アリストテレス · Aristotle
動物の諸部分について
Parts of Animals
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底本
Aristotle. Aristotelis Opera, Volume 1. Bekker, Immanuel, editor (Academia Regia Borussica). Berlin: Reimer, 1831. Transcribed by Humanitext from the page images.
原文データ出典
Humanitext Project · CC BY 4.0
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翻訳と校閲
翻訳:Gemini 3.5 Flash(2026-05-22 公開)
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要旨
アリストテレスの『動物部分論』は、動物の身体を構成する様々な「部分」が、いかなる目的や機能のために存在しているのかを、目的論的な自然観に基づいて解き明かす自然科学・哲学の著作です。第1巻では、単なる質料的な説明を批判し、形相や目的因を重視する研究方法論が提示され、種を二分していく分類法の限界が指摘されます。続く第2巻から第4巻にかけては、具体的な身体の構成が、素材となる「同質部分」(血液、肉、骨、脳など)と、機能を持つ「異質部分」(目、耳、内臓、肢など)に分けて体系的に議論されます。著者は、人間から有血動物(哺乳類、鳥類、魚類など)、さらには様々な無血動物(昆虫、軟体動物など)に至るまで、多様な生物の解剖学的構造を詳細に比較しています。最終的に、すべての器官の配置や形態は、その動物の生存や活動に最適化された自然の合理的設計によるものであることが示され、本書は生殖と発生の議論への橋渡しを以て締めくくられます。
目次
92 チャンク
引用方式:book.chapter.section
- §1.1.1-1.1.5
探究の基準と自然研究における目的因の優先
あらゆる学術探究には学問的知識と教養という二つのあり方があり、自然学においても現象の観察と原因規定における適切な順序や、目的因の優先性が規定されなければならないと論じられる。
- §1.1.6-1.1.10
仮設的必然性と自然生成における目的の優位
アリストテレスは永遠なるものに属する絶対的必然性と、生成する自然物に属する仮設的必然性を区別し、自然学においては生成プロセス(原因)よりも、目的(形相・本質)が優先されるべきであることを建築の例やエンペドクレスへの批判を通じて主張する。
- §1.1.11-1.1.16
質料的説明の批判と形相および機能の優先
初期自然哲学者たちの質料一辺倒の説明方式を批判し、動物の体を説明する上では形相(形態)や機能(能力)の役割を優先すべきであることを、デモクリトスの形相解釈の不十分さと大工の比喩を用いて論じる。
- §1.1.17-1.1.20
自然としての魂の研究と目的因による生成支配
アリストテレスは、自然研究者が質料ではなく形相(すなわち魂)を探究すべきであることを論じ、思考能力を除く魂の部分が「自然としての魂」に該当することを示す。さらに、偶然ではなく目的因(自然)が天体や生物の生成を支配していることを主張する。
- §1.1.21-1.1.25
種子の二重性と目的因および質料的必然性
種子の二重の因果性(由来と目的)を説明し、自然科学において目的因(仮設的必然性)と質料的・必然的原因の両方が必要であることを、エンペドクレスやデモクリトスなどの先人の限界と対比しながら論じる。
