底本
Platonis Opera, Tomus V: Tetralogia VIII. Burnet, John, editor. Oxford: Clarendon Press, 1914.
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA (Perseus の利用条件による)
元ファイル: urn:cts:greekLit:tlg0059.tlg034.perseus-grc2
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要旨
本作は、新しく建設される植民都市の理想的な国制と法律を設計することを主題とする対話篇です。クレータ島を舞台に、アテナイの客人、クレタ人のクレイニアス、スパルタ人のメギロスの三人の老人が、歩きながら議論を交わします。議論は、法律の神的な起源や、徳の全体を育むための教育・祝祭のあり方の探求から始まります。さらに、歴史的な国家の盛衰を分析した上で、具体的な都市の地理的条件、公正な土地の分配、結婚や家族、そして市民の心身を鍛える体育や文芸の教育に関する詳細な法制度が構築されていきます。後半では、故意や過失の殺人などの刑法や、神々の存在と宇宙の理知的な秩序を証明する敬神の法が論じられます。最終的に、法の永続性を保証し、徳の統一性を理解する指導者たちの「夜間会議」の設置を合意して対話は締めくくられます。
目次
186 チャンク
引用方式:book.section
- §1.624-1.625
法律の神的起源と戦争のためのクレータの制度
アテナイの客人、クレイニアス、メギロスの三人が、クレータとスパルタの法律の神的な起源について語り合い、クノーソスからゼウスの洞窟への道中で国制について議論することに合意する。続いてクレイニアスが、クレータの険しい地形的特徴から、共同食事や体育、軽装武器の所持といった諸制度がすべて戦争に備えるために制定されたものであると説明し始める。
- §1.626-1.627
普遍的な戦争状態と自己克服の勝利
クレイニアスが、万人の万人に対する絶え間ない不宣の戦争状態こそが自然であり、法律もそれを第一に考慮すべきであると主張する。これに対してアテナイ人は、その戦争の概念を個人や家庭、そして都市の内部にまで適用し、自己克服や正義の統治こそが最善の勝利であるとする議論へと導き、兄弟間の裁判の例えを提示する。
- §1.628-1.629
平和を目指す立法と二種類の戦争
アテナイ人は、最も優れた立法者は戦争ではなく国内の平和と和解(内乱の克服)を目指して法律を制定すると主張し、スパルタの詩人ティルタイオスの詩を引用しながら、戦争の二つの種類(内乱と対外戦争)について対話者たちと議論を深める。
- §1.630-1.631
徳の全体と神的・人間的な善の秩序
アテネの客人はテオグニスの詩を引用して、内乱という最も困難な戦争において信頼に値する者こそが徳の全体を備えた最も優れた人物であり、勇気は徳の第四位にすぎないと主張する。さらに、優れた立法者は徳の一部(勇気)ではなく全体を見据えて法を制定すべきであり、それは人間的な善(健康、美、強さ、富)に優先する神的な善(知恵、節制、正義、勇気)の秩序に従うものであると解説する。
- §1.632
立法の対象領域と勇気の徳の検討の開始
アテネ人が、法が規制すべき人々の感情や交際、財産、葬儀などの諸領域を提示し、すべての法が徳の全体に奉仕するように構成されるべきだと論じる。そして、クレーテーとスパルタの法を具体的に検討するため、まず勇気の徳から順に議論を進めることを提案する。
- §1.633-1.634
快楽に対する勇気と法律の検討に関する対話
アテネ人は勇気の定義を「苦痛」だけでなく「快楽」に抵抗する能力にまで広げ、スパルタとクレタの法律における快楽への対処法を問うが、二人は明確な例を挙げられない。アテネ人は、二人の国の法律制度が若者による法批判を禁じていることを指摘しつつ、老人同士での自由な議論を促す。
- §1.635-1.636
快楽と苦痛の統御と同性愛の弊害
アテネ人は高齢の二人きりの対話において法を批判する許可を確認し、快楽に対する訓練の欠如がもたらす害悪を指摘する。さらに、体育場などの習慣が自然に反した同性愛を誘発する負の側面を論じ、快楽と苦痛という二つの自然の泉の適切な管理を説く。
- §1.637-1.638
飲酒の禁止と習慣の正当な検討方法
メギロスはスパルタにおける快楽や飲酒の全面禁止の妥当性を主張し、アテネ人はそれに対して女性の放縦さを指摘しつつ、戦闘の勝敗は制度の優劣を証明する確実な基準にはならないと論じる。アテネ人は、飲酒などの特定の習慣を安易に称賛・非難するのではなく、それが行われる状況や条件を考慮した正しい方法で検討すべきだと主張する。
- §1.639-1.640
指導者の必要性と酒宴の適切な統率
アテネ人は適切な管理者や指導者の不在が活動の評価を誤らせることを山羊の管理や軍隊、船の例を挙げて説き、飲酒の集い(酒宴)においても清醒で賢明な指導者が不可欠であることを議論する。
- §1.641-1.642
教育としての飲酒と対話者たちのアテネとの縁
アテネ人は正しい飲酒の習慣が優れた人間を育てる教育の一環になると説き、メギロスとクレイニアスもアテネとの個人的・歴史的なつながりを語りつつ、彼の議論を促す。
- §1.643-1.644
教育の定義と神々のからくり人形の比喩
アテネ人は、将来目指す専門分野に応じた遊びによる早期訓練の重要性を説き、国家における徳と正義に基づく市民形成のみを真の「教育」と定義する。その上で、人間の心にある快楽、苦痛、予期、理性的計算の葛藤を、神々のからくり人形の糸に操られる姿に例え始める。
- §1.645-1.646
法律の金色の導きと飲酒が魂に及ぼす影響
アテネ人は、理性的計算(法律)の金色の導きに常に従うべきだというからくり人形の比喩を発展させ、飲酒の習慣が魂に自制を失わせ、子供の状態へと回帰させる変化を議論の遡上に載せる。
- §1.647-1.648
二つの恐れと徳のための恐れの訓練
アテネ人は、恥(慎み)とその他の恐れの二種類の恐れを区別し、徳(特に勇気と節制)の習得における「恐れの訓練」の重要性を論じる。さらに、もし「恐れを引き起こす薬」があるならば、市民の訓練に極めて有用であろうと指摘する。
- §1.649-1.650
魂を試す手段としてのワインの効用
アテネ人は、空想上の「恐れの薬」の代わりとして、現実の「ワイン」が人間に大胆さと恐れなさを引き起こす薬として機能することを示す。そして、ワインの酔いを用いた試験は、市民の魂の性質や状態(怒りや愛欲など)を安全かつ安価にテストして教育するための極めて優れた手段であり、政治技術に不可欠なものであると議論する。
- §2.652-2.653
教育の定義と神々による祝祭の恵み
アテネ人とクレイニアスは、正しく行われるワインの集いがもたらす教育的効用について議論を開始し、その前提として、快楽と苦痛を理性(ロゴス)に調和させることとしての「正しい教育」を定義する。さらに、人生の中で緩みがちなこの調和を矯正するために、神々が人間を憐れんでミューズ、アポロン、ディオニュソスを伴う祝祭という休息の手段を与えてくれたことが語られる。
- §2.654-2.655
合唱の修得と善美なものを喜ぶ教育
アテネ人とクレイニアスは、教育を合唱(歌と踊り)の修得として定義し、それが身体的な表現技術だけでなく、美徳を喜ぶ正しい精神(快楽と苦痛の調和)に裏打ちされて初めて真の教育となることを議論する。
- §2.656-2.657
悪しき歌舞の害毒とエジプトの芸術規制
アテネ人は、本性的な嗜好と習慣的な道徳評価が乖離している心理的矛盾を指摘し、邪悪な歌舞を享受することが人間の倫理的同化と堕落を招く危険性を警告する。さらに、正しい音楽と舞踊の形式を永久に固定化して革新を禁止したエジプトの立法制度を称賛し、快楽の追求のみに基づいた新しい音楽の導入が既存の秩序を破滅させる力を持つことを論じる。
