底本
Callimachus. Callimachus and Lycophron. Mair, A. W., Mair, G. R., editors. London: William Heinemann, 1921.
原文データ出典
Open Greek and Latin · CC BY-SA 4.0
元ファイル: urn:cts:greekLit:tlg0533.tlg009.1st1K-grc1
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翻訳と校閲
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要旨
カリマコスの『ヘカレー』は、ギリシア神話の英雄テーセウスと、彼を温かくもてなした貧しい老女ヘカレーの交流を描いたヘレニズム期の小叙事詩(エピュリオン)です。物語は、アテナイを脅かすマラトンの牡牛の退治に向かった若きテーセウスが、激しい嵐を避けるためヘカレーの質素な小屋に身を寄せるところから始まります。ヘカレーは手元にある野生の草やオリーブを差し出して心からもてなし、自身の過去やかつての幸福を語りながらテーセウスと夜を過ごします。翌朝、テーセウスは出発して牡牛を見事に捕獲しますが、再び彼女のもとを訪れたときには、ヘカレーはすでに息を引き取っていました。テーセウスは彼女の死を深く哀悼し、その恩に報いるため、彼女の名を冠したデモス(行政区)を設立してその記憶を永劫に留めます。本作は、英雄の華々しい冒険の裏で、名もなき老女の素朴な美徳と哀愁、そして日常のささやかな情景を繊細に描き出した詩的傑作です。
目次
36 チャンク
引用方式:poem.section
- §0.1-0.5
詩の制作意図と古代の証言
カリマコスの詩『ヘカレー』に関する古代の証言と断片。詩の精緻さや、ヘカレーのもてなし、およびテーセウスの活躍をめぐる内容が言及される。
- §1.1-1.4
牡牛を捕えたテーセウスの帰還とカラスの昔話
テーセウスがマラトンの牡牛を捕らえて帰還し市民たちが歓喜する場面、カラスがアテナの怒りを買った神話、および早朝の街の喧騒が描かれる。
- §2.1
老女ヘカレのもてなしと開かれた家
カリマコスの『ヘカレ』からの断片であり、旅人をもてなした老女ヘカレが、常にその家を開放して人々から敬愛されていた様子が描かれています。
- §3.1
苦悶するフクロウの動きと踊りの比喩
カリマコスの『ヘカレ』からの引用「お前が死ぬか、最後に踊ってくれればよかったのに」と、子供に捕まったり打たれたりしたフクロウの不自然な動きを「踊り」に例えた理由を説明する古註。
- §4.1
青年の顔に生えそろう柔らかなうぶ毛
カリマコス『ヘカレ』の断片とされる一節で、青年の顔にうぶ毛が生え始める様子が描写され、辞書による「ちょうど今」を意味する語の釈義が添えられている。
- §5.1
ネイペイアの平野とアドレステイア
地名ネイペイアが平野であることを説明し、歌に歌われるアドレステイアに言及する断片。
- §6.1
牛を追うアブに関する詩句の引用と伝承
カリマコスの『ヘカレ』からの詩行と、その語彙「ミュオプス」に関する古代辞書の誤記を含む引用、および他の文献における伝承について記述している。
- §7.1
灯火の芯に生じる煤の塊の描写
カリマコスの詩行断片で、灯火が燃える際にその芯に煤の塊(茸)が数多く生じる様子を描写している。
- §8.1
アポロンとヘリオスらの神格の分離
アポロンとヘリオス、ペルセポネーとアルテミスの神格を分離する者たちについて言及する、カリマコスの『ヘカレ』からの引用断片。
- §9.1
老いた皮膚と枯れ木にかけるヘカレの誓い
語り手(老女ヘカレ)が、自らの老いた皮膚と枯れ木にかけて誓いを立てている。
- §10.1
ヘカレが蓄えていた様々なオリーブの描写
カッリマコスの『ヘカレ』断片より、ヘカレが蓄えていた様々なオリーブの描写と、それに関する古注およびヘラクレスの神話における類似の食物提示の例が挙げられている。
- §11.1
テーセウスに供された白と黒のノゲシ
カッリマコスの『ヘカレ』でテーセウスに供されたものとして知られる、白と黒の二種類のノゲシも食用とされることを述べている。
- §12.1
ヘカレが供した食用の野草クリトモン
食用かつ薬用の野生草クリトモン(ササバセリ)を紹介し、カッリマコスの『ヘカレ』で主人公ヘカレが供した食材の一つとして言及されていることをギリシア語とラテン語双方の記述で示す。
- §13.1
牛に踏まれる脱穀場を見守った過去の回想
