底本
Ovid: Tristia. Ponto. Wheeler, Arthur Leslie, editor. Cambridge, MA; London, UK: Harvard University Press; William Heinemann Ltd., 1939 (printing).
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA (Perseus の利用条件による)
元ファイル: urn:cts:latinLit:phi0959.phi008.perseus-lat2
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要旨
ローマの詩人オウィディウスが、皇帝アウグストゥスの怒りを買い、黒海沿岸の辺境トミスへと追放された絶望的な境遇を歌った全5巻からなる悲歌(哀歌)集です。作品は、擬人化された自身の詩書をローマへ送り出す場面から始まり、祖国との悲痛な別れの夜や、道中の過酷な嵐の描写へと続きます。オウィディウスは自らの失脚の原因が意図せぬ「過ち(エロール)」にすぎないと釈明し、皇帝への揺るぎない忠誠を誓いながら、刑の軽減や流刑地の変更を哀願します。また、ローマに残してきた最愛の妻の貞節を称え、逆境にあっても変わらぬ友情を示してくれる友人たちに深く感謝する一方、裏切った者たちや敵を厳しく非難します。極寒の地での孤立、異民族の脅威、ラテン語の忘却という恐怖に直面しながらも、彼は詩作を唯一の慰めとして執筆を続けます。本書は、絶望の深淵を抱えながらも、詩を通じて自らの生と名声を不滅のものにしようとした一人の詩人の魂の記録です。
目次
60 チャンク
引用方式:book.poem.line
- §1.1.1-1.1.64
詩集へのローマ行きと旅立ちの心得の指示
オウィディウスは自らの詩書を擬人化し、追放者である自分を伴わずにローマへ行くよう命じ、華美な装飾を排した悲哀に満ちた姿で都へ入るよう指示する。さらに、現在の苦境と創作環境の厳しさを吐露し、都での振る舞いについて注意を促す。
- §1.1.65-1.1.128
カエサルへの警戒と他の著作への言及
詩人は自著に対して、カエサルの宮殿を避けて一般の読者に満足するよう警告する。また、自宅の書斎に置かれた他の自著(『恋の技法』や『変身物語』)について語り、その旅立ちを促す。
- §1.2.1-1.2.56
追放途上の暴風雨と海天の神々への哀願
オウィディウスは追放の地へ向かう途中に遭遇した激しい嵐の中で、海と天の神々にカエサルの怒りから自分を救うよう哀願し、船上での難破の恐怖と貞淑な妻への想いを吐露する。
- §1.2.57-1.2.110
流刑地トミへの航海の無事の祈願と嵐の鎮静
オウィディウスは海を支配する神々に対し、カエサルの命令による配流の旅を早く終わらせるため、難破を避けてトミへと自分を運んでくれるよう懇願します。彼は自らの過ちが邪悪な意図によるものではないことを訴え、誓約の条件のもとで神々に救いを求め、嵐の兆候が和らぐのを確信します。
- §1.3.1-1.3.101
追放に際するローマでの最後の夜の回想と別れ
詩人がアウグストゥスによるローマ追放命令を受け、都を離れなければならなかった最後の夜の悲痛な出来事を回想する。準備が整わない中、夜明けが近づき、泣き崩れる妻や数少ない友人たちと辛い別れを告げる様子が描かれる。
- §1.4.1-1.4.28
イオニア海での嵐と禁じられた故国への漂流の恐怖
オウィディウスは亡命地へと向かう途中で遭遇したイオニア海の激しい嵐を描写し、船が制御を失って追放処分により立ち入りを禁じられたイタリアへと流されそうになる様子を嘆き、海の神々に救いを求める。
- §1.5.1-1.5.84
友の忠実さへの感謝とオデュッセウスとの比較
オウィディウスは窮地において友情を示してくれた匿名の友人に感謝し、苦難に直面してこそ真の忠実さが試されると説く。さらに、自身の境遇をオデュッセウスの伝説的な苦難と比較し、彼よりも自らの追放生活の方がはるかに過酷で絶望的であることを強調する。
- §1.6.1-1.6.36
苦難を支える妻の忠貞への称賛と永遠の名声の誓い