- §2.658-2.659
競技会の判定基準と音楽審査員の役割
アテネ人は、快楽のみを基準とする架空の総合競技会を仮定し、判定者の年齢や教養によって好まれるジャンル(手品、喜劇、悲劇、叙事詩朗誦)が異なることを指摘した上で、音楽の真の審査員には大衆に流されない徳と勇気、そして教育者としての姿勢が必要であり、教育の本質とは法と長老が認める正しい理へと子供の魂を歌(呪文)を通じて同調させることであると論じる。
- §2.660
詩人に対する立法者の規制と徳の模倣
アテネ人は、立法者が詩人に対して優れた人々を模倣した正しい作品を制作させるべきだと論じ、クレイニアスとの対話を通じて、クレタやスパルタで実践されている道徳的な教育と音楽の役割について合意する。
- §2.661-2.662
正義と真の善および正しく生きる者の幸福
アテネ人は、正義が伴わない限り健康や富などの世俗的な「善」はむしろ悪人にとって害悪であり、最も正しい生き方こそが最も幸福で愉快な生き方であると主張し、クレイニアスと議論を交わします。
- §2.663
正義と快楽の一致と立法者による有益な虚偽
アテネ人は、正義と快楽を一致させることが、人々へ正義の生を選択させる上で不可欠であると説く。また、たとえそれが事実でなくとも、立法者は若者の善導のためにそのような有益な「嘘」を用いるべきであると提案する。
- §2.664
教育における統一された教えと三つの合唱団
アテネ人が、若者の教育のために国家が同一の教えを共有することの重要性を説き、その教育を担うための年齢別の3つの合唱団(児童、30歳以下、60歳以下)の役割を提示する。
- §2.665-2.666
老人たちの合唱団と飲酒に関する法規制
アテネ人は、リズム、ハルモニア、コレイア(合唱舞踊)の定義を確認し、ディオニュソスに捧げられる第三の「老人たちの合唱団」の必要性と、それを可能にするための飲酒の法規制について論じる。
- §2.667
教育と評価の基準としての快楽と正しさ
アテネ人は、若者を個別の教育ではなく群れのように育てるスパルタやクレタのやり方を批判し、事物の価値を測る基準である喜び(快楽)、正しさ、有益さについて論じる。模倣技術の正しさは快楽ではなく対象との均等さによって判断されるべきであり、快楽だけで判断されるのは「遊び」としての無害な快楽のみであると結論づける。
- §2.668
模倣芸術の評価基準と対象の本質の認識
アテネ人は、あらゆる模倣や音楽、そして造形芸術は、快楽ではなくその正しさ(真実との一致)によって判断されるべきであると論じる。そのためには、模倣されている対象の本質を正しく知ることが不可欠であることを対話者と確認する。
- §2.669-2.670
芸術批評の三条件と年長合唱隊員の音楽教育
アテネ人は、優れた芸術批評家が持つべき3つの条件(対象が何であるか、どれほど正しいか、どれほど良くできているかを知ること)を提示し、特に影響力の大きい音楽の正しさを見極めるためには、リズムやハーモニーに関する深い教育が必要であること、そして50歳の合唱隊員はそのレベルに達していなければならないことを論じる。
- §2.671-2.672
魂を教育する薬としての飲酒と酒宴の規制
アテネ人は、若者を教育する合唱隊の年長者には芸術の三つの要素すべての知識が必要であることを述べ、正しい酒宴の法の下での飲酒は魂を教育し「神聖な恐れ(慎み)」を植え付けるための有益な薬であることを説明します。
- §2.673-2.674
体育の定義とカルタゴ風の厳格な飲酒制限
アテネ人は身体の運動の徳である「体育」の定義を示し、議論を体育へと進める。さらに、国家における飲酒(ワイン)の制限について論じ、軍隊、奴隷、公職者、生殖時などの飲酒を禁止する厳格なカルタゴの法律を模範として提示し、飲酒論の結論とする。
- §3.676-3.677
大洪水による文明の壊滅と国制の起源
国制の起源を探るために、アテネ人は途方もない時間の中で国家が興亡を繰り返してきた歴史を指摘し、大洪水によって文明が一度滅亡した後の状況を考察し始める。
- §3.678-3.679
大洪水直後の人類の素朴な生活と徳性
アテネ人は大洪水直後の人類の未開かつ平和な生活状態を叙述し、金属器の喪失によって戦争や内紛が生じなかったこと、極端な貧困も富もない当時の人々が素朴な道徳心を持っていたことを指摘する。
- §3.680-3.681
家長支配から共同の法律の制定への発展
アテネ人たちは、大破滅の後の人類がどのように最初の社会制度(家長支配)を形成し、それがホメロスの描くキュクロプスの世界と一致することを語る。さらに、氏族が集まり、独自の慣習を調整して共同の法律を作り、貴族政などの高度な国制へと移行していく立法の起源を説明する。
- §3.682-3.683
イリオスの建設とドリス人の移動による国制
ホメロスの詩句を借りて、大洪水後に平野に築かれた第三の都市イリオスの興亡と、その後のトロイア戦争の余波、およびドリス人の大移動による第四の国制の始まりが語られる。
- §3.684
ドリス三都市の相互盟約と立法条件の優位
アテナイ人は、ドリス人の三つの都市における王と民衆の誓約、および一都市の不服従に対して他の二都市が制裁を加える相互援助同盟を振り返る。さらに、土地再分配や債務帳消しの紛争がなかったドリス人が立法において大きな優位性を備えていたにもかかわらず、なぜその国制が失敗したのかという問いを提示する。
- §3.685-3.686
ドリス同盟崩壊の謎と強大な力への過信
アテナイの客人とメギロスは、初期ドリス連合の優れた国制や軍勢、およびアッシリア帝国への対抗という歴史的背景を検討し、それがなぜ急速に崩壊してしまったのかという謎に迫る。さらに、人は強大な力を持つものを見たとき、その活用の困難さを忘れて空想に耽りがちであるという人間の心理を反省する。
- §3.687
思慮に従う祈りと国家における知性の重要性
アテネからの旅人は、すべてのことが思い通りになるのを願う人間の欲求を批判的に分析し、真に祈り求めるべきは、意志が思慮(知恵)に従うことであると主張する。メグロスもこれに同意し、個人も国家も知性を備えることを第一に願うべきであると認める。
- §3.688-3.689
最大の無知の定義と統治者における調和の必要性
アテナイ人は、かつての支配者たちの失敗の根本原因は軍事技術の不足ではなく、人間の事柄における最大の無知であったと指摘する。さらに「最大の無知」とは、魂における快楽や苦痛が理性的な判断に従わず反抗する状態(不協和)であるとし、こうした調和を欠いた者には国家の支配権を委ねてはならないと論じる。
- §3.690-3.691
支配の七つの資格と過剰な権力の危険
アテナイの客人は、国家や家庭における支配と被支配の七つの権利(資格)を提示し、それらの相互対立から生じる内紛の危険性を説くとともに、節度を欠いた過剰な権力が魂を滅ぼす最大の原因であることを指摘する。
- §3.692
スパルタの王権制限と同盟諸国の自滅
アテナイの客人は、スパルタが神仏の配慮や賢者の介入によって、王制の二重化、長老会、監督官制度を導入し、権力を適度に制限・混合したことで滅亡を免れた歴史を説明し、同盟関係にあったアルゴスとメッセネが自滅してペルシア侵攻に対抗できなかった不名誉を批判する。
- §3.693-3.694
二つの根本国制とキュロス期ペルシアの盛衰
アテナイの客は、アテナイとスパルタの共闘のみがギリシアを救ったと指摘し、国制の目的は自由・思慮・調和の適度な結合にあると説く。さらに国制の根源を君主制と民主制に大別した上で、キュロス期ペルシアの成功と、その後の崩壊の原因がキュロスの家庭内教育の欠如にあったことを分析する。
- §3.695-3.696
ペルシアの後継者教育の失敗と節制の徳
アテナイの客人は、キュロスが息子たちの家政教育を怠ったことでカンビュセスらの破滅を招いた歴史を語り、ダレイオスによる再興とその後の贅沢による再度の衰退を指摘した上で、節制を伴わない能力や徳に名誉を配分することの危険性を論じる。
- §3.697-3.698
