底本
Aristotle. Aristotelis Opera, Volume 1. Bekker, Immanuel, editor (Academia Regia Borussica). Berlin: Reimer, 1831. Transcribed by Humanitext from the page images.
原文データ出典
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要旨
『トピカ』は、アリストテレスによる弁証術(ディアルクティケ)の体系的な手引書であり、通念(エンドクサ)から出発してあらゆる問題について推論を立て、論理的な矛盾に陥ることなく議論を行うための方法を提示する。本書は、質問者と回答者の二者による対話形式の問答を前提とし、知的訓練や学問的探究における議論の構築法を扱っている。第1巻では、議論の基礎となる「定義」「固有性」「類」「偶性」という4つの述語や、議論の前提を準備するための道具が定義される。続く第2巻から第7巻にかけては、これら4つの述語や事物の同一性の判定に基づき、主張を立証あるいは反駁するための膨大な論点(トポス)が詳細に分類・提示される。最後の第8巻では、実際の問答を組織するための具体的な質問の技術、回答者の役割、そして弁証的議論の訓練方法が極めて実践的に論じられる。本書は、対話を通じた概念の吟味や思考の整理に必要な論理的技術を包括的に示した作品である。
目次
94 チャンク
引用方式:book.chapter
- §1.1
論究の目的と推論の諸種類の区分
アリストテレスが『トピカ』の目的を述べ、推論(三段論法)の種類(証明、弁証法、争論、誤謬)を定義し、本書では厳密な定義ではなく大枠の理解を目指すことを確認している。
- §1.2-1.4
弁証術の有用性と四つの述語
弁証術の三つの有用性(訓練、対話、哲学の諸科学における第一原理の吟味)を示し、医術等の専門的技術との類比からその習得基準を定義した上で、議論と推論の構成要素である四つの述語(定義、固有性、類、偶性)と、前提および問題の形式上の区別を説明する。
- §1.5
四つの述語の定義とそれぞれの特徴
アリストテレスは「定義」、「固有属性」、「類」、「偶性」という四つの述語の定義とそれぞれの特徴、および関連する論点の分類について論じる。
- §1.6-1.8
同一性の区分と四つの述語への帰着
定義、固有属性、類、偶性に対する議論が定義の吟味に適用可能であることを示し、「同じ」の三つの区分(数、種、類)を解説する。さらに、すべての前提や問題がこれら四つの述語区分に帰着することを帰納と推論によって証明する。
- §1.9-1.10
十の範疇と弁証術的前提の定義
十個の範疇を提示して四つの述語がそれらのどれかに分類されることを示し、さらに弁証法的な前提と問題の定義、および前提の条件を論じる。
- §1.11-1.12
弁証術的命題と論証の二種である帰納と推論
弁証法的な「問題(プロブレーマ)」と「テーシス(主張)」の定義や区分を論じ、考察すべき問題の基準を示す。また、弁証法的論証として帰納と推論の二種を区分し、それぞれの特徴を説明する。
- §1.13-1.14
議論の四つの道具と前提の確保と分類
弁証法的議論の準備のための4つの道具(前提の確保、多義性の区分、相違点の発見、類似性の検討)を提示し、前提の選択方法、前提と問題の3分類(倫理的、自然学的、論理的)、および前提の一般化・細分化の手続きを論じる。
- §1.15#1
語の多義性を判別するための検討方法
本節では、言葉の多義性を検討する方法が論じられる。反対語における多義性の有無、感覚による判別、反対語の有無、および中間者の有無や数の違いを通じて、ある語が多義的であるか一義的であるかを判別する様々な基準が示されている。
- §1.15#2
対立関係やカテゴリーによる多義性の判定基準
本チャンクでは、語の多義性を判定するための追加の方法として、矛盾対立関係、欠損と所有、派生形、述語カテゴリーの分類を検討する基準が提示される。
- §1.15#3
類や定義の差異による多義性の判定基準
