底本
Aristophanes. Aristophanis Comoediae, Vol. 2. Hall, F. W. and Geldart, William M., editors. Oxford: Clarendon Press, 1907.
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA 4.0
元ファイル: urn:cts:greekLit:tlg0019.tlg011.perseus-grc2
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翻訳と校閲
翻訳:Gemini 3.5 Flash(2026-05-22 公開)
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最終更新:2026-10-10・変更履歴の一覧
要旨
本作は、アテナイの貧しい農夫クレミュロスが、富の分配の不平等を解消しようと奮闘する喜劇である。アポロンの神託に従った彼は、道で出会った盲目の老人が「富の神」プルートス(Ploutos)であることを知る。クレミュロスは、プルートスが視力を取り戻せば、悪人ではなく善人に富が行き渡るようになると考え、治療を計画する。途中、全員が富めば労働が行われなくなると警告する「貧困」(ペニア)の女神との激しい弁論を経て、見事にプルートスの視力を回復させる。その結果、社会は一変し、正直な者が豊かになる一方で、悪徳な密告者やかつて富で若者を引きつけていた老婆らが不満を漏らす。最終的には、人間から生贄を捧げられなくなったオリンポスの神々までもが職を求めてクレミュロスたちのもとに現れ、一同はプルートスをアクロポリスの神殿へ遷座する厳かな行列で作品を締めくくる。
目次
16 チャンク
引用方式:line
- §1-76
カルイオンの嘆きと謎の盲人の追及
奴隷のカルイオンが狂った主人クレミクロスの奇妙な行動を嘆き、彼がアポロンの神託に従って連れてきた正体不明の盲人の身元を問いただす場面。
- §77-150
富の神プルートスの正体と失明の経緯
カリオンとフレプシュロスは、盲目の男が実は富の神プルートスであることを突き止め、彼を盲目にしたゼウスの嫉妬の経緯を知る。彼らはプルートスの視力を回復させようとするが、ゼウスを恐れるプルートスに対し、彼の力がゼウスよりも強大であることを説得し始める。
- §151-227
富の万能の力とプルートスの視力回復の企て
クレミュロスとカリオンは、プルートスこそがすべての職能や国家の権力、人間の欲望を支配していると説得する。プルートスは自らの力の行使に不安を示すが、アポロンの神託に基づき、二人は彼の治療を計画して貧しい農夫たちを招集する。
- §228-301
プルートスの邸宅入りと貧しい農夫たちの歓喜
クレミュロスがプルートスを自宅に招き入れ、プルートスは自身が人間たちの家で経験してきた辛い過去を明かす。その後、カリオーンが貧しい農夫たちを呼び戻し、彼らは最初からかわれつつも、富をもたらす神の到来を確信してともに踊り、歌う。
- §302-382
ブレプシデモスの登場とクレミュロスへの不正の嫌疑
カリオとコーラスがギリシア神話の怪物やキルケを演じて冗談を交わし終えた後、クレミュロスがコーラスを歓迎して富の神の護衛を依頼する。そこへ近隣のブレプシデモスが、クレミュロスが不正に急な富を得たのではないかと激しく疑い、弁論家を賄賂で買収することを提案する。
- §383-459
貧困の神ペニアの出現とクレミュロスらへの弾劾
クレミュロスとブレプシデモスはプルートスの盲目を治療するためにアスクレピオス神殿へ連れて行こうとするが、そこへ貧困の女神ペニアが現れて二人を激しく非難し、彼らは恐怖しながらも対峙する。
- §460-523
貧困の神ペニアとクレミュロスらの弁論
クレーミュロスとブレプシデースは、プルートスの盲目を治療することの是非について貧困(ペニア)と激しく弁論を行う。貧困は、自らがあらゆる活動の源泉であり、全員が富めば誰も労働しなくなると警告するが、クレーミュロスはこれを認めない。
- §524-581
労働の動機としての貧困とペニアの自己弁護
貧困は、自分が消え去れば誰も働かなくなり、結果として生活必需品や贅沢品がすべて失われると警告する。これに対し、クレーミュロスは貧困がもたらす惨めな暮らしを列挙して反論するが、貧困は自らを「物乞い」とは異なる節度ある「貧者」の守護者であると主張し、さらに貧しい者こそが正義や節制、知性において優れていると論じる。
- §581b-660
ペニアの追放とプルートスの視力回復の報告
ペニアはゼウスの貧しさを論証しようとするが、クレミュロスたちに論破されて神殿から追い出される。その後、カリオンが戻り、アスクレピオス神殿での治療によってプルートスが奇跡的に視力を取り戻したことを主人夫妻や合唱隊に報告する。
- §661-741
アスクレピオス神殿での治療とカリオンの報告
カリオンが女主人に対し、アスクレピオス神殿での参籠の様子を滑稽に語る。カリオンはお供の老女の粥を盗み食いし、神の降臨に際しておならをするが、神がネオクレイデスへの痛烈な治療と、プルートスの視力回復を行うのをトリボニオンの穴から見届ける。
- §742-824b
プルートスの視力回復とクレミュロス邸への富の到来
アスクレピオス神殿でプルートスの目が奇跡的に回復し、人々が歓喜するなか、プルートスはクレミュロスの家へ迎えられ、その家の中は信じられないほどの富に満ちあふれる。
- §825-901
正直な男の感謝の奉納と密告者の不満
かつて富を失ったが正直であった男が古い衣服を神に捧げに来る一方で、富を失い不平を言う密告者が現れ、正直な男とカルイオンが彼を嘲笑う。
- §901b-979
密告者の追放と若者に捨てられた老女の訴え
正しい男たちによって衣類を剥ぎ取られた告密者は、民主制の危機を叫びながら退場する。その後、プルトスが目を取り戻した影響で愛人の若者に捨てられたと訴える老女が登場する。
- §980-1057
老女の思い出話と現れた若者による嘲笑
老婆はかつての若い恋人が自分から様々な金品を要求していた過去を語る。そこへ花冠と松明を持った若者が現れ、老婆の容貌の変化を容赦なくからかう。
- §1057b-1134
老女へのさらなる嘲弄とヘルメスの飢えの訴え
若者は老婆のしわや歯の少なさを嘲笑し、クレミュロスを交えて老婆を澱に例えてからかう。その後、神々の使者ヘルメスが慌てて登場し、人間が富(プルトス)を回復させたために神々に犠牲が捧げられなくなったことをカリオンに訴える。
- §1135-1209
ヘルメスの採用と神殿へのプルートス奉遷の行列
ヘルメスは生贄の不足による飢えから、様々な異名を並べてカリオンに仕えさせてもらおうと交渉し、最終的に競技の神として受け入れられる。続いて、やはり困窮したゼウスの神官が現れ、一同はプルトスを本来安置されていたアクロポリスの神殿へと遷座するため、老婆も交えて厳かな行列を整えて出発する。