- §1.2.1-1.2.2
二分法による動物分類の欠陥と類の本質的統一
著者は、類を二つの差異に分ける「二分法」による分類の問題点を指摘し、これが同類の動物を分断し、不要な重複を生むことを議論する。
- §1.3.1-1.3.5
欠除による分割の不可能性と本質的差異に基づく分類
アリストテレスは、二分法(ジコトミー)による動物分類、特に「欠除(否定)」に基づく分割の不可能性や、分割の進展に伴う差異の数と種(個体)の数の不一致を指摘し、物質と結合した本質的属性に基づき分類を行う重要性を論じる。
- §1.3.6-1.3.10
二分法の誤謬と複数の差異による分類の必要性
筆者は、二分法による分割の問題点をさらに指摘する。付帯的な属性による分割や、対立しないカテゴリー、野生と馴化による不適切な分類を挙げ、動物の分類は一つの直系的な二分法ではなく、複数の差異に基づいて規定されるべきであると論じる。
- §1.4.1-1.4.4
程度の差と類比による動物の類の区分
アリストテレスは、動物分類の基準として「超過(程度差)」と「類比」の区別を導入し、普遍的な性質から語るべきか個別種から語るべきかという方法論的疑問を呈した後、身体や器官の形態の類似性に基づいて類を画定する基準を示す。
- §1.5.1-1.5.5
動物研究の価値と形態の重視
アリストテレスは不滅なる神的な実体と消滅する自然物の研究を対比し、動物の研究がもつ独自の価値、親しみやすさ、美を擁護するとともに、自然研究においては素材(質料)ではなく全体の形態(形相)を重視すべきであることを説く。
- §1.5.6-1.5.9
動物の共通性質の分類と活動という目的
動物に属する付帯的性質を端的な共通性、比例的な共通性、類および種による活動という形で分類し、身体やその部分のすべては活動という目的のために構成されているという方法論的原則を提示する。
- §2.1.1-2.1.4
身体構成の三段階と生成および本質の前後関係
動物の身体を構成する三つの段階(元素/能力、同質部分、異質部分)を定義し、生成においては単純な要素が先立つが、本質や定義(ロゴス)においては目的となる複雑な部分が先立つという目的論的な関係を論じる。
- §2.1.5-2.1.9
同質部分と異質部分の必然的関係と器官の構成
動物の部分における同質部分と異質部分の必然的な関係を論じ、感覚器官が同質部分から、道具的部分が異質部分から構成される理由を解き明かす。さらに、心臓および内臓が血液の流れと深く関わりつつ、両方の性質を併せ持つ仕組みを説明する。
- §2.2.1-2.2.5
同質部分の液状と固体状の分類とその性質
動物の同質部分を液状と固体状に分類し、それらの役割(素材、栄養、あるいは残余物)を説明するとともに、血液などの質的な違いが動物の身体的・精神的特徴にどのように関わるかを論じている。
- §2.2.6-2.2.9
温冷の諸説と血液における温かさの多義性
血液の性質と温冷の原理について検討を始める。生物や器官における温冷の定義をめぐる諸説の対立を示し、「より温かい」という表現が使われる多様な意味を整理・分析する。
- §2.2.10-2.2.15
固有の温かさと付帯的な温かさの区別
本質的な温かさと付帯的な温かさの区別を論じ、血液や火、可燃物、凝固性などを例に挙げて、温冷の判定基準が多岐にわたることを整理し、温冷の定義を包括的に締めくくります。
- §2.3.1-2.3.3
乾湿の多義性と生命における熱の始原
乾と湿の区分について、可能態と現実態の観点から規定され、血液の熱と湿のあり方が本質と付帯性の観点から論じられる。また、すべての動植物が生命活動と消化のために熱の始原を必要とすることが示される。
- §2.3.4-2.3.7
