底本
Theocritus. The Idylls of Theocritus. Cholmeley, Roger James, editor. London: George Bell and Sons, Ltd.,1901-1919.
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA 4.0
元ファイル: urn:cts:greekLit:tlg0005.tlg001.perseus-grc2
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翻訳と校閲
翻訳:Gemini 3.5 Flash(2026-05-22 公開)
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最終更新:2026-10-10・変更履歴の一覧
要旨
『牧歌(Idylls)』は、西洋文学における田園詩ジャンルの祖とされる詩集です。シケリア島やコス島などの豊かな自然を舞台に、羊飼いや山羊飼いたちが即興の歌合戦や失恋の悲しみを競い合う様子が、瑞々しい筆致で描かれます。美少年ダフニスの悲恋や、人魚ガラテイアに恋する醜い巨人の物語など、牧歌的な神話と素朴な田園生活が融合した世界が展開されます。一方で、アレクサンドリアの賑やかな街並みを生きる市井の女性たちの日常、ヘラクレスら英雄を歌う叙事詩的叙述、時の権力者への賛歌なども含まれており、その題材は多岐にわたります。人間の多様な愛の形、喜怒哀楽、そして不変の自然美が、洗練された韻文を通して鮮やかに描き出されます。
目次
44 チャンク
引用方式:poem.line
- §1.1-1.75
山羊飼いとティルシスの対話と彫刻杯の約束
山羊飼いとティルシスが互いの演奏の美しさを讃え合い、ティルシスにダフニスの受難の歌を歌ってもらうため、山羊飼いが美しく彫刻された木杯を報酬として提示し、ティルシスが歌い始める。
- §1.76-1.152
ダフニスの死とティルシスの受領
瀕死のダフニスの元を神々(エルメス、プリアーポス、キュプリス)や牧人たちが訪れて彼の頑なな沈黙を諭すが、彼は愛への抵抗を貫いて死を迎える。歌い手のティルシスは歌い終え、山羊飼いから約束の木杯と山羊を受け取る。
- §2.1-2.55
シマエタによるデルフィス奪還の恋の魔術
シマエタが侍女のテスチュリスの協力を得て、姿を消した恋人デルフィスを取り戻すための恋の魔術を執り行う。彼女は月神セラナや冥府のヘカテに祈りを捧げ、様々な魔術的行為を繰り返しながら胸の内を語る。
- §2.56-2.112
シマエタが月神に語るデルフィスとの出会いと恋煩い
シマイタはテスチュリスに最後の呪術的処置を命じた後、静かな月光の下で、自分がどのようにしてデルフィスと出会い、激しい恋に落ちて病に伏せるようになったのかという悲しい恋の顛末をセレーネに語り始めます。
- §2.113-2.166
デルフィスの訪れと裏切り、月の神への祈りの結び
デルピスがシマイタの家を訪れ、互いに愛を交わした夜をシマイタが振り返る。その後、デルピスが他の誰かに心を移したという噂を聞き、シマイタは裏切られた悲しみの中で呪術を終え、静かな夜の月に別れを告げる。
- §3.1-3.54
アマリュリスの洞窟の前で歌う山羊飼いの哀歌
アマリュリスへの実らぬ恋に苦しむ山羊飼いが、彼女の洞窟の前で哀歌を歌い、愛の苦痛を訴え、自殺をほのめかし、歴史上の恋の神話を引き合いに出しながら、無関心な彼女の態度を嘆く。
- §4.1-4.63
バットスとコリュドンの牛飼いアイゴンを巡る対話
二人の牧人バットスとコリュドンが、不在の牛飼いアイゴンの牛たちの惨状や、亡きアマリュリスの死について対話し、最後に地元の好色な老人の噂話に興じる。
