の悪逆ぶりと、自分たちの受けている悲惨な扱いを訴え、脱走などの解決策を模索する。

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1

ἰατταταιὰξ τῶν κακῶν, ἰατταταῖ.

いやったたいあっくす、この酷い災難め、いやったたい!

κακῶς Παφλαγόνα τὸν νεώνητον κακὸν

あの新入りの悪党パフラゴニア人を、

αὐταῖσι βουλαῖς1 ἀπολέσειαν οἱ θεοί.

神々がその悪だくみごと無残に滅ぼしてくださるように!

ἐξ οὗ γὰρ εἰσήρρησεν ἐς τὴν οἰκίαν

というのも、あいつがこの家に転がり込んできて以来、

5

πληγὰς ἀεὶ προστρίβεται τοῖς οἰκέταις.

召使いたちにいつも鞭打つのを押しつけてくるのだ。

κάκιστα δῆθʼ οὗτός γε πρῶτος Παφλαγόνων

全くだ、パフラゴニア人の筆頭であるこの男を、最高に無残に滅ぼしてほしいものだ、

αὐταῖς διαβολαῖς.

その讒言ごと。

ὦ κακόδαιμον πῶς ἔχεις;

おい、気の毒な奴よ、お前はどんな調子だ?

κακῶς καθάπερ σύ.

お前と同じように、最悪さ。

δεῦρο δὴ πρόσελθʼ, ἵνα

さあ、こっちへ来い。一緒に

ξυναυλίαν κλαύσωμεν Οὐλύμπου νόμον.

オリンポスの節回しで、二重奏の泣き言を歌おうじゃないか。

10

μυμῦ μυμῦ μυμῦ μυμῦ μυμῦ μυμῦ.

むむー、むむー、むむー、むむー、むむー、むむー。

τί κινυρόμεθʼ ἄλλως; οὐκ ἐχρῆν ζητεῖν τινα

なぜ無駄にすすり泣いているんだ?私たちのために何か

σωτηρίαν νῷν, ἀλλὰ μὴ κλάειν ἔτι;

救い策を探すべきではないのか、もう泣くのはやめて?

τίς οὖν γένοιτʼ ἄν;

では、どんな策があるというんだ?

λέγε σύ.

お前が言えよ。

σὺ μὲν οὖν μοι λέγε,

いや、お前のほうから言ってくれ、

ἵνα μὴ μάχωμαι.

喧嘩にならないように。

μὰ τὸν Ἀπόλλω ʼγὼ μὲν οὔ.

アポロンにかけて、俺は嫌だね。

πῶς ἂν σύ μοι λέξειας ἁμὲ2 χρὴ λέγειν;

どうしたらお前は、私が言うべきことを私に言わせられるだろうか?

15

ἀλλʼ εἰπὲ θαρρῶν, εἶτα κἀγὼ σοὶ φράσω.

いや、勇気を出して言ってみろ、そうしたら俺も言ってやるから。

ἀλλʼ οὐκ ἔνι μοι τὸ θρέττε. πῶς ἂν οὖν ποτε

だけど俺にはそんな度胸がない。どうすれば一体

εἴποιμʼ ἂν αὐτὸ δῆτα κομψευριπικῶς;

エウリピデス風に小粋にそれを口にできるだろう?

μὴ ʼμοί γε, μὴ ʼμοί, μὴ διασκανδικίσῃς·

私にそんな、私にそんなエウリピデス風の真似はしないでくれ。

20

ἀλλʼ εὑρέ τινʼ ἀπόκινον ἀπὸ τοῦ δεσπότου.

それより、主人からズラかる上手い手を見つけてくれ。

λέγε δὴ μόλωμεν ξυνεχὲς ὡδὶ ξυλλαβών.

じゃあ、「ずら」「かろう」と、このように一息に音を繋げて言ってみろ。

καὶ δὴ λέγω μόλωμεν.

よし、言うぞ、「ずらかろう」。

ἐξόπισθε νῦν

今度はそのすぐ後ろに

αὐτὸ φάθι τοῦ μόλωμεν.