同一の名前を持つ概念の多義性を判定するための各種基準(類の非従属性、結合表現の定義における残余の不一致、定義中の語の隠れた多義性、比較不可能性、異なる類への種差の適用、および一方が種で他方が種差である状況)を提示する。
- §1.16-1.18
弁証術の道具の活用法とそれぞれの効用
本チャンクでは、議論(トピカ)における3つの「道具」(多義性の検討、種差の発見、類似性の観察)の方法とそれぞれの実用的な意義が論じられ、これらが推論や定義の設定にどのように役立つかが説明されている。
- §2.1
課題の分類と普遍的反駁および付帯性の誤り
課題(プロブレーマ)を普遍的なものと部分的なものに分類し、普遍的な反駁方法から議論を始める理由を説明する。さらに、付帯性の性質に由来する換位の困難さと、課題における二つの誤り(虚偽と不適切な命名)について規定する。
- §2.2
付帯性の判定と類との混同に関するトポス
付帯性に関する5つの具体的なトポスが提示される。これには、本質的属性(類など)を付帯性と混同していないかの検証、種ごとの体系的な考察、定義の明確化による偽なる前提の摘発、世俗の言語習慣と専門知識の使い分けが含まれる。
- §2.3
多義的な表現における立証と反駁のトポス
多義的な表現を用いた議論における立証と反駁のトポスを、多義性が隠されている場合と自明である場合に分けて論じる。また、同名異義ではないが目的・手段・付帯性などの複数の意味で関係する概念について、知識や欲求の例を用いて分割による検討の仕方を提示する。
- §2.4
語の言い換えと類種の移行に基づくトポス
言葉の言い換えに関するトポス、類と種の間の性質の移行(立証と反駁における有効性の非対称性)、定義や必然的な帰結関係に基づく議論の発見方法、および時間的矛盾に着目した反駁について論じている。
- §2.5-2.6
議論の誘導と帰結の利用に関するトポス
質問者が自己に有利な展開へ議論を誘導するソフィスト的技法とその回避策、主張から生じる数々の帰結を用いた反駁、語の本来の意味定義に基づく議論、および事物の蓋然性と必然性の混同を突くトポスを説明する。
- §2.7
反対のものの結合と対立関係に基づくトポス
反対の概念(エナンティア)の結合が対立を生じさせる4つの方法を分析し、それらを論駁や主張に活用するトポスを提示する。さらに、ある事物に反対の性質が同時に属しえないことや、受容能力の共通性に基づく議論の方法を説明する。
- §2.8
四つの対立と随伴関係に基づくトポス
「矛盾」、「反対」、「欠如と状態(所有)」、「関係」という四つの対立形式に基づき、随伴関係の方向性(同方向または逆方向)を利用した反駁と主張のためのトポスを論じている。
- §2.9
同族語や派生語と生成・消滅に基づくトポス
同族語(名詞・形容詞・副詞などの同一系列語)や格変化形・派生語を用いたトポス、および生成・消滅・産出・破壊を用いたトポスが提示され、それらの肯定的・否定的な適用方法が論じられる。
- §2.10
類似性と度合いや同等性に基づくトポス
アリストテレスは、第一に類似した事柄の比較、第二に「より多く」と「より少なく」という度合いの差異から生じる四つのトポス、第三に「同様に属する」ことから生じる三つのトポスを整理し、それぞれの有効性と検証方法を議論する。
- §2.11
付加に基づくトポスと限定的述語と端的述語の区別
本章では、「付加」に基づくトポスが導入され、それが否定の論駁には適用できないことが示される。また、「より多く」「より少なく」言われる性質は「端的に」存在すること、および「ある点において」「いつ」「どこで」という限定条件付きの属性と「端的に(無条件に)」属する属性との区別およびその判定基準が論じられる。
- §3.1#1
より望ましいものを比較決定するためのトポス
アリストテレスは類似した二つのもののうちどちらがより望ましいかを比較検討するトポスを提示し始め、時間的持続性や思慮深い人の選択、本質的属性、それ自体として望ましいことなどの諸基準を論じる。
- §3.1#2
原因の本質性と無条件の善に基づく選択基準
善悪の「それ自体による原因」と「付随的な原因」の比較や、「無条件に善いもの」、「自然によるもの」、「目的に近いもの」など、あるものが他より望ましいとされる多様な基準(トポス)を例示を交えて提示し、特に目的とそれを生み出す原因との関係を比比例(アナロジー)を用いて論証している。