名誉の序列と古代アテナイの国制の起源
アテナイ人は、国家が正しく分配すべき三つの名誉の順位(魂、身体、財産)を提示し、ペルシアの衰退が過度な専制による友愛の喪失に起因することを語る。続いて、アテナイの古い国制と「慎み」による秩序を説明し、ダティスによるペルシア侵攻がもたらした危機の歴史を回顧し始める。
- §3.699-3.700
アテナイのペルシア防衛と音楽の秩序の崩壊
ペルシアの第二次侵攻に直面したアテナイ人が、かつての国制における「慎み」と「法への服従」によって団結し国難を乗り越えた歴史を振り返る。また、かつての秩序正しい音楽の分類が失われ、快楽本位の「無法状態」へと堕落していった過程を分析する。
- §3.701-3.702
過度な自由の弊害と新たな植民都市の建国構想
アテナイ人は、音楽の衰退と極端な自由が大衆の破廉恥さや法・支配者・神々への軽視を招く過程を分析し、これまでの国家の盛衰の議論が良き国制と人生を探求するためであったことを再確認する。これに対し、クレイニアスは自分がクレタの植民都市の立法委員に任命されたことを明かし、今までの議論をもとに言葉の上で架空の国家を建設しようと提案する。
- §4.704-4.705
新都市の地理的環境と海洋が及ぼす悪影響
アテナイ人とクレイニアス、メギロスが、建設予定の新たな都市の地理的環境(海からの距離、港の有無、地形、産物、造船木材)について話し合い、海が近いことによる道徳的悪影響を避けるための条件を検討する。
- §4.706-4.707
海軍力がもたらす徳の衰退と国家の真の目的
アテナイ人は、海軍力が兵士に逃亡の口実を与えて徳を損なうこと、また国家にとって重要なのは単なる生存ではなく善く生きることであることを説き、新都市への入植者の構成について問い始める。
- §4.708-4.709
入植者の構成と立法における運と技術
アテナイ人は新都市の入植者の構成について語り、単一の集団による入植と、雑多な集団による入植の長短を比較する。さらに、法律は人間が制定するのではなく、幸運や災難がすべてを規定するのであり、立法者は幸運な機会と技術の双方を必要とすると論じる。
- §4.710-4.711
節制ある若き独裁者と最善の国制の速やかな樹立
アテナイ人は、優れた立法者と協力して最善の国制を最も速く実現できるのは節制ある若き独裁者であることを主張し、支配者の行動が市民の習慣をいかに速やかに変えるかを説明する。
- §4.712-4.713
スパルタ等の国制とクロノスの時代の神話
アテネの客人は、最大の権力と思慮・節制が結びつく時にのみ最善の国制が生じると述べ、対話者たちの母国(スパルタとクノッソス)の実際の国制の分類の難しさを指摘する。さらに、かつて神に等しい存在が人間を幸福に支配した「クロノスの黄金時代」の神話を語り始める。
- §4.714-4.715
法の至高性と奉仕者としての支配者
アテナイの客人は、都市は支配階級の私利私欲を追求するのではなく、真の法の源である理性に従うことで、クロノスの神的な支配を模倣すべきだと説明する。そして、真の法律は都市全体の共同の利益に資するべきであり、支配者が法の従属者(奉仕者)となることにこそ都市の救済があることを主張する。
- §4.716-4.717
神への従順と神々や親に対する敬虔の義務
アテナイ人は、神に従って節度ある生活を送ることの重要性を説き、神々、ダイモーン、英雄、そして存命および故人となった両親に対する敬虔な義務の順序とあり方を具体的に規定する。
- §4.718-4.719
法における説得と立法者と詩人の違い
アテナイ人は、死者の記念について語った後、法を制定する前に市民を徳へと促す「説得(前置き)」の重要性をヘシオドスの詩を引用して強調し、また、多様な立場を描く詩人と違って、立法者は「適度」の具体的規模などの一義的な基準を定めなければならないと論じる。
- §4.720-4.721
医師の比喩と婚姻法における説得と命令
アテナイ人とクレイニアスは、法律における説得と命令の二つのアプローチを奴隷医と自由医の治療態度の違いに例えて対比し、都市の最初の法としての婚姻法を事例に、単一の法と二重の法の具体的な違いを議論する。
- §4.722
法律の前置きの意義と説得と強制の結合
メギロスはラコニア人でありながら説得を含む長い方の法律を支持し、アテナイ人は立法において説得と強制の両方を用いる重要性を説き、これまでの対話が法律そのものの「前置き(プロオイミオン)」であったことを明らかにする。
- §4.723-4.724
法律の前置きの適用範囲と魂や身体の配慮
アテナイ人とクレイニアスは、強制としての法律の前に説得としての「前置き」を置くことの重要性を確認し、主要な法律にのみそれを適用すべきだと合意する。そして、神々や祖先に続く前置きの対象として、自己の魂・身体・財産のあり方に関する議論を始める。
- §5.726-5.727
魂の尊厳と真に魂を敬うことの意義
アテネ人が、人間の所有物の中で神々に次いで最も尊い「魂」について、その正しい尊重のあり方を論じる。多くの人が魂を盲目的に甘やかしたり自己弁護したりして貶めている実態を指摘し、真の尊重とは魂をより良い状態に導くことであると説く。
- §5.728
悪行の最大の罰と中庸な身体の尊重
不正な金銭獲得が魂を貶めることを警告し、最大の罰が「悪人に同化すること」であると説明した上で、魂に次ぐ第三の敬意の対象として、過度でも不足でもない中庸な肉体の配慮を説く。
- §5.729-5.730
適度な財産と青少年の教育および真実の美徳
適度な富の獲得、若者への身を以て示す教育、友人や外国人への敬意、そして最大の美徳としての「真実」について論じられ、他者の不正を許さない者が最も称賛されるべきであるとされます。
- §5.731-5.732
徳の競い合いと過度の自己愛への戒め
アテネ人は、徳への切磋琢磨の重要性を説き、不正に対する怒りと憐れみの使い分け、そしてすべての過ちの根源としての過度な自己愛を警告し、自制と神への希望を保つよう説く。
- §5.733-5.734
快苦の均衡と徳ある生き方の優越
快楽と苦痛、およびそれらの均衡に基づき、人間にとって最も好ましい生き方を分析し、節制や勇敢などの四つの徳ある生き方が、悪徳の生き方よりも実質的に快いものであることを論じる。
- §5.735-5.736
支配者の資質と国家における市民の浄化
アテネ人は、国制構築の前提として、支配者と被支配者を区別する経糸と緯糸の比喩を提示し、国家における「浄化」の必要性を説く。さらに、最良だが過酷な浄化(処罰や追放)と、より穏和な浄化(植民)の二つを定義し、新たな国家建設においては市民の選別と融和が肝要であることを論じる。
- §5.737-5.738
市民数5040の選定と土地分配および祭祀の確立
アテナイ人は、国家の基礎としての公正な土地分配と、市民数を5040人とする重要性、そしてこの数字の数学的な分割の容易さについて論じ、さらに宗教的な聖域や伝統を変更することなく尊重し、市民同士の相互の信頼関係を築く重要性を説明します。
- §5.739-5.740
最善の国制と世帯数5040を不変に維持する方策
アテネ人は、最善(第一)の国制としての「財産の完全共有」を模範として提示し、それに次ぐ第二の国制として、5040の土地・世帯数を制限・不変のまま維持するための様々な法的措置(相続や不妊・多産への対応、植民など)を論じる。
- §5.741-5.742
分配地の売買禁止と私有財産に関する経済規定
アテネ人は、不可避の事態による市民数の減少への対処法と、分配地の売買禁止、それに対する宗教的な誓いと監視について論じる。さらに、金銀の私有禁止、国内専用の独自通貨の導入、持参金の禁止や利子付き貸付けの禁止などの経済的原則を定める。
- §5.743-5.744
富と徳の両立不可能性と四つの財産等級
アテネ人は、徳と極端な富が共存不可能な理由を示し、国家の調和のために金銀の所有を禁じ、魂・体・財産の順で価値を重んじるべきだと論じます。さらに、初期の財産格差に対応するため、財産規模に応じた4つの評価等級と貧困の最低限界を規定します。