詩人は、自身の苦難を陰で支え、財産を奪おうとする悪意ある者たちから家を守ってくれた妻の貞潔と功績を称え、たとえ自身の詩才が衰えていようとも、彼女の名を歌によって永遠に残すことを誓う。
- §1.7.1-1.7.40
友への呼びかけと焼却された変身物語への寛容の請願
オウィディウスは自らの肖像を持つ友人に語りかけ、未完成のまま火に投じた『変身物語』について、サバイバルした写本がローマで読まれること、そしてそこに最後の仕上げが欠けていることを伝える。
- §1.8.1-1.8.50
友の予期せぬ裏切りと不実への非難
詩人は、自然の法則が逆転するほどあり得ない裏切りを友人に働かれたと非難し、過去の親密な交わりを回想しながら、冷酷な態度をとる友人の不誠実さを嘆く。
- §1.9.1-1.9.66
成功する友への祝福と自身の弁護の懇願
詩人は、自身の不遇な運命を語りながら、多くの友人が去っていく中で、雄弁さによって成功を収めつつある親しい友人への心からの祝福と、自身の作品についての弁護と懇願を述べる。
- §1.10.1-1.10.50
ミネルウァの船への賛美とトミスへの航海の無事の祈願
詩人はミネルウァの庇護下にある自らの安全な船の性能を称えつつ、コリントスからサモトラケまでの航路を回顧する。さらに、自身が陸路を進む間、船が安全に黒海を抜けて目的地トミスに到着することを願い、双子の神々(ディオスリ)に護り旅の無事を祈る。
- §1.11.1-1.11.44
流刑の航海中の嵐と詩作の継続
オウィディウスは、旅の途中の嵐や危険の中でも、死の恐怖に直面しながら詩を書き続けた自身の不屈の創作態度について語る。
- §2.1.1-2.1.82
詩才による破滅の嘆きと皇帝アウグストゥスへの赦免の嘆願
詩人は自らの詩才によって流刑に処された不条理を嘆きつつも、自らの忠誠心を皇帝アウグストゥスに訴え、ユピテルのごとき寛大な赦しを懇願する。また、過去の作品や未完の『変身物語』が皇帝一族への敬意に満ちていることを主張する。
- §2.1.83-2.1.163
アクタイオーンとの対比による過ちの釈明と慈悲の嘆願
オウィディウスは自らの失脚を倒壊する家に例え、意図せぬ目撃から過ちを犯した自身の境遇をアクタイオーンの神話に重ねて訴える。そして、カエサルによる罰が比較的寛大な放逐に留まったことに感謝しつつ、神々や祖国、そしてリウィア皇后の名にかけてさらなる慈悲を哀願する。
- §2.1.164-2.1.244
過酷な流刑地トミスの訴えと愛の技術の弁明
オウィディウスは皇室への揺るぎない忠誠を語りつつ、自身の流刑地トミスの地理的な遠さと危険さを訴え、より近い場所への遷刑を哀願する。さらに、彼を破滅させた『愛の技術』は、多忙を極める皇帝がその多忙ゆえに誤解したものであり、詩そのものは国法に違反していないと釈明する。
- §2.1.245-2.1.327
愛の技術の読者層と文学の受容に関する弁明
オウィディウスは自著『愛の技術』が本来娼婦向けに書かれたものであり、既婚婦人を対象としていないことを弁明する。また、あらゆる文学や娯楽、果ては神殿や神話でさえも歪んだ心を持つ者にとっては悪徳の種になり得ることを指摘し、高尚な叙事詩のテーマではなく恋愛詩を扱った自身の至らなさを自虐的に後悔してみせる。
- §2.1.328-2.1.410
叙事詩への不適性と古典文学における愛の伝統
オウィディウスは、自らの才能が叙事詩のような重厚な主題には適しておらず、恋愛詩の軽い作風に向いていることを主張する。さらに、ギリシア・ローマの古典文学や悲劇が、常に愛や情熱を主要な題材として扱ってきたことを数々の例を挙げて論じる。
- §2.1.411-2.1.494
愛や娯楽を歌った先行詩人たちへの無処罰と自らの処遇
筆者は、ギリシアやローマの先行する多くの詩人たちが恋愛詩や不謹慎なテーマを扱いながらも処罰されなかったこと、さらにサイコロ遊びや水泳などの娯楽的実用書を執筆した者たちも無罪であることを指摘し、自らの愛の詩作だけが厳しく罰せられた理不尽さを対比させて訴える。
- §2.1.495-2.1.578
マイム劇との比較と安全な流刑地への嘆願
