底本
Euripides. Euripidis Fabulae, Vol. III. Murray, Gilbert, editor. Oxford: Clarendon Press, 1913. (Reprinted 1920-1978)
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA 4.0
元ファイル: urn:cts:greekLit:tlg0006.tlg019.perseus-grc2
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翻訳と校閲
翻訳:Gemini 3.5 Flash(2026-05-22 公開)
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最終更新:2026-10-10・変更履歴の一覧
要旨
本作は、トロイア戦争における一夜の出来事を描き、トラキアの同盟王レーソス(Rhēsos)の到来と悲劇的な死を中心とする緊迫した対話劇です。舞台は夜のトロイア陣営で、ヘクトルがギリシア軍の不穏な動きに対処するなか、偵察員としてドロンが敵陣へ派遣されます。そこへ遅れて現れたレーソスは、自らの強力な軍勢を誇って勝利を豪語し、ヘクトルから陣地を割り当てられます。しかし、アカイア軍から潜入したオデュッセウスとディオメデスがアテナ女神の導きでレーソスを夜襲し、彼を暗殺してしまいます。レーソスの御者はヘクトルの裏切りを疑って激しく対立しますが、最後にはレーソスの母である文芸の女神ミューズが降臨し、事件の真相と悲しみを語ります。作品は、神々の思惑に翻弄される人間の運命を描きつつ、ヘクトルが夜明けとともにギリシア軍へ総攻撃を命じる場面で幕を閉じます。
目次
11 チャンク
引用方式:line
- §1-96
ギリシア軍の異変の報告とヘクトルの出撃準備
夜中にトロイアの番兵たちがヘクトルを起こし、ギリシア軍の陣営で松明が灯され大混乱が生じていることを報告する。ヘクトルは敵の逃亡と見て追撃しようとするが、コーラスは慎重を促し、そこへアイネイアスが情報を求めて現れる。
- §97-179
アイネイアスの忠告とドロンの偵察志願
アイネイアスはヘクトルの軽率な夜襲の計画を諫め、まずは敵情を探るために偵察者を送るべきだと提案し、ヘクトルもこれに同意する。トローヤ勢からドロンが偵察に立候補し、成功した際の褒賞としてアカイア人の戦利品を求める。
- §180-279
ドロンの出撃とレーソス到着の知らせ
アキレウスの馬を報酬として約束されたドロンは、狼の皮を被る変装をしてアカイア軍の陣営へと出撃し、コーラスがその無事を祈る。その後、牧人が登場し、ヘクトルにトラキアの王レーソスが同盟軍として近づいていることを告げる。
- §280-375
牧人によるレーソスの軍勢の報告と合流の歓迎
牧人はヘクトルに対し、夜間に到着した色雷スの同盟軍レソスとその絢爛たる軍勢の様子を詳しく報告する。これを聞いたヘクトルは当初、遅れて到着したレソスへの不満を示すが、コーラスの勧めに従い彼を同盟軍として受け入れることを決め、コーラスはレソスの到来を歓迎する歌を歌う。
- §376-462
レーソスの到着とヘクトールへの釈明と豪語
トラキアの王レソスが華々しく登場し、ヘクトルに挨拶する。ヘクトルはこれまでのレソスの不参加を厳しく非難するが、レソスはスキタイとの戦争が原因だったと釈明し、一日でギリシア軍を壊滅させてみせると豪語する。
- §463-557
レーソスの遠征提案と夜警たちの見張り交代
レソスはトロイア防衛後のギリシア本土遠征を提案するが、ヘクトルは現実的な防衛を重視して彼に陣地を割り当てる。一方、交代の番兵たちは夜更けの様子を語り合いながら見張りの準備をする。
- §558-641
陣営への潜入とアテナによるレーソス襲撃の教唆
夜警たちが偵察者ドロンの安否を懸念する中、陣営に潜入したディオメデスとオデュッセウスはヘクトルの寝床が空であるのを見て退却を図るが、アテナ女神が現れて新参の同盟者レソスを襲うよう促し、接近するパリスを欺く計略を立てる。
- §642-730
パリスを欺くアテナとオデュッセウスらの脱出
パリスが変装したアテナ(クプリス)に遭遇し、偵察者の噂を報告するが、説得されて見張りへと戻る。その後、オデュッセウスとディオメデスは合言葉を用いて見張りの包囲を切り抜け、見張りたちはオデュッセウスの侵入を悟って混乱する。
- §731-819
レーソスの御者の嘆きとヘクトルの叱責
負傷したレソスの御者が現れて主君の死を嘆き、ヘクトルたちの裏切りを疑う。これに対しコーラスはヘクトルを擁護し、現れたヘクトルは守衛たちの怠慢を激しく叱責する。
- §820-908
御者とヘクトルの口論とミューズの降臨
夜警たちが無実を主張し、トラキアの御者がヘクトルを裏切り者と非難して激しく対立するが、ヘクトルはオデュッセウスを犯人と特定して事態を収めようとする。そこへ悲劇の当事者であるミューズが降臨し、殺された息子レソスの遺体を抱えて悲嘆に暮れつつ、犯人を告発する。
- §909-996
ミューズによるレソスの運命の告知と出撃命令
ミューズは息子レソスの生い立ちを語り、彼の死の原因となったアテナを非難し、彼が半神として洞窟で生き続ける運命を告げる。ヘクトルはこれを受け入れ、軍勢に総攻撃を命じる。