- §5.745-5.746
財産の超過分の処分と領土の十二分割
立法者は財産制限の超過分の国庫への帰属と、国家およびその領土を十二の部分に均等に分割する方法を詳細に定め、こうした理想的な制度設計が現実の制限に直面した際の立法の原則を論じる。
- §5.747
算術教育の有用性と立法における地理的要因
アテネの客人は、数学の学習が魂を覚醒させ、あらゆる技術や統治に必須であると説き、市民の私有器具にまで数の比率を適用することを推奨する。さらに、土地の風土や神域の存在が住民の性格を左右するため、立法者は地理的特性を考慮すべきであると論じる。
- §6.751-6.752
官職の設置と法律の守護者の最初の選出
アテネの客人とクレイニアスは、法制定後に必要となる官職の設置と官吏の選出について議論し、未熟な新市民による選挙の困難さを指摘する。その解決策として、まずはクノーソス人の主導のもとで「法律の守護者」(ノモピュラケス)を最優先で選出する必要性を説く。
- §6.753
法律の守護者三十七名の選出方法と選挙手順
クノーソス人と移住者が共同で最初の「法律の守護者」を選出する方法と、将来におけるその通常選挙プロセスを定め、建国における最初の官職設立の困難と重要性を指摘する。
- §6.754-6.755
母市による初期選出と軍事官職の選任規定
アテナイの客人は、クノーソス人が新しい植民都市の初期官職選出を主導すべきであると述べ、法の番人および軍事官職(将軍や部隊長)の選出方法、任期、要件について詳細に規定する。
- §6.756-6.757
軍事官職・評議員の選出と二種の平等
将軍、騎兵長、評議員などの軍事・政治官職の選出方法を規定し、算術的平等(抽選)と比例的平等(徳に応じた配分)の違いを論じ、国家の安定のために両者を適切に併用することの重要性を説く。
- §6.758-6.759
評議員の輪番常駐と行政官・神職の選任
アテネ人は、国政の安全と円滑な運営のために評議会の12分の1が交代で常駐する制度の必要性を説き、続いて市内の美観や治安を守る「市監」や「市場監」などの行政職、および抽選と神託を用いて選出される「祭司」や「釈義官」などの祭祀職の任命手続きを規定する。
- §6.760-6.761
地方監の選任と防備および巡回制度の規定
アテネ人は、神殿の財務官の選出方法を定めた後、領土全体の防備を担う「地方監(アグロノモイ)」と若者たちの巡回制度、およびその任期や巡回方向について規定する。さらに、彼らの任務として、防御施設の建設、道路や水源の整備、温浴施設の設置、および地方における軽微な訴訟の裁判権を説明する。
- §6.762-6.763
地方監の罰則と規律および市監・市場監の選出
地方監(アグロノモイ)が不正を働いた場合の裁判手続きやその厳格な自活共同生活について規定し、続けて市監(アステュノモイ)および市場監(アゴラノモイ)の選出手続きと職務について定める。
- §6.764-6.765
競技審判官と教育総監の選出
アテネ人は、市場監や市監の投票の義務化、管轄権、罰則について規定し、続いて文芸(合唱・独唱)や体育(競技)の審判・監督官、そして最も重要とされる全教育の総監の選出方法を規定する。
- §6.766-6.767
教育総監の選出方法と裁判所制度の確立
アテネ人は、教育監督官の重要性とその秘密投票による選出プロセスについて述べ、さらに都市にとって不可欠な裁判所の役割、隣人間の調停から最終的な最高共同法廷に至る三段階の裁判制度、およびその法官の選出方法を規定する。
- §6.768-6.769
市民の裁判参加と法を補完する後継者の必要性
アテナイ人は公訴と私訴における市民の裁判への関与について論じ、裁判制度の確定を後回しにすることに合意する。そして、画家の仕事に例えて、法律も時代の変化や実務に合わせて修正・補完する後継者が必要であることを語る。
- §6.770-6.771
法護官への教示と5040の数による国制分割
老年の対話者たちが若い後継者(法護官)に立法の方法と根本的な徳の目的を教えるべきであると確認し、続いて神聖な分割に適合する5040という数を用いた最初の法制度と祭礼の組織について論じる。
- §6.772-6.773
若者の祭礼と異なる性質の結合を促す結婚の前奏
アテナイの客人は、若者たちの交友と適切な配偶者選択を促すための祭典の規定を述べ、結婚に関する法律には成文法での強制ではなく、異なる性質の家系の融合(均等化)を促す前奏による説得を用いるべきだと論じる。
- §6.774
未婚者への罰則と持参金制限および婚約の規定
アテナイの客人は、未婚のまま35歳に達した者に対する段階的な罰金や名誉剥奪の罰則を規定し、さらに持参金の制限と、有効な婚約を取り決める決定権の優先順位を定めている。
- §6.775-6.776
婚礼の祝宴の制限と懐妊期の節制および奴隷の扱い
アテナイ人は、結婚における宗教儀礼の遵守や、祝宴の制限、そして妊活期における節酒と自己管理の大切さを論じ、さらに新婚夫婦の独立居住と、奴隷所有を巡る議論へと話題を展開する。
- §6.777-6.778
奴隷の適切な管理方法と都市の建築計画
アテナイの客人は、奴隷の魂の扱い難さと、反乱を防ぐための最善の管理・養育方法について説明する。さらに、新設する都市の神殿、法廷、および城壁の配置計画について、結婚制度の前提となる建築の観点から議論を展開する。
- §6.779
城壁の不要論と住宅配置による防衛および都市管理
アテナイの客人は、都市を囲む城壁が住民の健康や武徳を損なうものであるとして排し、代わりに個人の住宅を隙間なく整然と配置して全体を一つの城壁のように機能させるべきだと論じ、都市管理や結婚後の初期生活の制度設計へ話題を移行させる。
- §6.780-6.781
私生活の規制と女性の共同食事制度の導入
アテナイの客人は、私生活の規制を怠る立法は不完全であり、特にスパルタ等で男性のみに導入されている共同食事(シュッシティア)を女性にも拡大すべきであると論じ、その導入の困難さと重要性を説明する。
- §6.782-6.783
三つの根源的欲望と婚姻や出産の法制化
アテナイの客人は、人類と社会の歴史的変化を振り返り、人間のすべての行動を決定づける3つの根源的な欲望(食欲・飲欲・性欲)について述べ、これらを法と理知によって善へと導く重要性を説いた上で、結婚と出産の法制化の議論へと移行する。
- §6.784-6.785
出産と夫婦への監督制度および男女の適齢規定
アテナイ人は新婚夫婦に対する監督制度を提案し、新婦と新郎が子作りに専念するための10年間の監視と、それに反した者への処罰を規定する。また、結婚、公職、軍務のそれぞれの年齢制限を男女別に定義する。
- §7.788-7.789
乳幼児の養育と身体運動の重要性
アテナイ人は乳幼児の養育(特に身体の発育)について語り、その最初の段階として、胎児期や乳児期における適切な運動(母親の散歩や、乳母が抱いて歩くことなどによる適度な揺れ)が身体の健康に果たす重要性を説明する。
- §7.790-7.791
幼児をあやす運動の効果と恐怖の克服による勇気の育成
アテネの客人は、乳児への揺すり運動やコリバンスの治療儀礼が持つ精神的効果を説明し、幼少期の恐怖の克服が勇気を養う一方、過度な贅沢や隷属が不健全な性格を形成すると論じます。
- §7.792
快楽と苦痛の両極の回避と温和な魂の育成
アテネの客人は、乳児の泣き声から欲求を判断する乳母の経験を述べ、贅沢による快楽の過剰も、隷属による苦痛の過剰も避け、「温和(中庸)」な魂の状態を習慣づけることの重要性を説く。
- §7.793-7.794
不文律の重要性と幼児の共同遊戯および両手の訓練
クレイニアスは快楽と苦痛の中間を進むべきだという意見に同意し、アテナイ人は書かれざる祖先の慣習法が国制の維持に不可欠であることを示す。さらに、三歳から六歳までの幼児の神殿での共同教育、性別の分離、そして右手と左手を等しく使う訓練の重要性が論じられる。
- §7.795