オウィディウスは、アウグストゥス自身が後援するマイム劇の不道徳さと比較して、自分の詩への処罰が不当に重いと主張し、自身の主要作である『変身物語』や『暦』に言及しながら、怒りを和らげてより安全な流刑地へと移されるよう懇願する。
- §3.1.1-3.1.82
擬人化された書物のローマ巡礼と受容の嘆願
本書は、流刑地からローマに送られた擬人化された書物として、都の主要な聖所やアウグストゥスの邸宅を巡りつつ主人の恩赦を祈る。しかし、全ての公共図書館から追放され、最終的に私的な場所と平民の読者の中に受け入れられることを求める。
- §3.2.1-3.2.30
過酷な流刑地スキティアへの到着と死への渇望
詩人はスカイティアという過酷な流刑地に到着した絶望を語り、かつては虚弱であった自分が旅の苦難を生き延びたこと、そして今は死を望むほどの哀愁に暮れていることを吐露する。
- §3.3.1-3.3.88
病床からの妻への手紙と死後の遺灰の帰郷の願い
病床に伏す詩人が、トミスでの死を覚悟し、最愛の妻に宛てて自らの葬儀や遺灰の帰郷を懇願し、墓碑銘を通じて詩による不滅の生命を歌う。
- §3.4.1-3.4.46
友への平穏な生の勧めと変わらぬ忠誠への感謝
詩人は自らの没落と追放を教訓として、友に対して権力者を避け平穏かつ謙虚に生きるよう勧めるとともに、窮地にあっても自分を支え擁護し続けてくれる友の変わらぬ忠誠に深い感謝を示す。
- §3.4b.47-3.4b.78
最果ての地での望郷と友への無言の呼びかけ
大地の最果ての極寒の地に流刑された詩人が、遠く離れた祖国、妻、そして友人に思いを馳せる。自らの詩に名前を載せることで友人を危険に晒すことを避けるため、彼は名指しを避けつつも心の内で語りかけ、支援を求めている。
- §3.5.1-3.5.56
新たな友の誠実への感謝と皇帝の慈悲への希望
詩人は、自分の没落に際して変わらぬ厚い友情を示してくれた、あまり面識のなかった一人の友人に対して感謝を捧げる。さらに、アウグストゥスの怒りは宥められうると信じるに足る歴史上・神話上の先例を挙げ、自らの罪が国家転覆や不敬の発言ではなく不条理な目撃による「過ち」にすぎないことを強調し、処刑地の変更という寛大な処置へのかすかな希望を吐露する。
- §3.6.1-3.6.38
無二の友への信頼と流刑地緩和の嘆願依頼
詩人は親友に対し、彼らの確固たる友情と深い信頼関係を想起させ、皇帝の恩寵を用いて自身の流刑地変更を嘆願するよう要請する。また、自身の罪が計画的な悪意によるものではなく、単なる過失と愚行にすぎないことを改めて訴える。
- §3.7.1-3.7.54
ペリッラへの手紙と詩作継続の勧め
詩人は擬人化された自らの手紙に対し、詩作の弟子であるペリッラを訪れて近況を伝え、流刑に屈せず詩作を続けて死後の不滅の名声を得るよう彼女を励ますことを命じる。
- §3.8.1-3.8.42
帰郷の空想とより穏やかな流刑地への嘆願
詩人は、神話的な乗り物や翼によって一瞬で祖国へ戻り、妻や友人に再会することを空想するが、それは不可能であると悟り、代わりに皇帝に流刑地の変更を求める。過酷なポントスの環境により、詩人の心身は衰弱し、死すら願うほどであるが、皇帝が処分を少しでも和らげてくれることを望んでいる。
- §3.9.1-3.9.34
メーデイアの弟殺害とトミスの地名由来
オウィディウスは流刑地トミスの名前の由来を説明する。トミスはミレトスからのギリシア人入植者によって建てられた都市であるが、その地名はかつてアルゴナウタイから逃れるメーデイアが、追ってきた父アイエテスを遅らせるために弟アプシュルトスを殺害し、その身体を切り刻んで(トミス)撒き散らしたという神話的事件に由来する。
- §3.10.1-3.10.78
トミスの厳冬と凍結した川を越える異民族の脅威
オウィディウスはローマの友人に宛てて、流刑地トミスの極限の冬を描写し、凍りついたドナウ川を越えて襲来する異民族の脅威と、作物が育たない不毛な土地の惨状を嘆く。
- §3.11.1-3.11.74
冷酷な敵への抗議と運命の無常の警告
詩人は自分を執拗に攻撃する冷酷な敵に対し、自身の悲惨な現状を訴え、すでに破滅した影のような存在をこれ以上攻撃しないよう、運命の不確実性を説きつつ警告する。
- §3.12.1-3.12.54
春の訪れとローマへの郷愁および船の待望