胃腸による栄養摂取と血液の運搬機能
胃と腸が動物にとって栄養の受け皿(植物における土壌に相当)であり、血管がそこから最終的な栄養(血液)を全身に運ぶ仕組みを説明する。血液自体は感覚を持たない余剰物であり、心臓や血管の中に容器のように収められている。
- §2.4.1-2.4.5
血液の線維と凝固および知性や気質への影響
血液中の繊維(繊維質)の有無が、その血液の凝固特性にどのような影響を与えるかを説明し、さらに血液の物理的性質(温度、濃度、純度)が動物の感覚、知性、気質(臆病さや怒りっぽさなど)を左右する原因となることを論じる。
- §2.5.1-2.5.4
軟脂と硬脂の違いおよび脂肪が身体に及ぼす影響
軟脂と硬脂(脂肪)の違いが血液の性質(特に土っぽさや繊維の有無)に起因することを示し、脂肪が動物の感覚や健康、繁殖能力に与える影響を論じる。
- §2.6.1-2.6.5
血液の熟化物としての骨髄の本質と性質の差異
骨髄の本質が血液の熟化(消化)物であり、精液の力ではないこと、および骨の構造や動物の種類に応じて骨髄が軟脂質や硬脂質、あるいは脊髄のような特殊な性質を持つことを説明している。
- §2.7.1-2.7.5
脳の冷たい本性と心臓の熱を冷却する機能
脳が骨髄とは反対の極めて冷たい本性を持つこと、およびそれが心臓の熱を緩和する役割を果たすことを説明する。さらに、脳への血管の分布とその冷却機能が頭からの液体の流れ(カタル)を生むメカニズムを論じている。
- §2.7.6-2.7.11
脳による睡眠の誘発と人間の脳の特徴
脳が雨の生成に類似した冷却作用によって睡眠を引き起こす仕組みと、人間の脳の身体的特徴(相対的な大きさや縫合線の多さなど)を解説し、最後に体内の液体と後発的な余剰物の分類を示している。
- §2.8.1-2.8.6
触覚の器官としての肉と支持組織の配置
著者は同質的部分のうち「肉」(またはそれに対応するもの)が動物の最も本質的な起点であり、触覚の器官として他のすべての身体組織を従属させていることを説き、有血動物と様々な無血動物(甲殻類、貝類、軟体動物、有節動物)における支持組織の配置の違いを説明する。
- §2.9.1-2.9.6
骨と血管の連続性と骨格の構造と機能
骨と血管はいずれも一つの起点から連続して伸びる構造的共通性を持ち、骨格は脊椎を中心に運動の柔軟性と内臓の保護を両立するように設計されていることを説明する。
- §2.9.7-2.9.14
動物の性質による骨の差異と爪や角などの派生器官
動物の大きさと活動の性質(肉食や雄の性質)による骨の強度・硬度の変化を論じ、軟骨魚類の特徴的な軟骨の役割と土的成分の皮膚への配分について説明する。また、骨に近い性質を持つ爪や角、歯の機能を解説し、これらの同質的部分の原理である骨と肉の記述をまとめる。
- §2.10.1-2.10.6
動物の必須器官と直立姿勢および頭部の構造
動物の身体部分に関する新たな考察を開始し、生存に必須の2つの器官(摂取と排出)と、人間独自の直立姿勢、および脳の本来の機能(冷却作用)に関連する頭部が無肉である理由について論じる。
- §2.10.7-2.10.11
頭部における感覚器官の配置と肉の欠如の理由
感覚器官が頭部にある理由および頭部(特に後頭部)が無肉である理由を、直立姿勢の維持と関連付けて説明し、さらに各感覚器官(聴覚、視覚、嗅覚)の解剖学的配置の合理性を身体の左右対称性に基づいて論じる。
- §2.11.1
四足動物の耳の位置と可動性の有用性
四足動物の耳の位置(目の上方にあるように見える理由)とその可動性が、前かがみで移動する彼らの生存(集音)にいかに有用であるかを説明する。
- §2.12.1
鳥類や卵生四足動物とアザラシが耳介を欠く理由