カッリマコスの詩断片。話者が、牛によって脱穀されている自身の脱穀場を見守っていた過去を回想する。
- §14.1
同一の星としての宵の明星と明けの明星
カリマコスが宵の明星と明けの明星が同一の星(金星)であることを歌った詩の断片と、それを裏付ける古代の註釈文の引用。
- §15.1
彼がアイゲウスの子であるとの察知
カリマコスの『ヘカレ』からの短い断片「彼女は彼がアイゲウスの子であることを察した」を提示し、その方言的・構文的特徴を解説する。
- §16.1
ウサギ多きアッティカのデモス・メライナイ
カリマコスの『ヘカレ』の断片「野ウサギの多いメライナイ」と、アッティカのデモスであるメライネイス(またはメライナイ)に関する古代の註釈。
- §17.1
ケクロピス部族のデモスであるトリネメイア
アッティカのケクロピス部族に属するデモスであるトリネメイアの説明と、カリマコスの詩『ヘカレ』における言及を記録している。
- §18.1
草を食む貧困者についての語釈
「貧しい人々」という語の意味について、大地の草を食べて通常の食物を欠く者たちと定義し、カリマコスの『ヘカレ』をその使用例として挙げる。
- §19.1
丈の長いキトンに関する古代の語釈
カリマコスの『ヘカレ』に登場する「スタディオス・キトン(丈の長いキトン)」という表現について、その意味(足元まで届く、頑丈な、など)を解説した古代の註釈を引用している。
- §20.1
岩の下にサンダルと剣を隠すアイゲウス
アイゲウスがトロイゼーンの岩の下にテセウスのためのサンダルと剣を置いたという神話的出来事に言及する。
- §21.1
岩を動かし剣を手にするテセウスの成長
テセウスが成長し、石を抱えて退け、その下に隠されたアイデプソスの剣を手にする時について語られる。
- §22.1
リムナイオスに捧げる合唱舞踊の祭礼
人々がリムナイオス(沼地の神)のために合唱舞踊を伴う祭礼を執り行っていたことを描写している。
- §23.1
近隣の村人による彼女の呼び名
周辺の村人が彼女をある名で呼んでいたことを示し、カッリマコスの『ヘカレ』からの引用であることを付記する。
- §24.1
火を熾すため乾燥した薪を取り下ろすヘカレ
老女ヘカレが、火を熾すために古くから保管していた乾燥した薪を棚から取り下ろす場面。
- §25.1
神の名を伏せて誓うヘカレの敬虔さ
ヘカレが神への誓いを立てる際に神の名を直接口にせず途中で止めた箇所と、それが彼女の敬虔さの表れであるとする注解。
- §26.1
かつての富裕な暮らしと幸運を回想するヘカレ
ヘカレは自らの家系がもともと貧しかったわけではないことを語り、かつての幸福な状態が戻ることを切望する。
- §27.1
パラスの岩と呼ばれるグラウコピオンの地
「パラスの岩」という表現がアッティカのグラウコピオン(アクロポリス)を指していること、およびカリマコスが『ヘカレ』でそれに言及していることを説明している。
- §28.1
アプロディテの神殿への言及
アプロディテの神殿についての言及であり、カリマコスが『ヘカレ』においてその神殿に触れていることを記す。
- §29.1
キプロスのサラミスとアテナイ近郊の旧名
著者は、言及されている「サラミス」がアテナイ近郊のものではなくキプロスのそれであることを指摘し、アテナイ近郊のものは古くクールーリスと呼ばれたというカリマコスの証言を引く。
- §30.1
ヘカレの死への哀悼ともてなしの追憶
ヘカレの死を悼み、彼女の温かいもてなしを振り返るカリマコスの詩句(『ヘカレ』断片)と、それが亡きヘカレに向けられたものであることを示す註釈。
- §31.1
死者が冥界の渡し賃を免除された都市の伝承
死者が冥界の渡し賃を支払わない特定の都市について歌った詩句。注釈では、デメテルがその土地の住民に渡し賃の免除を授けたという神話的由来が説明されている。
- §32.1
アテナの使者としてのフクロウの呼称
カリマコスの詩における、アテナの使者としてのフクロウの身元を示す詩行と、その「使者(ディアクトロス)」という言葉の使われ方に関する註釈。
- §33.1
屈服させられた牡牛を連行する様子
カリマコスが屈服した牡牛について述べた詩行を引用し、一方が引っ張り、他方がのろまな旅人のようについて行く様子を描写している。
- §34.1
カビに朽ちることのなかったサンダル
カビによって朽ちることのなかったサンダルに言及する詩の断片と、その名詞の意味を説明する古註。
- §35.1
パン箱から十分なパンを取り出すヘカレ
女性(ヘカレ)がパン箱から十分なパンを取り出して置く場面を引用し、註釈者が「シピュエー」という語を解説している。