春の訪れとともに詩人はローマの活気ある季節の行事を想い、流刑地に到着するかもしれない船を待ってローマや皇帝の勝利のニュースを心待ちにしながら、トミが終の棲家とならないよう祈る。
- §3.13.1-3.13.28
流放の地で迎えた誕生日への嘆きと抗議
詩人は自らの誕生日に際し、擬人化された誕生日の神(ナターリス)に向けて、なぜこのような追放の地にまで追いかけてきたのかと恨み、悲惨な現状では祝うこともできず、二度とこの地に来ないようにと懇願する。
- §3.14.1-3.14.52
友人への詩篇の保護の依頼と衰えゆく才覚の嘆き
詩人はローマにいる友人に宛てて、彼の詩(『変身物語』や本作品など)を都で保護し人々に届けてくれるよう依頼する。さらに、過酷な追放先での暮らしが彼自身の詩才をいかに蝕み、言語的能力さえも奪いつつあるかを嘆く。
- §4.1.1-4.1.106
流刑地の過酷さと慰めとしての詩作の継続
オウィディウスは流刑地トミでの過酷な現実と闘いながら、なぜ詩作を続けるのかを語る。詩は彼の不幸を和らげる唯一の慰めであり、かつて彼を破滅させたその武器を、彼は今も愛し、自らの悲しみと恐怖を表現し続けている。
- §4.2.1-4.2.74
ゲルマニア征服の凱旋式の想像と心による帰郷
ゲルマニア征服を祝うローマでの凱旋式の様子を想像し、追放の地からその華やかな情景に思いを馳せ、自分の心だけは祖国に戻ってその喜びを共有しようとする。
- §4.3.1-4.3.84
星座への妻の消息の問いと逆境における貞節の励まし
詩人は天の星座に、祖国ローマにいる妻の様子を報告するよう懇願し、自身が追放された今こそ彼女が不運を耐え忍び、その貞淑な美徳と敬虔さを示すべき好機であると鼓舞する。
- §4.4.1-4.4.88
高貴な友への弁明と流刑地変更の嘆願
詩人は、名門の友人に語りかけ、相手の素性が知れる描写をしたことを詫びつつ、自身の流刑が意図的な罪ではないことを弁明し、黒海沿岸の過酷な環境から穏やかな地へ移れるよう取りなしを求めます。
- §4.5.1-4.5.34
名を伏せた忠実な友人への感謝と幸福の祈願
詩人は流刑の身となった自分を支えてくれた無名の友人に感謝の念を捧げ、皇帝の怒りを刺激しないよう彼の名を伏せつつ、友人の家族の繁栄と幸福を祈願する。
- §4.6.1-4.6.50
時による万物の変容と癒えぬ自身の苦痛
時はあらゆるものを飼い慣らし和らげる一方で、自身の苦しみだけは時の経過とともにむしろ増大していると嘆き、衰えた心身とトミスの過酷な環境を訴える。
- §4.7.1-4.7.26
音信不通の友への詰問と変わらぬ友情の確信
詩人は流刑地で二年間手紙を送ってこない親友を難詰するが、友人の心変わりを断固拒絶し、届かない原因はただ遠い地理的障壁のためだと信じて頻繁な執筆を求める。
- §4.8.1-4.8.52
望まれざる老境と流刑の地トミスでの過酷な運命
詩人は自らの老境と本来望んでいたローマでの穏やかな引退生活を対比し、皇帝の怒りによって黒海の過酷なトミスへ流刑された現在の運命を嘆き、読者に皇帝の力を恐れその恩恵を得るよう警告する。
- §4.9.1-4.9.32
匿名の敵に対する詩による告発の警告
詩人は匿名の敵に対し、もしその者が悔い改めを示すならその名を伏せるが、憎しみを抱き続けるならば、世界の果ての流放地からでも詩の力を用いてその不名誉を永劫に轟かせると警告する。
- §4.10.1-4.10.67
スルモでの生い立ちと詩人としての歩み
詩人は自分自身の生い立ち、スルモでの誕生、兄との関係、そして若くして詩作の才能を開花させ、政治の道を断念して詩人たちの社交界に入り、頭角を現した経緯を詳しく語る。
- §4.10.68-4.10.132
トミスへの流刑と詩による不滅の慰め
詩人は自身の三度の結婚、娘の出産、両親の死について語り、皇帝の怒りによるトミへの流刑とそこでの過酷な旅路を回想したうえで、ミューズの詩的な加護と自身が得た不滅の名声への感謝を述べる。
- §5.1.1-5.1.80
苦痛を和らげる手段としての第5巻の詩作
詩人はゲタイの地から送る『悲歌』第5巻について、自身の不遇な運命を反映した悲しい内容であることを告げ、詩作が苦痛を和らげる唯一の手段であること、そして読者とのつながりを保つために書き続けることを説明する。
