底本
Cicero. Ciceronis, M. Tullius. Epistulae, Vol. III. Purser, Louis Claude, editor. Oxford: Clarendon Press, 1901.
原文データ出典
Perseus Digital Library · CC BY-SA (Perseus の利用条件による)
元ファイル: urn:cts:latinLit:phi0474.phi059.perseus-lat1
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翻訳と校閲
翻訳:Gemini 3.5 Flash(2026-05-22 公開)
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最終更新:2026-10-11・変更履歴の一覧
要旨
本作は、カエサル暗殺後の共和政ローマの存亡をかけた緊迫した政情下で、政治家キケロと、暗殺の首謀者の一人であるブルートゥスとの間で交わされた往復書簡集です。書簡の中で両者は、台頭する若きオクタウィアヌスへの対応を巡って激しく意見を戦わせます。キケロが元老院の権威を守るためにオクタウィアヌスを懐柔しようとするのに対し、ブルートゥスはそれを新たな独裁を招く卑屈な妥協であるとして痛烈に批判します。また、反乱勢力に対する処遇を巡り、キケロが国家の安全のために厳格な処罰を求める一方、ブルートゥスは法の正義や無辜の家族への配慮を訴えます。急迫する戦況の中でキケロは、自由を守るために軍を率いて一刻も早くイタリアへ帰還するようブルートゥスに懇願し続けます。互いの家族や推薦を巡る個人的なやり取りも交えつつ、国家の存亡を前にして政治的信念と友情の間で葛藤する二人の苦悩が、臨場感をもって描き出されています。
目次
30 チャンク
引用方式:book.letter.section
- §1.1.1-1.1.2
クロディウスの忠誠の請け合いと推薦
キケロはブルートゥスに対し、次期護民官のクロディウスが自分たちに対して極めて好意的であると強く請け合い、第三者の讒言に惑わされず自分を信頼するよう懇願している。
- §1.2.1-1.2.3
ドラベッラの動向とブルートゥスの軍事行動
封印直後に届いた手紙でドラベッラの不穏な動きを知ったキケロが、軍の移動を控えたブルートゥスの慎重さを称賛する。また、第14軍団の反乱に対する兵士たちの厳格な対処を支持している。
- §1.2a.1-1.2a.3
アントニウス一味に対する寛大さへの反対
キケロはブルートゥスに対し、軍の支持を得たことへの喜びを伝えつつ、アントニウス一味に対するブルートゥスの「寛大さ」に強く異議を唱え、厳格な処置をとらなければ国家が危機に陥ることを警告する。
- §1.3.1-1.3.3
好転する情勢とオクタウィアヌスへの懸念
キケロは局勢の好転を報告し、オクタウィアヌスの素質に期待しつつ今後の制御に懸念を示す。また、自身への熱狂的な市民の歓迎を誇るとともに、ブルートゥスに敵への厳格な対応を促す。
- §1.3a.1
両執政官の戦死とガイウスの処分
キケロが、執政官ヒルティウスとパンサの死を報告し、アントニウスの追従者を敵とする元老院決議の影響、およびガイウス・アントニウスの処分に関する自身の寛大な態度を伝える。
- §1.4.1-1.4.3
アントニウス派捕虜の法的処遇とキケロへの忠告
ブルトゥスらによる勝利を喜びつつ、捕虜となったアントニウス派の市民たちの処遇について、彼らを直ちに国家の敵とみなさず法的な判断を重んじる自身の立場を説明し、キケロの過度な楽観主義と寛大さに忠告を与えている。
- §1.4a.1-1.4a.4
オクタウィアヌスへの過度の栄誉に対する警告
ブルトゥスはキケロに対し、オクタウィアヌス(カエサル)に過剰な特権を与えることが新たな独裁者を招く危険性を警告し、元老院の権威を慎重に守るよう求めるとともに、キケロの執政官就任の知らせに言及する。
- §1.5.1-1.5.4
ドラベッラ追撃の決定と神官職の補選
ブルートゥスはキケロに対し、元老院がドラベッラ追撃の判断を彼に委ねたことを伝え、その重要性を説く。また、キケロの息子を神官団に加える手続きや、パンサの死による選挙の遅延と制度上の混乱について述べる。
- §1.6.1-1.6.4
医師グリコンの救援要請と息子の近況報告
ブルトゥスはキケロへの感謝は不要であると述べ、キケロの息子の近況と、パンサの死に関与した疑いで拘留された医師グリコンの救出を懇願する。また、ドラベッラの敗北の知らせや、フラウィウスの相続争いの調停を依頼する。
- §1.7.1-1.7.2
ビブルスらの推薦を求めるブルトゥスの懇願
ブルトゥスはキケロに対し、亡きパンサの空席を狙うビブルスへの推薦を強く懇願し、併せてドミティウスやアプレイウスらへの支援を求めている。
- §1.8.1-1.8.2
ガイウス・ナセンニウスの推薦
筆者はブルートゥスに対し、自らの影響力を頼って多くの人が推薦を求めてくる状況を説明し、特にスエッサ出身のガイウス・ナセンニウスを軍歴や実直な人柄を踏まえて強く推薦している。
- §1.9.1-1.9.3
妻を失ったブルトゥスへの慰めと軍の待望
キケロは、妻を失ったブルートゥスに対し、かつて自分が娘を失った際にブルートゥスから受けた厳しい激励を引き合いに出して、公的立場にある者として過度の悲しみを克服するよう促し、彼の軍隊の到着を待ち望む旨を伝える。
