底本
Aristotle. Aristotelis Opera, Volume 6. Bekker, Immanuel, editor. Oxford: Oxford University Press, 1837.
原文データ出典
Open Greek and Latin · CC BY-SA 4.0
元ファイル: urn:cts:greekLit:tlg0086.tlg039.1st1K-grc1
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翻訳と校閲
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最終更新:2026-10-10・変更履歴の一覧
要旨
本作は、アリストテレス的自然学の系統を引く、植物の生命の本質、分類、およびその生成・生理的メカニズムを論じた科学・哲学書です。プロローグでは、アラビア語訳からラテン語訳、さらにギリシア語へと再構成された複雑な伝承の経緯が語られます。第1部では、植物が感覚や欲望を欠きながらも栄養摂取と成長を司る魂を持つ「中間的」存在であることを定義し、動物との類似性と相違を比較しつつ、樹木や草本などの基礎分類や栽培技術を解説します。第2部では、熱や水分、土壌や空気といった物理的要素の相互作用に焦点を当て、様々な環境における植物の発生原因を探求します。結末に向けては、落葉や結実の周期、果実の味わいの変化、常緑の謎といった多様な生理現象が、熱力学や気象論的な原理によって体系的に解き明かされます。
目次
27 チャンク
引用方式:part.chapter.section
- §prol.1.1-prol.1.8
植物論の重要性と翻訳の経緯
アリストテレスの哲学における『植物について』の書の重要性と、一人のケルト人学者によるアラビア語からラテン語への翻訳、そしてそれを著者が再び翻訳して自ら享受するに至った経緯を述べる。
- §prol.1.9-prol.1.16
ギリシア語への再翻訳の経緯と方針
イタリア人からアリストテレスの『植物について』の翻訳書を受け取った著者が、直訳の正確さを重視しながらこれをギリシア語に再翻訳し、難解な箇所には注釈を施して完成させた経緯を述べる。
- §1.1.1-1.1.11
植物における魂と感覚や欲望の有無
植物が命や魂、感覚、欲望を持っているかという古代の哲学者たちの議論を紹介し、植物は魂の一部(栄養摂取と成長)を持つものの、感覚や欲望、認知能力は持たず、動物とは明確に区別されるべきであることを論じる。
- §1.1.12-1.1.22
動植物を分かつ感覚と中間的存在としての植物
植物が有魂でありながら感覚を欠く「中間」の存在であることを示し、感覚こそが動物と植物を分かつ基準であると論じ、栄養摂取の原理について説明する。
- §1.2.1-1.2.11
植物の呼吸と睡眠の否定および雌雄の性
植物に欲求や自発的運動、呼吸があるかという問題を検討し、植物に睡眠や目覚めがない理由を説明する。さらに、エンペドクレスやアナクサゴラスの説に言及しながら、植物における雌雄の性の存在と混合のあり方について論じ、種子が動物の受胎に類することを示す。
- §1.2.12-1.2.20
種子と卵の類似および雌雄混合の様態
植物の種子と卵の類似、雌雄の混合に関する動物との相違、植物が睡眠を必要としない理由、世界の完成と動物の生成に関するエンペドクレスの説への反論。
- §1.3.1-1.3.9
植物の部分の構成と動物の器官との類似
植物を構成する単純な部分と複合的な部分を分析し、動物の器官との構造的類似性を提示するとともに、植物の定義の困難さと魂の欠如について論じる。
- §1.3.10-1.3.16
植物の部分の脱落と存続および諸部分の分類
植物の部分の脱落と存続を、動物の毛や角の生え変わりと比較して位置づけ、続いて植物に固有および共通の部分について、水分や形状の多様性を挙げながら分類を開始する。
- §1.4.1-1.4.8
樹木の基本構造と植物の四分類
植物の果実や葉の配置の多様性について述べ、樹木の構成部分(根、幹、ひこばえ、枝、髄)の定義と動物の器官との類似性を論じる。また、樹木、灌木、草本、野菜という植物の基本分類を提示する。
- §1.4.9-1.4.17
草本と野菜の区分および環境による植物の多様性
「草本」と「野菜」の定義と中間的な種類について論じ、植物の学術的分類には推論や実例が必要であることを説明する。さらに、野生と庭園の樹木の性質の違いや、生育する環境による植物の多様性について述べる。
- §1.5.1-1.5.11
葉と根の多様性および果実の性質の差異