両利きの重要性と体育における舞踊と格闘の分類
アテナイの客人は、スキタイ人の例などを挙げて両手を均等に使えるように訓練することの必要性を説き、教育における体育(舞踊と格闘)の分類を提示する。
- §7.796
実戦的な格闘と武装舞踊および文芸論への移行
アテナイの客人は、実戦に有用な直立のレスリング(格闘)や、神々を称える武装した舞踊・行列を教育に導入すべきだと主張し、体育に関する議論を終えて文芸(ムーシケー)の議論へと移る。
- §7.797
子どもの遊びの不変性と国法の永続性
アテナイ人は、国家の法律の永続性において子供たちの遊びの規制がいかに決定的に重要であるかを説明し、遊びの変更や新奇さの追求が若者の品性を蝕み、国家に破滅をもたらすと警告する。
- §7.798-7.799
歌舞の固定化による法の永続とエジプトの慣行
アテナイ人は、若者の遊びの不変性が法の永続に決定的な影響を与えることを説き、歌や踊りを神聖化して不変のものとしたエジプトの慣行を称賛する。クレイニアスも同意し、二人は法律に関する新規な議論を慎重に進めることを合意する。
- §7.800
歌の固定化と祭礼における不吉な歌の禁止
アテナイ人は、歌が法律のように不動の存在(ノモス)であるべきという方針を決定し、そのための「型」として、まずは犠牲祭の最中における哀悼や不吉な歌の禁止を提案する。
- §7.801
詩歌を法とするための基準と詩人への規制
アテナイ人は、歌が法律となるための「型」として、不吉な言葉の忌避、神々への正しい祈り、そして詩人の創作活動を事前に審査し制限することを提案し、クレイニアスもこれに同意する。
- §7.802-7.803
男女の歌舞の選定と神のおもちゃとしての人間の生
音楽と踊りを男女の特性に合わせて区別・制定し直すための審査の手続きが述べられ、さらに人間は神のおもちゃであり、平和の中で「遊び」としての儀礼的生活を送ることこそが真に真剣であるべき生の本質であると説かれます。
- §7.804-7.805
公教育の義務化と男女同等の訓練の必要性
アテナイの賓客は、子供の教育が親の私事ではなく国家の義務であり、女子も男子と同様に体育や軍事、音楽を訓練されるべきだと主張する。さらに、サウロマタイの女性たちの例を引き、男女が共同で訓練や社会生活を共有しない現在の慣習は国家の力を半減させる愚行であると解く。
- §7.806-7.807
スパルタの女性教育への批判と男女の共同生活
アテナイの外国人は、スパルタの不完全な女性教育が国家の潜在力を半減させていると批判し、真に徳を目指す国家における男女の共同食事や、市民の最高任務としての心身の鍛錬のための生活秩序を説く。
- §7.808-7.809
市民の早起きと子供の教育カリキュラム
アテナイ人が、すべての市民や支配者が睡眠を最小限にして夜間に目覚めていることの重要性と責任を語る。さらに、野生的な天性を持つ子供たちの養育管理、および文字、竪琴、天文学、暦の学習の重要性と、それを管理する監督官の役割について議論を展開する。
- §7.810-7.811
読み書きと竪琴の学習期間および教材の選定
アテナイの客人は、文字と竪琴の学習期間をそれぞれ3年間と定め、散文の学習における難しさを論じた後、自分たちがこれまで交わしてきた法に関する議論自体が教育にとって最も優れた手本になりうると主張する。
- §7.812-7.813
竪琴の演奏教育と舞踊および体育の監督
アテナイの客人は文字の教育に続いて竪琴の学習方法について論じ、複雑な装飾を避けた中庸な音楽を教えるべきだと主張する。さらに、舞踊や体育の教育方針、およびそれらを統括する教育長の役割をクレイニアスと合意する。
- §7.814-7.815
女性の軍事訓練と武器舞踊および平和舞踊の分類
アテナイの客人は、女性もまた防衛や戦争に備えた軍事訓練を行うべきだと主張し、それを怠る国家の弊害を説く。さらに、身体の運動(舞踊)を高潔なもの(軍事的な「武器舞踊」と平和的な舞踊)と低劣なものに分類し、それぞれの基準と境界を分析する。
- §7.816
平和舞踊エンメレイアと滑稽な喜劇の扱い
アテナイの客人は、快楽の大きさと訓練の度合いが身体運動(舞踊)に及ぼす影響を説明し、平和的な舞踊「エンメレイア」の命名の正しさを称賛する。また、自由な市民は真面目な徳を維持するために、醜悪で滑稽な喜劇的模倣(喜劇)は奴隷や外国人にのみ演じさせ、自らは決して真剣に関与してはならないと論じる。
- §7.817-7.818
悲劇詩人の上演審査と自由人の三つの必須科目
喜劇に続き、悲劇詩人が作品の上演を求めてきた場合の対処法が論じられ、国家の国制自体が真実の悲劇であるため厳格な審査が必要とされる。その後、自由人が学ぶべき三つの必須科目(計算、測定、天文学)が提示され、大衆にとっての必要性が議論される。
- §7.819-7.820
遊びを通じた算術と通約不可能性の幾何学教育
アテネの客人は、数の基礎的実用と、長さ・幅・深さの通約可能性および通約不可能性という測定の基礎を、子供たちが遊びを通じて学ぶべきであると論じる。
- §7.821-7.822
天体の規則的運行と天文学教育の意義
アテナイの客人は、太陽や月などの星々が「さまよっている(惑星)」とする従来のギリシア人の見解を誤りとし、それらが実際には一定の単一の円軌道を運行していることを教える天文学の学習の重要性を説く。さらに、教育科目の法規定を終えるにあたり、法律と単なる勧告の中間に位置する教育理念の意義を指摘する。
- §7.823-7.824
教育の完成と狩猟の諸形態に関する規制
アテナイの客人は、徳ある市民への賛辞について、法制定と勧告を織り交ぜる重要性を示し、様々な「狩猟」への賞賛・非難と法規制を提示して教育の法規定を完了させる。
- §8.828-8.829
祭礼の規定と軍事演習および詩人の資格
アテナイ人はデルポイの神託に基づく祭礼の組織化について論じ、国家の防衛力を維持するための毎月の軍事演習の義務化と、その功績を称える詩を創作・演奏できる詩人の厳格な資格基準を提示する。
- §8.830-8.831
軍事訓練の実戦性と訓練を妨げる富への執着
アテナイ人は国家の軍事訓練がなぜ必要かを競技者の日常訓練に例えて説明し、模擬戦での過失致死は無罪と規定すべきだと主張する。さらに、現在の多くの国家がこのような訓練を行わない最大の要因として、富への過度な執着を挙げる。
- §8.832-8.833
歪んだ国制の弊害と武装競走および格闘の規則
アテナイの客人は、軍事訓練を妨げる第一の原因である「富への執着」に続き、第二の原因として「民主制、寡頭制、僭主制」という歪んだ国制を挙げ、それらから免れた新しい国制の優位性を説明する。さらに、戦争に役立つ具体的な競技として、様々な距離の武装競走や武装格闘の規則を提案する。
- §8.834
戦闘競技と乗馬競技の規則および体育の完了
アテネの客人は、重装歩兵戦闘や軽装歩兵戦闘(ペルタステス的戦闘)のルール制定、およびクレーテーの地理的特性に適した乗馬競技の規定について語り、体育競技に関する法制化を終え、音楽の競技規定について予言する。
- §8.835-8.836
音楽競技の規定と性的欲望および同性愛の規制
アスナイオス客とクレイニアスは、音楽競技の法制化について議論した後、恋愛や性的欲望、特に同性愛をめぐる法規制の難しさ。また、法が常に目指すべき「徳」に対して、そのような慣行が寄与し得るのかについて議論を交わす。
- §8.837-8.838
愛欲の三分類と近親相姦の禁忌に見る法の定着
アテナイの客人は、友情と愛欲(エロース)の種類を、対照的な者同士、似た者同士、そしてその混合の3つに整理し、城邦において徳に基づく愛欲のみを認めるべきだと主張する。また、近親相姦の禁忌が不成文の法や噂(世論)の力によって強力に維持されている例を挙げ、立法者が世論を神聖化することで法を強固にできることを示す。
- §8.839-8.840
自然に従う生殖の法と快楽の抑制の可能性