- §5.1-5.76
コマタスとラコンの口論と歌競べの約束
山羊飼いのコマタスと羊飼いのラコンが出会い、互いに盗みの罪を擦り付け合って口論となる。二人はどちらの歌が優れているかを競うことになり、木こりのモルソンを審判に迎えて対決の準備を整える。
- §5.77-5.150
コマタスとラコンの歌競べとモルソンの判定
モルソンが判定を下す中、ラコンとコマタスは愛する者への贈り物や自慢の持ち物について歌い競う。最終的にモルソンがコマタスの勝利を宣言し、コマタスは歓喜して山羊たちに語りかける。
- §6.1-6.46
ダモイタスとダフニスのポリュフェモスを巡る歌競べ
ダモイタスとダフニスの二人の若者が夏の真昼に、サイクロプスのポリュフェモスと海のニンフであるガラテイアの恋の駆け引きを主題とする歌を交互に歌い合い、引き分けに終わる様子を描く。
- §7.1-7.78
リュキダスとの出会いとアゲアナクスへの歌
語り手シミキダスが、仲間とともにコスの収穫祭へ向かう途中、山羊飼いの詩人リュキダスに出会い、お互いの詩才を競い合うことに合意する。リュキダスは、自身の愛するアゲアナクスの旅の安全と自身の恋を願う歌を歌い始める。
- §7.79-7.157
シミキダスの歌と杖の贈呈および収穫祭の歓楽
シミキダスはアラトスの恋の悩みについて歌い上げ、歌を終えたリュキダスから友情の証として杖を贈られて別れる。その後、シミキダスたちは収穫祭の場に到着し、豊かな自然と美酒を満喫する。
- §8.1-8.93
ダフニスとメナルカスの歌合戦とダフニスの勝利
ダプニスとメナルカスが山の中で出会い、パンパイプを賭けた歌合戦を行い、山羊飼いの審判によってダプニスが勝利する。
- §9.1-9.36
ダフニスとメナルカスの歌と牧歌のムーサ賛歌
語り手はダプニスとメナルカスのそれぞれの歌を紹介したあと、二人の競演に拍手を送り、こん棒とホラ貝を賞品として与えた思い出を語る。そして、詩を愛する者たちを優しく見守る牧歌のムーサたちへの賛歌を歌う。
- §10.1-10.58
バウカイオスの恋歌とミロンの刈り入れ歌
バウカイオスはボムビュカへの恋煩いで収穫作業が手につかず、ミロンにからかわれながらも彼女を讃える恋歌を歌う。一方のミロンは、労働者が歌うにふさわしい現実的なリティエルセスの刈り入れ歌を披露する。
- §11.1-11.81
ガラテイアに寄せるポリュパモスの恋歌
恋の病を癒す唯一の方法はムーサの歌であるとして、詩人は医師ニキアスに語りかける。キクロプスのポリュパモスが海の妖精ガラテイアに寄せた不器用で情熱的な恋の歌が紹介される。
- §12.1-12.37
愛する少年との再会と互いの愛の賛美
美しい少年との三日ぶりの再会を喜び、互いを等しい軛で深く愛し合うことの尊さを、古の呼称やメガラの祭りにおける美少年の口づけの競い合いを引いて歌う。
- §13.1-13.75
ヒュラスの誘拐とヘラクレスの彷徨
詩人テオクリトスが友人ニキアスに対し、エロースの普遍的な力を示すためにヘラクレスと少年ヒュラスの物語を語る。アルゴー船の遠征中にヒュラスが泉のニンフたちに誘拐され、ヘラクレスが狂気の中で彼を捜し求めて船を去る顛末が描かれる。
- §14.1-14.70
アイスキネースの失恋とプトレマイオスへの仕官
愛するキュニスカの心変わりによって傷心したアイスキネースが、友人テュオーニコスにその顛末を打ち明け、エジプトのプトレマイオス王の軍隊へ入隊する決意を固める対話。
- §15.1-15.71
二人の女性の再会とアドニス祭への道中