鳥類、卵生の四足動物、および胎生でありながら不完全な四足獣であるアザラシが、耳介を持たずに耳孔のみを持つ理由について説明する。
- §2.13.1-2.13.7
動物各種におけるまぶたと目の保護構造
胎生・卵生の四足動物、鳥類、昆虫、魚類など、様々な動物のまぶたと目の構造、および彼らの生活様式に応じた視覚の保護メカニズムを比較検討する。
- §2.14.1-2.14.5
まつ毛の存在と動物における体毛の合目的的配置
まつ毛が毛を持つ動物、特に人間にのみ上下に存在すること、およびその防衛的な機能を説明し、さらに髪の毛や動物の毛・尾などの体毛全般の配置が、自然の合理的・補償的配分に基づいていることを論じる。
- §2.15.1-2.15.2
眉とまつ毛の保護機能と発生のメカニズム
眉とまつ毛がそれぞれ流下する液体や飛来物から目を保護する役割を説明し、それらが骨の接合部や細脈の末端から必然的に生じる身体的メカニズムを述べている。
- §2.16.1-2.16.6
象の鼻の特異な構造と手や呼吸器としての機能
他の四肢胎生動物と比した象の鼻(長鼻)の特異な構造と、水中での呼吸および前足の代替としての二重の機能を解説し、鳥類や他の卵生動物における鼻の退化傾向についても触れる。
- §2.16.7-2.16.12
鳥の嘴と非呼吸動物の嗅覚および唇と言語の機能
鳥類の嘴が骨質で狭い理由、および呼吸をしない動物の嗅覚器官のあり方について説明し、続いて有血動物における唇の構造と、特に人間の唇と言葉(発話)の関連性、および触覚の鋭敏さと肉の柔らかさの相関を論じる。
- §2.17.1-2.17.7
舌の構造と味覚および言語機能の動物間の差異
人間の舌が感覚と言語(発音)の両方に適した「自由で柔らかく広い」特徴を持つことを論じ、他の四肢動物、鳥類、爬虫類、および魚類における舌の形態と機能(味覚、発音、生存条件)の多様性を対比している。
- §2.17.8-2.17.12
魚類や無脊椎動物における舌と味覚器官の形態
ワニや魚類における舌の不全や未分化な特徴について、骨格構造や生活様式からその原因を究明する。続いて、甲殻類や昆虫類などの多様な無脊椎動物が持つ、内包された味覚器官や外側に伸びる多機能な刺針・吻の性質について述べる。
- §3.1.1-3.1.6
歯の多様な機能と防衛器官の雌雄差
動物における歯の用途(食物加工、攻撃、防御)と人間の歯の特徴(発声機能との連動)を解説し、防衛・戦闘用の器官(牙、角、蹴爪など)が雌雄において異なる発達を見せる一般的自然法則を提示する。
- §3.1.7-3.1.13
魚類の鋸歯と生活様式に適応した口の形態
本チャンクでは、魚類の鋸歯の目的と、口の大きさや形状(特に鳥類の嘴や人間の顔など)がそれぞれの動物の生活様式、呼吸、発声、防衛手段にどのように適応しているかが論じられている。
- §3.2.1-3.2.6
動物の角の有無と足の構造や防衛手段との相関
角の有無や形状が生じる原因について、偶蹄・単蹄・多指などの足の構造や、他の防衛手段の有無(迅速さ、巨大さ、排泄の活用など)との相関から生物学的に考察し、さらに一部の動物が独角となる理由を説明する。
- §3.2.7-3.2.12
角が頭部に配置される目的論的理由と構造
アリストテレスは、角が頭部に生じることの合理性をモモスの批判への反論を通じて示し、その実用的な構造や、自然が必然的な物質をいかに目的論的に利用しているかを解説する。
- §3.3.1-3.3.6
咽頭と食道の機能および気管飲水説の論駁
アリストテレスは、首を持つ動物における咽頭(呼吸器系の一部)と食道の目的と性質を解説し、咽頭が呼吸と声のためであり、食道が食物の胃への移送のためであることを説明する。さらに、動物が気管を通して飲料を摂取するという一部の説を、解剖学的観察と生理学的現象を根拠に徹底的に反駁する。
