底本
Plutarch. Plutarch's Lives, Vol. VIII. Perrin, Bernadotte, editor. Cambridge, MA: Harvard University Press; London: William Heinemann Ltd., 1919.
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA (Perseus の利用条件による)
元ファイル: urn:cts:greekLit:tlg0007.tlg041.perseus-grc2
Humanitext がクローン・再構成し、継続的に更新しています。
翻訳と校閲
翻訳:Gemini 3.5 Flash(2026-05-22 公開)
AI校閲 2026-09-22:検出 Gemini 3.8 Flash/判定 Gemini 3.8 Flash・GPT-6 Astra — 日本語訳 2 件・原文 8 件を修正
反映した修正(日本語訳と原文):AI校閲 10 件
最終更新:2026-10-10・変更履歴の一覧
要旨
本作は、アレクサンドロス大王の宮廷書記官長から将軍へと登り詰め、大王亡き後の後継者(ディアドコイ)戦争を戦い抜いたカルディアのギリシア人、エウメネスの波乱に満ちた生涯を描く伝記です。出自や教育から始まり、大王の側近としての信頼獲得と確執、そして大王の急死後に始まるマケドニア将領たちとの熾烈な権力闘争が克明に綴られます。エウメネスは抜群の知略と忠誠心をもって騎兵部隊を組織し、宿敵クラテロスやネオプトレモスを打ち破るが、同時にマケドニア兵たちの反感も買います。その後、宿敵アンティゴノスとの戦いでは、ノラ要塞での籠城や奇策を用いた脱出、東方諸州のサトラップ(総督)たちとの心理戦など、彼の非凡な戦術と機転が遺憾なく発揮されます。しかし最後は、最強の歩兵部隊「銀盾兵」の裏切りによってアンティゴノスの手に渡り、悲劇的な最期を遂げます。異邦人の身でありながら、知力と不屈の精神で群雄割拠の時代を駆け抜けた男の軌跡が生き生きと描写されています。
目次
19 チャンク
引用方式:chapter.section
- §1.1-1.3
エウメネスの出自と王室への登用
カルディアのエウメネスの出自や教育、フィリッポス王に仕えるようになった経緯を巡る諸説を紹介し、さらにアレクサンドロス大王の下で宮廷書記官長として信頼と高い栄誉を受け、王室の婚姻による親族関係を結んだ実績について述べる。
- §2.1-2.5
ヘファイスティオンとの確執と危機脱出
エウメネスがアレクサンドロスやヘファイスティオンと衝突したエピソード(宿舎の争い、軍費の献金、天幕の火災)と、ヘファイスティオンの死後にエウメネスが巧みに王の追悼の情を利用して自らの危機を脱した過程を記述している。
- §3.1-3.7
大王死後の調停とカッパドキア領有
アレクサンドロスの死後、マケドニア将領間の権力闘争の中で、エウメネスは中立を装いつつ身の安全を図る。彼はレオンナトスの野心的な企みを知ってペルディッカスのもとに逃れ、その支援を得てカッパドキアのサトラップに任命される。
- §4.1-4.3
アルメニア派遣と対抗勢力としての騎兵編成
ペルディッカスはエウメネスをキリキアから派遣し、ネオプトレモスによって混乱していた隣接するアルメニアを制御させようとする。エウメネスは、マケドニア歩兵の不遜な態度に対抗するため、地元住民や側近からなる強力な騎兵部隊を短期間で組織する。
- §5.1-5.5
全権委任とネオプトレモスの反乱鎮圧
クラテロスとアンティパトロスのアジア侵攻に際し、ペルディッカスはエウメネスに軍の全権を委ねる。エウメネスは離反したネオプトレモスを破り、敵側の懐柔交渉を拒絶してペルディッカスへの忠誠を再確認する。
- §6.1-6.7
クラテロスの進軍とエウメネスの吉夢
敗走したネオプトレモスと合流したクラテロスはエウメネスへの奇襲を企てるが、エウメネスは吉兆の夢に従って、敵将が人気の高いクラテロスであることを味方に隠したまま出陣する。
