- 底本
- Theocritus. Bucolici Graeci. Gow, A. S. F., editor. Oxford: Clarendon Press, 1952 (printing).
- 翻訳
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- 言語
- 日本語 · English · 简体中文 · 한국어
- CTS URN
- urn:cts:greekLit:tlg0005.tlg003.humanitext-grc1:1-20
- 出力
- Humanitext Reader · reader.humanitext.ai · 2026-10-27
詩人が牧神パンに捧げたパンの笛(シランクス)の起源と、パンの神話的背景を、難解ななぞなぞを交えて詠い上げた図形詩。
Οὐδενὸς εὐνάτειρα Μακροπτολέμοιο δὲ μάτηρ1
「誰でもない者」の妻にして「長い戦い」の母が、
μαίας ἀντιπέτροιο θοὸν τέκεν ἰθυντῆρα,2
石の代わりとなった者の乳母の、素早い指導者を産んだ。
οὐχὶ Κεράσταν ὅν ποτε θρέψατο ταυροπάτωρ,
かつて牛を父とする者が育てた、あの角ある者ではなく、
ἀλλ᾽ ου πειλιπὲς αἶθε πάρος φρένα τέρμα σάκους,3
そうではなく、かつて「盾の端」のために、その心が女を失って燃え上がった彼の者を。
οὔνομ᾽ Ὅλον, δίζων, ὃς τᾶς μέροπος πόθον
「すべて」という名を持ち、二重の性質を持つ彼は、人間の
κούρας γηρυγόνας ἔχε τᾶς ἀνεμώδεος,
風のような、声を響かせる乙女に抱いた熱望を、
ὃς Μοίσᾳ λιγὺ πᾶξεν ἰοστεφάνῳ
スミレの冠をかぶったムーサのために、澄んだ音で突き刺した、
ἕλκος, ἄγαλμα πόθοιο πυρισμαράγου,
火のようになり響く情熱の記念碑である傷を。
ὃς σβέσεν ἀνορέαν ἰσαυδέα
彼は、等しく不敬な怒りを静め、
παπποφόνου Τυρίας τ᾽ ἐξήλασεν.
祖父を殺した者のテュリアの地から追い出した。
ᾧ τόδε τυφλοφόρων ἐρατόν
彼に、この盲目を運ぶ者たちの愛すべき
πῆμα Πάρις θέτο Σιμιχίδας·4
苦痛を、シミキダスのパリが捧げた。
ψυχὰν ᾇ, βροτοβάμων,
自身の魂をもって、人間として歩む者よ、
στήτας οἶστρε Σαέττας,
立ち上がる羊たちの熱狂よ、
κλωποπάτωρ, ἀπάτωρ,5
泥棒を父とする者、父なき者よ、
λαρνακόγυιε, χαρείς
箱のような身体を持つ者よ、喜びつつ、
ἁδὺ μελίσδοις
甘く奏でておくれ、
ἔλλοπι κούρᾳ,6
声なき乙女のために、
Καλλιόπᾳ
カリオペに、
νηλεύστῳ.
石で打たれることのない彼女に。
- 1Οὐδενὸς εὐνάτειρα Μακροπτολέμοιο δὲ μάτηρ
「誰でもない者(Outis)」とはオデュッセウスを指し、その妻はペネロペである。「長い戦争(Makroptolemos)」は息子テレマコスの名の換喩(tēle-machos「遠くで戦う者」)。パンの母がペネロペであるという異説に基づく謎かけ。
- 2μαίας ἀντιπέτροιο θοὸν τέκεν ἰθυντῆρα
「石の代わり(ἀντίπετρος)となった者」は、クロノスに代わりに呑み込まれた石(ゼウス)。その「乳母(μαῖα)」はマイア(あるいはアマルテイア)。その「素早い指導者」はマイアの子であるエルメス。すなわちパンの父エルメスを二重のなぞなぞで表現している。
- 4πειλιπὲς αἶθε πάρος φρένα τέρμα σάκους
「盾の端(τέρμα σάκους)」は ἴτυς(イトュス、盾の縁)であり、これはパンが恋い焦がれた松の精ピテュス(Pitys)の語遊び。「女を失って(πειλιπές = πῆλυ + λιπές)」とは、ピテュスを失った、あるいは恋が実らなかったパンの情熱を示す。
- 12πῆμα Πάρις θέτο Σιμιχίδας
「シミキダス」はテオクリトスの詩的別名。「パリ」は美の審判者パリ。詩人シミキダスが、美を審判するようにこの「苦痛」(=愛の苦痛から作られたパンの笛、シランクス)を捧げたという二重の比喩。
- 15κλωποπάτωρ, ἀπάτωρ
パンの奇妙な出自を示す並置。エルメス(泥棒の神、κλώψ)を父とすること、またペネロペが全求婚者との間にパンを産んだという異説から「特定の父を持たない(ἀπάτωρ)」とされる神話的背景を指す。
- 18ἔλλοπι κούρᾳ
ἔλλοψ は通常「声のない、魚のような」を意味する。ここでは、パンの追跡から逃れるために葦に姿を変え、声を失って楽器(シランクス)となった乙女を指す。