- §3.3.7-3.3.11
喉頭蓋の有無と気管および食道の位置関係
喉頭蓋の有無が動物の皮膚や肉の性質によって決まる理由と、心臓の位置から生じる気管と食道の先後の必然的な配置、および「上・前・右」が「下・後・左」よりも優越するという自然の一般的原理を説明している。
- §3.4.1-3.4.6
内臓の特質と血管の始原としての心臓の構造
頸部や食道の記述に続き内臓の考察を開始し、それが有血動物特有であることを示す。また血管の単一の始原としての心臓の、中央を占める位置やその緻密で空洞な構造、および温熱機能における重要性を論じる。
- §3.4.7-3.4.13
発生と感覚の始原としての心臓とその構造的特異性
本チャンクでは、発生過程や感覚・運動の始原としての心臓の優位性、肝臓が始原になり得ない理由を論じる。また、心臓の位置、魚類における心臓の向き、心臓が繊維を多く持つ理由、特定の大型動物の心臓に骨が存在する例外について説明する。
- §3.4.14-3.4.22
心臓の空洞の数と気質への影響および抗病性
動物の体格に応じた心臓の空洞(房室)の数と性質の違い、および心臓の硬さや大きさが動物の気質(胆勇)に与える影響について述べ、さらに心臓が生命の始原として病気に侵されない堅牢さを持つことを解剖学的観察から証明する。
- §3.5.1-3.5.6
血管の二系統と全身への分布の比喩
心臓に関する議論を終え、血管(大血管と大動脈)の性質、それらが1つの始原から2つの系統として全身に伸びる理由を、感覚魂の統一性と生命維持(栄養分配)システムから論じる。また、血管の分布構造を、庭園の灌漑システムや建物の基礎構築の比喩を用いて説明する。
- §3.5.7-3.5.13
細血管から肉への変化と血管の交差による結合
極度に痩せた動物や枯れた葉の観察から、細血管が肉へと変化する生理的プロセスを論じ、発汗や出血のメカニズム、さらに大血管と大動脈の交差による身体の結合関係を説明し、心臓と血管の議論を締めくくる。
- §3.6.1-3.6.7
肺の冷却機能と動物種による構造の違い
肺の存在意義が呼吸による冷却にあること、およびその構造や性質が動物の分類(胎生か卵生か)によっていかに異なるかを説明し、肺が心臓の鼓動のために存在するという異説を反駁する。
- §3.7.1-3.7.6
内臓の二重性と肝臓と脾臓の役割
内臓が本来二重(一対)の本性を持つものであることを、身体の左右対称性が単一の支配的原理へと収束することから説明し、一見単一に見える肝臓と脾臓の対補完的関係や、血管を固定するという横隔膜下の内臓に共通の機械的機能を論じる。
- §3.7.7-3.7.13
肝臓と脾臓と腎臓の機能と必要性
アリストテレスは、肝臓、脾臓、腎臓のそれぞれの生理学的機能と必要性を論じ、脾臓が不要な水分を消化する役割を持つこと、腎臓が膀胱の機能を助けること、そして器官の順序を一部前後して膀胱について次に論じることを告げる。
- §3.8.1-3.8.2
膀胱の有無と肺の性質による違い
膀胱の有無について論じ、血液に富む肺を持つ動物がそれを有し、持たない動物は有さないことを説明する。ただし、カメ類は肺の性質や甲羅の密閉性のために例外的に膀胱を持つと指摘する。
- §3.9.1-3.9.6
腎臓の有無と構造および配置の理由
鳥類や爬行類(カメ類を除く)には腎臓がないことを示し、カメの一種(ヌマカメ)がこれらを持たない理由を説明した上で、血液に富む肺を持つ他のすべての動物に腎臓が存在する理由、その構造、血管との接続関係、および右の腎臓が左よりも高い位置にある理由について論じている。
- §3.9.7-3.9.13