「ぜ」と言え。

αὐτό.

「ぜ」。

πάνυ καλῶς.

素晴らしい。

ὥσπερ δεφόμενος νῦν ἀτρέμα πρῶτον λέγε

今度は、自慰をするように、まずはそっと

25

τὸ μόλωμεν, εἶτα δʼ αὐτό, κᾆτʼ ἐπάγων πυκνόν.

「ずらかろう」と言い、それから「ぜ」、そしてそれを徐々にスピードを上げて繰り返すんだ。

μόλωμεν αὐτὸ μόλωμεν αὐτομολῶμεν.3

ずらかろう・ぜ、ずらかろう・ぜ、ずら・かろうぜ(脱走しようぜ)!

ἢν

ほら、

οὐχ ἡδύ;

気持ちよくないか?

νὴ Δία· πλήν γε περὶ τῷ δέρματι

ゼウスにかけて、全くだ。ただ、自分の皮のことを考えると、

δέδοικα τουτονὶ τὸν οἰωνόν.

この不吉な予兆が恐ろしいよ。

τί δαί;

どうしてだ?

ὁτιὴ τὸ δέρμα δεφομένων ἀπέρχεται.

だって、シコっていると皮が剥けてしまうからな。

30

κράτιστα τοίνυν τῶν παρόντων ἐστὶ νῷν,

それなら、今私たちにできる最善の策は、

θεῶν ἰόντε προσπεσεῖν του πρὸς βρέτας.

どこぞの神の神像の前に走っていって、ひれ伏すことだな。

† ποῖον βρέτας †; ἐτεὸν ἡγεῖ γὰρ θεούς;

神像だって?お前、本当に神々を信じているのか?

ἔγωγε.

信じているとも。

ποίῳ χρώμενος τεκμηρίῳ;

どんな証拠があってだ?

ὁτιὴ θεοῖσιν ἐχθρός4 εἰμʼ. οὐκ εἰκότως;

だって、私は神々に嫌われているからな。筋が通っているだろう?

35

εὖ προσβιβάζεις μʼ. ἀλλʼ ἑτέρᾳ πῃ σκεπτέον.

上手く納得させられたよ。だが、別の方向を考えなければならない。

βούλει τὸ πρᾶγμα τοῖς θεαταῖσιν φράσω;

この事情を観客たちに説明してやろうか?

οὐ χεῖρον· ἓν δʼ αὐτοὺς παραιτησώμεθα,

悪くないな。だが一つだけ彼らに頼もう、

ἐπίδηλον ἡμῖν τοῖς προσώποισιν ποιεῖν,

我々の言葉や劇の内容を気に入ってくれたなら、

ἢν τοῖς ἔπεσι χαίρωσι καὶ τοῖς πράγμασιν.

それを表情でハッキリ示してほしいとね。

40

λέγοιμʼ ἂν ἤδη. νῷν γάρ ἐστι δεσπότης

では早速話そう。我々には主人がいる。

ἄγροικος ὀργὴν κυαμοτρὼξ ἀκράχολος,

気性は粗野で、豆を貪り、怒りっぽく、

Δῆμος πυκνίτης, δύσκολον γερόντιον

プニュクスのデモス(民衆)という、気難しくて耳の少し遠い爺さんだ。

ὑπόκωφον. οὗτος τῇ προτέρᾳ νουμηνίᾳ

この爺さん、前の新月の日に

ἐπρίατο δοῦλον, βυρσοδέψην Παφλαγόνα,

奴隷を買いおった。革なめし屋のパフラゴニア人で、

45

πανουργότατον καὶ διαβολώτατόν τινα.