- §3.2#1
類似した対象の比較と随伴物に基づく判定基準
二つの類似した対象を比較する際、随伴する結果(善や悪)、構成要素の包含関係、発揮される時期や有用性、さらには消滅・生成などの観点から、どちらがより望ましいかを判定する基準を提示する。
- §3.2#2
善への近似や必需性と共有に基づく望ましさの基準
善との類似性や近接性、類の中での最善の比較、友人との共有、生活必需品と余剰品の選択、欠如に対する人々の反応など、多角的な基準からどちらがより望ましいかを判断するための様々な論点が整理される。
- §3.3
固有の徳や善悪への影響による望ましさの比較
アリストテレスは、二つのもののうちどちらがより望ましいかを決定するための様々な基準を提示する。その基準には、固有の徳(卓越性)の有無、対象を善くする度合い、言葉の派生関係や付加・除去による変化、それ自体のために望まれる度合い、そして「望ましさ」が有益さ・美しさ・快さのどれに基づいているかなどが含まれる。
- §3.4-3.5
望ましさと回避の判定および優劣のトポスの一般化
比較に基づき望ましさや避けるべき性質を判定するトポスを説明し、これらのトポスを名称の一般化や定義の適用度によってさらに普遍的な規則へと拡張する方法を提示する。
- §3.6#1
普遍的トポスの部分への適用と対立や程度の活用
普遍的なトポスを部分的な問題に適用する方法について述べ、対立関係や度合い(より多く、より少なく、同様に)、および仮説を用いた特定のトポスの活用方法を解説する。
- §3.6#2
命題の規定性と事例の分割による転覆と確立
問題の規定の有無や程度に応じて命題を転覆・確立する手順の数の違いを説明し、個別の事例の列挙や種の分割を利用して付帯性を論駁する方法を示す。
- §4.1#1
類の設定の妥当性と本質的述語の検証
アリストテレスは定義の前提となる「類」の設定の妥当性を検証するための方法を論じ、類が種の本質的な規定として、同じ範疇(カテゴリー)においてすべての下位事例に適用されるべきこと、また類がその下位種を分有することは不合理であることを説明する。
- §4.1#2
類と種の外延関係と適用範囲による吟味
アリストテレスは、ある名辞が類になり得ない条件として、種が成立するのに類が成立しない場合や、種とされるものがその類のいずれの種も分有しない場合を挙げる。また、種と類の適用範囲の広狭関係や、種において区別のない事物についての類の一致を論じる。
- §4.2#1
同一の種に対する二つの類の関係と検証
同一の種に対して二つの異なる類が存在する場合の規則(一方が他方に包含されるか、共通の上位類を持つか)を論じ、さらに上位の類から類関係を検証・確立する方法、および種と類が同一のものの本質として述語される関係について説明している。
- §4.2#2
類の定義の適用可能性と種差との関係
類の定義(説明)が種やその分有物に適合するかどうか、および類・種・種差の間の包摂関係や順序関係に誤りがないかを確認するための様々な基準が示されている。
- §4.3
対立するものや中間物を用いた類の吟味
類に反対のものが属するかどうかの検討や、比喩的な類の不適切さを論じた後、類と種における反対のものや中間物の随伴関係を用いて定義を否定または肯定する手法と、屈折形や同配語を用いる方法を示す。
- §4.4#1
類似の関係や生成消滅に基づく類の吟味
関係的なもの、欠如、否定、および関係の方向性に基づき、類と種の適切な提示を検討するための多様なトポスを説明する。
- §4.4#2
格変化の対応や換位と関係概念による類の検証
種と類の関係において、格変化の対応、換位の対称性、関係する対象の数、および対立関係や内属性の整合性を検証する論点(トポス)が提示される。
- §4.5#1
状態と活動の混同および随伴能力による類の吟味
アリストテレスは、状態を活動の中に置くことや、随伴する能力・関係を類とすることの誤りを指摘し、また種と類が魂の同じ部分に生じるべきこと、および類がある部分においてのみ関与されることはないことを論じる。
- §4.5#2
能力や種差を巡る類の誤認と述語付けの規則