腎臓の脂肪蓄積の理由と羊の過脂肪による死
右の腎臓が左よりも高い位置にあることで、すべての動物で肝臓が右の腎臓に接していること、腎臓が最も多くの脂肪を蓄える理由、そして羊において腎臓の過度な脂肪蓄積が壊死を引き起こして死に至る原因について説明している。
- §3.10.1-3.10.10
横隔膜の機能と感覚への影響および笑いの原因
横隔膜(プレネス)の構造と機能、および感覚・思考への影響について説明する。また、横隔膜への打撃による「笑い」の現象と、切り落とされた頭部が発声するという俗説への反論(カリアでの裁判の例など)を挙げる。
- §3.11.1-3.11.2
内臓の必然的生成と保護膜の性質
内臓の形成における物質的必然性と、内臓を覆う保護膜の構造的かつ物理的な性質について論じ、特に心臓と脳の周囲の膜の頑丈さを強調する。
- §3.12.1-3.12.4
動物の種類による肝臓と脾臓の形態の差異
アリストテレスは、動物の種類による内臓の多様性について論じ、特に有血動物における肝臓の色と形状(胎生動物、鳥類、魚類、卵生四足動物の違い)、および脾臓の形状が蹄や指の形態(有角獣、多指獣、単蹄獣)に対応して変化することを説明している。
- §3.14.1-3.14.7
胃の機能と反芻動物における複数の胃
横隔膜の下に位置する胃の構造と機能を論じ、特に両顎に歯を持たない動物(ラクダやその他の反芻動物)が、食物の性質と歯の欠乏に対応して、なぜ複数の胃を持つ必要があるのかをその名称とともに説明する。
- §3.14.8-3.14.14
鳥類と魚類における胃とそのうなどの消化器官
鳥類や魚類、そして両顎に歯を持つ動物における食物摂取・消化器官(そのう、幽門垂、胃の構造など)の多様な差異とその構造的原因について論じている。
- §3.14.15-3.14.21
動物による腸の構造的多様性と消化排泄の役割
腸の構造の多様性と、消化・排泄を制御するための進化上の役割(結腸、盲腸、直腸、空腸の存在)について説明し、動物の性質や性別による差異についても言及している。
- §3.15.1-3.15.3
動物におけるレンネットの有無と葉胃での生成
複胃動物および単胃動物における野兎のレンネット(凝乳酵素)の有無と、その存在部位(葉胃)について説明し、乳の濃度や摂取する草の性質が凝固に与える影響について述べる。
- §4.1.1-4.1.6
卵生動物と魚類の内臓および有血動物の共通器官
卵生の四肢動物、蛇、魚類の内臓の類似性と相違点(肺や膀胱の有無など)を論じ、蛇の細長い体型がその内臓の形状に与える影響について説明する。また、すべての有血動物が共通して持つ内臓器官を列挙する。
- §4.2.1-4.2.13
胆汁の分布と排泄物としての性質
多くの有血動物にみられる胆汁について、その位置の多様性や有無の個体差・種差を説明し、胆汁が目的を持って存在するのではなく、不純な血液から生じる排泄物(老廃物)にすぎないことを論じている。
- §4.3.1-4.3.5
大網と腸間膜の性質と消化における役割
胆汁についての議論を終え、大網と腸間膜の性質と生成について説明する。大網は胃や腸を覆い、脂肪を含んだ膜であり、食物の消化を助ける役割を持つことが論じられる。
- §4.4.1-4.4.5
腸間膜の構造と栄養吸収における根としての機能
腸間膜の構造と、消化管から血管へ栄養を送るための「根」としての役割について説明し、有血動物の各種内臓器官に関する議論を完了する。発生に関わる生殖器官の議論については、今後の発生の考察へ委ねる。
- §4.5.1-4.5.7
無血動物の内臓と感覚器官および消化器官の構造
無血動物(軟体動物、軟甲動物、殻皮動物、昆虫)の内臓や感覚器官、消化器官の構造上の特徴について、有血動物や鳥類との比較を交えて説明する。