植物の定着性と移植、葉や根の多様な構造、果実における液汁の性質の違い、食用性、熟す速度、そして色や形の相違について論じる。
- §1.6.1-1.6.9
樹木の香りと繁殖方法および接ぎ木と受粉
樹木における香料の部位、繁殖と接ぎ木(同種・異種・芽接ぎ)の多様性、および種子の性質の変異について論じる。さらに、樹皮が硬い木の治療法、ナツメヤシの雌雄による受粉、野生種を用いた混植の効果を説明する。
- §1.7.1-1.7.11
植物の変異と農耕による改良および分類法
植物の老齢化に伴う種の変異や、栽培・農耕の技術による性質の改善について論じ、野生種と栽培種の雌雄による違い、古代の文献を通じた植物の包括的な分類と原因の究明方法を提示する。
- §2.1.2-2.1.10
固体との比較による植物の熱成と急速な成長
土器や固体(石・金属)と動植物の熱成および空隙の有無の違いを対比し、植物における栄養素の移動による急速な生成・成長プロセスを、浴場の水蒸気や地下水の発生メカニズムに例えながら説明している。
- §2.2.1-2.2.9
地震や水流の発生と密度による浮力の法則
地震と川の発生原因が気象論に基づいて説明され、固体における地震の原理と、植物や水における密度の違いによる浮力の法則が論じられる。
- §2.2.10-2.2.18
浮石の原理と泡や塩土からの石と砂の生成
水と空気の境界の性質について述べ、ある種の石が水に浮く理由が内部の空隙にあることを説明する。また、波の衝突による泡の凝固や、塩水の乾燥と土の熱変性によって砂や石が形成されるプロセスを論じる。
- §2.2.19-2.2.25
淡水と塩水の重さの違いと塩の生成原理
水と土の自然的な物理的関係について論じ、淡水と塩水の重さの違いを卵を用いた実験によって説明する。さらに死海の性質、静水における塩の生成メカニズム、そして土が本来有する塩気との違いを解説する。
- §2.3.1-2.3.8
複合による植物の生成と蒸気の凝縮プロセス
万物の生成、とりわけ植物の発生には適度な調和を保った質料と場所の複合が必要であること、また、蒸気の蒸留プロセスが浴場の淡水の滴りによって説明されることについて。
- §2.3.9-2.3.16
雪中での植物の発生と塩性地や砂地での不毛の理由
雪の中での例外的な植物や生物の発生メカニズム、および極度に塩分を含んだ乾燥した場所や砂地において、適度な調和や熱・水分の欠如が植物の成長を妨げる理由を説明している。
- §2.4.1-2.4.12
水面および多様な環境における植物の生成と特性
水面上に生じる植物や、大地・冷たい場所・肥沃な水辺・硫黄地帯などに生じる様々な植物の生成原因を、熱、空気、水分の関係から説明し、それぞれの特性(根や葉の有無、分布地など)の理由を論じる。
- §2.5.1-2.5.3
石の内部での植物の生成と栄養摂取の条件
堅い石の内部における空気、熱、水分の相互作用による植物の発生プロセスと生存の三要素を説明し、さらに過度な水分や乾燥が植物の栄養摂取の障害となる機序を解説する。
- §2.6.1-2.6.10
植物の生存に必要な要因と生育環境による発生
植物の生存に必要な四つの基本的要因(種、場所、水、空気)を説明し、高山や水辺、湿地における植物の発生プロセス、さらには棘のある植物における寄生植物(リノゾースティス等)の発生と、植物の根源となる五つの要素を提示する。
- §2.7.1-2.7.9
葉と果実の生じる順序と棘の形成の理由
樹木が葉や果実を生み出す時期の三つのパターンとその仕組み、葉の本来の役割、および植物における棘の形成と錐体形の理由を説明する。
- §2.8.1-2.8.11
植物の緑色が生じる原因と成長の三方向
植物の外的な緑色の原因が物質の熟成度合いと残存水分にあることを説明し、さらに植物の成長方向の三分類と、それに対応する熟成プロセスの三段階(植物の下、髄、動物)について論じている。
- §2.9.1-2.9.8
落葉と常緑のメカニズムおよび結実の頻度
植物における落葉のメカニズム、常緑植物が生じる理由、および熟成の頻度による結実の回数や、環境と水分量に応じた色の変化、木材の沈沈現象について物理学・熱力学的に論じる。
- §2.9.9-2.9.16
無花の原因と樹液の凝固および色彩の変化
植物が花を欠く物理的原因や、樹皮の厚い植物の伸長を論じ、植物内で乳汁やゴム、石状物質が生成され凝固するメカニズムを解説し、最後に冬における植物の色彩変化について説明している。
- §2.10.1-2.10.9
果実の苦みや甘みが生じる原因と性質の変化
果実が苦みや甘み、渋みを持つ原因を、熱、水分、冷気、乾燥の相互作用や、土壌の性質、樹木の構造から説明する。