アテナイの客人は、自然に従った生殖活動(男性同士の性交や不義の播種を避けること)を義務付ける法律の有効性と、その実現困難さについて語る。彼は、アスリートたちが競技での勝利のために節制したことや、野獣でさえ生殖期以外に貞潔を守ることを例に引き、市民が快楽に打ち勝つことは十分可能であると主張する。
- §8.841-8.842
性愛に関する第二の法律と農業法の導入
クレイニアスの問いに対し、アテネの客人は、第一の理想的な法が守られない場合の「第二の法律」として、敬神や名誉、世間の目を考慮した性愛規制案を示す。その後、議論は共同食事を確立した社会における生計維持のあり方、特に農業に関わる人々のための「農業法」の策定へと移行する。
- §8.843-8.844
土地境界の侵犯禁止と隣接地の水利規定
アテネの客人は、境界神ゼウスの法として隣人間の土地の境界を厳格に保持することを定め、越境耕作や放牧、失火、水利、果物の収穫に関する詳細な調整法や罰則を規定する。
- §8.845
果物採取の規則と水資源の汚染防止
「上等な」果物と「野生」の果物、その他さまざまな果物の採取基準および違反した奴隷・自由人・客人への規則を定め、続いて重要な農水資源の汚染・盗水に対する法秩序と浄化規定を制定する。
- §8.846-8.847
農産物輸送と職人技術の専念および貿易の制限
アテナイの客人は、農産物の運搬時のトラブル対処法、無数にある司法的細則の整備、および市民が余業を持たずに一つの専門技術のみに専念すべき制度について論じる。さらに、城邦における関税の撤廃や輸入品の制限、軍事物資の取引、そして産物の分配制度についても規定する。
- §8.848
収穫物の三分法と十二の村の配置
アテナイ人は、農産物や家畜の12分の1を自由人、奴隷、客人の3つのグループに平等に配分する規則と、国内に12の村を建設して神々の聖域を設け、職人たちを適切に配置する防衛・居住計画を提案する。
- §8.849-8.850
市場管理官の職務と在留客人の規定
アテナイの賓客は、市場管理官の職務について、生活必需品の分配スケジュール、小売業の禁止規定、信用取引に対する訴訟権の否定を説明し、次いで在留客人(メトイコイ)の在留条件や財産登録の規則を規定する。
- §9.853-9.854
重罪立法の必要性と神殿略奪罪の処罰
アテナイの客人は、新たな城邦における裁判の必要性と、重罪に対する立法の恥ずかしさについて述べ、最も重い不治の罪に対する予防として、まず神殿略奪を企てる者への説得(前奏)と、捕らえられた奴隷・客人、および不治とみなされる市民への厳格な処罰を定める。
- §9.855-9.856
死刑と財産没収の制限および国制転覆罪
このチャンクでは、市民が重大な罪を犯した場合の死刑、配分地を保護するための財産没収の制限、および詳細な裁判と投票の手続きについて論じられ、続いて国制転覆罪の規定と連座制の制限、配分地を継承させるための手続きが定められる。
- §9.857
盗みの処罰と奴隷の医者の比喩による教育的立法
アテナイ人は重大な国家犯罪に対する共通の法律と盗みに対する罰則を提示するが、クレイニアスの反論を受け、「奴隷の医者」の比喩を用いて、従来の立法に哲学的な教育の視点が欠けていることを認める。
- §9.858-9.859
親のような法と正義と美の連関についての考察
アテネ人は、時間的余裕を持って理想の法律を検討できる現在の幸運を指摘し、法律は威圧的な僭主ではなく、理性的で愛ある両親のように語るべきだと主張する。さらに、美しさと正義の関連について議論を始める。
- §9.860-9.861
非自発的な不正と法における行為の区別
アテネの客人は、正義にかなう受動的経験(処罰など)が美しくもあるという原則が、現実の刑罰(死刑など)の持つ醜さと一見矛盾するように見える問題を提示し、さらに「すべての悪人は非自発的に悪人である」という自説を導入する。これに伴い、従来の法律が前提とする「自発的/非自発的な不正」の区別を、自説の哲学的一貫性を保ちつつどのように法制度に組み込むべきか、その峻別の必要性を論じる。
- §9.862-9.863
損害と不正の区別および過ちをもたらす魂の諸原因
アテネの客人は、単なる損害と不正を区別し、自発的・非自発的な行為がどのように法において規定されるべきかを論じる。さらに、魂における気概、快楽、そして単純な無知と二重の無知という、人間の過ちをもたらす諸原因を分類する。
- §9.864
正義と不正の定義および心神喪失者への減刑
アテネ人は、情念による魂の支配を「不正義」とし、最善の確信による支配を「正義」と定義し直す。さらに、神殿略奪や国事犯といった重罪であっても、狂気や老齢などの状態で犯された場合には、単純な賠償と一定期間の国外追放のみを科すという例外的減刑措置を規定する。
- §9.865-9.866
非自発的な殺人と激情による殺人の罰則と浄化
アテネ人が、競技や医療、過失による様々な状況下での非自発的(過失)殺人と、激情に駆られた殺人について規定し、被害者・加害者の社会的身分に応じた浄化の儀式、追放期間、罰則を定めている。
- §9.867-9.868
激情による殺人の計画性による分類と親族や奴隷に関する罰則
アテナイ人とクレイニアスは、激情による殺人の二つの分類(計画性の有無)とその刑罰の違いについて議論し、親族や奴隷が加害者・被害者である場合の具体的な刑罰や清めの規定を定める。
- §9.869
肉親間の激情による殺人と正当防衛の規定
アテネ人は、兄弟姉妹間での激情による殺人、親に対する激情による殺人とその赦免の有無、および防衛が認められる状況について規定し、次に対象を自意的な殺人へと移すことを宣言する。
- §9.870-9.871
故意の殺人の原因と裁判手続きおよび罰則
本チャンクにおいてアテネ人は、故意の殺人を引き起こす3つの主要な原因(富への過剰な欲望、名誉への嫉妬、そして自らの悪行の発覚を恐れる卑怯な心)を挙げ、因果応報の宗教的教えに言及した上で、同族を故意に殺害した者に対する実定法的な手続きと処罰(追放、不告訴への罰、および裁判手続き)を規定する。
- §9.872-9.873
陰謀による殺人や親族殺害と自殺者や動物の処遇
アテネ人は教唆や陰謀による殺人の処罰、奴隷や自由人に対する殺人、さらには親族殺しに対する輪廻転生を通じた報いと死後処罰を規定する。また、自殺者の埋葬制限や、人を殺した動物に対する裁判と追放の手続きを定めている。
- §9.874
無生物による致死と正当防衛の免責および傷害罪
無生物や不明な犯人による死亡に対する司法手続きと、正当防衛や特定の犯罪者・肉親の保護における免罪の基準を規定し、さらに魂の教育や暴力死のテーマから負傷等の身体侵害行為への移行を宣言する。
- §9.875
人間の本性の限界と法の必然性および傷害の規定
アテネ人は、人間の本性が持つ限界(私益の追求や理性の不十分さ)を説明し、法律や秩序という次善の策が不可避であることを説いた上で、負傷等の具体的な規定についての議論を始める。
- §9.876-9.877
裁判所の裁量権の範囲と殺意ある傷害罪の罰則
アテネ人は、裁判所の教育水準や機能に応じて裁量の範囲を決定する原則を説明し、その後、殺意を持った故意の傷害罪に対する具体的な罰則と、その場合の財産・家系の相続に関する法規定を提示する。
- §9.878
絶えた家の継承と激情による傷害罪の賠償
重大な罪により相続人がいなくなった家の相続人決定手続きを定めた後、怒りによる傷害(故意と過失の中間)における賠償金(2倍〜4倍)や、国家への損害に対する補償、および親族内での罰決定手続きについて規定する。
- §9.879
親や年長者への傷害と奴隷や外国人の暴行の罰則
親に対する子の暴行、奴隷による暴行、および非自発的な負傷に対する判決規定と、年長者や外国人への敬意および外国人による暴行への市監の対処方法を定める。
- §9.880
年長者への暴行罪の処罰と法律の両義的役割
同年代や年長者との喧嘩、特に年長者に対する暴行の不当性とそれに対する厳しい罰則を在留外国人や外国人も含めて規定する。また、法律が善良な人々のための教示と、頑なな人々のための矯正という二つの側面を持つことを論じる。