- §5.2.1-5.2.78
妻への便りと亡命地の変更を求める嘆願
ポントスからの手紙を受け取った妻に向けて、オウィディウスは自らの心身の不調と過酷な亡命生活の現実を伝える。同時に彼はカエサルの怒りの軽減を願い、もしここから安全な場所に移してもらえるならば、いかなる悲惨な運命にも耐えると訴える。
- §5.3.1-5.3.58
バックス祭における祈りと同僚詩人への懇願
詩人たちがバックスの祝祭を祝う日にあたり、流刑地にあるオウィディウスはかつてその輪にいたことを回想し、自身の苦境を救うようバックスに祈る。また同僚の詩人たちに対しても、不在の自分を思い出して皇帝への執り成しを求めるよう呼びかける。
- §5.4.1-5.4.50
手紙の語りによる友への感謝と窮状の伝達
ナーソーの手紙自身が語り手となり、黒海沿岸からローマの友人のもとへと届けられた状況を語る。手紙はオウィディウスの現在の過酷な境遇と、それでも保ち続けるアウグストゥスへの感謝、そして何より逆境においても変わらぬ友情を示してくれた友人への深い思慕と感謝の念を伝える。
- §5.5.1-5.5.64
流刑地における妻の誕生日の祝いと神々への祈願
オウィディウスは黒海沿岸の流刑地トミで、ローマに残された最愛の妻の誕生日を祝い、彼女の苦難と貞節をギリシア神話のヒロインたちに重ねて称賛しつつ、神々とアウグストゥスに彼女への慈悲を乞う。
- §5.6.1-5.6.46
見捨てようとする友への忠義と支援の訴え
詩人は、自分を見捨てようとしているかつての信頼おける友に対し、逆境にあっても義務と忠義を果たすべきだと訴え、自らの計り知れない苦難を説明して支援の継続を求めている。
- §5.7.1-5.7.68
トミスの野蛮な環境とラテン語忘却の恐れ
オウィディウスは、流刑地トミスの過酷な自然環境と、野蛮な住民たちについて語り、かつてローマで称賛された詩人でありながら、今やラテン語の言葉さえも忘却しつつある寂しさを嘆く。しかし彼は正気を保ち、苦痛を紛らわせるために、一人でラテン語を呟きながら詩作を続けている。
- §5.8.1-5.8.38
不幸を嘲る敵への警告と運命の流転
詩人は、自分の不遇を嘲笑う不誠実な敵に対し、運命の流転や神罰の恐ろしさを説いて警告し、いずれ皇帝の慈悲を得て都に帰還すること、また敵自身がそれ以上の流罪に処されることを願う。
- §5.9.1-5.9.38
名伏せを願う恩人への感謝と詩による顕彰の断念
詩人は、自分を破滅から救ってくれた匿名の恩人に深い感謝を捧げる。詩の中でその名前を不朽のものにできない口惜しさを表現しつつも、友人の安全のために名前を伏せるようにという指示に忠実に従うことを約束する。
- §5.10.1-5.10.52
トミスの厳冬と果てしない時間の遅さ
オウィディウスは、トミスの極寒の気候と果てしなく遅く進む時間、そして敵対的な先住民の驚異や言語の通じない文化的な孤立状態を嘆き、自らの過酷な追放の境遇を語る。
- §5.11.1-5.11.30
妻への侮辱に対する反論と軽い処罰の強調
オウィディウスは、妻が「追放者の妻」と罵られたことに傷つきつつも、自らの処分が財産や市民権を失わない「退去」という軽いものであることを指摘し、カエサルの慈悲を称えるとともに、敵対者に対して偽りの呼び名を使わぬよう要求する。
- §5.12.1-5.12.68
詩作の勧告に対する反論と草稿の焼却
詩作によって苦痛を忘れるよう勧める友人に対し、詩人は精神の不穏、過酷な流刑地、詩才の衰退、名声への無関心、言語的孤立などを挙げてそれを拒みつつも、つい書いては燃やしてしまう自らの不条理な創作活動について語ります。
- §5.13.1-5.13.33
病苦の訴えと友人への便りの催促
オウィディウスはゲタイ人の地から友人に手紙を送り、自らの病状を訴えつつ、友人からの手紙が少ないことを優しく非難し、変わらぬ友情の証として文通を続けるよう促す。
- §5.14.1-5.14.46
妻への詩による不滅の記念碑と忠貞の勧め
詩人は妻に対して、自らの詩作が彼女に永遠の名声をもたらしたことを告げ、神話の忠貞な妻たちを例に引きながら、現在の逆境においても貞節と信義を守り抜くよう激励する。