ゴルゴーがプラクシノアの家を訪ね、夫への不満を語り合った後、二人はアドニス祭を見にプトレマイオス王宮へと出発する。混雑するアレクサンドリアの路上を、押し寄せる群衆や馬に怯えながら進み、王宮の門にたどり着く。
- §15.72-15.149
宮殿内の見物とアドニス賛歌の拝聴
プラクシノアとゴルゴーは混雑する宮殿内に入り、美しいタペストリーやアドニス像を鑑賞する。その後、彼女たちは歌姫によるアドニスを称える美しい歌を聴き、夫の待つ家路を急ぐ。
- §16.1-16.52
詩人への冷遇の嘆きと詩が与える不滅の名声
詩人は、詩が神々や人間の誉れを歌うものである一方で、現代の人々が貪欲に富を溜め込むばかりで詩人を軽んじていることを嘆く。そして、テッサリアの富豪たちが詩人シモーニデースのおかげで永遠の名声を得た例を挙げ、詩の不滅の価値を説く。
- §16.53-16.109
詩の力への賛美とヒエロン2世への祈念
ホメーロスがオデュッセウスの従者たちに不朽の名声を与えたことを引き合いに出し、詩人の役割の大きさを強調する。シケリアの僭主ヒエロン2世への賛美とシケリアの平和への祈りを捧げ、美恵の女神たちとの結びつきを宣言して詩を結ぶ。
- §17.1-17.70
プトレマイオス2世の家系と誕生への賛美
詩人はゼウスに次いで、エジプトの王プトレマイオス2世を賛美し、神格化された父プトレマイオス1世や母ベレニケの美徳と夫婦愛、そして王自身のコス島での誕生について歌う。
- §17.71-17.137
プトレマイオス2世の統治と富への賛歌
ゼウスに愛された王プトレマイオスの広大な領土と富、そして王国の平和を謳い、その寛大さと両親の神格化、姉妹婚による統治の聖性を讃える。
- §18.1-18.58
ヘレネとメネラオスの婚礼歌
メネラオスとヘレネの婚礼を祝い、スパルタの乙女たちが新婚の寝室の前で婚礼歌を合唱する。歌の中で乙女たちはヘレネの比類なき美しさと優れた手芸の才能を讃え、二人の幸福な未来を祈る。
- §19.1-19.8
蜂に刺されたエロスとアプロディテの諭し
蜂に刺されて痛がるエロスが母アプロディテに訴えるが、母はエロス自身も蜂のように小さくありながら大きな傷を負わせる存在だと指摘する。
- §20.1-20.45
エウネイカの拒絶に対する牛飼いの憤り
牛飼いの語り手が、都会の女エウネイカに言い寄って拒絶され、嘲笑されたことに対する怒りを語る。彼は自身の美しさと音楽の才能を主張し、神々も牛飼いを愛した前例を挙げて彼女の傲慢さを非難する。
- §21.1-21.67
老漁師の貧窮と黄金の魚の夢の語り合い
貧しい二人の老漁師が夜中に目覚め、そのうちの一人が、海辺で釣った黄金の魚で陸の王になると誓ったが目が覚めて誓いを恐れているという夢を語り、相棒のアスパリオンがそれは虚しい幻にすぎないと諭す。
- §22.1-22.75
ディオスクロイへの賛歌とポリュデウケスとアミュコスの対峙
詩人はゼウスの子であるカストルとポリュデウケスを讃え、彼らが嵐に遭った航海者を救う力を描く。その後、アルゴー船の英雄たちが上陸したベブリュクス人の国で、ポリュデウケスが傲慢な大男アミュコスと対峙し、湧き水を巡って拳闘での決闘を約束する。
- §22.76-22.150
ポリュデウケスの勝利とカストルたちの抗争
ポリュデウケスが強大なアミュコスを巧みなボクシング技術で圧倒して勝利し、敗れたアミュコスは二度と異邦人を害さないと誓う。続いて賛歌はカストルへと移り、レウキッポスの娘たちの略奪をめぐるイダス・リュンケウス兄弟との対立が描き出される。
- §22.151-22.223
カストルとリュンケウスの決闘と双子神への賛美
カストルとリュンケウスの決闘が描かれ、カストルがリュンケウスを討ち倒す。怒ったイダスが復讐しようとするがゼウスの雷霆によって阻まれ、詩人はディオスクロイの勝利と栄光を祝福して歌を締めくくる。