- §9.881-9.882
尊属暴行に対する厳罰と奴隷による暴行の罰則
アテネ人は、親や先祖に対する暴力(尊属傷害)に対してハデスの刑罰に劣らない現世での過酷な刑罰と社会的隔離を規定し、さらに奴隷が自由人を殴った場合の処罰について定める。
- §10.884-10.885
不敬罪の三つの原因と無神論者による説得の要求
アテネ人は暴行や不遜(傲慢)の様々な分類を概説し、特に神々に対する不敬の原因を三つの信仰の欠如に分類して分析する。それに対し、仮想の無神論者たちが、自分たちを罰する前に神々の存在と正義を説得によって証明するよう立法者に要求する挑戦を提示する。
- §10.886
神々の存在証明と新思想による不敬の脅威
クレイニアスが自然現象や万人合意を神々存在の容易な証拠として挙げるのに対し、アテネ人は最新の不敬思想(唯物論的自然哲学)こそが真の脅威であり、それが古代の不道徳な神話や現代の賢者たちの言説を通じて若者に悪影響を及ぼしていると指摘する。
- §10.887
法律の前置きとしての神の存在証明の決意
アテネ人は神々の存在証明を省いて立法に進むべきか、それとも序文を長くしてでも証明を行うべきかを問い、クレイニアスは後者を選択する。アテネ人は、親の敬虔な姿を見て育ちながらも神々の存在を否定する無神論者たちへの憤りから、議論を開始する。
- §10.888-10.889
若者への諭しと自然学者の唯物論的宇宙観
アテネ人は不敬な若者に対し、成長とともに意見は変わるため神々の存在を安易に否定しないよう諭す。さらに、宇宙の起源を神や知性ではなく「自然」と「偶然」による元素の無秩序な結合に帰し、法律や技術を虚偽の人為とする自然学者の唯物論的見解を紹介する。
- §10.890
無神論思想の弊害と立法における説得の必要性
アテナイの客人は、神や道徳が自然ではなく「技術と法(慣習)」によって成立すると考える若者の思想の不敬さと弊害を暴き、立法にあたって刑罰による脅しだけでなく、説得の言論を用いるべきであると説き、クレイニアスもそれに強く賛同する。
- §10.891
成文法の利点と魂が物質に先立つこと
クレイニアスとメギロスは、成文化された法律の永続性と有用性を強調し、神々の存在を論じる骨の折れる議論を避けないようアテナイ人を励ます。アテナイ人は、不敬な自然学者たちが物質を魂に先立つものとする逆転の過ちに陥っていることを指摘する。
- §10.892-10.893
魂の身体に対する先行性と運動の分類
アテナイの客人は、魂が身体よりも古く万物の第一の原因であることを示し、技術や知性が自然よりも先んじていることを論じる。さらに、この難解な議論を安全に進めるために自問自答の形式を採用し、運動の区分に関する議論を開始する。
- §10.894-10.895
十種の運動の分類と自己運動としての魂の定義
アテナイ人は事物の運動を十種類に分類し、他者によって動かされる運動(第九)に対して、自己自身を動かす運動(第十)こそが最も古く、強力な、すべての運動の根源であることを論証する。さらに、自己運動を行うものを「生きている」と定義し、事物を理解するための「名前」「定義」「本質」の三つの側面を導入して魂の本質に迫る。
- §10.896-10.897
魂による宇宙の統治と善悪の魂の区別
魂の定義が「自己を動かす運動」であると確定され、魂が身体より優先して宇宙全体の秩序(天体の運行)を管理・支配していること、そしてそこには善い魂と悪い魂が関わっていることが議論される。
- §10.898-10.899
天体を動かす魂としての神々と無神論への反駁
アテナイ人は、魂の規則的な運動を理知と結びつけ、太陽や他の天体を動かす魂は神々とみなされるべきだと論じる。そして、神の存在を否定する者への議論を終え、神は存在するが人間を顧みないとする第2の不敬な主張に対する反論へと移行する。
- §10.900-10.901
大小を問わぬ神々の配慮と怠慢への反論
アテナイ人は、不正な者が繁栄する現実を見て神々の人間不信や怠慢を疑う若者の心理を分析し、神々があらゆる徳を備えており、大きなことと同様に小さなことにも配慮を及ぼしていることを論証し始める。
- §10.902-10.903
全体と部分への神の配慮と宇宙の秩序
アテナイ人は、神々が私たちの所有者であり、極めて優れた存在である以上、宇宙の全体だけでなく微小な部分をも怠ることなく配慮していることを、医師や石工の類比を用いて論証し、若者を説得するために宇宙の秩序に関する神話的な説明を提示し始める。
- §10.904-10.905
魂の性格に応じた配置と神の正義
アテナイ人は、宇宙の支配者がすべての魂の適切な配置を最も容易に行う仕組み(人間の自由意志に基づく性格の変化に応じた死後の魂の移動)について説明し、若者に対して神々の審判から逃れることはできないと諭す。その後、第三の論点である「神々が贈り物によって宥められうるか」についての議論に移行する。
- §10.906
賄賂で神々を宥められるという誤謬の論駁
アテナイ人は、不正を働く人間が賄賂によって神々を宥めることができると考える愚かさを、狼から略奪品の一部を受け取って羊の強奪を見逃す番犬などの不名誉な比喩を用いて暴露する。
- §10.907-10.908
不敬虔の処罰法と三種の刑務所
アテナイ人は、最も偉大な守護者である神々が不正な贈り物に動かされるはずがないと論じ、不敬虔に関する法案の序説を完結させる。続いて、不敬虔を告発・処罰するための基本法を定め、神々に対する不敬の様々な在り方の背後にある個人の資質やその社会的害悪、そして彼らを収容する3つの刑務所(矯正所を含む)について規定する。
- §10.909-10.910
不敬虔者の処罰と私的な聖所の設立禁止
不敬虔を犯した者たちの類型に応じた具体的な処罰方法(矯正所への収容や死刑など)と、私的な聖所の設立を禁止し公的な神事を義務付ける共通の法律が提示される。
- §11.913-11.914
埋蔵物と遺失物の取得禁止および奴隷の権利
アテナイ人は、私的契約における大前提として、他人の所有物や他人が埋めた宝に手を触れてはならないという原則を述べ、発見された埋蔵物の処理に関する具体的な罰則やデルポイへの照会手順を規定する。また、置き忘れられた他人の財産の取扱いや、奴隷の連行および自由化における保証人設定の法的ルールを定める。
- §11.915
解放奴隷と居留外国人の義務および取引の規則
本節は、解放された奴隷が元の主人に果たすべき義務、外国人の財産所有制限と滞在期間の規則、市場での取引における現金即時払いの原則、および無利子共同出資における訴訟不介入の規則を定めている。
- §11.916
瑕疵ある奴隷の売買と返品の規定
アテナイ人は、奴隷に隠れた身体的・精神的疾病(結核、結石、てんかん等)や殺人履歴がある場合の販売規定および返品(契約解除)の要件と、取引における偽造・欺瞞の防止に関する一般原則を論じる。
- §11.917
市場における不正取引と偽造の禁止規定
市場における嘘や偽造の禁止、およびその基礎となる宗教的・道徳的な警告(前説)を提示し、一物一価の原則や違反者への具体的な罰則、および市場規則の掲示義務について定める。
- §11.918-11.919
小売業の本来の機能と市民の商業従事の禁止
アテナイ人は、小売業が本来持つ相互扶助の役割と、現状で受けている悪評の理由を論じ、マグレシアの土地所有市民が小売業や商業に従事することを禁じる法律を提案します。
- §11.920-11.921
小売業の規制と職人の契約違反に対する規定
アテナイ人は、小売業への参入制限や違反者への罰則を定め、守法官による小売業の監視、契約不履行時の司法手続き、職人の技術における欺きの禁止と発注者による適切な支払い義務について論じている。
- §11.922-11.923
遺言と財産相続に関する法規
アテナイの客人は、個人の財産処分の自由を認めすぎた従来の法律を批判し、個人やその財産は一族や城邦に属するという原則を示す。その上で、息子の相続、養子、娘への分配などに関する具体的な遺言・相続法を規定する。