非難されるべきものを「能力」に、尊いものを「制作的なもの」に置く誤りや、二つの類に属するものを片方にだけ置く誤りを指摘する。さらに、類と種差を逆に提示する誤り、受動やその対象を類と誤認する事例を挙げ、類が種について常に真に述語づけられるべきであることを論じる。
- §4.6#1
普遍概念の属定の誤りと述語づけの基準
アリストテレスは、提示された類が不適切であることを示すための様々な議論の基準を提示する。その中には、すべてのものに当てはまる概念(「有」や「一」)を類や種差とする誤り、属と種の間の主格関係(基体について言われることと、基体の中にあること)の混乱、および「程度(より多く)」の許容度の一致などが含まれる。
- §4.6#2
程度の比較による類の論証と類と種差の区別
類や種を確立するために「より多く」や「より少なく」を用いた比較論法、および類と種差を区別する基準を説明する。さらに、一方向的な随伴関係を類として活用する方法と、非存在を反例とするその限界を論じる。
- §5.1
固有性の四つの分類と弁証術における妥当性
固有性の4つの分類(それ自体として、他に対して、常に、一時的)を提示し、それぞれの定義と、弁証術的な議論においてどの固有性が適しているかを説明する。
- §5.2#1
固有性の提示における周知性と多義性の回避
固有性が正しく提示されているかどうかを検証するための二つの基準、すなわち「より知られた事柄を媒介としているか」と「多義的な表現が避けられているか」について、それぞれ論破と立証の観点から論じる。
- §5.2#2
主語の多義性排除と同義語反復の回避
固有性を設定する対象自体の多義性の排除、同義語反復の回避、万有の属性のような共通概念の使用回避、および単一の事物に対する意図しない複数固有性付与の回避という、固有性を正しく提示するための4つの論点を提示している。
- §5.3#1
固有性の設定における未然性の排除と恒常性の区別
アリストテレスは、固有性の設定において、対象自体やそれに属するもの、あるいは反対のものや後なるものを用いてより分かりにくくすることを避けるべきとし、また常に伴う固有性と現在の固有性を区別して提示する規則を提示している。
- §5.3#2
感覚依存の排除と本質・類による固有性の設定
感覚に依存する不確かな固有性を避け、定義(本質)を固有性と混同しないこと、また固有性提示の際にはまず対象の「類」を設定すべきであることを、論破と立証の両面から論じている。
- §5.4#1
固有性自体の成否に関する論破と立証の論点
固有性そのものの成立を判定するためのトポスが提示され、名称と定義の相互的な適用可能性、基体と属性の関係、および関与によらない本質的な区別という観点から、固有性の論破と立証の基準が論じられる。
- §5.4#2
時間的一致と同一性に基づく固有性の検討
固有性と名称の時間的な同時性、同一の対象や同一の種における固有性の一致、そして基体と偶性が結合した表現や文法的な性の一致に基づく固有性の議論と、その立証・論破のトポスを提示する。
- §5.5#1
本質的属性と常時的属性の区別による固有性の検討
固有性を提示する際、「本質的に属するもの」と「常に属するもの」の表現上の区別、および「第一のもの」と「他のものに基づくもの」の区別を怠ることによる誤り、さらに所有・分有などの関係性の定義不足から生じる誤りを指摘し、それらの正しい設定方法を論じる。
- §5.5#2
種に関する限定と同質部分物の固有性の不備
「種において」という表現を追加することで生じる多義性と誤り、事物をそれ自体の固有性として設定することの不当性、そして同質部分からなるものども(海、空気、土など)における全体と部分の固有性の不一致について論じている。
- §5.6#1
対立の四分類に基づく固有性の検討
対立する事物の四つの関係(反対、相関、状態と欠損、肯定と否定)に基づき、それぞれの固有性を論破または立証するためのトポスが提示される。
- §5.6#2
肯定と否定および同位区分肢に基づく固有性
著者は肯定と否定(述語および基体そのもの)に基づくトポスを説明し、肯定から否定の固有性を立証しようとする試みが偽であることを示した上で、並列的に区分される徳などの事例から固有性を論じるトポスを提示している。
- §5.7#1
格変化と類似の関係による固有性の検討