- §23.1-23.63
拒絶された恋人の自死と冷酷な少年への神罰
ある熱烈な恋人が冷酷な少年に拒絶されて首を吊り、少年は彼の死を無視して競技場へ向かうが、そこで神像が倒れかかって死に、愛の神の裁きが下る。
- §24.1-24.70
幼いヘラクレスの蛇退治と予言者の招聘
アルクメネが二人の幼子を寝かせた夜、ヘラが送った二匹の巨大な蛇が襲いかかるが、幼いヘラクレスはそれらを素手で絞め殺す。驚いた両親は、翌朝に予言者テイレシアスを招き、この驚くべき兆候が何を意味するのかを尋ねる。
- §24.71-24.140
テイレシアスの予言と少年ヘラクレスの教育
テイレシアスはヘラクレスが将来偉大な英雄となり、神々の列に加わることを予言し、蛇の死骸を処分して家を清めるよう指示する。その後、ヘラクレスは各種の武芸や学問の一流の師から英才教育を受け、頑健な少年に成長する。
- §25.1-25.69
ヘラクレスと老農夫の対面と牛舎への案内
ヘラクレスはアウゲイアス王の牛舎の近くで老農夫に出会い、王に用事があると伝える。農夫はヘラクレスの高貴な容姿に感銘を受け、王が町から戻っていることを教えて彼を牛舎へと案内し始める。
- §25.70-25.139
アウゲイアスの牛舎の群れと十二頭の聖なる牡牛
ヘラクレスと老農夫は、犬たちに迎えられながらアウゲイアスの牛舎に到着する。ヘラクレスは、太陽神からアウゲイアスに授けられた、疫病に侵されず絶え間なく繁殖する膨大な数の牛の群れと、その中の一際優れた12頭の聖なる牡牛たちの姿に深く驚嘆する。
- §25.140-25.210
牡牛パエトーンの制圧とプリュールスへの獅子退治の語り
アウゲイアスの牡牛パエトーンがヘラクレスに襲いかかるが、ヘラクレスは圧倒的な力でこれをねじ伏せる。その後、アウゲイアスの息子プリュールスに伴われて都へ向かう道中、ヘラクレスはネメアの獅子退治の武勇伝について尋ねられ、その発端を語り始める。
- §25.211-25.281
ヘラクレスによるネメアの獅子の退治と皮剥ぎ
ヘラクレスは、ネメアの獅子との死闘を詳細に語る。弓矢が通用しないと知るや、彼は棍棒で獅子を気絶させ、素手で首を絞めて退治し、最後は獅子自身の爪を使ってその皮を剥ぎ取った。
- §26.1-26.38
ペンテウスの死とディオニュソスの秘儀
カドモスの娘たちによるディオニュソスの儀式をペンテウスが覗き見し、狂気に陥った女たちによって惨殺される神罰の顛末と、神々への讃歌が描かれる。
- §27.1-27.44
ダフニスと乙女の結婚をめぐる機知に富んだ対話
牛飼いダフニスと若い乙女が、愛の不確実さや結婚生活への懸念、そして結納品や互いの家柄について、軽妙な機知に富んだ言葉の応酬を交わしながら求婚の対話を繰り広げる。
- §28.1-28.25
ニキアスの妻テウゲニスに贈る糸紡ぎ棒への呼びかけ
詩人は友人である医師ニキアスの妻テウゲニスのために、故郷シラクサイ特産の象牙製糸紡ぎ棒を携えてミレトスへと旅立つにあたり、糸紡ぎ棒に向かってその旅の目的と彼女の勤勉さを語りかける。
- §29.1-29.40
気まぐれな美少年への誠実な愛の勧め
詩人は愛する少年に対し、自身の半生が彼の美しさによって生かされていること、少年の移り気な態度への不満、そして若さがすぐに去りゆくものであることを説き、アキレウスのような一途な愛を育むよう諭す。
- §30.1-30.32
老いゆく詩人と魂のエロスをめぐる対話
詩人は、少年への情熱という激しい病に再び捕らわれ、通り過ぎる彼の視線と微笑みに心をかき乱されている。彼は自分の老いを省みて恋の愚かさを魂に問いかけるが、魂はエロスの支配の強大さを説き、運命に従うほかないと諭す。