- §11.924
後見人の選定と女相続人の婚姻に関する規定
遺言者が若くして子供を亡くした場合や子供がいない場合の規定、および後見人の選定方法と孤児の保護体制について定め、さらに娘だけが残された場合の婚姻と相続の順位を規定する。
- §11.925-11.926
女相続人の婚姻順位と守法官による調停
アテナイ人は、遺言のない遺産相続において娘たちや親族を欠く場合の婚姻と相続の法的順位、さらに強制的な婚姻命令から生じる不都合に対する救済策として、守法官らを調停人とする解決法と孤児の第二の誕生に伴う保護について規定する。
- §11.927-11.928
孤児の保護と後見人の義務および罰則
アテナイ人は、死後の魂の力を背景に孤児を保護するための後見人や支配者の法的義務と罰則を詳述し、さらに親子間の極端な不和における法的請求についても議論します。
- §11.929-11.930
子の勘当と父の無能力および離婚の規定
息子を勘当する際の手続きと条件、および父親が病気や老齢で家産を浪費する場合の対応について規定し、続いて夫婦不和による離別・再婚の基準や、主人と奴隷の間の子の所属に関する規定を定める。
- §11.931-11.932
老親への義務と虐待に対する罰則
アテナイ人は、生きている老親や祖父母が無生物の神像以上に尊い存在であり、その祈りや呪いが強力な力を持つことを説き、親を怠慢に扱う者への年齢別の罰則、奴隷による告発、および毒物(薬物)による危害の規定について述べる。
- §11.933-11.934
毒殺と呪術の罰則および狂人と誹謗に関する法
アテナイ人は、直接的な毒殺と呪術的な薬物使用の違いを説明してそれぞれの罰則を規定し、さらに刑罰の目的を論じた上で、狂人の管理責任と誹謗中傷の禁止に関する法律を提案する。
- §11.935-11.936
誹謗の禁止と物乞いの排除および奴隷・家畜の損害賠償
アテナイ人は、私的な口論や公の場での誹謗中傷を禁止する法律を定め、詩人たちが市民を実名で嘲笑する喜劇的表現を厳しく制限する。また、思慮深い困窮者の救済の必要性を説いて物乞いを排除する法を提示し、最後に奴隷や家畜が他人の所有物に与えた損害の賠償規則を定める。
- §11.937-11.938
証言の規則と偽証および不正な法廷弁論の禁止
アテナイ人は、証人の召喚、出頭、偽証に関する規則、女性や奴隷などの証言資格、そして再審の規定について述べた後、正義を歪めて金銭や勝利を得ようとする法廷での弁論技術(詭弁)を厳しく禁止する法律を提案する。
- §12.941-12.942
使節の義務と公金横領の処罰および軍事規律
使節や伝令官の職務怠慢・偽りの報告に対する罰則、公有物の窃盗に対する市民と非市民(外国人や奴隷)の刑罰の差異が述べられ、続けて軍隊における絶対的な規律、指導者の指示への服従、そして幼少期からの共同生活の重要性が論じられる。
- §12.943-12.944
軍務忌避の処罰と武勲の賞および武器放棄の区別
アテナイ人が、軍務不参や脱走に対する法的手続きと武勲の賞の判定基準を規定し、さらに卑劣さゆえの「盾の投棄」と不可避な「武器の紛失」を厳格に区別すべきであることを論じている。
- §12.945-12.946
臆病者に対する刑罰と監査官の選出方法
アテナイ人は、武器を失いながらも生き延びようとする臆病者に対する刑罰を定め、国制の維持において極めて重要な役割を果たす監査官(エウテュノイ)の重要性と、その厳格な選出方法を説明する。
- §12.947-12.948
監査官に対する栄誉と弾劾および裁判での宣誓廃止
監査を無事に通過した監査官たちに与えられる、生存時の特権や死後の名誉ある葬儀、特別な墓所、競技会の開催といった栄誉について規定し、その後に審査後に堕落した監査官を裁判にかける手続きと、現代における偽誓を防止するための新しい訴訟手続き(当事者の宣誓の廃止)について論じる。
- §12.949-12.950
裁判上の宣誓と外国旅行および外人の受け入れ
アテナ人は裁判官の宣誓や不服従に対する差し押さえの規則、さらにポリスの鎖国性と他国との交わりがもたらす影響を論じ、外国旅行や外国人受け入れに関する制限を規定する。
- §12.951
祭典使節と他国視察者および夜間会議の構成
神聖な祭典への使節派遣の意義を説き、他国の制度や賢者を学び自国の法を改善するための「視察者」制度を提案し、その帰国報告の場となる早朝の法律監督会議の構成を規定する。
- §12.952-12.953
夜の会議の議論と視察者の審査および外国人受入の規則
夜明け前の会議における法と学問に関する議論の規定、帰国した視察者の審査と処遇、およびポリスが受け入れるべき4種類(通商、観光、公務、他国からの視察者)の外国人の受入規則を規定している。
- §12.954-12.955
保証と家宅捜索および公職の義務に関する諸規定
取引における保証人、盗品捜索の家宅捜索手続き、および紛争のある財産の所有権の時効期限について論じる。さらに、裁判や競技会出席の暴力による妨害への罰則、私的な講和・宣戦の禁止、公務員への賄賂禁止、および共同体への財産分担金(税)の申告制度を規定する。
- §12.956-12.957
神への奉納品と三段階の裁判所および裁判官の心得
神々への適切な奉納品に関する規則を定めた後、第一審から第三審に至る裁判所の階層的構造と不服申し立てのペナルティを説明する。さらに、裁判官が正義を行うために法律の文書を学び、それをあらゆる議論の試金石として自己の内に持つべきであると論じる。
- §12.958-12.959
判決執行の手続きと葬礼および墓地の規定
矯正不可能な悪人に対する処罰と判決執行の具体的手続きが定められた後、生涯を終えた者の自然な死と、葬儀・墓地・費用の制限、および魂と肉体の根本的な違いについて語られる。
- §12.960-12.961
葬送の制限と法の保全を担う夜間評議会
アテナイの客は、死に関する葬儀の節度を法律で定めるべきだと語り、法律自体に変更不可能な永続性を与えるための「錨」として、かつて提案した夜間会議(集会)の重要性を、生き物における魂と頭(理知と感覚の結合)に例えて再論する。
- §12.962
夜間評議会の任務と目指すべき徳という目標
アテナイの客人は、医術における健康や軍事における勝利のように、ポリスの維持にも「政治的目標」を認識する主体が必要であると論じ、クレイニアスはそれが前に言及された夜の集会であることを言い当てる。さらに客人は、一般の国家の法律が目標を誤って迷走するのに対し、この集会は単一の徳という目標を射抜くべきだと語る。
- §12.963
徳の統一性と知性の指導および諸徳の違い
クレイニアスとアテナイの客人は、徳が法律の単一の目標であり、知性がそれを導く指導者であることに同意する。さらに、勇気と思慮がともに「徳」と呼ばれながらも、理の有無によっていかに本質的に異なるかを提示し、議論を深める。
- §12.964-12.965
徳の統一性の理解と守護者の厳密な教育
アテナイの客人は、国家の番人たちが徳の四つの側面とその本質的統一性を十分に理解すべきであることを論じ、そのために多なるものから単一の相を見出す厳密な教育が必要であると提案する。
- §12.966-12.967
魂の先行性と天文学による真の敬神の認識
アテネの客人は、美や善などの概念を多であると同時に一として捉えることの必要性を説き、法の番人には天文学や魂の先行性に関する深い知識が不可欠であることを論じる。過去の物質主義的な自然哲学の誤りを指摘し、魂が身体に先立つこと、そして宇宙の知的秩序を理解することが真の敬神をもたらすと結論づける。
- §12.968-12.969
夜の会議の教育と都市創建への客人の協力
アテナイの客人は、「夜の会議」のメンバーに必要な教育を事前に法律で定めることの難しさを指摘し、国制の救済という大勝負に自らの見解を共有して協力することを約束する。これに対し、クレイニアスとメギロスは、新しい都市の創建のために彼を引き留め協力させることで合意する。