本チャンクでは、固有性を検証するための新たなトポスとして、格変化(派生形)、同様の関係、および等しい関係(同一の方法による関係)の3つの観点から、それぞれの固有性の成立・不成立を論破および立証する方法が具体例を交えて説明される。
- §5.7#2
生成消滅の状態やイデアに基づく固有性の検討
等しく関係するものども、存在・生成・消滅の状態に従うものども、および事物のイデアに基づく固有性の吟味方法と、それらを用いた論破と立証のトポスが説明される。
- §5.8#1
大小の度合いの比較に基づく固有性の検討
本チャンクでは、「より多く」と「より少なく」という度合いの比較に基づく固有性の検証方法(トポス)が提示される。第一に度合いの対応関係、第二に異なる性質間の度合いの比較、第三に異なる対象に対する同一の性質の固有性の度合いを検証する。
- §5.8#2
度合いの比較の第四類と同等性による固有性の検討
著者は、「より多く」および「より少なく」のトポスのうち第四のケースを説明し、次いで「同様に属するもの」に基づく三つのトポスを、立証と論破の両面から分析するとともに、それと「同様な関係にあるもの」との違いを定義する。
- §5.9
可能的な規定における非存在と過度な表現の検討
固有性を可能的な仕方で規定する際に「存在しないもの」に対して適用してしまう誤りと、最上級のような過度な表現を用いて規定することで事物の消滅時に定義が他者に移ってしまう問題を指摘する。
- §6.1-6.2
定義の五つの検討事項と不明瞭な表現の論駁
本チャンクにおいて、アリストテレスは定義に関する考究の五つの区分を挙げ、特に定義が「良くない仕方で」なされる場合、すなわち不明瞭な表現(多義語、比喩、造語など)を用いる不適切さについて論じている。
- §6.3
定義の冗長性と余計な付加表現の検討
定義における「必要以上の長大さ(冗長性)」に関するトポスが論じられ、万有一般に属するものの付加、同一種内の一部のものにしか属さないものの付加、重複表現(トートロジー)、および普遍的なものの後に部分的なものを付け加えることの不都合さが説明される。
- §6.4#1
より先なるものと知られやすいものによる定義の要件
定義が対象の本質(何であるか)を示すための主要な要件として、より先なるもの、およびより知られやすいものを経てなされなければならないことを論じ、「端的に知られやすいもの」と「我々にとって知られやすいもの」の区別を説明する。
- §6.4#2
より先でも知られやすくもない定義の諸様態
定義がより知られやすいものや、より先なるものを経てなされていない場合の諸様態を分類し、対立するものや共同区分されたもの、あるいは下位の概念を用いた不適切な定義の例を挙げて論じている。
- §6.5
類の欠落や不完全な定義をめぐる過ち
定義において「何であるか」(類)を最初に置かない過ちや、複数の対象を持つ語に対して不完全な定義を与える過ち、最近類を飛び越えて上位の類で定義する過ちについて論じる。
- §6.6#1
定義における種差の妥当性と区分をめぐる論点
種差を用いた定義の適切さを吟味するためのトポスを提示する。具体的には、対立種差の有無、否定による属の区分、種や属を種差として提示する誤りなどを議論する。
- §6.6#2
種差の質や偶性および述語関係の検討
定義における種差の妥当性を検討するための各種トポス(判定基準)を提示し、種差が「質」を表すべきこと、偶性的であってはならないこと、属や種との関係において述語関係が正しいこと、異種の属にまたがらないこと、場所や受動(一時的な質的変化)を意味してはならないことを論じる。
- §6.6#3
関係名辞や原因結果および時間限定の定義の過ち
関係名辞の種差の提示方法、本来の受容体に対する規定の不一致、および原因と結果の混同といった定義における誤りを指摘し、さらに「今」といった時間的限定が定義にもたらす曖昧さとその論点の活用方法を検討している。
- §6.7
程度の比較と選言的定義および置換による検証
本章では、定義対象と定義式の「度合い(より多く)」の適合関係のズレ、選言的な定義(二者択一)から生じる論理的矛盾を検知する論点、および定義式内の類や種差をさらに各々の定義式に置換して不一致を検証する方法について述べている。