この上なく悪賢く、告げ口ばかりする奴だ。

οὗτος καταγνοὺς τοῦ γέροντος τοὺς τρόπους,5

この革なめしパフラゴニア野郎は、爺さんの性格を見抜いて、

ὁ βυρσοπαφλαγών, ὑποπεσὼν τὸν δεσπότην

主人にすり寄り、しっぽを振り、

ᾔκαλλʼ ἐθώπευʼ ἐκολάκευʼ ἐξηπάτα

媚びへつらい、お世辞を言い、騙し込み、

κοσκυλματίοις ἄκροισι τοιαυτὶ λέγων·

細かな革の切れ端で騙し込み、こんなふうに言い出したのだ。

50

ὦ Δῆμε λοῦσαι πρῶτον ἐκδικάσας μίαν,

「デモス様、裁判を一つ片付けたら、まずはお風呂にお入りください。

ἐνθοῦ ῥόφησον ἔντραγʼ ἔχε τριώβολον.

これを口に入れ、お召し上がりになり、食べて、3オボロスをお受け取りください。

βούλει παραθῶ σοι δόρπον; εἶτʼ ἀναρπάσας

お夕食をお出ししましょうか?」そうしておいて、我々の誰かが

ὅ τι ἄν τις ἡμῶν σκευάσῃ, τῷ δεσπότῃ

用意したものをひったくり、

Παφλαγὼν κεχάρισται τοῦτο. καὶ πρώην γʼ ἐμοῦ

このパフラゴニア野郎は、それを自分の手柄として主人に差し出すのだ。この前も、私が

55

μᾶζαν μεμαχότος ἐν Πύλῳ Λακωνικήν,

ピュロスでラコニア風の大麦パンをこね上げておいたのに、

πανουργότατά πως περιδραμὼν ὑφαρπάσας

あいつはどうにかして悪賢く回り込み、それを奪い去って、

αὐτὸς παρέθηκε τὴν ὑπʼ ἐμοῦ μεμαγμένην,

私がこねたパンを自分で主人に差し出しおった。

ἡμᾶς δʼ ἀπελαύνει κοὐκ ἐᾷ τὸν δεσπότην

そして我々を追い払い、主人が他の誰の世話も受けられないようにしている。

ἄλλον θεραπεύειν, ἀλλὰ βυρσίνην ἔχων

そればかりか、主人が食事をしている間、革のハエ叩きを手に

60

δειπνοῦντος ἑστὼς ἀποσοβεῖ τοὺς ῥήτορας.

傍らに立ち、演説家どもを追い払っているのだ。

ᾄδει δὲ χρησμούς· ὁ δὲ γέρων σιβυλλιᾷ.

さらには神託を歌い上げ、爺さんのほうはシビュラ気取りで恍惚となっている。

ὁ δʼ αὐτὸν ὡς ὁρᾷ μεμακκοακότα,

あいつは爺さんがボケっと聞き入っているのを見るや、

τέχνην πεποίηται. τοὺς γὰρ ἔνδον ἄντικρυς

計略を実行に移す。家の中の者たちについて

ψευδῆ διαβάλλει· κᾆτα μαστιγούμεθα

真っ赤な嘘の讒言を吹き込むのだ。その結果、我々が

65

ἡμεῖς· Παφλαγὼν δὲ περιθέων τοὺς οἰκέτας

鞭打たれることになる。一方でパフラゴニア野郎は、召使いたちの間を走り回り、

αἰτεῖ ταράττει δωροδοκεῖ λέγων τάδε·

ゆすり、脅し、賄賂を取り、こう言って回るのだ。

ὁρᾶτε τὸν Ὕλαν διʼ ἐμὲ μαστιγούμενον;

「おい、ヒュラスが俺のせいで鞭打たれているのが見えるか?

εἰ μή μʼ ἀναπείσετʼ, ἀποθανεῖσθε τήμερον.

もし俺をなだめないなら、お前らは今日中に命を落とすぞ。」

ἡμεῖς δὲ δίδομεν· εἰ δὲ μή, πατούμενοι

だから我々は支払うのだ。さもなければ、爺さんに踏みつけられて、

70

ὑπὸ τοῦ γέροντος ὀκταπλάσιον χέζομεν.

8倍もひどい目に遭うことになる。

νῦν οὖν ἀνύσαντε φροντίσωμεν ὦγαθέ,

さあ、だから急いで考えよう、友よ。

ποίαν ὁδὸν νὼ τρεπτέον καὶ πρὸς τίνα.