- §4.5.8-4.5.14
軟体動物の墨袋と無血動物の消化器官
軟体動物の墨袋の機能や位置、および膀胱の代替としての性質について論じ、さらに軟甲動物や殻皮(極皮)動物の消化器官や歯の構造、その系統的な分類を説明している。
- §4.5.15-4.5.23
殻皮動物の防護器官とウニの内部解剖構造
螺旋形の極皮動物(巻貝)の防御蓋、各種極皮動物の生存戦略、およびウニの内部構造(五つの歯や分割された消化管、「卵」と呼ばれる生殖巣の性質)について論じている。
- §4.5.24-4.5.29
ウニの卵の性質と器官が五つである理由
ウニの卵の形成や大きさと温度の関係、および球状の身体構造から卵、胃、歯の数が5という奇数にならざるを得ない幾何学的・機能的理由を説明している。
- §4.5.30-4.5.37
植物と動物の中間生物の特徴と無血動物の感覚器官
ウニの活動性と温かさの関係を論じ、植物と動物の境界に位置する海綿、ホヤ、ナマコ、イソギンチャク、ヒトデなどの多様な無脊椎動物の生態的・解剖学的特徴、および無血動物に共通する感覚の主導的器官について説明する。
- §4.5.38-4.5.46
無血動物の主導的器官と昆虫類の消化器官
無血動物の生命と感覚の主導的器官の位置、および昆虫類(特にセミ)の消化器官の特異な本性と摂食習慣について論じた後、体外の器官の議論への移行を予告する。
- §4.6.1-4.6.7
昆虫類の脚と翅の形態および体節と針の構造
昆虫類が多脚である理由、翅を持つもの(四翅、二翅、鞘を持つものなど)の分類、身体の節の役割と植物との類似性、身を守るための針の配置について説明する。
- §4.6.8-4.6.13
昆虫における針と歯の配置および脚の運動機能
昆虫の針や歯の位置と機能の違い、およびそれらが飛行や防御、移動(歩行・跳躍)に適応した脚の構造とどのように関連しているかを説明する。
- §4.7.1-4.7.4
殻皮類の構造の単純さと運動性および殻の分類
殻皮類の体の構造が単純である理由(固着性)と、それらの分類(単殻、双殻、螺旋状)、および植物と同様に下向きの頭部を持つ特徴を解説する。
- §4.8.1-4.8.9
軟甲類の四主類の運動器官とハサミおよび雌雄差
軟甲類(イセエビ類、ロブスター類、エビ類、カニ類)の身体的特徴、歩行や遊泳のための器官構造、ハサミの左右の対称性、雌雄の差異、および卵の保護機能について説明する。
- §4.9.1-4.9.6
軟体類の外側器官の構造と足の配置
軟体類(頭足類)の外側器官(足や胴部)の構造を解説し、消化管が直線的な配置から折り曲げられた幾何学的モデルを用いて、軟体類と殻皮類の構造を比較分析する。また、イカ類とタコ類の足の大きさの配置の違いをその運動の特性から説明する。
- §4.9.7-4.9.12
軟体類の足と触腕および吸盤と鰭の形態
アリストテレスは、軟体動物(タコやイカなど)の体の比率や足の役割の相違、触腕や吸盤の構造、一列または二列の吸盤の存在理由、および鰭の形態と機能について論じ、無脊椎動物の総括を行っている。
- §4.10#1
人間の直立姿勢と胎生四足動物の前肢の構造
アリストテレスは有血・胎生動物の頭部、頸、胸部、前肢の構造を検討し、直立して知性を働かせる人間と、体重により前肢が足となり小人症的体躯を持つ四足動物との形態と発育の差異を論じる。
- §4.10#2
動物の知性と体型および道具としての人間と手
アリストテレスは小人症的体型の度合いと動物の知性の相関、および熱量の減少による多足類・無足類・植物への連続的退化を論じる。続けて人間が手を持つのは最も知恵があるからであるとしてア那クサゴラスの説を批判し、手が万能の道具として機能することを論証する。