- §6.8
関係概念の定義における対象と目的の検証
関係概念(相対者)の定義においては、関係の対象や目的が正しく提示されているか、また量や質などの種差や「〜に見える」という主観的要素が適切に付加されているかを検討し、不備を突く論駁の方法を提示する。
- §6.9
状態と所有者および反対や欠如による定義の検討
定義において状態とその所有者、関係概念、反対概念などの対応関係を検討する方法、および欠如による定義における循環回避や要件について論じ、無知を単なる知識の欠如と定義することの誤りを指摘する。
- §6.10
派生形とイデアへの適合性および多義語の定義の検証
名詞や定義の派生形における適合性の確認、イデアに対する定義の不適合、および多義的・同音異義的な概念を定義する際の間違いと対論での扱い方について記述されている。
- §6.11
複合概念の定義における部分の検証と語句の置き換え
複合概念の定義における部分ごとの検証方法や、項数が等しい定義が陥る不適切な置き換えの誤り、および類と種差の定義における妥当な語句の置き換え方法について論じている。
- §6.12
種差や関係概念の定義における不備と目的の取り違え
アリストテレスは、種差の定義の不備、存在しない対象の混入、関係概念の定義における不適切な記述、事象そのものではなく優れた状態を定義する誤り、およびそれ自体として選択されるべきものを他を目的とするものとして定義する誤りを論じる。
- §6.13#1
構成要素の総和や合成物による定義の誤り
定義において「これら」「これらから成るもの」「これにこれを加えたもの」として定義する際の誤りを指摘する。本チャンクでは、部分と全体の同一性の批判、および構成要素の性質と合成物の性質の不一致について論じている。
- §6.13#2
要素の結合や共在による定義の不備の論駁
アリストテレスは、「これにこれを加えたもの」や「要素の結合」として提示される定義の謬見を暴く論駁法を説明し、要素の向かう目的の同一性や、因果関係を単純な「共在」と混同する定義の不適切さを論じている。
- §6.14
要素の結合による定義への反駁と定義の改善法
全体を要素の結合とみなす定義への反駁法や、反対の性質の一方による定義の問題点、さらには曖昧な定義の修正や新法の導入に比した代替定義の提示など、定義を吟味し論駁するための実際的な方法が提示される。
- §7.1#1
格変化や反対語による数的同一性の検証基準
同一性(特に数的な同一性)の判定基準として、格変化や反対語などを用いた検証方法が示される。また、クセノクラテスの議論を批判し、最上位の性質を持つ二つのものが同一であるためには、それらが数において一つでなければならないことを論じる。
- §7.1#2
範疇や種差および付加による同一性の検証基準
同一性を判定するための基準として、偶性の共通性、属する範疇や類の同一性、種差の違い、程度の増減、付加・削減の結果、仮定のもとでの不可能性などを提示する。
- §7.2
同一性のトポスと定義の反駁における有用性
同一性に関するトポスのまとめと、それが定義の議論においてどのように機能するかを論じる。否定的なトポスは定義でないことを示すのに有用だが、肯定的なトポスは単に同一性を示すだけでは定義の要件を満たすのに不十分である。
- §7.3#1
定義の立証の原理と反対のものに基づくトポス
定義の立証の可能性とその原理について述べ、対立関係(反対のもの)を用いた定義のトポスを、全体および部分(類と種差)の観点から提示する。
- §7.3#2
語形変化や比例関係に基づく定義の立証
反対のものの定義や種差、語形変化や同根語、比例関係にある事物の定義、そして「より多く」や「同様に」の二重の対比を用いて、定義を正しく立証するための各種のトポスを提示する。
- §7.4
定義の吟味に最も有用なトポスの選択と適用
定義の立証や反論において最も重要かつ有益なトポス(論点)の選択と、個別事例の観察や比喩の検討といった普遍的なトポスの具体的な応用方法を提示する。
- §7.5#1
定義の立証が反駁よりも困難である理由
定義を構築すること(肯定的立証)が破壊すること(反駁)よりも困難である理由を、前提命題の獲得や普遍性・換位性の観点から説明し、同様のことが固有性や類についても成り立つことを論じている。
