アリストテレス · Aristotle
命題論
On Interpretation
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底本
Aristotle. Aristotelis Opera, Volume 1. Bekker, Immanuel, editor (Academia Regia Borussica). Berlin: Reimer, 1831. Transcribed by Humanitext from the page images.
原文データ出典
Humanitext Project · CC BY 4.0
Humanitext Project が底本の頁画像から翻刻し、継続的に校正・更新しています。
翻訳と校閲
翻訳:Gemini 3.5 Flash(2026-05-22 公開)
AI校閲 2026-09-22:検出 Gemini 3.8 Flash/判定 Gemini 3.8 Flash・GPT-6 Astra — 日本語訳 2 件・原文 2 件を修正
反映した修正(日本語訳と原文):AI校閲 4 件・表記の統一 2 件
最終更新:2026-10-09・変更履歴の一覧
要旨
本作は、言葉の意味、命題の構造、およびその真偽や対立関係を体系的に論じた、論理学・言語哲学の基礎的著作です。アリストテレスはまず、名詞や動詞が約束事として結合することで初めて真偽を伴う「宣明文」が成立することを示し、肯定と否定、矛盾と反対の基本概念を定義します。続いて、未来の個別的な出来事にこの原則を適用すると決定論に陥るという難問を提起し、事物には両面的な可能性があるとしてこれを回避します。さらに、複数名辞の結合条件や、「可能」「必然」といった様相命題の複雑な対立・随伴関係を緻密に分析していきます。最後には、思惟における信念の対立の分析を通じて、ある命題に真に反対するのは反対の肯定命題ではなく、否定(矛盾命題)であることを論証し、論理的対立の本質を解き明かします。
目次
13 チャンク
引用方式:chapter
- §1-3
名詞と動詞の定義と真偽の成立
アリストテレスは名詞と動詞を、真偽判定を伴わない規約による記号として定義し、それらの結合から真偽が生じることを示す。さらに、名詞と動詞の定義から外れる非限定形式や格変化の概念を区別して論じる。
- §4-6
文の定義と宣明文および肯定と否定の矛盾
文の定義(部分が切り離されても意味を持つ声)が示され、真偽を持つ宣明文(肯定と否定)とそうでない文(願いなど)が区別される。さらに、単純な肯定と否定の対立としての「矛盾」が定義される。
- §7-8
普遍と個別における肯定と否定の対立関係
普遍的名辞と個別的名辞について、それぞれが普遍的あるいは個別的に宣明される場合の肯定・否定の対立関係(矛盾と反対)を分類し、多義的な語を含む宣明における対立の性質を論じる。
- §9#1
未来の個別事象の真偽と決定論の難点
過去および現在については矛盾する言言の一方が真で他方が偽となるが、未来の個別的な事象についてこの原則を無制限に適用すると、すべてが必然となり偶然や選択の余地が失われるという決定論の困難を示す。
- §9#2
熟慮の無意味化の否定と未来の可能性
アリストテレスは未来の個別事件がすべて必然的であると仮定した場合の不条理(人間の熟慮の無意味化)を指摘し、事物の持つ「両面的な可能性(能力)」に基づき、未来の矛盾対立においては特定の一方が今すでに決定的に真または偽であるわけではないと論じる。
- §10#1
係辞と不定名辞を含む命題の四項の対立構造
アリストテレスは、肯定文と否定文の構成要素(名詞、動詞、および「無限名詞」などの変種)を整理し、コピュラ(「ある」)が第三の要素として付加されることで生じる対立の四つのパターンと、普遍的な量化記号「すべての」が果たす論理的役割について分析している。
- §10#2
対立命題の真偽関係と語順転置の影響
普遍命題における反対関係と矛盾関係の真偽の相違、および個別者と普遍者における否定回答の論理的帰結の違いを論じる。また、不定名詞の対立の性質や、名詞と述語の語順転置が命題の意味に影響しないことを示す。
- §11
複合述語の結合条件と単一命題の成立基準
本章では、複数の述語や主語が結合して一つの命題となるための条件について、名詞や定義が「それ自体として」述語づけられている場合と「付帯的に」述語づけられている場合を区別し、単純な結合が不当な無限後退や矛盾を招く不都合を指摘した上で、妥当な結合(述語の重ね合わせ)と端的な主張が成立する基準を論じている。
- §12
様相命題における肯定と否定の対立関係
本章では、可能、許容、不可能、必然といった様相概念における肯定と否定の対立関係がどのように構成されるかを論じる。通常命題と様相命題の構造的差異を明らかにし、「である」「でない」を主語のように扱い様相表現を述語の追加要素(添加辞)とみなすことで正しい矛盾対立が定まることを示す。
- §13#1
様相命題の相互随伴関係と必然性の配置
様相命題(可能、許容、不可能、必然)の相互の随伴関係を定義し、必然の否定の配置が他の様相と異なり逆転することを示して、矛盾のない正しい関係図を導き出す。
- §13#2
必然性と可能性の随伴関係および現実態の優位
必然的なことと可能であることの随伴関係を巡る難問から、可能には現実態としての可能と可能態(能力)としての可能の二通りがあることを示し、前者のみが必然に随伴すること、そして現実態が可能態に先立つことを論じる。
- §14#1
信念と命題における反対関係の検討
命題における「反対」の関係が肯定対否定かそれとも肯定対肯定かを定義するため、思惟における「思い(信念)」の反対関係を検討する。それ自体の属性と付帯的属性の区別から、ある対象の否定の信念(「善くない」)のほうが、反対の肯定の信念(「悪い」)よりも本質的な誤りであり、より「反対」であると論じる。
- §14#2
矛盾対立の否定こそが真なる思いの反対である論証
アリストテレスは、真なる思いに対する反対の思いは、反対の性質を判定する思い(「悪である」)ではなく、矛盾を判定する思い(「善ではない」という否定)であることを論証し、この関係を普遍的命題の肯定・否定の反対関係にも適用する。