- §1.10.1-1.10.5
国内の危機とブルトゥスの帰還要請
キケロはブルートゥスに対し、元老院や国内の危機的な政治状況、オクタウィアヌスをめぐる不穏な動きを報告し、共和政の自由を守るためにイタリアへ急ぎ帰還することを懇願している。
- §1.11.1-1.11.2
アンティスティウス・ヴェトゥスの称賛と支援要請
ブルートゥスはキケロに対し、アンティスティウス・ヴェトゥスがドラベッラに屈せず資金と身を捧げてくれた忠誠を称賛し、彼の今後の立候補と防衛活動を支援するよう求めている。
- §1.12.1-1.12.3
レピドゥスの反逆とブルトゥスへの帰還要請
レピドゥスの裏切りによる国家の危機についてブルトゥスに報告し、彼の子供たちの処罰の正当性を述べるとともに、ブルトゥスに対して早急にイタリアへ帰還するよう要請している。
- §1.13.1-1.13.2
レピドゥスの子らの保護の懇願
ブルトゥスはキケロに対し、自身の姉妹(レピドゥスの妻)の子供たちを保護し、父親レピドゥスの罪から彼らを守るよう強く懇願し、早期の返答を求める。
- §1.14.1-1.14.2
書簡の短さへの不満と迅速な帰還の要請
キケロはブルトゥスからの極めて短い手紙に不満を表明し、息子のキケロを自分の元に留めておくよう懇願する。また、レピドゥスの裏切りによりイタリアで再び戦争が激化したため、一刻も早く軍を率いて戻るよう強く求めている。
- §1.15.1-1.15.5
メッサラの激賛とヴェリアでの再会の回顧
メッサラの優れた才能と品格を激賛しつつ、国家の賞罰のあり方、およびカエサル暗殺後の政治的混迷とローマ脱出、そしてヴェリアでの悲劇的な再会について語る。
- §1.15.6-1.15.9
若きカエサルへの名誉授与と自身の行動の弁明
キケロはローマ帰還後の自身の政治的行動、特に若きオクタウィアヌス(カエサル)やデキムス・ブルトゥス、その他の将軍たちへの名誉授与の正当性を弁明し、レピドゥスの像の件についても元老院の意図を説明する。
- §1.15.10-1.15.13
敗者への寛大さへの戒めとイタリア帰還の要請
キケロは敗者に対する過度な寛大さを戒め、自身の厳格な判断の正当性を論じるとともに、ブルトゥスに対し、秩序再建または残る戦いのために一刻も早く軍を率いてイタリアに来るよう要請する。また、レピドゥスの子供たちの安全への配慮についても言及している。
- §1.16.1-1.16.4
オクタウィウスへの卑屈な懇願に対するブルトゥスの批判
ブルトゥスは、キケロがオクタウィウスに宛てて自分たちの安全を乞うた手紙の内容を知り、その卑屈で奴隷のような懇願を激しく批判するとともに、真の自由のためにローマ人としての誇りを保持するよう訴える。
- §1.16.5-1.16.7
隷属による安全の拒絶と暗殺者の自尊心
ブルトゥスはキケロに対し、オクタウィウスへの懇願は実質的な服従であり、自由や尊厳を犠牲にして得る安全には価値がないと説く。さらに、カエサルを排除した暗殺者たちの功績に比して、オクタウィウスに過大な権限や感謝を与えるべきではないと厳しく批判する。
- §1.16.8-1.16.11
オクタウィウスへの懇願の拒否と自由への決意
ブルトゥスはキケロに対し、オクタウィウスに安全を懇願するような妥協的態度を捨て、国家の自由のために毅然と抵抗し続けるよう強く促す。
- §1.17.1-1.17.7
オクタウィウスへの迎合批判といかなる支配の拒絶
ブルトゥスは、キケロの国家に対する意図を信頼しつつも、オクタウィウスを過剰に擁護し甘やかす妥協的な態度を痛烈に批判し、いかなる支配(支配者)にも屈しない強い意志を示す。
- §1.18.1-1.18.6
セルウィリアとの会談とローマの情勢報告
キケロがブルトゥスの母セルウィリアに招かれて彼のイタリア帰還について相談したこと、オクタウィアヌスの保証人としての苦悩、国家の財政難、およびレピドゥスの子供たちの弁護について報告する。
- §2.1.1-2.1.3
執政官たちの遅滞と国家再建の責任
キケロはブルトゥスに対し、執政官たちの遅滞がなければ国家はすでに救われていたはずだと語り、自らの政治的責任を強調する。そして、今後の情勢がどうあれ、国家の再建または回復はブルトゥスとカッシウスの双肩にかかっていると伝える。
- §2.2.1-2.2.3
諸将の動向と元老院でのセルウィリウスとの対立
キケロはプランクスやレピドゥスの動向、およびブルトゥス救出への強い懸念を述べ、さらに元老院内での狂的な宿敵セルウィリウスとの激しい対立と、カッシウスらの形勢に関する吉報を伝える。
- §2.3.1-2.3.6
助言の要請とカッシウスの戦果および資金の要求
ブルトゥスは、キケロからの助言を熱望し、カッシウスのシリアでの成功やキケロの演説を称賛しつつ、資金と増援を要求する。また、キケロの息子の優秀さを褒め称える。
- §2.4.1-2.4.6
アントニウスの処遇と戦況への助言
キケロはブルトゥスからの手紙に返信し、カッシウスのシリアでの活躍を喜びつつ、拘留中のガイウス・アントニウスの処遇、増援兵と資金の不足、カッシウスの戦果の公表、そして実子キケロの評判について自身の見解を述べている。
- §2.5.1-2.5.6
ブルトゥスの過度の寛容への諫言と戦時の方針
キケロはブルトゥスに対し、国家存亡をかけた戦いにおいて穏健すぎる態度を改め、首謀者には厳格に、兵士には寛大に対処するよう勧告する。また、元老院で朗読された謎の手紙を巡る混乱や、息子の教育について言及している。