我々がどちらの道に進むべきか、そして誰のもとへ行くべきかを。

κράτιστʼ ἐκείνην τὴν μόλωμεν ὦγαθέ.

やっぱり、あの「ずらかろうぜ」の道が一番さ、友よ。

ἀλλʼ οὐχ οἷόν τε τὸν Παφλαγόνʼ οὐδὲν λαθεῖν·

だが、あのパフラゴニア野郎の目を盗むことは何一つできない。

75

ἐφορᾷ γὰρ οὗτος πάντʼ. ἔχει γὰρ τὸ σκέλος

あいつはすべてを見張っているのだから。なにしろ片脚を

τὸ μὲν ἐν Πύλῳ, τὸ δʼ ἕτερον ἐν τἠκκλησίᾳ.

ピュロスに、もう片脚を民会に置いているのだ。

τοσόνδε δʼ αὐτοῦ βῆμα διαβεβηκότος

あいつがそれほど大股に開いているので、

ὁ πρωκτός ἐστιν αὐτόχρημʼ ἐν Χάοσιν,

ケツの穴は文字通りカオニアにあり、

τὼ χεῖρʼ ἐν Αἰτωλοῖς, ὁ νοῦς δʼ ἐν Κλωπιδῶν.

両手はアイトリアに、心はクロピダイにあるのだ。

80

κράτιστον οὖν νῷν ἀποθανεῖν.

だから、我々にとって一番いいのは死ぬことだな。

ἀλλὰ σκόπει,

だが、どうすれば

ὅπως ἂν ἀποθάνοιμεν ἀνδρικώτατα.

最高に男らしく死ねるか考えよう。

πῶς δῆτα πῶς γένοιτʼ ἂν ἀνδρικώτατα;

一体どうすれば、どうすれば最高に男らしくなれるだろうか?

構文注5 件
  1. 3αὐταῖσι βουλαῖς

    代名詞 αὐτός の与格(ここでは女性複数与格 αὐταῖσι)が、前置詞なしで名詞の与格(βουλαῖς)と結びつき、「〜ごと」「〜を伴って」という随伴・包括のニュアンスを表す慣用的用法。ここでは「(パフラゴニア人を)その企みごと」滅ぼすように、という意味になる。

  2. 16ἁμὲ

    関係代名詞 ἅ(中性複数対格、λέγειν の直接目的語)と、人称代名詞 ἐμέ(対格、非人称動詞 χρή の意味上の主語)が母音融合(crasis)を起こした形。全体として「私が言うべきこと」を意味する名詞節を形成している。

  3. 26αὐτομολῶμεν

    言葉遊び(駄洒落)。接続法1人称複数形の μόλωμεν(「行こう」「ずらかろう」)と代名詞 αὐτό(「それ」)を繰り返し早く発音させることで、「脱走する」を意味する動詞 αὐτομολέω の接続法1人称複数形 αὐτομολῶμεν と同じ響きを意図的に作り出し、登場人物に言わせている。

  4. 34θεοῖσιν ἐχθρός

    与格 θεοῖσιν(詩的・イオン方言的な古風な与格形)は形容詞 ἐχθρός にかかる。ここでは能動的な「神々に対して敵対的な」ではなく、受動的な「神々に嫌われている、見放されている」という意味で用いられている。直後の οὐκ εἰκότως;(「道理にかなっているだろう?」)は、「私がこれほど不幸なのは神に嫌われているからであり、それが神の存在の証明だ」という皮肉な論理に基づいている。

  5. 46καταγνοὺς τοῦ γέροντος τοὺς τρόπους

    分詞 καταγνούς(καταγιγνώσκω のアオリスト能動態分詞)の構文。この動詞は通常、人の属格と罪・罰の対格を取って「(人に〜の)有罪宣告を下す」の意となるが、ここでは転じて「(老人の)性格や習慣(τρόπους)を観察し、見抜いて(自分に有利に利用する)」という意味で使われている。

翻訳:Gemini 3.5 Flash(2026-05-22 公開)・修正履歴(1 件・最終 2026-09-21)
  • 2026-09-21 AI校閲 — 原文 1 件
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