- §7.1-7.8
クラテロスの戦死とネオプトレモスとの一騎打ち
エウメネスはクラテロスの正面に異邦人騎兵を配して急襲させ、クラテロスは奮戦の末に戦死します。一方、エウメネスとネオプトレモスは一騎打ちの末にエウメネスが勝利し、瀕死のクラテロスを見届けて涙します。
- §8.1-8.7
死刑宣告と兵士たちの忠誠の獲得
エウメネスはクラテロスらの連合軍に勝利するが、マケドニア人の不満を買い、死刑を宣告される。その後、彼は機転を利かせて兵士たちを宥め、彼らの忠誠を勝ち取る。
- §9.1-9.6
敗北後の死者埋葬とアンティゴノスの輜重隊
オルキュニアでの敗北後、エウメネスが冷静に裏切り者を処刑し、戦死者を葬ったこと、またアンティゴノスの輜重隊を意図的に見逃すことで自身の逃亡における足枷を回避した逸話を語る。
- §10.1-10.4
ノラ要塞への籠城とアンティゴノスとの会見
エウメネスは兵を整理してノラ要塞に籠城し、追撃してきたアンティゴノスに対して対等の立場を主張しつつ、会談において譲歩しない姿勢を示した。
- §11.1-11.5
ノラ包囲戦における歓待と兵馬の訓練
アンティゴノスがノラを去った後、包囲されたエウメネスは物資が極端に不足するなかで同行者を親切に歓待し、彼らの健康と退屈しのぎ、さらに将来の逃亡に備えるため、狭い要塞の家々を利用して人間と馬に独自の訓練を行わせた。
- §12.1-12.3
誓約の修正による包囲解除とエウメネスの脱出
マケドニアの政情変化を受けて覇権を狙うアンティゴノスはエウメネスに妥協案を示すが、エウメネスは誓約を巧妙に修正して包囲軍に認めさせ、無事に脱出する。
- §13.1-13.6
アレクサンドロスの天幕の設営と借金による保身
エウメネスは、アレクサンドロスが夢に現れたとして王の天幕と玉座を設け、同僚将軍たちの対抗心を和らげた。その後、東方のサトラップたちと合流するが、彼らの放蕩と暗殺の企てに対し、エウメネスは彼らから金を借りることで自らの安全を確保した。
- §14.1-14.5
アンティゴノスの接近とエウメネスへの指揮権委ね
アンティゴノスの接近により、贅沢に流れていたサトラップたちもエウメネスの指揮権を認めざるを得なくなる。エウメネスが病に倒れた際にも、マケドニア兵たちはエウメネスのみを真の将軍と呼んで絶大な信頼を寄せた。
- §15.1-15.7
アンティゴノスの急襲企図とエウメネスの偽の焚き火
アンティゴノスはエウメネスの健在を知って一時撤退し、その後敵の分散した冬営地を急襲しようとするが、極寒の行軍中に焚き火を見咎められる。これに対しエウメネスは、偽の焚き火を大量に並べる策略を用いて敵の不意打ちを防ぎ、アンティゴノスを迂回させることに成功する。
- §16.1-16.6
銀盾兵の陰謀と奮戦およびアンティゴノスによる輜重強奪
エウメネスは、彼に対する銀盾兵の指揮官たちの暗殺計画を知り、書類を整理して戦いに臨む。戦闘では銀盾兵が圧倒的な強さを見せたが、アンティゴノスはペウケスタスの怠慢に乗じて、砂塵のなか敵の輜重を奪った。
- §17.1-17.5
銀盾兵によるエウメネス捕縛と彼の弾劾演説
エウメネスの輜重を奪ったアンティゴノスは、エウメネスの引き渡しを条件に輜重の返還を銀盾兵たちに約束する。銀盾兵たちはエウメネスを捕らえて敵に引き渡そうとし、エウメネスは連行されながら彼らの背信行為を厳しく非難する。
- §18.1-18.4
アンティゴノスへの引渡しと捕縛中のエウメネス
銀盾兵たちはエウメネスの哀訴を拒絶して彼をアンティゴノスへ引き渡し、アンティゴノスはエウメネスに同情を寄せつつも、彼の処遇について葛藤し、監視役のオノマルコスはエウメネスと勇敢さについて議論を交わす。
- §19.1-19.2
エウメネスの処刑と銀盾兵の破滅
アンティゴノスは食糧を断ってエウメネスを処刑することを決めたが、急な行軍の際に兵士に刺殺させ、遺骨は家族に返還させた。また、エウメネスを裏切った銀盾兵たちは神意によりアンティゴノスの手で辺境に追われ、破滅させられた。