- §7.5#2
四つの述格の確立と破壊の難易の比較
アリストテレスは普遍的・部分的な付帯性の確立と破壊の難易度の違いを述べ、その後、4つの述語カテゴリ全体の難易度を比較して定義の破壊が最も容易で付帯性の確立が最も容易であることを示し、トポスの列挙を締めくくる。
- §8.1#1
弁証論における質問の配列と結論の隠蔽技術
質問の順序の決定や実際の質問の構成は、純粋に真理を求める哲学者ではなく、他者と対話する弁証家特有の課題である。弁証家が議論を組み立てる際、必要不可欠な前提に加え、帰納・誇張・隠蔽・明確化の四つの目的で前提が用いられ、特に結論を隠蔽して推論を成功させるための具体的な質問の技術や順序が提示される。
- §8.1#2
前提の隠蔽と論証の装飾のための質問技術
定義や同系語、類似性の活用、および質問の順番や無関係な内容の挿入といった、議論において前提を隠蔽し、装飾し、明瞭にするための具体的な質問技術を論じる。
- §8.2#1
推論と帰納の使い分けと反論への対処法
問答における推論と帰納の使い分けを示し、共通の名前の欠如による混乱や反論の処理方法、特に反論から不適切な部分を取り除いて普遍的な前提を再提示する手法を解説する。
- §8.2#2
前提の承認を得る技術と適切な質問の形式
相手の予測的な否定を回避して前提を認めさせる技術、帰謬法の不採用、結論を直接の問いにすることの禁止、および適切な問答法的前提の形式と質問の長引かせ方の拙さについて論じる。
- §8.3
第一原理の論駁の困難さと前提受容の基準
アリストテレスは、定義が欠けているために根本的な原理や極限的な結論に対する議論が困難になることを分析し、問答・訓練の文脈と教授の文脈における前提の合意基準の違いを指摘する。
- §8.4-8.5
対話における回答者の役割と前提承認の基準
アリストテレスは対話における回答者の役割について、質問者と同様に規定の必要があるとし、訓練や探究としての対話において回答者が主張(テーシス)の性格(通念にかなうか、反するか、中立か)に応じて、前提を承認すべきか否かの客観的および主観的な基準を提示する。
- §8.6-8.8
質問の性質に応じた回答法と多義語への対処
問われる事柄の性質や議論への関連性に応じた適切な回答基準、曖昧で多義的な質問への実践的な対処法、そして普遍的な前提に対する不当な拒否(へ理屈)の定義と反論の重要性について論じる。
- §8.9-8.10
主張の自己点検と虚偽の推論に対する正しい解決法
主張や定義を擁護する際の自己点検の重要性と評判の悪い仮定を避けるべき理由を論じ、偽を推論する議論を解決する唯一の正しい方法と、結論を妨げる四つの反論の方法を説明する。
- §8.11#1
議論自体への批判と問答者の態度および練習用推論
アリストテレスは、議論自体の良し悪しと論者の問答技術に対する批判を区別し、共同作業を拒む回答者の不協力な態度が議論を損なう原因となること、また訓練のための問答における偽なる前提の活用や誘導の方法について論じる。
- §8.11#2
議論自体に対する五つの批判基準と推論の冗長性
アリストテレスは議論自体に対する5つの批判の基準を提示し、課題に応じた批判と議論自体に対する批判の区別を論じる。また、前提の妥当性と結論の関係、様々な議論の形式、および推論における冗長性の誤りについて説明する。
- §8.12-8.13
偽なる議論の分類と論点先取の五つの類型
議論が「明白」であることの定義や「偽なる議論」の四つの分類を提示した上で、論点先取(最初のものを要求すること)および反対の前提を要求することのそれぞれ五つの具体的な方法を、弁証的な観点から整理する。
- §8.14#1
議論の逆転と両面の検討による弁証的訓練
アリストテレスは弁証的議論の訓練方法として、論証の逆転(換位)や主張の正否両面への検討、および基本命題や定義の記憶の重要性を強調する。
- §8.14#2
議論の多角化と普遍化および対話相手の選定
一つの議論を多角化・隠蔽する方法や、普遍的な議論の記憶の有用性について述べ、帰納と推論の訓練の役割分担を整理する。また、質の低い相手との不毛な論争を避けるべきであるとし、事前準備としての普遍的議論の有効性を強調する。