- §4.10#3
人間の指の構造と前肢および乳房の動物間比較
アリストテレスは親指や中指をはじめとする人間の指と爪の合目的的な構造を論じ、続いて前肢・腕の屈曲方向や胸の広狭、乳房の位置と数の動物種間における差異とその原因を説明する。
- §4.10#4
動物の乳房の数と位置および腹部と生殖器官の構造
動物の種類(単産・多産、多指・有角等)に応じた乳房の数と配置(脇下、腹部、大腿部)の理由を論じ、続いて腹部の柔軟性と、尿・精液および月経血の排出を兼ねる排泄・生殖器官の配置について説明する。
- §4.10.32-4.10.39
人間の直立姿勢に伴う下半身の特徴とサルの形態
人間の身体的特徴、特に発達した臀部や肉厚な脚が、直立歩行という固有の本性に起因することを示し、尾を欠く理由や、サルの形態が持つ両義性について論じる。
- §4.10.40-4.10.46
動物の尾と四肢動物および人間の足の構造
アリストテレスは動物の尾の多様な用途と、四肢動物の足(単蹄、双蹄、多指)における距骨の有無やその理由を説明し、さらに人間の足の特徴(大きさ、直立の利点、短い指と爪の役割)について論じる。
- §4.11.1-4.11.7
有血卵生動物の外部器官と頭部および感覚器官の構造
爬虫類や蛇など、有血で卵生の動物の外部形態と器官(舌、歯、感覚器官、皮膚、まぶたなど)について、鳥類や他の有血動物との類似・差異とその原因を論じている。
- §4.11.8-4.11.13
卵生四肢動物の目と顎の運動構造およびワニの上顎
卵生四肢動物の目と顎の運動構造について説明し、特にワニや蟹が上顎やハサミの上部を動かす機能的な原因を論じる。
- §4.11#1
蛇の頭部回転とカメレオンの特徴および鳥類の器官差
蛇の首の類似器官と頭部回転の解剖学的・目的論的原因、乳房の欠如と卵生動物の栄養、カメレオンの血液量と恐怖による変化について論じ、無足・四足有血動物の外的器官を総括した上で、鳥類相互の器官の差異(大小・程度)について論じ始める。
- §4.12#1
鳥類の外部器官の形態と二足歩行の構造
アリストテレスは鳥類に特有の外部器官として羽毛、嘴、首、脚、翼を取り上げ、食性や生活様式に応じた形態の適応と、二足歩行である必然性を論じる。
- §4.12#2
鳥類の二足性と胸腹部および器官の配分原理
鳥類が二足である必然性と胸・腹部および臍の構造を述べ、次いで飛翔型と重歩行型の鳥における翼、蹴爪、鉤爪、水かきなどの器官の相反的発達と自然による残余物の配分原理を論じる。
- §4.12#3
鳥類の脚と足の形態および骨盤による姿勢の維持
鳥類の足や脚の形態(水かき足、長脚、指の数と配置)が生活様式と目的因に応じてどのように形成されているかを論じ、骨盤が長く二足歩行の安定を保つ構造になっている理由を説明する。
- §4.13.1#1
魚類の尾部と鰭の形態および遊泳のための構造
アリストテレスは魚類の身体的特徴を論じ、扁平な魚やアンコウの尾部、さらに肢(鰭と足)が彼らの本質である「泳ぐこと」に最適化されている理由を説明し、鰭の数や配置の法則性を解き明かす。
- §4.13.1#2
扁平な魚類の鰭と鰓および口と皮膚の多様性
エイやシビレエイなどの扁平な魚における鰭の特殊な配置と機能を説明し、魚類特有の呼吸器官である鰓の構造や数、そして口や皮膚の多様性についてその生理的目的を交えて論じる。
- §4.13.1#3
鯨類と中間的動物の形態と部分論の結び
魚類、鯨類、アザラシやコウモリ、ダチョウなどの境界的な動物の身体的特徴と、それらが陸生・水生あるいは飛行・陸生の性質を併せ持つ原因について論じ、最後に『動物部分論』の諸部分に関する記述を終え、生殖の議論へと移行することを示す。
